長日月の守護者

嘉禄(かろく)

守護者との関係性

部屋に戻って一息つく。

…そうだ、明日提出の課題をやらないと。それから予習も。

そう思って机について教科書とノートを開くと、守護者が興味があるのか覗き込んできた。


「…環さま、それは?」
「これか?これは…学校と言って、学問を学ぶ環境があって、そこか配られる教科書だ。」
「…この国の発展は目まぐるしい、途中からついていくのを諦めた。まあ慣れるんだが…」


…なるほど、井伊の元で長い時を過ごすと時の流れに適応するのも一苦労か。

内心そう思いながら課題と予習を二時間程で片付け終えた俺は、風呂に入ろうかと思ったところでふと疑問に思い守護者に問いかけた。


「…お前、風呂は入るか?」
「…入っていいならば、入ります。人型を取ると、やっぱり汚れるから…」
「わかった、じゃあ一緒に行くか。その方が効率的だしな」


支度を整えて、守護者を連れて風呂場に向かう。
大浴場、という程ではないけどうちの風呂はそれなりに大きい。
まあ古くからある屋敷だからだろうが…一見銭湯と言われても違和感はないくらいだ。
シャンプーやらボディソープやらの使い方を教えると、守護者が俺の背中を流すと申し出てきたので任せることにして椅子に座る。
すると、教えた内容に忠実に俺を洗い出した。


「…飲み込みが早くて助かる、流石だな」
「…ありがとうございます」


それ以降は何を話すでもなく洗い終えるのを待った。


「…終わりました」
「ありがとう、じゃあお前も座れ」
「…俺も、ですか?」
「そうだ、洗ってやる。いくら主人と守護者とは言え、やっちゃいけないなんて言われてないからな。それから、やってもらいっぱなしは性にあわない。」


そんな感じでまくし立てて、守護者を説き伏せて座らせて俺は守護者を洗ってやった。
しかし、俺は洗っている途中であることに気づいた。

…守護者だから怪我も多いかと思ったが、傷跡は特に見当たらない。
人型だと治癒能力もあるんだろうか…?


「…治癒能力ならありますよ、但し多くの生気が必要ですが…」


俺の考えていることを見抜いたのか、それとも脳内を覗き見たのか…守護者が俺の疑問に答えた。


「…お前、勝手に覗き見たな?まあいいけど…で、回復に必要な生気は主人…つまり俺から取るのか?」
「いえ、周囲にいる人間から少しずつ。勿論環さまからも頂きます」
「へえ…」
「特に人間に害が及ぶことは無いので…安心してください」
「へー…洗い終わったぞ」
「ありがとうございます」


俺が立ち上がって自然に湯に浸かると、守護者も同じように浸かった。
こう見ると、本当に人間なのではないかと思うほど人間じみている。
食事をし傷は自然回復、こうして湯にも浸かる。
俺は数少ない友が出来たように感じた。

コメント

  • 黎旗 藤志郎(くろはた とうしろう)

    とても面白かったです!!

    1
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