異世界転移〜イージーモードには棘がある〜 

夕張 タツト

二十七話

 「カルバさん見ませんでしたか?」


 俺はギルド支部に入るなり、受付にいたリンさんに尋ねた。


 「どしたの、怖い顔して?」


 「いえ、少しお願いしたいことがありまして…」


 「あぁ、カルバもさっきハヤト君を探してたよ。上にいると思うから行ってもらえる?」


 「分かりました」


 俺は足早に階段を登り、支部長室へと向かう。
 ノックを軽くし、返事が来てから中に入る。


 「カルバさん、おはようございます!」


 「おおう、よく来た。早速だが用件を話していいか?」


 「分かりました。俺もカルバさんに話があるので時間とって頂けませんんか?」


 「ああ、構わんよ。じゃとりあえず、そこ座れ」


 向かい合った二人がけのソファーに腰を下ろす。
 スペースは広くとってあるのだが、カルバさんが真正面にいると少し窮屈に感じてしまう。


 「話というのはだな…」


 どことなく煮え切らない態度のカルバさんに少し緊張を抱く。
 あの、決死の作戦でも即断即決した男、巧遅より拙速を尊ぶ男が言いよどむのだ。
 俺が脳内で最悪の事態を十通りほど思いついた所でカルバさんが続けた。


 「ハヤト、お前に王都に行って欲しい」


 「…はぁ、いいですけど」


 王都とはこの国の首都である。
 つまり、ナールブより、栄え、治安もいい。
 何故カルバさんが言いよどんだのか俺は問うた。


 「それはだな、王都に言って王に会って欲しい」


 「…俺、なんかしましたかね?」


 確かに、今さっき魔族と密談していたし、王様に忠誠心など微塵もない。
 俺は他に理由が思い当たらない。


 「いや、お前、オセロとかいうゲームを作ったろ」


 作ったというか、お約束通りにしたつもりでしたが…。


 「それを王が気に入っちまってな。めっぽう強くなって負け無しだ。だから、製作者なら相手になるだろうと呼びつけなさったわけだ」


 「…はぁ」


 国政とか大丈夫なんだろうか。


 「王はいわば飾り物だからな。権威の象徴だ。そこに居るだけで役に立つ」


 「結構ドライなこと言いますね?」


 「まぁ、一応知り合いだしな。お前も物怖じせず接した方が良いぞ!」


 そう言ってバンバンと俺の肩を叩くカルバさん。
 普通に肩が外れそうだ。


 「分かりました。すぐにでも出発しますか?」
 俺はさらりと距離を取り、日程を確認する。


 「あぁそうしてくれ。これは旅費だ」


 重みのある布袋が渡される。
 中は金板10枚。
 これは…。
 夜逃げしてもいいんじゃなかろうか。


 「そういや、ライカッツェの奴から買ったらその倍は褒美をくれるそうだぞ」


 「マジっすか?!」


 よし、王都に行こう!
 今すぐ行こう!


 後で聞いた話だが、カルバさんから渡された旅費も王からの支給らしい。
 やっぱ半端ないな、王は。


 こんなわけで危険いっぱい境界都市より先に安全いっぱい、雅な王都に俺は向かうやけだが…。


 「なんでこんなに居るんだよ?」


 「いいじゃねえか、俺、王都なんか行ったことないし。付き添いだ、付き添い」


 ナールブから王都にかけてはほとんど魔物なんて出ないんだが…。
 今も冒険者移動である駆け足ではなく、借り物の馬車で向かっている。
 馬を繰るのはビルだ。




 「ビルは行ったことあるんだっけ、王都」
 ずっと無口なうえ、身動きしないビルが居眠り運転してないか心配で声をかける。


 「…一度だけ」


 「どんな感じだったんだ?」


 「…凄く広い位しか覚えてない」


 そうか、着いてからのお楽しみか。


 そんなことより。


 「セレナ、依頼はどうしたの?」


 「レイラこそ、狩りに出なくていいの?お金ないんでしょ?」


 なんかバチバチやってるわ。


 「セレナさんもレイラも何やってんですか?」


 「「この女が悪い!!」」 


 君たち、仲良いだろ。絶対。


 なんだかんだで大所帯になってしまったが、旅行は大人数の方が楽しいだろう。
 五人が大所帯かどうかはおいといて。
 ボッチの暮らしが長かった俺には五人は大所帯なんだから。


 こうして、一行は王都に姦しく向かう。


 ハヤトの頭から境界都市はもとより、目的さえも抜け落ちているようであった。


 「ハヤト、そういえば何で王都に呼び出されたの?何かやらかした?」
 レイラがハヤトの隣に座り、話しかける。
 後ろでは握り拳を作り、肩を振るわす美女が一人。


 「失敬な。王都にはな…、えっと、…ヤベッ!」


 「レイラ、オセロやるぞ!練習だ!」


 バックからオセロ盤を取り出し準備するハヤト。


 そよ風が肌を撫で、穏やかな時間が流れる。
 王都まで後、二日といったところか。


 


 

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