話花【咲く花舞う花巡る季節】-桜の咲く頃舞う頃に-

葵冬弥

桜のまた咲く頃

また、春が来る。

新しい制服に袖を通して、鏡でチェックする。

おかしいところ、ないよね。

「どう、似合う?」

両親と姉の写真前でクルッとターンする。

「ちょ、ちょっと女の子らしすぎて恥ずかしいんだけど」

少しだけ髪を伸ばしてみたけど、それくらいで似合うようにはならなかった。

でも、これでやっとマイと同じ学校に通える。

マイに会える。

あの日からマイとは会えていない。

お互いに連絡を取り合うこともなかった。

どうしてるかな、大丈夫かな。

不安や心配は尽きなかった。

事故の怪我で部活は棒に振ることになったので勉強に集中して何とかマイのいる学校に合格した。

もちろん、マイは受けてるだなんて思わないだろう。

ふふ、どんな顔するかな。

「さて、そろそろ行かないと」

持っていく荷物の最終確認をして、靴を履く。

「今日から寮だったわよね。休みの日は帰ってきていいんだからね」

「あ、う、うん」

ぎこちないけど会話できるようになった私を引き取ってくれた遠縁のおばさんは優しくそう言ってくれる。

退院してこの家にきて直ぐは全然喋らないような愛想が悪い子だったのに。

「いってらっしゃい」

「い、いってきます」

まだこんなやりとりが慣れないけど、嬉しかった。

あの病院での時間があったからきっとここまでこれたんだと思う。


シンと静まった空気の中、粛々と入学式は進む。

マイはどこかにいるかな。

少しだけあたりを見回してみても見つけられなかった。

いないのかな。

「――在校生代表、祝辞。生徒会会長、桜木さんお願いします」

「はい」

生徒会長の挨拶か、どんな人が会長なのかな。

「って、あれは……」

「春のうららかな陽気が――」


静かにゆったりと読み聞かせるように言葉を連ねていく。

その前よりは短いけど金色に輝く髪と十字型の髪飾りは春の日差しに照らされて輝き、あの日と重なる。

あの髪飾りはボクが切れたロザリオをアレンジしてあげたものだ。

じっと、見ていると、たまたま原稿から目線をあげた生徒会長と目があった。

すると、向こうはニコッと微笑んだ。

どう?凄いでしょ?と言われた気がする。


「――ご入学、誠におめでとうございます。生徒会会長、桜木マイ」

やっぱり、マイだ。

あのマイだ。

そこには、前からは想像できない、生徒会長なんてやっているマイがいた。

桜の季節に私達はまた無事に再会を果たした。

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