異世界物語〜銃を添えて〜

八橋響

目覚めの前〜???視点〜

 ────???視点────
 今日は、久しぶりにリーシャと出かけることになった。
なんでも、早朝にアラシスの森上空で光るものを見た…らしい。
あれは何か特別なことがあったに違いない!とリーシャが興奮気味に私の家を訪ねて来た
 1人で行けばいいのに…と思ったが、女の子1人で森まで行くのには不安があったから…だと私は思う。
話を聞いた時は、精霊が集まって居ただけじゃないの?と聞き返したけど、リーシャは絶対になにかある!と言って聞かないのでこうやって、森まで向かうことになった。


「いやぁ〜アリア!付き合ってもらっちゃってごめんねぇ〜」
「そうおもうんだったら、あんなに朝早くから来ないでよね…?」
 にしし、と歯を見せて笑うリーシャ。
この子は昔から変わらない。悪戯好きの、可愛い女の子。
 すらっとした体型に、活発に動くリーシャにあう短髪。好奇心が抑えられないような、純粋な少女の目をしている。とても綺麗な女の子だ。
口を開かなければ…だけどね


 一応森に行くのだから、ある程度の装備はして来ているみたいで…
腰にはシンプルなレイピアがささっていて、体はレザーアーマーで身を守っている。
 街の外に出れば、少なからず魔物も生息している。
ここ、アリシアは比較的魔物が少ない地域に属している街だが、全くいないというわけではないからね。
 そんな彼女に引っ張られながら私──アリアは森へと向かった




「はぁっっ!」
 リーシャが ビーにレイピアを突き刺し、引き抜く
「この程度ならまだ全然いけるねえ〜」
 レイピアをくるくる回しながらリーシャは余裕そうな表情を見せる
 私たちはアラシスの森の中にいる。
リーシャが前衛を務め、私が後衛でその援護をするフォーメーション
昔から一緒に居たおかげで、連携はばっちりだ
「このあたりはまだ弱い魔物しかいないからね…、でもちゃんと気をつけなきゃダメだよ?」
「はぁいはい。わかってるよぉ ア・リ・ア・ちゃん! でも、そろそろな筈なんだよねぇ…」
 からかうように、私の名前を呼ぶリーシャはまた笑う
 そんな態度にちょっとむっとする。


 しかし、たしかにそろそろ目的地についてもおかしくない距離なんだけど…
ある程度舗装された、アラシスの森を引き続き歩いていく
あたりは木々が鬱蒼としていて、たまに小鳥のさえずりが聞こえてくる程度。
道は、木漏れ日を受けキラキラと光っているように見える。
 こんな中を男性と一緒に歩けたらきっと…等と、想像をするが
残念ながら、わたしにはそのような男性はいない。
近所の男性は確かにいるけど、好みでもなければそこまで仲良くもない…
 顔を下に向け深いため息をつくと、訝しげにリーシャが私の顔を覗き込んでくる
「なぁによアリア、溜息なんてついちゃって。そんなんじゃいい男なんて寄って来ないよ〜?」
「うるさいよ!今ちょうどその事を考えてたところ……」
 軽口を立ててくるリーシャに文句の一つでも言おうかと思った時だった。


 舗装されている道のど真ん中に、倒れている1人の男性を発見した。
「うわっ、あれが光の正体なのかな!」
 リーシャが言い切る前から、私はその男性の元に急いで駆け寄った
小精霊が彼の近くにいることから、彼は盗賊の類ではないことがわかっている。
 小精霊は人の心が読めると言われている。故に、悪の感情を持ち合わせている盗賊などには寄り付かないらしい。偉い人たちが何十年何百年の研究をしても精霊や小精霊についての全貌は明らかになっていないみたいだけど、それだけは分かっているらしい。
 男性の目の前にしゃがみこみ、杖を手にする
「風の精よ、術者アリアが命ずる。彼の者に癒しの風を ”リトルヒール“」
 私の詠唱が終わると、男性を緑色の風が包み込む。外傷は見当たらないが少しでも気分が紛れる…はず。
「あなた、大丈夫ですか!聞こえていたら返事をして下さい!」
 男性に声をかけながら、私は男性の口元に頬を近づける。
頰に息がかかるのを確認し、ほっとする。
 良かった…まだ生きてる…


 安堵したところで、リーシャが遅れて到着した。
「アリア、大丈夫そう?」
「今、回復精霊魔法をかけたところ。息もしてるみたいだし、とりあえずは大丈夫かな…ただ…」「ただ?」
「この人外傷が一切なかったの。だからなんでここで倒れているのかが全くわからなくて…」
「なぁるほどねぇ…? ってか、この人すんごい格好してるね。見たこともない服着てるよ」
 リーシャが興味深そうに、男性の服装を見ていた。
先程まではそこまで見ている余裕がなかったけど、今見てみると確かに見たこともない格好をしていた。
 頭から足元まで、全く同じ色をした服を着ている
深緑、緑、黄緑が複雑に描かれた服。帽子、上着、ズボン、全てがその色で統一されている。
 まるで、自然と一体化する為に作られたような服だなと、私はそう思う。


 そして、手には見たこともない形の道具を持っている、どうやって使うのすら検討もつかない。
それに似た形状の道具をもう一つ、腰につけている…あれは弓矢を入れておく矢筒のようなものだろうか?そこにさしている。
 さらに、男性の周りには大きめのケースが二つほど転がっている。
「このケースには何が入ってるのかなぁ…?」
「ちょ、ちょっとリーシャ。盗賊みたいなことしないの!」
 リーシャが男性の私物だと思われるケースを勝手に開けていた。
「いーじゃんいーじゃん!何もとらないしさ。この人がなんなのかわかるかもしれないじゃん?」「物はいいようね…、リーシャがとらないように私も一緒に見るよ」
 また一つ、ため息をつき
リーシャが見ているケースの中をのぞく
 その中には、男性が手に持っている道具のもっと大きいものが入っていた。
不思議な形のそれが真ん中に大きく、その隣には細くて長い棒が一本。
それだけが入っていた。
「これだけー?もう一つの方は〜っと」
「もういいでしょ!男性の様子を見に行くからね?」
 もう一つのケースの中も覗こうとするリーシャを止め、男性の方に近づくと
僅かに、瞼が空いていた


 しかしまだ、意識がはっきりとしていないのか動く気配はない
「リーシャちょっと来て!」
「はいはぁ〜い、っと。あら?目開いてる?」
「微かに瞼が開いてるぐらいだけどね…多分まだ、意識がはっきりしていないんだと思う…とりあえず街に運んで様子を見なきゃ…」
「なるほどねぇ〜、そこで私の出番ってわけね!」
 腕をまくるリーシャに頷く
「まっかせなさい! じゃあ行くわよ〜。 “腕力強化”」
 リーシャがスキルを唱えると、一気にリーシャから威圧感が放たれる。
 腕力強化 冒険者や騎士であれば殆どが使用できるスキル。ただ、使用したスキルの強弱はスキル保持者の実力に伴って変動するようになっている。
 仮に私が 腕力強化を使ったとしても殆ど変わらない。魔法やスキルにも得手不得手、合う合わないがあるからだ。
リーシャはどちらかというと冒険者や騎士寄りで肉体強化や、剣などのスキルに長けている。
 私は、魔術師や精霊術師。どちらかというと魔術師のスキルや魔法の方が得意だけど、精霊術もある程度は使えるようになっている。先ほどの精霊術も最近使えるようになったから使って見たかったものの一つだった。まさか、このような形で使うことになるとは思わなかったけど。
「ごめんねリーシャ。荷物は私が持って行くよ」
「いいっていいって!とりあえず、アリアの家に運ぼう!」
 男性を担ぎ上げ、リーシャが先に進む。
私は急いで男性のケースを拾い上げ、その後を着いていった。


「とーちゃぁーく!」
「お疲れ様、リーシャ。今お茶入れるから座って待ってて?」
「はーいどうも!この人どうするー?」
「あぁ…っと、うーん…ちょっと気がひけるけど、ベッドの上に寝かせてあげて?」
「はっ!……今までベッドに一度も男性を招いたことがないアリアが遂に」
「妙な言い方しないの!いいからはやくっ!」
 はぁいとなんとも気が抜ける返事をしながらリーシャは男性を私のベッドの上にゆっくりとおろした。
私も、男性の足元にこの人の荷物だと思われるケースを置きお茶を入れる準備をする。


 裏口にある井戸から水を汲み、鍋に入れて火の魔法具の上に置く。
動力となる小さな魔石をはめ込み、火をつける
お湯が沸いたら、茶葉をポットに入れそこにお湯うつしかえる
茶葉からお湯に色がつくと同時に、ふんわりと優しい柑橘系の香りが沸き立つ
カップにお茶を注ぎ、椅子に座って待ってるリーシャの前に置く。
「おぉ〜、この珍しい香りはオレンジかなぁ?」
「せいかい。つい昨日手に入れたばっかりなの」
「いいね〜、落ち着くよぉ」
 オレンジの香りが鼻腔をくすぐるこのお茶は
昨日東から来ていた行商人から購入したもの。
通常の茶葉に比べ、若干値は張ったがこの香りが気に入っているので行商人が来ると度々購入している。
「さてと…、どうしましょうか?」
 一息ついたところで話を切り出す
「どうするっていうとー…、あの人の事だよねぇ。」
 ちらりとベッドで寝ている男性を見ていた。
「役場で事情を説明して来ましょうか。それか、伯爵のところまで行くかだけれども…」
「んー…そうねぇ。森で倒れていたって事で税金はとられなかったからいいけど…この後の事も決めなきゃいけないしね〜…。伯爵のところはできれば行きたくないなぁ…私は…」
「リーシャ、伯爵苦手だもんねぇ…」
「だってあの伯爵、なぁに考えてるかまーーーったくわかんないんだもん」
「まぁまぁ…わかるけどさ…。」
 かくいう私も、そこまで伯爵が好きなわけでもなかった、どちらかといえば苦手の部類だ。
「とりあえず、この人も目覚めそうにないし、とりあえず役場までいこっか」
「はぁーい。」
 飲み終えたカップを片付け、役場に向かう準備をし始める。
 この人がどんな人かはわからないけど、私にできることはしてあげたい。
起きたら、いろいろ話をしてみたい。どこから来たのか、あなたの服装はなにか特別な意味があるのか? あなたが持っていた道具は、なんなのか。
せめて、この人が回復するまではお世話をさせてもらいたい。
 そんな気持ちを胸に秘め、まだ起きない男性に向かって
「───行ってきます」
 その一言を残して、私は家を出た。

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