錬成七剣神(セブンスソード)
安神此方4
ベッドで休んでいる日向には出かけてくると伝え二人はホテルを出て行った。まだお昼前のこの時間、都市はなにも変わらず人通りが多い。
「それでどこに行くんだ?」
多くのビルや店が並ぶ水門駅の大通りを二人は歩いていた。こうして並んで歩いていると恋人のようだが気のせいだ。昨日もそんなことがあったかもしれないが気のせいだ。
「適当に探してこれと思ったのを買ってみる。私ここよく知らないし」
「俺もよく知らないな。越してきたばかりなんだ」
「こういう時って、男がリードするものじゃないの、聖治さん?」
「無理言わないでくれ。それと聖治でいい」
悪戯っぽく見上げてくる目から逃げるように聖治は目を瞑った。さきほどに比べて上機嫌なようで聖治は内心嬉しく思っていた。二人の距離が縮んだ気がして自然な彼女を感じる。
そして二人は町を歩いて回ることにした。平日でも多い人通りの中ウィンドウショッピングで華やかなお店や服を覗いていく。
その時の此方は珍しいものを見る度声を漏らしていた。
そんな此方を聖治は見ているだけだったが、いろんなお店を回って楽しんでいる様子の此方を見れただけで聖治はよかった。
それに、時折聞こえる「日向なら……」という呟きを聞くだけで、なんだか嬉しい気持ちになれたのだ。
そんな風に回っていると二人はビルの中にあるお店の前で立ち止まった。
「あ」
此方が声を出す。見てみればお店の前にくまのぬいぐるみのキーホルダーが飾ってあった。此方は膝を折りキーホルダーを見つめている。
「此方も女の子だな。こういうのが好きなのか?」
「え!?」
此方の背後から声をかけてみると驚いたように背をビクっと動かし振り返ってきた。なんだか焦っているようだ。
「ち、違うわよ。日向が好きなの」
「ああ、なるほどな」
可愛らしいぬいぐるみは日向が好きそうだ。容易に想像できる。だが此方本人もまんざらではないのか好きそうに見える。
此方はキーホルダーに向き直るとくまの頭を優しく撫でた。
「孤児院にね、寄付されたくまのぬいぐるみがあったの。使い古されたものだったけど大切にされたぬいぐるみだった。破れたところは縫い目があったり。それが日向のお気に入りだったの。孤児院のだから持ってきてはいないんだけど。これはなんだか……」
言っていて日向は優しい顔つきになっていた。きっと孤児院で暮らしていた時のことを思い出しているのだろう。
聖治もキーホルダーを見つめてみる。お気に入りだったというくまのぬいぐるみ。それによく似たキーホルダー。聖治は近づき一つを手に取った。
「なら俺が買おう」
「え?」
此方が振り向く。
「ちょっと! どうしてあんたが日向にプレゼントするのよ!?」
「なんだ、問題でもあったか?」
「べつに、問題ってわけじゃないけど……」
此方はなんだか恥ずかしそうに視線を泳がせている。どういうことか分からず聖治は小首を傾げた。
「なら持っていくぞ」
「待って」
だが、此方に呼び止められてしまった。
「なら、私にも買ってよ」
振り向けば此方がもじもじしている。両手は後ろに回し目は斜め下を向いている。
「なんだ、此方も欲しかったのか?」
「い、いいじゃない! 日向だけもらうのなんだか、その、卑怯な気がするし……」
なんだかとても恥ずかしそうだ。表情なんて少しだけ赤味を帯びている。
「分かったよ。お前にも買ってやるさ」
「ほんと?」
「嘘だと思うか?」
そう言って聖治はもう一つキーホルダーを取った。
「な?」
「うん……」
聖治は二つのキーホルダーを持ってレジで会計した。その一つを此方へと渡してあげる。
「わぁ……」
それを受け取った此方から声が零れた。
「ありがとう、聖治」
「いいさ」
此方は笑っていた。そんな笑顔に、聖治も小さく笑うのだった。
「それでどこに行くんだ?」
多くのビルや店が並ぶ水門駅の大通りを二人は歩いていた。こうして並んで歩いていると恋人のようだが気のせいだ。昨日もそんなことがあったかもしれないが気のせいだ。
「適当に探してこれと思ったのを買ってみる。私ここよく知らないし」
「俺もよく知らないな。越してきたばかりなんだ」
「こういう時って、男がリードするものじゃないの、聖治さん?」
「無理言わないでくれ。それと聖治でいい」
悪戯っぽく見上げてくる目から逃げるように聖治は目を瞑った。さきほどに比べて上機嫌なようで聖治は内心嬉しく思っていた。二人の距離が縮んだ気がして自然な彼女を感じる。
そして二人は町を歩いて回ることにした。平日でも多い人通りの中ウィンドウショッピングで華やかなお店や服を覗いていく。
その時の此方は珍しいものを見る度声を漏らしていた。
そんな此方を聖治は見ているだけだったが、いろんなお店を回って楽しんでいる様子の此方を見れただけで聖治はよかった。
それに、時折聞こえる「日向なら……」という呟きを聞くだけで、なんだか嬉しい気持ちになれたのだ。
そんな風に回っていると二人はビルの中にあるお店の前で立ち止まった。
「あ」
此方が声を出す。見てみればお店の前にくまのぬいぐるみのキーホルダーが飾ってあった。此方は膝を折りキーホルダーを見つめている。
「此方も女の子だな。こういうのが好きなのか?」
「え!?」
此方の背後から声をかけてみると驚いたように背をビクっと動かし振り返ってきた。なんだか焦っているようだ。
「ち、違うわよ。日向が好きなの」
「ああ、なるほどな」
可愛らしいぬいぐるみは日向が好きそうだ。容易に想像できる。だが此方本人もまんざらではないのか好きそうに見える。
此方はキーホルダーに向き直るとくまの頭を優しく撫でた。
「孤児院にね、寄付されたくまのぬいぐるみがあったの。使い古されたものだったけど大切にされたぬいぐるみだった。破れたところは縫い目があったり。それが日向のお気に入りだったの。孤児院のだから持ってきてはいないんだけど。これはなんだか……」
言っていて日向は優しい顔つきになっていた。きっと孤児院で暮らしていた時のことを思い出しているのだろう。
聖治もキーホルダーを見つめてみる。お気に入りだったというくまのぬいぐるみ。それによく似たキーホルダー。聖治は近づき一つを手に取った。
「なら俺が買おう」
「え?」
此方が振り向く。
「ちょっと! どうしてあんたが日向にプレゼントするのよ!?」
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「べつに、問題ってわけじゃないけど……」
此方はなんだか恥ずかしそうに視線を泳がせている。どういうことか分からず聖治は小首を傾げた。
「なら持っていくぞ」
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