錬成七剣神(セブンスソード)
幹部戦ロハネス3
魔来名の体が光に包まれる。全身に負っていた傷口は表面が粒子に覆われ、消え去る時には傷が塞がっていた。
『大丈夫』
魔来名は治神・織姫の治癒能力で傷を完治し、今までの裂傷を帳消しにする。
『あなたは、私が守ってみせるから』
そこに、少女の幻聴を聞きながら。
これでロハネスの計算を狂わしたと同時に、準備が整う。簡易的な儀式とも表現出来る、魔力充填の先行動作。
魔来名は天黒魔へ魔力を注ぐ。己の本領であり必殺の攻撃を放つため。居合いの構えを取り殺害の理が無限の刺突を食い潰さんと胎動し始める。
目前には視界を覆うほどの槍の軍勢。猶予は僅か。
「絶技絶閃――」
その間、刹那でも届かない。
しかし、ここで発動する術は天黒魔による超加速と半蔵から得た加速魔術の重ね掛け。それは魔来名を成長させ、新たな段階へと導いた。
刹那よりもさらに速く。六徳を飛ばし、さらにその先へ――
「――虚空斬り!」
瞬間、槍の森は動きを止め、空間は停止する。そして世界に一つだけ、赤い鮮血が花咲いた。
「ガハッ! ……やるじゃねえか。スパーダ二本とは思えねえ……」
ロハネスは両膝を付き、今しがた斬られた傷口を見下ろしていた。
屍を贄とし天に掲げよの刺突は終わっている。そんな彼を魔来名は見下ろし、無言で見つめていた。
「ハッ、なるほど。強い強い……。羨ましいねえ。だがまあ、悪くない……」
ロハネスは嫌味を吐きつつも、納得したのか目を細める。表情は重傷にも関わらず穏やかな相好だった。
「合格だ……。俺じゃ力不足も甚だしくてね、団長なんて恥ずかしくて言えやしねえ……。だが、お前ならありかもな……」
そう言って、ロハネスは瞼を下ろした。満足そうな笑みを浮かべて、最後に言った。
「魔卿騎士団に、栄光、を……」
上体が傾き、地面へ倒れる。ロハネスは笑って逝った。魂は魔来名に回収されて。
魔来名はすることを終え、依然立ち尽くす。ここにいのは自分一人きり。初めの頃に戻ったわけだが、心境はまるで違った。
もともと何も持っていなかった彼の心が、虚ろに靡く。失ったものがあるように心は元の位置に戻ったにも関わらず落ち着かない。
この喪失感に似た感情を時間の経過で風化するのを待ってはいたが、その気配はない。代わりに、消えるどころか浮かぶものすらあった。
『あの子を、守ってあげて……』
「…………」
魔来名は依然立ち尽くす。ここにいるのは自分一人きり。心は虚ろに靡き落ち着かない。
だが、彼は歩き出した。考えはまとまってはいない。ただ、己の心に導かれるようにして。
『大丈夫』
魔来名は治神・織姫の治癒能力で傷を完治し、今までの裂傷を帳消しにする。
『あなたは、私が守ってみせるから』
そこに、少女の幻聴を聞きながら。
これでロハネスの計算を狂わしたと同時に、準備が整う。簡易的な儀式とも表現出来る、魔力充填の先行動作。
魔来名は天黒魔へ魔力を注ぐ。己の本領であり必殺の攻撃を放つため。居合いの構えを取り殺害の理が無限の刺突を食い潰さんと胎動し始める。
目前には視界を覆うほどの槍の軍勢。猶予は僅か。
「絶技絶閃――」
その間、刹那でも届かない。
しかし、ここで発動する術は天黒魔による超加速と半蔵から得た加速魔術の重ね掛け。それは魔来名を成長させ、新たな段階へと導いた。
刹那よりもさらに速く。六徳を飛ばし、さらにその先へ――
「――虚空斬り!」
瞬間、槍の森は動きを止め、空間は停止する。そして世界に一つだけ、赤い鮮血が花咲いた。
「ガハッ! ……やるじゃねえか。スパーダ二本とは思えねえ……」
ロハネスは両膝を付き、今しがた斬られた傷口を見下ろしていた。
屍を贄とし天に掲げよの刺突は終わっている。そんな彼を魔来名は見下ろし、無言で見つめていた。
「ハッ、なるほど。強い強い……。羨ましいねえ。だがまあ、悪くない……」
ロハネスは嫌味を吐きつつも、納得したのか目を細める。表情は重傷にも関わらず穏やかな相好だった。
「合格だ……。俺じゃ力不足も甚だしくてね、団長なんて恥ずかしくて言えやしねえ……。だが、お前ならありかもな……」
そう言って、ロハネスは瞼を下ろした。満足そうな笑みを浮かべて、最後に言った。
「魔卿騎士団に、栄光、を……」
上体が傾き、地面へ倒れる。ロハネスは笑って逝った。魂は魔来名に回収されて。
魔来名はすることを終え、依然立ち尽くす。ここにいのは自分一人きり。初めの頃に戻ったわけだが、心境はまるで違った。
もともと何も持っていなかった彼の心が、虚ろに靡く。失ったものがあるように心は元の位置に戻ったにも関わらず落ち着かない。
この喪失感に似た感情を時間の経過で風化するのを待ってはいたが、その気配はない。代わりに、消えるどころか浮かぶものすらあった。
『あの子を、守ってあげて……』
「…………」
魔来名は依然立ち尽くす。ここにいるのは自分一人きり。心は虚ろに靡き落ち着かない。
だが、彼は歩き出した。考えはまとまってはいない。ただ、己の心に導かれるようにして。
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