錬成七剣神(セブンスソード)
幹部戦半蔵1
「そうか。エルターを食ったか」
「不服か?」
「……いや、団長創造の礎になれたなら、無駄ではなかった。咎める気はない」
「フン」
仲間が殺されたにも関わらず半蔵の顔色はまったく変わらない。平常心を保ち続けている。その不動の精神、戦士として立派なものであり、魔来名は好感を覚えていた。
「おい、お前は退いていろ。邪魔になる」
「で、でも!」
魔来名は佐城を見遣ることなく半蔵の前へと立った。佐城からの制止の言葉も魔来名の決意の前には意味を成さない。
両者の対峙。一髪触発の危険な空気が張り詰める。今にも二人の中央で爆発が起きそうな、息をするのも躊躇われる緊張感。沈黙が、針のように突き刺さる。
「フン!」
無音の戦場、それを先に裂いたのは半蔵だった。両手に握られた暗器を魔来名に向かい投げつける。そのどちらもが人間の急所を正確に捉えており、直撃は許されない。
だが、常人では視認不可能の速度で放たれた投擲だろうが魔来名は見切る。迫り来る暗器を、弾き返さんと天黒魔が空を切り裂く。
瞬間、半蔵の目つきが僅かに細められた。
――武と魔、ここに交わる。数多に広がる無限の宇宙よ、我に集え。平行の隔たりを超越し、一つの事象に結集せよ。次元の多重にて敵を暗殺せん。
「ぬっ!?」
魔来名は飛来する二つの暗器を打ち落とす。だが、表情は苦痛に歪み奥歯を噛み締めた。
「正一さん!」
佐城も悲痛な声で呼びかけ、魔来名の身を案じる。
「これは……」
魔来名は前屈みになっていた体勢を直し、半蔵を睨む。目の前に立つ男は一度も視界から切れてはいない。見失ってなどいない。
しかし、魔来名の背中には二本のナイフが刺さっていた。魔来名も痛覚で自身の背中がどうなっているか把握している。
エルターの時のように必中の類かと脳裏を過ったが、すぐに別種だと分かる。
魔来名が弾き返した暗器は地面に落ちているのだ。にも関わらず、魔来名は背後からの攻撃を受けた。
どうやって攻撃したのかは分からない。だが、この手の魔術戦で重要なことを魔来名は知っている。先手必勝。如何に不明の術でも発動される前に討てばいい。
魔来名は抜き身の天黒魔を片手に疾走した。半蔵へと瞬時に間合いを詰め刀を振り下ろす。
まさに一瞬のことであり、これに反応出来るスパーダは光帝剣くらいのものだろう。
だが、半蔵は受け止める。両手に持った刃物を交え天黒魔の一撃を防いだ。刃を押し付け合う両者が近距離で互いを睨み合う。
鍔迫り合いは拮抗していたが半蔵が押し退け間合いを広げた。後退すると共に暗器を投擲し、魔来名もすかさず迫る刃を打ち落とす。
「ぐっ!」
だが再び痛みが走る。見れば右足のふくらはぎと腰に新たな刃が刺さっていた。
(どういうことだ)
魔来名は半蔵を注視する。動きに特別なものはなかった。にも関わらず別の場所から敵の攻撃が放たれる。
魔来名は即座に周囲へ気配がないかを探るが、佐城を除いて感じる気配はなくここには半蔵しか敵はいない。
敵は一人。しかし攻撃は複数。この矛盾を正す理はなんだと魔来名は思考する。いつ放たれた、どこから放たれた。
そこで、答えにたどり着く。
「フッ、やってくれる……」
魔来名は苦しみに苛まれながらも小さく笑った。先の一戦では一蹴した魔来名ではあるが、魔卿騎士団幹部クラスが扱う魔術の高等さには感心している。
魔術界でも群を抜いて秀でている兵ばかりだ。
「不服か?」
「……いや、団長創造の礎になれたなら、無駄ではなかった。咎める気はない」
「フン」
仲間が殺されたにも関わらず半蔵の顔色はまったく変わらない。平常心を保ち続けている。その不動の精神、戦士として立派なものであり、魔来名は好感を覚えていた。
「おい、お前は退いていろ。邪魔になる」
「で、でも!」
魔来名は佐城を見遣ることなく半蔵の前へと立った。佐城からの制止の言葉も魔来名の決意の前には意味を成さない。
両者の対峙。一髪触発の危険な空気が張り詰める。今にも二人の中央で爆発が起きそうな、息をするのも躊躇われる緊張感。沈黙が、針のように突き刺さる。
「フン!」
無音の戦場、それを先に裂いたのは半蔵だった。両手に握られた暗器を魔来名に向かい投げつける。そのどちらもが人間の急所を正確に捉えており、直撃は許されない。
だが、常人では視認不可能の速度で放たれた投擲だろうが魔来名は見切る。迫り来る暗器を、弾き返さんと天黒魔が空を切り裂く。
瞬間、半蔵の目つきが僅かに細められた。
――武と魔、ここに交わる。数多に広がる無限の宇宙よ、我に集え。平行の隔たりを超越し、一つの事象に結集せよ。次元の多重にて敵を暗殺せん。
「ぬっ!?」
魔来名は飛来する二つの暗器を打ち落とす。だが、表情は苦痛に歪み奥歯を噛み締めた。
「正一さん!」
佐城も悲痛な声で呼びかけ、魔来名の身を案じる。
「これは……」
魔来名は前屈みになっていた体勢を直し、半蔵を睨む。目の前に立つ男は一度も視界から切れてはいない。見失ってなどいない。
しかし、魔来名の背中には二本のナイフが刺さっていた。魔来名も痛覚で自身の背中がどうなっているか把握している。
エルターの時のように必中の類かと脳裏を過ったが、すぐに別種だと分かる。
魔来名が弾き返した暗器は地面に落ちているのだ。にも関わらず、魔来名は背後からの攻撃を受けた。
どうやって攻撃したのかは分からない。だが、この手の魔術戦で重要なことを魔来名は知っている。先手必勝。如何に不明の術でも発動される前に討てばいい。
魔来名は抜き身の天黒魔を片手に疾走した。半蔵へと瞬時に間合いを詰め刀を振り下ろす。
まさに一瞬のことであり、これに反応出来るスパーダは光帝剣くらいのものだろう。
だが、半蔵は受け止める。両手に持った刃物を交え天黒魔の一撃を防いだ。刃を押し付け合う両者が近距離で互いを睨み合う。
鍔迫り合いは拮抗していたが半蔵が押し退け間合いを広げた。後退すると共に暗器を投擲し、魔来名もすかさず迫る刃を打ち落とす。
「ぐっ!」
だが再び痛みが走る。見れば右足のふくらはぎと腰に新たな刃が刺さっていた。
(どういうことだ)
魔来名は半蔵を注視する。動きに特別なものはなかった。にも関わらず別の場所から敵の攻撃が放たれる。
魔来名は即座に周囲へ気配がないかを探るが、佐城を除いて感じる気配はなくここには半蔵しか敵はいない。
敵は一人。しかし攻撃は複数。この矛盾を正す理はなんだと魔来名は思考する。いつ放たれた、どこから放たれた。
そこで、答えにたどり着く。
「フッ、やってくれる……」
魔来名は苦しみに苛まれながらも小さく笑った。先の一戦では一蹴した魔来名ではあるが、魔卿騎士団幹部クラスが扱う魔術の高等さには感心している。
魔術界でも群を抜いて秀でている兵ばかりだ。
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