錬成七剣神(セブンスソード)

奏せいや

第四章 そんなあなたに、思い出して欲しい

「あの、どうしますか?」

 日向ひなたが向ける心配そうな目が聖治を見つめていた。聖治は手渡された手紙を両手で握り締め難しい顔になる。

 だが、こうなっては仕方がない。

香織かおりさんを探しにいく。そして魔来名まきなから救うんだ」

 もし香織かおりさんが魔来名まきなと再会してしまえば今度こそ殺されてしまうかもしれない。すぐに助けなければ香織かおりさんが危ない。

 聖治は険しい表情で今にもホテルを出ようと考える。だが、日向ひなたはその場を動かず見れば顔色が悪かった。

日向ひなた? どうした?」

 日向ひなたは俯いている。なにかを考え込んでいるようで表情は暗かった。

「本当に、行くんですか?」

 日向ひなたは聖治を見上げてきた。その表情は心配そうで、目は今にも泣きそうだ。

「聖治さんの気持ちは分かります。私だって香織かおりさんが心配です。でも、皆森みなもりさんや織田おださんはその人に殺されたのに」

「それは……」

 昨夜のことが思い出される。魔来名まきなの力の前に星都せいと力也りきやも死んでしまった。そんな相手に聖治が助けに行ったところで結果は目に見えている。

「聖治さんも、死んじゃうんですか?」

「俺は……」

 日向ひなたからの言葉に答えられない。死なないなど言えない。むしろ殺される可能性の方が高いくらいだ。

「そんなの……もうッ」

 日向ひなたは再び俯き胸に手を当てた。そしてその場にしゃがみ込んでしまったのだ。

日向ひなた? どうしたんだ日向ひなた?」

「ごめんなさい、私」

 日向ひなたは苦しそうだった。息苦しそうに呼吸を行なっている。

「すぐ部屋に戻ろう。立てるか?」

 聖治は聞くが日向ひなたは無言で首を横に振る。

 聖治はどうするか考えるがすぐに決めた。

「少し待ってろ」

「え?」

 聖治は日向ひなたを抱き起すと、右手を彼女の足の下、左手を背中の後ろに回し持ち上げたのだ。いわゆるお姫様だっこだ。

「聖治さ――」

「静かにしていろ、走るぞ」

 そのまま聖治は走り出した。日向ひなたから部屋の番号を聞き出し廊下を進んで行く。そして日向ひなたの部屋にたどり着いた。

此方こなた! いるか、扉を開けてくれ。日向ひなたの体調が悪化したんだ!」

 聖治は扉越しに伝えるとすぐに扉は開いてくれた。此方こなたは出るなり抱きかかえられた日向ひなたを見て驚いた。

日向ひなた!? どうしたの? あんた日向ひなたになにしたのよ!?」

「まだなにもしていない!」

「まだってなに!?」

 とりあえず部屋に入れてもらい日向ひなたをベッドに寝かせた。息は落ち着き始めているものの表情は辛そうだ。今は目を瞑って休んでいる。

 そんな姿を聖治は心配そうに見つめ気を落とした。

「ねえ」

 此方こなたから声を掛けられた。

「なにがあったの?」

 真剣な声に聖治も応えた。香織かおりさんを助けるために魔来名まきなを探そうとしたこと。しかし返り討ちに遭うかもしれない可能性と、その後日向ひなたがしゃがみ込んでしまったことを話した。

「そう……」

 聖治の話を聞いて納得したのか、此方こなたも聖治と同じように表情を暗くした。

「外で話さない?」

 此方こなたからの提案に聖治は小さく頷いた。

 二人で部屋の外に出る。扉がバタンと小さく閉じた。

「ごめん」

「どうして謝る?」

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