リーンカーネーション 小学生に戻ったおれ

seabolt

キャプテン誕生


「くっそー!!」

今にも泣き出しそうな顔をして、俺を睨みつける矢部っちは、くそー!!くそー!!と言いながらベルトをはずし始めた。多分、彼が俺にやろうとした事、つまり、みんなの前でちんちんを晒すことを今度は自分がされると言う思いから暴走をはじめたその時だった。

「矢部!!何をしてる!!練習するぞ!!今から守備位置につけ!!」

橋本さんが彼の肩を叩いた。訳も分からないまま、矢部っちは、ピッチャーのポジションについた。すると驚いている俺に

「佐藤!!お前もだ!!」

俺は定位置のライトに行こうとすると

「矢部の次は佐藤がピッチャーだからな」

そう言うと俺の肩をポンと叩いた。

こうして、守備位置に着くと橋本さんが打席に立った。

「いいから、投げて来い!!」

戸惑いながらも矢部っちが投げるといとも簡単に打ち返した。すると

「次、佐藤!!」

こうして俺の番に、山なりのボールを投げたら、こちらも簡単に打ち返されてしまった。その光景に驚いているといつの間にか橋本さんがマウンドに来ていた。

「佐藤!!打席に入れ」

第1球、橋本さんの本気モードのストレートは外角低めへシューと唸りをあげて入ってきた。

第2球、ほぼ同じコースへストレートがバットを出す

キン!!

やや振り遅れたせいもあり、ライト線へのファールだった。

第3球、少し甘めのストレート、俺は素直にバットを出す

キン!!

これがセンター前ヒットになった。こうして謎の練習が終わって集められた俺たちに橋本さんは、驚愕のひとことを言った。

「佐藤!!お前が次のキャプテンだ!!」

「ええっ?!」

ここにいたみんなが驚いたのは言うまでない。特に矢部っち、絹やん、外やんは

「あのライパチ渉(わたる)が?」

すると橋本さんが3人に視線を向けた。

「お前達四年生に何があったかは知らないが、唯一俺からヒットを打ったのは佐藤だけだ。これは五年とも相談の上だ」

すると3人は納得いかない表情をしていた。

「でも」

そう言った矢部っちに橋本さんは視線を送った。

「矢部!!お前は佐藤を見下していないか?確かにあの試合までは、色々あった。しかし、佐藤はちゃんと努力をしてきたからこそ結果をだせたんだ。今日の試合でもわかったろう」

「「「はい・・・」」」

「それと今日のヤジは酷かった。同じチームとは思えない。多分、お前達は、佐藤が急に成長したのに驚いて妬んでしまったんだろう。けど、その妬みで嫌がらせをすることは、スポーツマンとして恥ずかいことだ!!悔しいなら練習して取り戻せ!!」

「「「はい・・・」」」

3人は、橋本さんの言葉を聞いて、自分達の行動を反省したようだった。

「同じチームの一員として信頼しないと野球はできない。だから、お前達四年生は、今、仲直りしろ。いいな!」

「「「「はい」」」」

こうして俺たちは、お互い謝り仲直りをしたんだけど、箭内さんが俺と矢部っちを呼んでいた。

「どうする?」

「・・・」

矢部っちは何も言わずに俺について来た。

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