錬成七剣神(セブンスソード)
犠牲5
今の戦いだけで分かる、実力が段違いだ。聖治は全力で戦ったが魔来名はまだ本気を出していない。圧倒的なまでに実力に差があるのだ。
戦いにもならない。聖治は遊ばれていただけだった。
「くっそぉ!」
聖治は起き上がった。
悔しかった。気づけば涙が落ちてくる。あれだけ大事だった友人を守れず、勝つこともできない。
悔しくて、悔しくて仕方がなかった。
「止めてぇえええええ!」
その時甲高い声が響いた。その声は香織さんのものだった。ようやく喋れるようになったのか、悲痛な声が魔来名に向けられる。
しかしそれで止まる魔来名でもなく、刀を持つ手が動く。
だが、先に次の一言が叫ばれた。
「正一さぁあああん!」
香織さんが続けて叫んだ言葉に、魔来名の刃は聖治の首筋で止まった。
「止めて正一さん! あなたはそんな人じゃない! 今、あなたが誰を斬ろうとしているのか分からないの!?」
続けて香織さんが叫ぶ。見れば地面に座り込み、胸を押さえながら、涙を瞳に浮かべてあらん限りの思いを口にしていた。
ただ、魔来名が香織さんを見つめる視線は冷たかった。それこそ怪訝な表情すら浮かべ、香織さんを刺すように見る。
きっと、自分を別の名前で呼ぶ香織さんを錯乱した女性だと思っているのだろう。
「……興が冷めた」
首筋に当てられていた刃先が引いていく。魔来名は納刀し、聖治へと背中を向けたのだ。そのまま本当に関心を失ったように歩き出す。
「待て!」
その背中に向け聖治は叫ぶ。
「どこに行く? 勝負はまだ終わっていない!」
まだ戦える。戦意は尽きていないし体は動く。戦う準備は出来ている。
しかし魔来名は本当にやる気を失ったようで聖治の闘志を冷ややかに受け止めていた。
「命拾いしたな。俺が貰い受けるまでのわずかな余命、せいぜい生き長らえることだな」
振り返ることなく魔来名は純白のコートの背中越しに言う。
「待て――」
それでも叫ぶ聖治に初めて魔来名は振り向き、聖治の言葉を遮った。
「知れ。力のない者では、敗北すら許されない」
その目は常人を超えた凄みを湛えていた。まるで空腹の獣のような、殺すと言外に伝える眼光。
そして魔来名は歩き出し夜の街へと消えていく。
「待て! 待つんだ魔来名! 俺と、俺と勝負しろぉおおおおおお!」
その背中に向かって叫ぶ、けれどその姿はすでに虚空へと消えていた。
聖治は叫び終わると俯いた。
「あ……あぁ……」
しかし、そこで聞こえてきた声があった。
「まさか!?」
聖治は顔を動かした。掠れた息遣い、それは力也だった。
「力也ぁあああ!」
まだ生きている! 聖治は急いで駆け付け膝を付いた。力也の顔を覗き込んでみると、焦点の合わない視線で夜空を見つめていた。
「力也! 大丈夫か、力也!?」
「聖治、くぅん……?」
ガチガチに緊張した力也(りきや)が夜空を見上げたまま声を上げる。その様子から必死に恐怖と戦っているのが分かった。
「ああ、俺だ! 聖治だ! 力也、俺はッ……」
力也が生きていたことが嬉しくて、同時に申し訳なくて、聖治は力也になんと言えばいいのか分からなかった。それでも言った。
「ごめん! ごめん力也! 俺は!」
せっかく守ってくれたのに。戦ってくれたのに、聖治は何も出来なかった。約束を守ることも、仇を討つことも。
「よかっ、た……」
「え?」
戦いにもならない。聖治は遊ばれていただけだった。
「くっそぉ!」
聖治は起き上がった。
悔しかった。気づけば涙が落ちてくる。あれだけ大事だった友人を守れず、勝つこともできない。
悔しくて、悔しくて仕方がなかった。
「止めてぇえええええ!」
その時甲高い声が響いた。その声は香織さんのものだった。ようやく喋れるようになったのか、悲痛な声が魔来名に向けられる。
しかしそれで止まる魔来名でもなく、刀を持つ手が動く。
だが、先に次の一言が叫ばれた。
「正一さぁあああん!」
香織さんが続けて叫んだ言葉に、魔来名の刃は聖治の首筋で止まった。
「止めて正一さん! あなたはそんな人じゃない! 今、あなたが誰を斬ろうとしているのか分からないの!?」
続けて香織さんが叫ぶ。見れば地面に座り込み、胸を押さえながら、涙を瞳に浮かべてあらん限りの思いを口にしていた。
ただ、魔来名が香織さんを見つめる視線は冷たかった。それこそ怪訝な表情すら浮かべ、香織さんを刺すように見る。
きっと、自分を別の名前で呼ぶ香織さんを錯乱した女性だと思っているのだろう。
「……興が冷めた」
首筋に当てられていた刃先が引いていく。魔来名は納刀し、聖治へと背中を向けたのだ。そのまま本当に関心を失ったように歩き出す。
「待て!」
その背中に向け聖治は叫ぶ。
「どこに行く? 勝負はまだ終わっていない!」
まだ戦える。戦意は尽きていないし体は動く。戦う準備は出来ている。
しかし魔来名は本当にやる気を失ったようで聖治の闘志を冷ややかに受け止めていた。
「命拾いしたな。俺が貰い受けるまでのわずかな余命、せいぜい生き長らえることだな」
振り返ることなく魔来名は純白のコートの背中越しに言う。
「待て――」
それでも叫ぶ聖治に初めて魔来名は振り向き、聖治の言葉を遮った。
「知れ。力のない者では、敗北すら許されない」
その目は常人を超えた凄みを湛えていた。まるで空腹の獣のような、殺すと言外に伝える眼光。
そして魔来名は歩き出し夜の街へと消えていく。
「待て! 待つんだ魔来名! 俺と、俺と勝負しろぉおおおおおお!」
その背中に向かって叫ぶ、けれどその姿はすでに虚空へと消えていた。
聖治は叫び終わると俯いた。
「あ……あぁ……」
しかし、そこで聞こえてきた声があった。
「まさか!?」
聖治は顔を動かした。掠れた息遣い、それは力也だった。
「力也ぁあああ!」
まだ生きている! 聖治は急いで駆け付け膝を付いた。力也の顔を覗き込んでみると、焦点の合わない視線で夜空を見つめていた。
「力也! 大丈夫か、力也!?」
「聖治、くぅん……?」
ガチガチに緊張した力也(りきや)が夜空を見上げたまま声を上げる。その様子から必死に恐怖と戦っているのが分かった。
「ああ、俺だ! 聖治だ! 力也、俺はッ……」
力也が生きていたことが嬉しくて、同時に申し訳なくて、聖治は力也になんと言えばいいのか分からなかった。それでも言った。
「ごめん! ごめん力也! 俺は!」
せっかく守ってくれたのに。戦ってくれたのに、聖治は何も出来なかった。約束を守ることも、仇を討つことも。
「よかっ、た……」
「え?」
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