異世界転移〜イージーモードには棘がある〜 

夕張 タツト

三十三話

 「さーて、皆さん昼食も摂ってお腹いっぱいになりましたね?それでは最後、自由タイムです!!気になるお相手にガンガン話しかけていきましょう!!」


 「「「おおっーー!!」」」


 さながら原始人のような雄叫びを上げる物もいたが、ボルテージは上がりきっている。
 誰しもがここで運命の相手を決めようと目が本気だった。
 皆、まだまだ若いんだけどな…。
 地球なんて、もう無理だろ、みたいな人も参加してるもんな…。
 閑話休題。 
 怒られそうな気がする。




 「ハヤト、これで終わり?」


 「そうだな、後はトラブルが起きないか目を光らせるぐらいかな」


 「トラブル?」


 「うん。ここは狩場だからね。冒険者同士でもある獲物の取り合いさ」


 「あっ、なるほど」


 しばし、静観する。
 ライツの周りにも何人かの女性が見受けられるが、適度にいなしているように見える。
 俺から見ても玉の輿目当てってことが丸わかりだもんな。
 目端の利く奴はライツが高貴な身分、あるいは金持ちな家の出だと感づいたのかもしれない。


 「ねぇ、ハヤト」


 「なんだ?」


 「ハヤトはその、嫌い?」


 「なにがだ?」


 「えっと、獲物の取り合いというか、そういうのでトラブルが起こるのは…」


 「…まぁないに越したことはないと思うけど、感情を無理して抑えることの方が悪いことだと思うぞ」


 「そっか、なんか深いね」


 「俺は日々、世界平和を願ってるからな」


 「嘘ばっか」


 「ばれたか」


 他愛もない話を幾分も交わしていたら、参加者たちもちらほらとパートナーが出始めた。
 あれ?そういえば…。


 「レイラ、セレナさんは?」


 「ああ、あそこ」


 レイラが指差すと数人の男に口説かれていた。
 セレナさんも会場の雰囲気に当てられたのかいつものような力づくでは丁寧に断っているせいで挑戦する者が後を絶たない。
 おいこらっ、身の程をわきまえろ!!


 俺はトラブル発生時の鎮圧用の盾と棍棒を構え、一目散に駆け出す。


 「いや、ハヤト、それはやりすぎでしょ!」


 後ろで何か言ってるが聞こえん。


 「はーい!すいません、その方はスタッフの方なんでご遠慮下さーい!!」


 慇懃無礼ここに極まれり、という態度でセレナさんを輪から連れ出す。


 「助かったぞ、ハヤト」


 「セレナさんこそ気をつけて下さい。たぶん、参加者のなかじゃ飛び切り美人なんですから。狙われるに決まってるじゃないですか!」


 「…分かった。気をつけよう」


 首まで赤くなったセレナはハヤトのなすがままに引っ張られていった。


 「あっ、おかえり」


 「おう、セレナさんを魔の手から救い出して来たよ」


 「…それは大げさだ」


 気疲れしたように思えるセレナさんをテントまで送るようレイラに頼み、改めて会場を見渡す。
 さて、ライツはどうなったか…。
 未だに数人の女性に囲まれていた。
 普通にモテるんだよな、あいつ。
 どことなく釈然としないながらもしばらく様子を見守っていると。
 一人じっとライツを見つめている少女を見つける。
 年の頃は15、6といったところか。
 栗色の髪が美しく、線は細くもどこか強い意志を感じさせる瞳をしている。


 少し気になったので声をかけてみることにした。


 「君はだれか気になる相手はいましたか?」


 少女は首を縦に振る。


 「その方はもしかしてあそこに囲まれている青年(?)かい?」


 俺は未だにライツが俺と同い年ということに疑念を抱いている。
 サバ読んでるんじゃなかろうか。


 「…そうだけど。どうして?」


 「ずっと見つめていたからね。少しお手伝いしようかと思って」


 「…いいの?」


 「話したいんでしょ?」


 「…うん」


 「なら決まりだ」


 俺は万が一に備えて親衛隊から潜入させていた方々にライツの周りの女性を引き離すよう支持を出す。
 そして、ライツが一人になった所で少女の背中を押す。


 「ほら、行っておいで」


 「うん」


 一歩一歩踏みしめるように歩き出す少女。
 こっちも緊張してきそうだ。


 「…あ、あの」


 「おおー、そちを探しておったのじゃ」


 ビンゴ!!


 「えっ、そうなんですか」


 二人は余人を寄せ付けない雰囲気を早くも創り出していた。


 俺は婚活パーティー(ライツ用)の成功を確信し、閉会を宣言するのであった。




 なお、後日談として二人は晴れてゴールイン。
 少女の名前はミリアというらしい。
 最初はライツが王であることにたまげ、田舎へ帰ろうとしたが何度も口説かれた末、吹っ切れた様子でプロポーズを受けたらしい。
 たぶん、王国が存続する限り語り継がれるだろう恋物語である。
 

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