リーンカーネーション 小学生に戻ったおれ

seabolt

対決

1月も終り頃の学級会

議題が二つあった。一つは、球技大会、種目は、男子はサッカーと女子はポートボールとなっている。ポートボールはいいんだけど、サッカーは守備位置で揉めた。理由は、やはり四谷君だ。彼がセンターフォワードをすると言って言うことを聞かない。しかも、前後半ともにやると言っているのだ。しかし、先生は、あるメモを読み上げた。それは、体育の授業での成績だった。

 「中田は6得点、佐藤が3得点、四谷は2得点、これが現実だ。しかし、俺は、こうした方がいいと思う。前半は中田と佐藤、後半を四谷と佐藤にする。これでいいな!!」

先生はよく知っていた。俺たちのことをしかも前半には中村もミッドフィルダーで入っていた。つまり、俺達3人の攻撃をよく見ていたといえる。しかし、俺が一番の驚いた

「俺がなぜ前後半に?」

すると先生が

「お前が四谷をアシストしろ」

「へ?俺が?アシスト?」

「そうだ、文句でもあるんか?」

すると四谷が文句を言ってきた。

「俺にはアシストは不要です」

「そうです。俺も彼をアシストできる自信はありません」

すると先生が怒った。

「俺の命令が聞けないのか!!佐藤、兎に角、お前は四谷をアシストすること!!四谷!!お前は仲間意識ななさすぎる!!だから、佐藤を信頼して、アシストしてもらえ。わかったな」

「はい」

そう四谷は返事したけど納得がいってない様子だ。俺自身も納得しているわけではないのだが、先生の指示に逆らえるはずもない。こうして、次の体育の時間に実践しろと言われ、得点できなければ、二人ともケツバットの刑だというのだ。困った先生だ。俺はいいとして、問題は四谷だ。どうしたものか、しかも、俺に向かって

「足手まといになるなよ」

などとよく言ってくれるわ。本当に・・・ま・・・この後の授業でわかるだろう・・・

もう一つの議題は、思いで作りということで、何か製作したいという気持ちもあったんだけど、今、問題はクラス全体が一つになっていないことだった。それは、四谷君に大きな原因があるんだけど、どうしたらいいものか、四谷君も交えて何とかみんなでできることはないのだろうかと思案をしていた。すると球技大会までにクラス旗を作るのはどうかというのが出た。球技大会は2月中旬、作ろうと思えば作れる。それと球技大会で殊勲のリストバンドを作ろうという声が上がった。すると先生は、クラス旗の下地の色の布を腕に巻いたらどうかと提案してきた。こうして、一人一人が努力した時にリストバンドをつけるということになったのだった。


学級会も終り、俺と天野さんの役目も一段落した放課後、天野さんと太田さんの女の戦いが始まったのだった。

「太田さん。話があるんだけど、ちょっといい?」

「いいわよ」

天野さんの言葉に戸惑いながらも太田さんは彼女について、例の場所へ行ったのだった。そんな彼女たちを見た山田さん、小宮山さん、佐野さんはなにかピンと来たらしく、俺の所へ来た。

「天野さん本気なのよ?佐藤君どうにかして」

「二人は喧嘩するわ」

「そうよ。原因はあなたよ」

三人が俺に向かって話しかけている。けど、この話は太田さんと天野さんの間の問題であって、俺がとやかくいうことも出来ないのが本音だ。

「俺が?原因って?」

「何言っているのよ。天野さん本気であなたのこと好きだから、太田さんの所へ行ったんでしょ」

「でも、俺に何ができるんだ?」

「だから・・・天野さんと太田さんのどちらかを選んであげなさいよ」

3人の言うことはある意味で筋が通っている。俺が、どちらかを選ぶことでこの争いはなくなるに決まっている。けど、俺自身は、それを良しとできない。いい言い方をすれば、彼女たちを傷付けたくない。悪い意味では、優柔不断ということになる。けど、俺としては、どちらか一人を選ぶことはできない。

「けど・・・どちらかを選ぶとどちらかが傷つくことになるよね」

「確かにそうだけど・・・」

「だったら、二人のこと俺は大好きだし、今まで通りにしていたいんだけど」

「そんなのずるいよ」

「ずるいって何が?」

「だって、天野さんも太田さんもあなたのことが好きなんだよ。その好きな人が他の人も好きだって・・・言われたら、悲しいでしょ。だから、佐藤君の言っていることはずるいわよ」

「でも、そうしないと天野さんと太田さんのどちらかが傷ついてしまう。そんな残酷なことは俺はできないよ。二人とも大事な人なんだから」

「確かに・・・」

「それに、俺が太田さんか天野さんどちらかを選んでしまってももいいの?」

「え?」

しばらく言葉に詰まる三人だった。そう三人ともどこかで俺のことに少なからず好意を持っているはずだ。ということは、俺に彼女が出来たら今まで通りには行かないのはわかっている。だから、敢えて彼女たちに質問をしてみた。

「山田さん。例えば俺に彼女が出来たら、今まで通りに遊べるかな?」

「え?」

「確かに、今までは、女の子たちの暗黙の了解があって、ある種、そこがブレーキみたいなっていたみたいだけど、実際、俺に彼女が出来たら。今まで通りに楽しく遊べるの?」

「そ・・・それは・・」

言葉に詰まってしまった。当然だろう。今まで通りが一番いいに決まっている。だから、今度は、

「じゃあ、山田さん。山田さんが誰かから好きといわれました。山田さんもその人のことが好きです。でももう一人、好きという人がいます。その人のことも好きです。だとしたらどうする?」

「わ?わたし?わたし・・・そんなこと言われてもわからないわよ。それに、私だったら好きになるのは一人しか出来ないと思う」

「そんなことすると選ばれない人が傷ついちゃうじゃない」

すると小宮山さんが

「私も一人の人しか好きになれない」

佐野さんも続いた。

「私も・・」

そう言ってみんな黙ってしまった。

「だったら、俺は誰も選べないし、みんなと仲良くできないことになるんだよ。それでもいいの?」

困惑した表情を浮かべた山田さんが

「それは・・・困る」

「でしょ・・・俺はみんなのこと大好きだし。こんなことで悲しい思いをさせたくない。だったら、二人が好きというなら。二人のことを好きになる。そして、二人にそのことを納得してもらう。これが一番みんなが幸せになれる方法だと思うんだ」

すると3人は軽く頷いた

「確かに・・・」

すると小宮山さんが

「わたしも佐藤君のこと好きになっていいの?」

「いいよ」

その言葉を聞いた山田さんも佐野さんも

「私も」

「私も」

と言ってきたので

「みんなで今まで通りに仲良くやっていこうよ」

「そうね」

そう言ってみんなで笑っていると天野さんと太田さんが帰ってきた。そして、俺を見るなり天野さんが詰め寄ってきた。どうやら結論を俺に出してもらおうという事のようだ。

「私、佐藤君のことが好き。やっぱり、はっきりさせておきたいの。私と太田さんどっちが好きなの?」

すると俺は素直に答えた。

「二人とも大好きだよ。だから、選ぶことなんてできないよ」

まさかの言葉に天野さんが怒った。

「そんなこと言わないで、私、真剣なんだから」

「俺だって真剣だよ。二人とも大事な人だから、どちらも選べないよ」

「そんな・・・」

がっかりしている天野さんと太田さんがそこにいた。すると、山田さんが

「私も佐藤君のこと好きよ」

その言葉にぎょっと驚いた天野さんと太田さん、そこへ小宮山さんも

「実は、私も佐藤君のことすきなんだけど」

すると佐野さんも

「私も好きなんだけど・・・佐藤君のことが・・・」

その視線は、まだ何も言っていない。太田さんへ

「みんなずるいよ。わたし、ずっと好きだったんだよ」

本来ならここでみんなどうぞどうぞというところなんだけど、みんなは絶対に譲ろうとしないので、俺が最後に。

「俺はここにいるみんなが大好きなんだ。だから、選んで傷つけることはできない。だったら、みんなで仲良くしていった方がいいでしょ。今まで通りに・・・ね」

すると太田さんが

「そんなこと言って、本当は天野さんのことが好きなんでしょう」

「信じてくれないならいいんだけど、俺は君が悲しむ姿を見たくないし、みんなが悲しい思いをするのも嫌だ」

「そんな・・」

太田さんが周りを見渡すとみんな彼女を見て頷いていた。

「仲良くやっていきましょうよ」

「そうよ・・・今までは好きって言えなかったんだけど、わたしも佐藤君のことを好きっていえるようになったもの」

小宮山さんが太田さんの肩をたたいた。

「太田さんも言って見なさいよ」

「え?」

驚いている太田さんをみんなが見つめていると観念したように

「佐藤君・・好きです」

「僕も君のこと大好きだよ」

そう言って抱き寄せると、直ぐに天野さんが

「わたしも佐藤君のことが大好き」

こうして、みんな一人づつ抱きしめたのだった。ちゃっかりお尻も触らせてもらったんだけど、最後に

「やっぱ、エロエロ大魔神が出てきた」

きゃはは・・・と笑い声が俺たちに戻ってきたのだった。



そんな俺にはもう一つの対決が待っていた。それは、翌日の体育の時間にだ。先生は、俺と四谷を同じチームにしたのだ。そう、俺は、四谷をうまくアシストして、ゴールを決めさせないといけないのだ。
しかし、そのことを一番に気に食わない四谷は、試合が始まるとボールをもって、突進をしていったのだった。俺がパスと叫んでも無視して、がむしゃらに敵陣へ一人ドリブルをして切り込んでいった。
 当然、彼は囲まれてしまって、身動きが取れない。その横に俺がフリーの状態でいた。

「パス!!パス!!」

そう叫んでも無視して、突っ切ろうとした瞬間、案の定、ボールを捕られてしまった。3対1だといくら何でも、交わすことはできないに決まっている。ただ、所詮は小学生のサッカー四谷と同じくボールがまわってきた人は素早くボールを敵陣へ蹴り飛ばしていしまうか。ドリブルで敵陣へ向かおうとする。
 だから、俺は素早く味方陣地まで走っていったのだった。すると案の定、ドカーンと目標不明のまま蹴り飛ばされたボールが味方陣地へ入って来たのだった。運よく落下地点にいた俺が、これをトラップして、敵陣へ切り込んでいく、すると、四谷が俺の横を走って来て

「アシストなら、早くボールを渡せ!!」

並走するなよといいたが、俺にはそんな余裕はない。何せ、中田と中村の中々コンビが俺の目の前に立ちはだかっている。本来ならば、ボールを四谷へパスをして、俺が彼らの裏へ回り込んで再びボールを受けるという技をやりたいんだけど、四谷にはそんな頭はない。俺と並走している時点で2対2の対決、その間に相手のディフェンダーが続々と集まってきている。これはまずい。俺は、中村の前で四谷へパスするふりをして、反対側へ逃げて行った。

「しまった!!避けられた」

これを機に一気にディフェンダーは俺の方へ集まって来る。本来なら誰かがゴール前にいて・・・あのあほ・・四谷は俺と未だに並走している。どうしたらいいんだ?と思っていると、村上が反対サイドでゴール近くまで上がっていたので、パスをだした。
 すると、村上はどんくさいことにトラップをミスって、そのまま、こぼれたボールはゴールキーパーが取り押さえたのだった。すると四谷が

「なんで、俺にパスをしない?」

「じゃ・・今度は、村上と同じ位置へあがってくれ。そうしたら、パスを出してやる」

するとむきになって

「誰がお前の指示なんか聞くか!!」

こうして、今度は攻め込まれているのだがどうすることも出来ない。少し時間があったので矢部っちに相談をした

「矢部っち、俺が上がっていくとき俺より少し前でセンターよりを走ってくれないか?」

「どういう意味だ」

「上がっていくときに、いったんパスをするから、少しドリブルをしたら、今度は、俺が矢部っちの前にでるからそこへ、パスをしてくれ。その後は、ゴールラインまで走っていったのをみて、パスをするからそのボールをシュートしてくれ」

「うーん。よくわからないがやってみる」

その時だった。中々コンビに一点入れられてしまったのだった。こうして、再びキックオフから始まった。相変わらずいうことを聞かない。四谷君は、ドリブルをしたまま、特攻を始めた。俺は、直ぐに追いかけて、四谷君が取られたボールを素早く奪い返して、右サイドを駆け上がっていくと、四谷は俺と並走している。俺が敵に囲まれそうになったころ、矢部っちが俺の左前にいたんで、パスを出す。するとディフェンダーは慌てて、矢部っちを追いかけ始めた。すると今度は、俺が前に出て

「矢部っちこっちだ!!」

矢部っちがパスをする。そこへまた、ディフェンダーが集まってきた。丁度その時、矢部っちは、ゴール前にいた。そこへ、パスをするとドンピシャで矢部っちがシュートを打ってゴールを決めた。
完全に無視をされた四谷は今目の前で起きた出来事すら無視して、一人で突撃をするのだった。

途中、業を煮やした先生が、アシストの役割を説明するが、四谷だけは全くいうことを聞かなかった。こうして、この授業の終わりに俺は、連帯責任でケツバットを受けるここになった。

もう・・最悪だ




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