俺、元日本人のガチ神だけどY◯uTuberになるね!
第28.4話
「あー、昇天したい」
「ネモ、最近ちょっと頑張り過ぎじゃね?」
ナナオの相方のデブこと玉ちゃんと、プレハブ小屋みたいな事務所でアイス食べてます。
「お、社長さんのお出ましだぞ」
この白き宝石はなんだ!!
何故白い氷の中に南国のフルーツや小豆が混在しているのだ!!
正に北と南のランデブー、これにハマれば、はいデブー。「腹揉むな!」
嗚呼、なんだこの甘さ、全身に走るアイスの冷たさ!! うまい、たまらん。
「おいネモ、聞いてんのか? 殺すぞ」
「よく言ったなデブ。出汁とってやろうかコラ」
ここは玉ちゃんのお父さんが務めてる運送屋さんの事務所なんだけど、なんで俺がこんな所にいるのかと言えば、単純明快。
向こうに移住した茨城県の千五百世帯の人達への配給を運ぶ仕事をお願いする為にやってきたのだ。
当然向こうへは飛行ユニットでしか行けないので、会社の10tトラックを全て飛行ユニットに勝手に改造してからの脅し混じりのOHANASHIをしに来たつもりだったのだが……。
「いやぁ、これでウチの会社天下取れちゃうよネモさぁん!」
白髪でオールバックの人好きする笑顔の社長さんは怒るどころかノリノリだ。脅しに来たのに。
「では、まず一度目の配給をお願いします。今日の荷は集積所に置かせてもらってますが、明日からは全国から荷物が届くはずです」
「勿論お任せください! 命に代えてもやり遂げてみせます!」
「荷物運ぶだけですけどね?!」
大体御察ししていただけたかもしれないが、一先ず移住の受け入れは茨城県をやっつけた後にストップした。
俺がどんだけ頑張ってたかは知ってると思うんだけど、マジで老害共、じゃなくて農家のお年寄り達がいきなり農業連盟みたいなの作って、国じゃなくて俺個人に賠償要求しやがって、マジでクソ過ぎて話にならんから、とりあえず撤退したんだ。
それでも茨城だけで農家1300戸、漁師200戸の系4864人が移住してくれたから万々歳。
今でもひっきりなしに電話してきて、連盟関係ないから頼むから移住させてくれってメッセージとかもくれるけど、一旦締め切りました。残念!
後から動画を見て後悔したって遅いんだよって話だよな。
そこで食料配給の問題を片付けるのが急務だったんだけど、ナナオの相方の玉ちゃんのお父さんが運送屋に勤めてるから、話してみたら? って隣の金髪のブーちゃんが言い出したので冒頭。
トラックを全部飛行ユニットに改造して喜ばれたのは計算外だったけど、ネットで全国各地から購入した1000万円分の食材と500万円分の生活必需品をこの運送屋宛に発注し、向こうに送ってもらうように契約したのだ。
秒で金が飛んでいくのが痺れる。
額面は下がるが、これから毎日配給の食品ポチッとな! しなきゃいけないから、いくらかかるのか怖い。
アラレちゃんポイント貯まりまくってるの見てビックリしないかな? どんな反応するのか是非見たい。
「改造してやったんだから送料いらねぇよなぁ、あーん? って言うつもりだったんだけどね」
「なんだったらウチの会社から少ないながらに寄付金送ってもいいよっ! キラッ」
「キラッて言った! このジジイ、キラッて言ったぁ!」
「おいー! 親父のとこの社長にジジイはやめろー!」
凄く話のわかる社長さんで大助かりだ。
でもね、社長自慢ってなったら、やっぱりウチの社長のオギちゃんはすごいよ。
これはつい先日の出来事なんだけど。
『うわぁ、オギちゃん! 俺もう無理だ! あんなクソ共もう知らん!』
『はっは。ほな、次は銭の話に変えてまいまひょか。これまでの動画やパンフレットうまいことつこて、福島と周囲六県対象に、新惑星のリゾート地やっちゅうんで高額建築の客取って、中小の建築屋子請け孫請け引っくるめて、まとめて向こうに放りこんだりますわ。ほな中坊ぐらいのガキやったら建築も教えたれるでしょ?』
オギちゃんに『畑仕事や海仕事教えるだけやのに、千五百世帯も要らんのんちゃいまっか!』って最初からキレられてたんだけど、俺が決めたことだしって意地になって頑張ってて、ギブして諦めた途端に素敵な提案をしてくれた。もっと早く言えよ小デブ。
オギちゃんは元瓦屋の建築関係だったので、建築リフォームや不動産関連の営業会社とコネがあるらしく、その繋がりからオギちゃんが俺の代理社長だってアドバンテージ、国が本格的に動いたら土地価格の上昇間違いなしだから今がチャンスってのを全面に出して、日本各地の業者に営業をかけさせまくるとかなんとか。
『茨城の連中とは別の土地にリゾート地作らせて、儲けた銭は学校運営に回せるし、多少不便や言うたかて、ガキ共に自分達で作った食材売りに行かせたらそれもまた風情になりまっしゃろ? 建築屋の連中も引き込んで離せへんようにしといたら、何かとあった時の人出にもなりよるしね。まぁ、飛行ユニットのトラックはかなり作って貰わなあきまへんけど』
てな具合でね、わかってた筈なのに結果ばかり急いで、無駄に神力使いまくってた事を反省しゃっす。
幽鬼の如く働いてた自分が怖い。
だもんでオギータに言われるがままに飛行トラックを学校に大量に並べて、県内のスーパーやらデパートやらで無双で買い物した後に、配給の段取りに来ましたってわけですね。
「アレでしたら、その際に連れ込む人足もこちらから向こうへ運びますよ? ナナオやらタツ坊よりマシ……安心できるでしょう?」
「そんな! 甘えさせても何もできないよ?!」
「この地図の赤鳥居から入ってすぐの学校に送ればいいだけですよね? それぐらいなんら問題ありません」
「じゃあ、まだ先の話だろうけど、その時はよろしくおねがいします」
はい一段落!! 
自由!! 爆発!! 小宇宙!!
クラップユアヘンズ! パッチンパッチン鳴らしながらご一緒にっ!
「フォォオオオオオオオ!! フリィィィィダァァアム!!」
「ちょ、なに? うるさっ! 腹揉むな! 腹揉むなって!! おい!」
なんとか二週間、移住者にもゴリゴリの無茶振りをしながらに、不眠不休で頑張って、暫定的な未来の実習教師達を獲得です。
ガチの先生もどっかにいないかな……。
後は子供を集めるぜってノリで、日本の児童養護施設に特攻しようと思ったけど、まずは二週間のストレス発散も兼ねて、フィリピンに行きたい。
南国の風に当てられて、最近の疲れを癒してしまいたいのだ。
動画も、ジジババ集める→家建てる→すげぇだろ→はい乙。って感じの一辺倒だったしな。
ここらで海外ノリ出してリフレッシュしながらにフレッシュさを獲得するのだ。謎の食い物の食リポとか、全く需要ないだろうけど、そんな普通のユーチュバーみたいな動画も大切。
バスっぽい飛行ユニットで人攫いとかもありかもね。乗らんかい乗らんかいって。強制詰め込みバスジャック。
連れてくるとしたら困ってたり助けを求めてる人達だろうけど。
マジレスいらん? スマソ。
はい、それでは日本地図を思い浮かべて下さい。
現在地は名古屋に、銀色のバスから顔を出してニコニコしている二頭身ネモさんを想像してね。
はい、そのままバビューンと沖縄を飛び越えて緩やかな放物線を描いて辿り着いた先が、フィリピンはマニラでござる。
「てなわけで、おいっす!ネモっすよ! なんとね、今日はフィリピンに来ております! そうです、日本漫遊予定のネモなんですが、今日はなんとフィリピンに降臨しちゃいました。って言うのも先日の動画を見て貰ったらわかるように、最近はチビ・テラスへの移住受け入れで動き回ってたんだけど、二週間頑張って頑張って、ブラック過ぎる社畜体質の自分に堪らずギブしましたすいません! 『ダァン』え?」
銀色ってか、無骨な金属感の強い鈍色の飛行バスに乗ってフィリピンに到着、運転の疲れなんぞなんのそので早速撮影開始だけども、もしかしてフィリピンって治安悪い?
到着早々、何処からか銃声が聞こえたんだが……。爆竹かな?
「なんか今パンって聞こえなかった? って、おっと! いきなりちびっ子発見ってえぇぇ?!」
道端に立ち並ぶ放置されたコンクリートの土管の中にちびっ子が入って行ったので、早速お話してみようかなって覗き込んだら、普通に30歳ぐらいのオカンが赤ちゃんとさっきのチビ助を抱っこしてる。
「あんた誰? うちになんか用?」
これ明らかに住んでるよね……。
いや、普通にジャイア◯リサイタルが行われる土管を大きくしたぐらいの土管だよ?
どう考えたって人間様の住む場所じゃない。いいお宅ですね、なんて言ったら差別だと思われてしまうかもしれないから、言葉は慎重に、全力でオブラートに包みこんでやる。
心配ない、慈愛は神たる存在のスタンダード機能であるからな。
「あなたは穴子ですか?」
「とても失礼な人だってのはわかったわ」
違う、逆転の発想だ。これは革新的で新しい切り口、まさに住宅界のイノベーションなんだ。
普通に家に住むより、貫通してる方が涼しくていいよねって南国ならではの生活の知恵、穴子なんて言ったらダメだ。くそ、間違えた。
「あの、間違ってたらすいません。もしかして生活とかに困ってます? 」
「そうね……でも、もう慣れてしまったわ」
「良ければ日本に来ませんか? 普通の集合住宅に住んで、子供達を無償で学校に通わせられます。食事も勿論無料ですし、希望するならば仕事もあります」
他のフィリピンの女性達のように割りのいいナイトクラブを紹介する事は難しいが、普通に食堂のお手伝いさんや、農家の手伝いぐらいならいくらでもある。土管の生活を良しとするのであれば、これ以上は提案しないが、恐らくは今よりまともな生活ができるはずだ。
「まずパスポートが取れない。それにこの子達の父親は刑務所にいるの。待っててあげなきゃ」
「あぁ、そのパターンか。手紙書いたら? 出てきたら連絡してね、迎えに行くからって」
「ありがとう。嬉しいけど、ごめんなさい」
これは恐らく怪しまれてるパティーン。そりゃいきなりミルクティーカラーの女子か! って感じのサラサラストレートロン毛の外人に『日本にカモン』なんて言われたら怪しさマックスでしかない。
まずは論より証拠で、チビ・テラスの団地にマダムとちびっ子達を連れて行こう。
はい、どん。
早速転移で赤鳥居の前に登場、顔見知りの自衛官がズビシッと敬礼してくるので、此方もズビシッと返しておく。
そのまま赤鳥居をくぐり抜けて、団地に転移。
「これが住居になりまっておい! 赤ちゃん危ない!!」
この奥さん、あんな環境で逞しく生きてるのに転移で理解が追い付かなくなって気絶しやがりました。
赤ちゃんを速攻取り上げてキャッチ成功したので、適当に団地の部屋に入って寝かせてあげる。
「あー、布団とか発注しなきゃだな。何も考えてなかった」
「……ここは」
「あ、起きた? 一応見といてもらおうと思って。日本にくるなら、ここで暮らせますよって話です」
「あなたは、何者なのですか?」
オカン様は子供達を抱き寄せて、怯えた目で俺を警戒します。
では、お決まりとも言える様式美と致しまして、このお言葉を返しましょう。
「ただの通りすがりの仮面ライダ◯です」
「キャノンレーザー?」
「ゴホン、ただの通りすがりの親切なだけの人です」
めっちゃ恥ずかしかったし、なんやし。仮面ライダ◯ぐらい知っとけや。
勝利の法則は決まった! ってノリでドヤ顔してたらキャノンレーザーて。
プリンターか。プリンターなら俺の言葉をちゃんとコピーしてリピートしろ。
「本当にここに住んでもいいの?」
「ええ勿論、貴女が問題ないと言うのであれば」
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