錬成七剣神(セブンスソード)
昼休憩3
「なあ剣島。そういうやお前はどこに住んでるんだ? やっぱり中心部か?」
するとごはんをむしゃむしゃ食べている星都から質問が飛んでくる。
ここ水門市は山と海に挟まれた街で、水産や林業を主に行ってきた。しかし時代からか今では昔ほどの盛んさはなくなり、現代ではそのぶん自然の多さを観光として町興しに奮起していた。
街の中心部は発展して近代的なビルが立ち並んでいる。
元々辺鄙な田舎町だった水門市に越して来るのなら、中心部だと予想したらしい。
「いや、実はここの学生寮なんだ」
しかしその予想を裏切り、聖治は水門(みなと)市に引っ越してきたのはつい先日のことで学生寮での一人暮らしだった。
「学生寮? そうかそうか、なるほどな」
すると星都は納得して顔を何度も縦に振る。何がそれほどまでに納得させたのかはよく分からないが、星都は得心したようだ。
しかし――
その際、星都の目が悲しそうに細められた。
それは一瞬のことですぐに元の表情に戻っていた。
「そうなのか。いやな、ここにいる全員が寮暮らしなんだよ」
「そうなのか? すごい偶然だな!」
寮に暮らしている生徒の数は多くないはず。それがこうして集まった四人全員が寮暮らしというのはなかなかの確率だ。
「だろう? そうだ! せっかくなら今日は皆で剣島の部屋に遊びに行くってのはどうだ?」
「え?」
そこで星都が楽しそうに声を上げる。しかしいきなり過ぎる提案に聖治は困ってしまう。というのも部屋は引っ越しの片付けが済んでいない。
「いや、それは」
「なんだいやなのか?」
「いやではないが、まだ荷物が片付いていないんだ」
「大丈夫大丈夫、気にすんなって」
「俺が気にするんだが……」
聖治は困った表情を浮かべるのだが星都の勢いはノリノリだ。
「まあまあ、落ち着いて」
そんな二人の間に香織さんが笑顔で入ってきた。
「皆森君も、いきなりじゃ聖治君が驚くのは当たり前だよ。ただ、確かに突然で申し訳ないんだけど、出来れば受けてくれないかな、聖治君。私からもお願い」
「香織さんも?」
香織さんはうんと頷く。
「僕も、聖治君の部屋に遊びに行きたいんだなぁ」
「力也もか」
どうやら星都だけでなく二人もその気だ。それで星都が首に腕を回してくる。
「いいだろう? これが『高校生活最後の思い出』だと思ってさ、パーとやろうぜ?」
白い歯を見せつける人懐っこい笑顔が初夏の日差しに映える。
聖治は「うーん……」と考えるフリをした後頷いた。考えるフリをしたのはいわば照れ隠しで、本当は答えはすでに決まっていたのだ。
「そうだな。こうして昼食にお呼ばれしてもらって、いろいろ気を遣ってくれて。みんなは転校先でできた初めての友達だ。部屋はまだ汚いが、それでいいなら俺も大歓迎さ」
「そうこなくっちゃ!」
聖治の返事に星都が盛大に声を上げ喜んでいた。そんな星都を、聖治もまんざらでもない目で見つめる。
「しかし、香織さんはどうするんだ。当然だけど男子寮に女性は入れない」
「そこは大丈夫。こっそり入ればバレはしないって」
「お前はなぁ……」
星都は悪い顔で断言する。それでいいわけがないだろうと聖治は香織さんを見るが、彼女は彼女で無言のままニコニコしていた。
意外にも大胆というかまんざらではなさそうだ。
「それじゃあ、今日の放課後は剣島の部屋でお祝いパーティーだな。歓迎してやるから覚悟しとけよ?」
「なぜ歓迎されるのに覚悟が必要なんだ……」
「楽しみだなぁ。きっと盛り上がるんだなぁ」
「うん、私も楽しみかな。あんまり無茶は出来ないけどね」
「ははは……。そうだな。ありがとうみんな。よし、今日はそれで決まりだな」
成り行きとはいえ聖治は楽しみだった。新しい学校、新しい暮らし。
そして新しい友達。順調すぎるほど、その第一歩は明るく楽しいものだった。これからの時間に期待で心が踊り出す。
しかし、だからかもしれない。ふとさきほどの言葉を思い出し、聖治は表情が少し曇る。
『いいだろう? これが『高校生活最後の思い出』だと思ってさ、パーとやろうぜ?』
これから先も続いていくだろう楽しい高校生活を、たとえ冗談でも、『最後』なんて言って欲しくなかったから。
するとごはんをむしゃむしゃ食べている星都から質問が飛んでくる。
ここ水門市は山と海に挟まれた街で、水産や林業を主に行ってきた。しかし時代からか今では昔ほどの盛んさはなくなり、現代ではそのぶん自然の多さを観光として町興しに奮起していた。
街の中心部は発展して近代的なビルが立ち並んでいる。
元々辺鄙な田舎町だった水門市に越して来るのなら、中心部だと予想したらしい。
「いや、実はここの学生寮なんだ」
しかしその予想を裏切り、聖治は水門(みなと)市に引っ越してきたのはつい先日のことで学生寮での一人暮らしだった。
「学生寮? そうかそうか、なるほどな」
すると星都は納得して顔を何度も縦に振る。何がそれほどまでに納得させたのかはよく分からないが、星都は得心したようだ。
しかし――
その際、星都の目が悲しそうに細められた。
それは一瞬のことですぐに元の表情に戻っていた。
「そうなのか。いやな、ここにいる全員が寮暮らしなんだよ」
「そうなのか? すごい偶然だな!」
寮に暮らしている生徒の数は多くないはず。それがこうして集まった四人全員が寮暮らしというのはなかなかの確率だ。
「だろう? そうだ! せっかくなら今日は皆で剣島の部屋に遊びに行くってのはどうだ?」
「え?」
そこで星都が楽しそうに声を上げる。しかしいきなり過ぎる提案に聖治は困ってしまう。というのも部屋は引っ越しの片付けが済んでいない。
「いや、それは」
「なんだいやなのか?」
「いやではないが、まだ荷物が片付いていないんだ」
「大丈夫大丈夫、気にすんなって」
「俺が気にするんだが……」
聖治は困った表情を浮かべるのだが星都の勢いはノリノリだ。
「まあまあ、落ち着いて」
そんな二人の間に香織さんが笑顔で入ってきた。
「皆森君も、いきなりじゃ聖治君が驚くのは当たり前だよ。ただ、確かに突然で申し訳ないんだけど、出来れば受けてくれないかな、聖治君。私からもお願い」
「香織さんも?」
香織さんはうんと頷く。
「僕も、聖治君の部屋に遊びに行きたいんだなぁ」
「力也もか」
どうやら星都だけでなく二人もその気だ。それで星都が首に腕を回してくる。
「いいだろう? これが『高校生活最後の思い出』だと思ってさ、パーとやろうぜ?」
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聖治は「うーん……」と考えるフリをした後頷いた。考えるフリをしたのはいわば照れ隠しで、本当は答えはすでに決まっていたのだ。
「そうだな。こうして昼食にお呼ばれしてもらって、いろいろ気を遣ってくれて。みんなは転校先でできた初めての友達だ。部屋はまだ汚いが、それでいいなら俺も大歓迎さ」
「そうこなくっちゃ!」
聖治の返事に星都が盛大に声を上げ喜んでいた。そんな星都を、聖治もまんざらでもない目で見つめる。
「しかし、香織さんはどうするんだ。当然だけど男子寮に女性は入れない」
「そこは大丈夫。こっそり入ればバレはしないって」
「お前はなぁ……」
星都は悪い顔で断言する。それでいいわけがないだろうと聖治は香織さんを見るが、彼女は彼女で無言のままニコニコしていた。
意外にも大胆というかまんざらではなさそうだ。
「それじゃあ、今日の放課後は剣島の部屋でお祝いパーティーだな。歓迎してやるから覚悟しとけよ?」
「なぜ歓迎されるのに覚悟が必要なんだ……」
「楽しみだなぁ。きっと盛り上がるんだなぁ」
「うん、私も楽しみかな。あんまり無茶は出来ないけどね」
「ははは……。そうだな。ありがとうみんな。よし、今日はそれで決まりだな」
成り行きとはいえ聖治は楽しみだった。新しい学校、新しい暮らし。
そして新しい友達。順調すぎるほど、その第一歩は明るく楽しいものだった。これからの時間に期待で心が踊り出す。
しかし、だからかもしれない。ふとさきほどの言葉を思い出し、聖治は表情が少し曇る。
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