異世界転移〜イージーモードには棘がある〜 

夕張 タツト

三十一話

 「ハヤトよ、してどのように婚活パーティーは進むのじゃ?」


 「…それはですね」


 ヤベっ、全く考えたことなかった。
 地球でも参加なんぞしたことないし、どうしよ。


 「…ハヤト、まさかこの方が?」


 セレナさんが耳元でささやく。
 くすぐったいです、はい。


 「ああ、この国の王らしいですよ」


 「かるっ。ハヤト、かるっ!!」


 レイラがうるさいがいつもの事なのでスルーするとして。


 「まずは周辺でこの事を告知しましょう」


 「そうか、ならその方、王の名の元に若い娘を集めよ!!」


 「いや、そんなことすれば王目当ての人が五万と来ますよ」


 「では、どうするのじゃ?」


 「普通に婚活パーティーという名目で集めましょう」


 「それだと、男も来るではないか」


 「…」


 何言ってんダヨ。
 俺、こいつへの敬意は綿毛より軽くなった気がするぞ。


 「ライツ、それが良いんですよ」


 「どうしてじゃ?」


 「比較対象がいる方がライツの魅力は目立ちます」


 「余よりイケメンがいたら?」


 うん、ケビンに声掛けなくて正解だったな。


 「…それはガンバレとしか」


 「…ハヤトよ、もうやめようか」


 メンドクセー。


 「…ハヤト、被害者だったんだね」
 「そうだな、顔にアリアリと出てるな」


 お二人さん、聞こえるから。
 もう少し声抑えて。


 「ライツ、本物が欲しいんだろ?」
 俺はドスを効かせた声で問いかけた。


 「…そうじゃが」


 「たかがイケメンになびくような娘が”本物”なのか?」


 ライツに詰め寄り、問いかける。
 ここはもう、ノリと勢いしかない。


 「!!ハヤト、余は間違っていた。やろうぞ、婚活パーティー」


 「その意気だ!!」


 ライツがやる気をみなぎらせた。
 俺は無駄足にならなかった事を喜んだ。やるなら成功させたいしな。


 なお、この間取り巻きの方たちは終始呆れた表情を崩さなかった。




 この後、周辺の集落や街への告知。
 会場の設営や料理の手配。
 催し物(俺の案)の準備を行い、開催は2日後となった。


 


 その夜。


 「ハヤトよ、ご苦労。これで余にも良き出会いがありそうだ」


 …ホントそうあって欲しい。
 てか、ここまで焚き付けて失敗したらどうなるんだろう。


 「これで誰にも出会えなかったら余は魔法使いになるんじゃろか…」


 …とりあえず夜逃げの準備だけはしておこう。


 「…ライツ、暗い顔しててはモテるものもモテませんよ」


 「そうじゃな」


 ライツの表情が若干なりとも晴れやかになる。
 元々禿げかけてはいるが、彫りの深い顔立ちはダンディーであり、清潔感もあれば、さすがは王族とも言うべき洗練された優雅さも兼ね備えている。
 これはよほどの事がない限り失敗はないだろう。
 これで休めるな。
 世間話を少々し、ライツの前を後にしようとした時。


 「ハーヤートっ、向こうにテント張ったから!!」


 レイラがやって来る。


 「ハヤトよ、気になってはいたのじゃが。この娘は?」


 「っパーティーメンバーです。ただの」


 「ハヤト、素っ気ないよ!もっと仲いいでしょ、私達」


 レイラがやけに体をクネクネとさせながらり寄ってくる
 いま、それ止めて!!ホントに


 「ハヤトよ、まさかリア充だったのか?」


 ライツが帯剣した剣の柄を握る。


 「ホント、パーティーメンバーで。何度も死線を乗り越えてきたからそう見えるだけですよ!!」


 「そうであったか。確かに、優秀なパーティーは家族のように仲が良いと聞く。そちらは真の兄弟のように見えるわ」


 はははっ、と笑いながらその場を去っていくライツ。


 王の威厳?にでも当てられたのか、黙りこくっているレイラを振り返る。


 「レイラ、あのイタズラは度が過ぎだ」


 「…ハヤト、王様の目見た?」


 「ライツの目?」


 「そう」


 「?それがどうした」


 「…闇があった」


 俺はそっとテントに戻る。
 荷造りはしておこう。







「恋愛」の人気作品

コメント

コメントを書く