長日月の守護者

嘉禄(かろく)

守護者の実態

「えー!お兄ちゃんが井伊家の守護者目覚めさせたの?!どこどこ?!どこにいるの?!」


部活のために俺より遅く帰ってきた千歳が、父さんから聞いたのか早々に騒ぎながら俺の部屋に歩いてくる音が聞こえる。


「お兄ちゃん、守護者どこ!」


ドアを勢いよく開けて大きな声で問いかけてくる。
ったくこの妹は…と思って溜息をつきつつ、取り敢えず根本的なことを問いかけてみた。


「守護者なら俺の後ろに立ってるけど、見えるか?」


それを聞いた千歳は目を凝らしてから徐々に近づいてくる。
ゼロ距離まで近づいたから、守護者が少し距離をとる。
暫くその時間が続いたが、諦めたように千歳が離れた。


「…なんかいるのは気配でわかるんだけど、姿は見えない…。あーあ残念、見たかったなー!」


千歳が悔しそうにぶーぶー文句を言いながら部屋を出ていったので、俺は苦笑しつつ守護者を見上げた。


「…今の騒がしいのは、俺の妹だ。名前は千歳。」
「…環さまの妹君か…」


そう答えて千歳が出ていった出口をぼんやり見つめる。
…あ、そういえばこいつ…


「…なあ、お前食事はとるのか?腹減ったりするのか?」


刀からなるなら、栄養が必要なのかどうかも分からないけど肉体があるなら腹も減るかもしれない。
そう思って問いかけると、守護者は首を縦に振った。


「…俺も人と同じように食事はとります。腹減るし…」
「そっか、じゃあついてこい。お前の分の食事が用意されてるか確認しよう、もしされてなかったら俺が用意してやる。」
「…環さまが?ありがとう、ございます…」


礼を受けながらも俺は気にするな、というように手を振って部屋を出た。
ちゃんと守護者が後ろからひょこひょこついてきているのを確認しながら。

…突然こいつが前に現れた時は驚いたけど、慣れるといいもんだなと少し誇らしく思った。

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