長日月の守護者

嘉禄(かろく)

始まりはいつもの夢から

『…俺は、貴方を御守り出来なかった…どうして使われなかった…?…貴方の命、俺が必ず果たしてみせる…』


─ああ、またこの夢か。
誰かが俺を抱きかかえている。
夢の中で俺は死に、抱きかかえていた者が天に向かって吠える。
…いや、俺が死んだ訳じゃない。
死んだ者の視点と俺が同調しているだけだ。
それに、この夢はもうすぐ醒める。


「…ちゃん…」


…誰かの声が聞こえる、誰だ…何を言ってる…?


「…きて、起きてお兄ちゃん!
…起きろバカ兄貴!!!」
「いっ…!!!」


突然腹を何かに踏まれて俺は一気に覚醒した。
上を見ると妹の千歳が腕組みしながら俺の腹の上に足を置いていて、俺はいつかに本で見た虐げられる奴隷のようになっていた。
…よくよく見ると千歳は制服姿だった。履いてるのがスカート(かなりのミニ具合)だから中が見えそうになっているというか見えている。
これは注意してやらないといけないだろうと思い、俺は口を開いた。


「…おはよう千歳、起きたから足をどかせ乱暴だぞ。
…あとスカートの中丸見えだ。」
「…は?あ、見んなこの変態兄貴が!!!」
「っ、待て…ギブアップ!」


おかしい、注意してやったのに再び腹の上に足を落とされた。
胃の中何も入ってなくて良かった…。
なんとか足をどかせて起き上がる。


「…お前な、起こしてくれるのはいいが乱暴だぞ?
それに俺はスカートを注意しただけで中を見ようとした訳じゃない。
目に入ったのはそもそもお前が俺の上に足を置いたからだろうが。」
「ぐ…わかったよごめんね!
兎に角朝ごはん出来てるから早く着替えて降りてきてよね、遅れちゃう!」
「はいはい」


千歳は言い切ったところで部屋を出ていったので、あらかじめ用意していたシャツを着てから制服を着て下に降りる。
いつも食事をする大広間でみんなが待っていた。
俺は千歳と父さんの間に正座した。


「いつも通り遅かったな、環。」
「俺が標準なんです、みんな早すぎるんですよ。特に父さん。」
「そうか?まあいい、ではいただきます」
『いただきます』


現当主である父さんの号令に合わせて俺たちも食べ始める。
井伊家の伝統というか習わしというかのため、食事中は一切言葉を話さないためひたすらに沈黙がその場を支配した。
庭から鳥のさえずりが聞こえてくる、今日も外は暑いだろうか?
そんなことを考えながら俺は朝食を食べ終えた。
同時に千歳も食べ終えたようで一緒に食器を片付ける。


「じゃあ学校行くか。」
「うん、行こう!」


片付け終えて色々準備をして、俺と千歳は玄関に向かった。


『いってきます!』
「行ってらっしゃい」


俺たちは揃っていってきますを言って庭に出てから門をくぐり学校に向かった。

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