異世界転移〜イージーモードには棘がある〜
二十六話
「リアは魔族なのか?」
「そうよ。前にも会ってる」
リアは神妙に頷く。
彼女にとってここは勝負の場面だ。
リアの描く未来図に彼は必要なのだから。
「そうか…。森で会ったのは君だったのか…。それより不能ってなんで知ってるんだ?」
そよ風が靡き、枯れ葉の擦れる音がする。
もう、季節は秋だ。
「…あの、私、魔族だよ」
「あぁ、それは分かったからなんで知ってるんだ?これは誰にも言っていないのに!」
というより、言えるわけがない。
こんな事、もはや性別不詳の大惨事である。
以前、レイラにえろh、もとい性書を燃やされたが、アレのお世話になることはこの世界に来て一度もなかった。
それでも惜しい事をされた気がする。
俺的には24番目の娘が良かった。
「いや、なんでいきなり遠い目をしてるのよ?!」
「過去の過ちは取り戻せないんだな、と思っていただけだよ」
「重っ!!何があったの?」
彼女はもう完全に素に戻っていた。
今までの擬態とはかけ離れた言動だが、あいにくハヤトはそこを指摘する余力はない。
「そんなことより…」
「あっ、超気になるやつ」
「どうして俺が不能だと知っているんだ?」
「あぁ、形代を私が作ったからよ。私なら治してあげられるわよ」
?!
「形代?」
「そう、あなた異界から来たでしょ?」
「まぁ、地球という所から来た」
ハヤトは自然と口を開く。
彼女の発言に疑問は多々あるが、何故かそれらを些細なことだと思わせるような風格がリアにはあった。
「でしょ?私はその…チキュウの神心深くない人の魂を呼びつけて、こちらで用意していた入れ物にいれたのよ」
「神心深くない人?入れ物?」
「そう、私の計画は神への反逆みたいなものだから」
そう言って、リアは不敵な笑みを浮かべる。
深淵を覗くような、目を離すことの出来ない引力がそこにはあった。
「聞きたい?」
ノーと言っても語り出しそうな態度でリアは問いかける。
「いや、それより不能のこと…」
とは言ってもハヤトはそこは譲れない。
頑としてノーを突きつけた。
「じゃあ、まずはね…」
二人の会話は噛み合わない。
それから。
お互いがきちんと意思疎通できるまで2時間を要した。
・・・
俺は割と神頼みする方だと思うけどなー。
心の上っ面で。
リアの説明を聞いた後、俺がまず初めに思ったことがそれだった。
今は一人でギルド支部へと戻っている。
リアは帰るとのこと。
不能を直して欲しくば、”境界都市”まで来いとのことだ。
何故、そこまで行かなければならないのか。
俺はもちろん憤った。
”境界都市”は人類と魔族の共栄のために作られた都市のようだが、現状は都市の南北に分かれ、相手方の街に入ろうものなら命の保証はないと聞く。
それでも未だ大きな争いに発展しないのは”境界都市”を統治する12人の行政官の功績に寄るところが大きい。
”境界都市”は大陸でも南方にあり、魔獣の脅威も大きい。
都市内で争いが起き、城壁が崩れでもしたら、四面楚歌である。
それにしても。
リアの話は信じがたいものがあった。
この世界にも地球のような神話がある。
俺も小耳に挟んだ程度には知っている。
リアが語ったのはそれとはかけ離れた物語だった。
また俺の頭の中でリアの話がループし始めた。
この世界で何で魔族が生まれたか知ってる?
リアはそんな問い掛けから話し始めた。
昔はね、魔族なんていなかったの。
もちろん、魔獣もいない世界。
人類は栄え、大都市も幾つもできた。
世界は一人の王を頂点に発展に発展を重ねた。
そんな中でとある一人の王が言ったの。
神の世界、天界に到る塔を作ろうと。
もちろん、夢語りのようなものだった。
でも、当時の人類は急速に発展する世界に慣れていた。
もしかしたら、行けるかもしれない。
誰もがそう思ったそうよ。
最初、神はこの様子を鼻で笑った。
でも誤算が起きた。
塔の建造場所が龍脈の通り道だったの。
そして、塔はその力を溜め込んだ。世界を壊しかねない程に。
神は座して見守ることは止め、塔を壊した。
しかし、人類はもう一度建造し始めた。
神は世界への干渉を行った。
最初は言語を幾つかに分けることから始めたそうよ。
次にこの地から溢れた魔力を用いて魔獣を創造したと考えられている。
でも、人類はそれらを神の試練と捉え乗り切った。
だから、神は争いの種をまいた。
一部の人類を魔族に変えることによって。
そして、さらに追い打ちを掛けた。
魔族となった者たちは本能的に人類に嫌悪感を抱いた。
人類は魔族に本能的に恐怖を抱いた。
もちろん、そんな感情抱かない者もいたけど、少数だった。
結局、長いものに巻かれて塔の建造が止まるまで然程時間は掛からなかった。
魔族は我々こそが神に選ばれた種族と言い、人類は魔族は神に呪われた種族と言った。
争いが起こるのも必然だった。
そして、その塔の建造場所が”境界都市”。
全ては”境界都市”にある。
だから来て。
そしたら、不能も治せるよ。
なんでか、だって?
だってその体は私が創り出したんだからできるに決まってるじゃない。
まぁ、ここじゃ足りないものが多すぎる。
もう一度言うね、全ては境界都市にある。
だから、来て。
待ってる。
そう言って、リアは去っていった。
どうやら俺を連れての隠密行動はできないらしい。
ギルド支部に着いた。
やることは決まった。
決意も固まった。
ハヤトは一歩、初めてここに入った一歩とは程遠いほど確かな一歩を踏み出した。
風は冷たいが、大地を照らす夕日は岩をも溶かしそうな紅であった。
「そうよ。前にも会ってる」
リアは神妙に頷く。
彼女にとってここは勝負の場面だ。
リアの描く未来図に彼は必要なのだから。
「そうか…。森で会ったのは君だったのか…。それより不能ってなんで知ってるんだ?」
そよ風が靡き、枯れ葉の擦れる音がする。
もう、季節は秋だ。
「…あの、私、魔族だよ」
「あぁ、それは分かったからなんで知ってるんだ?これは誰にも言っていないのに!」
というより、言えるわけがない。
こんな事、もはや性別不詳の大惨事である。
以前、レイラにえろh、もとい性書を燃やされたが、アレのお世話になることはこの世界に来て一度もなかった。
それでも惜しい事をされた気がする。
俺的には24番目の娘が良かった。
「いや、なんでいきなり遠い目をしてるのよ?!」
「過去の過ちは取り戻せないんだな、と思っていただけだよ」
「重っ!!何があったの?」
彼女はもう完全に素に戻っていた。
今までの擬態とはかけ離れた言動だが、あいにくハヤトはそこを指摘する余力はない。
「そんなことより…」
「あっ、超気になるやつ」
「どうして俺が不能だと知っているんだ?」
「あぁ、形代を私が作ったからよ。私なら治してあげられるわよ」
?!
「形代?」
「そう、あなた異界から来たでしょ?」
「まぁ、地球という所から来た」
ハヤトは自然と口を開く。
彼女の発言に疑問は多々あるが、何故かそれらを些細なことだと思わせるような風格がリアにはあった。
「でしょ?私はその…チキュウの神心深くない人の魂を呼びつけて、こちらで用意していた入れ物にいれたのよ」
「神心深くない人?入れ物?」
「そう、私の計画は神への反逆みたいなものだから」
そう言って、リアは不敵な笑みを浮かべる。
深淵を覗くような、目を離すことの出来ない引力がそこにはあった。
「聞きたい?」
ノーと言っても語り出しそうな態度でリアは問いかける。
「いや、それより不能のこと…」
とは言ってもハヤトはそこは譲れない。
頑としてノーを突きつけた。
「じゃあ、まずはね…」
二人の会話は噛み合わない。
それから。
お互いがきちんと意思疎通できるまで2時間を要した。
・・・
俺は割と神頼みする方だと思うけどなー。
心の上っ面で。
リアの説明を聞いた後、俺がまず初めに思ったことがそれだった。
今は一人でギルド支部へと戻っている。
リアは帰るとのこと。
不能を直して欲しくば、”境界都市”まで来いとのことだ。
何故、そこまで行かなければならないのか。
俺はもちろん憤った。
”境界都市”は人類と魔族の共栄のために作られた都市のようだが、現状は都市の南北に分かれ、相手方の街に入ろうものなら命の保証はないと聞く。
それでも未だ大きな争いに発展しないのは”境界都市”を統治する12人の行政官の功績に寄るところが大きい。
”境界都市”は大陸でも南方にあり、魔獣の脅威も大きい。
都市内で争いが起き、城壁が崩れでもしたら、四面楚歌である。
それにしても。
リアの話は信じがたいものがあった。
この世界にも地球のような神話がある。
俺も小耳に挟んだ程度には知っている。
リアが語ったのはそれとはかけ離れた物語だった。
また俺の頭の中でリアの話がループし始めた。
この世界で何で魔族が生まれたか知ってる?
リアはそんな問い掛けから話し始めた。
昔はね、魔族なんていなかったの。
もちろん、魔獣もいない世界。
人類は栄え、大都市も幾つもできた。
世界は一人の王を頂点に発展に発展を重ねた。
そんな中でとある一人の王が言ったの。
神の世界、天界に到る塔を作ろうと。
もちろん、夢語りのようなものだった。
でも、当時の人類は急速に発展する世界に慣れていた。
もしかしたら、行けるかもしれない。
誰もがそう思ったそうよ。
最初、神はこの様子を鼻で笑った。
でも誤算が起きた。
塔の建造場所が龍脈の通り道だったの。
そして、塔はその力を溜め込んだ。世界を壊しかねない程に。
神は座して見守ることは止め、塔を壊した。
しかし、人類はもう一度建造し始めた。
神は世界への干渉を行った。
最初は言語を幾つかに分けることから始めたそうよ。
次にこの地から溢れた魔力を用いて魔獣を創造したと考えられている。
でも、人類はそれらを神の試練と捉え乗り切った。
だから、神は争いの種をまいた。
一部の人類を魔族に変えることによって。
そして、さらに追い打ちを掛けた。
魔族となった者たちは本能的に人類に嫌悪感を抱いた。
人類は魔族に本能的に恐怖を抱いた。
もちろん、そんな感情抱かない者もいたけど、少数だった。
結局、長いものに巻かれて塔の建造が止まるまで然程時間は掛からなかった。
魔族は我々こそが神に選ばれた種族と言い、人類は魔族は神に呪われた種族と言った。
争いが起こるのも必然だった。
そして、その塔の建造場所が”境界都市”。
全ては”境界都市”にある。
だから来て。
そしたら、不能も治せるよ。
なんでか、だって?
だってその体は私が創り出したんだからできるに決まってるじゃない。
まぁ、ここじゃ足りないものが多すぎる。
もう一度言うね、全ては境界都市にある。
だから、来て。
待ってる。
そう言って、リアは去っていった。
どうやら俺を連れての隠密行動はできないらしい。
ギルド支部に着いた。
やることは決まった。
決意も固まった。
ハヤトは一歩、初めてここに入った一歩とは程遠いほど確かな一歩を踏み出した。
風は冷たいが、大地を照らす夕日は岩をも溶かしそうな紅であった。
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