異世界転移〜イージーモードには棘がある〜
九.五話
「セレナ~、最近彼とはどんな感じ?」
ギルドの待合室に現れたセレナ・リースフェルトに私は声をかける。
女性らしさがはっきりと目に見える体型ながらもスラリと伸びた美脚を持ち、幻想的な銀の髪に鷹を思わせる鋭い目つきはどこか人を寄せ付けない雰囲気を醸し出している。
「…黙って受付してろ」
それに口調がキツイ。
言い寄る男は彼女の鍛錬と称した制裁を前に戦略的撤退を図る者がほとんどだ。
そんな私の友人セレナにも最近出会いがあったらしい。
きっかけは道でナンパされたとかどうたら言ってたけど、今そこはどうでもいい。
「そんなこと言って~、昨日もハヤト君と鍛錬と称したデートしてたでしょ?」
「…鍛錬だ」
ほのかに赤くなるセレナだが、普段のきめ細やかな白肌にとってその変化は劇的なものに感じられる。
「でも、二人っきりで食事したんでしょ」
「うっ」
「あそこの店、良い雰囲気だよね~恋人同士には」
「…何が言いたい?」
よしよし、話してみると案外チョロい乙女だと知ってる私は一気に畳み掛ける。
「話聞かせて!」
「話?」
「そ、恋バナしよ?」
これは未だに独s…いえ、良い縁のない私の僻みとかではない。
断じてそれはない。
「で、恋バナとは何を話すのだ?」
やや照れの入った毅然とした表情がとてつもなく可愛らしく感じられる。
「じゃあ、彼のどこが気にいったの?」
「………」
その表情を見れただけで私は満足に近かったが、ここはもう少し踏み込むことにする。
「話してくれたら…」
「…くれたら?」
「レイラちゃんから聞いたハヤトの好みを教えたげる」
「そ、そ、そんな嘘言うな」
「嘘じゃないよ~最近一緒に仕事してるからそういう話もするんです!」
「…真面目に仕事しろ」
注意する声に覇気はない。
自分もハヤトの好みを知っておくべきか悩んでいるのだろう。
セレナはレイラちゃんのことを恋敵とみなしている節がある。
これは…墜ちたな。
「これは、その、私がハヤトにこ、こ、好意を持ってるとかそんなことではないんだが…」
「うんうん」
語るに墜ちたやつだね。
いいもん見れたよ。
「それで?」
「いや、私の鍛錬とか良く頑張ってるし、む、向こうが私への好意も隠そうとしてないから…それで」
いや、隠せてないのお前の方だよ、と言いたいけれども。
「好きになった?」
「いや、それはきっかけにすぎない。初めにハヤトと会ったときからななんだか特別な奴だと思ったんだよ。私は割と直感を信じるんだ。それで案の定、アレも使えただろ。だから、特別だと思ってたんだ。たぶん、英雄伝に出てくる勇者のような…」
「だから?」
「違う。私は間違ってたんだ。彼は泣いていたんだよ。ここ周辺を根城にしていた盗賊を殺して泣いてたんだ。戸惑ったよ。私はハヤトを褒めようとしてたんだがな。ハヤトは私より年下で心の弱いただの青年だったんだ」
「…ハヤト君22って言ってたけど。あんたより年上だよ?」
「いや、あの顔はどう見ても15,6だろ」
「それもそうか」
なんか真面目臭くなったが、これはこれでセレナらしい。
結局好意の理由ははっきりと分からないが、人が人を好きになるなんて当たり前だ。
セレナにとってその”当たり前”がハヤト君だったってことなのだろう。
「それより、リン。あれを教えろ」
あっ、そうだった。
「えっとね、ハヤト君は…」
「ハヤトは?」
「短い丈のズボンが好みのようですよ」
「なっ」
自分の足元を見、いつも肌に張り付く引き締まった長ズボンしか着用してないことを思い出す。
彼女の今日の行き先は服飾店に決まったようだ。
この日からギルドに美脚の女神が誕生することになる。
ギルドの待合室に現れたセレナ・リースフェルトに私は声をかける。
女性らしさがはっきりと目に見える体型ながらもスラリと伸びた美脚を持ち、幻想的な銀の髪に鷹を思わせる鋭い目つきはどこか人を寄せ付けない雰囲気を醸し出している。
「…黙って受付してろ」
それに口調がキツイ。
言い寄る男は彼女の鍛錬と称した制裁を前に戦略的撤退を図る者がほとんどだ。
そんな私の友人セレナにも最近出会いがあったらしい。
きっかけは道でナンパされたとかどうたら言ってたけど、今そこはどうでもいい。
「そんなこと言って~、昨日もハヤト君と鍛錬と称したデートしてたでしょ?」
「…鍛錬だ」
ほのかに赤くなるセレナだが、普段のきめ細やかな白肌にとってその変化は劇的なものに感じられる。
「でも、二人っきりで食事したんでしょ」
「うっ」
「あそこの店、良い雰囲気だよね~恋人同士には」
「…何が言いたい?」
よしよし、話してみると案外チョロい乙女だと知ってる私は一気に畳み掛ける。
「話聞かせて!」
「話?」
「そ、恋バナしよ?」
これは未だに独s…いえ、良い縁のない私の僻みとかではない。
断じてそれはない。
「で、恋バナとは何を話すのだ?」
やや照れの入った毅然とした表情がとてつもなく可愛らしく感じられる。
「じゃあ、彼のどこが気にいったの?」
「………」
その表情を見れただけで私は満足に近かったが、ここはもう少し踏み込むことにする。
「話してくれたら…」
「…くれたら?」
「レイラちゃんから聞いたハヤトの好みを教えたげる」
「そ、そ、そんな嘘言うな」
「嘘じゃないよ~最近一緒に仕事してるからそういう話もするんです!」
「…真面目に仕事しろ」
注意する声に覇気はない。
自分もハヤトの好みを知っておくべきか悩んでいるのだろう。
セレナはレイラちゃんのことを恋敵とみなしている節がある。
これは…墜ちたな。
「これは、その、私がハヤトにこ、こ、好意を持ってるとかそんなことではないんだが…」
「うんうん」
語るに墜ちたやつだね。
いいもん見れたよ。
「それで?」
「いや、私の鍛錬とか良く頑張ってるし、む、向こうが私への好意も隠そうとしてないから…それで」
いや、隠せてないのお前の方だよ、と言いたいけれども。
「好きになった?」
「いや、それはきっかけにすぎない。初めにハヤトと会ったときからななんだか特別な奴だと思ったんだよ。私は割と直感を信じるんだ。それで案の定、アレも使えただろ。だから、特別だと思ってたんだ。たぶん、英雄伝に出てくる勇者のような…」
「だから?」
「違う。私は間違ってたんだ。彼は泣いていたんだよ。ここ周辺を根城にしていた盗賊を殺して泣いてたんだ。戸惑ったよ。私はハヤトを褒めようとしてたんだがな。ハヤトは私より年下で心の弱いただの青年だったんだ」
「…ハヤト君22って言ってたけど。あんたより年上だよ?」
「いや、あの顔はどう見ても15,6だろ」
「それもそうか」
なんか真面目臭くなったが、これはこれでセレナらしい。
結局好意の理由ははっきりと分からないが、人が人を好きになるなんて当たり前だ。
セレナにとってその”当たり前”がハヤト君だったってことなのだろう。
「それより、リン。あれを教えろ」
あっ、そうだった。
「えっとね、ハヤト君は…」
「ハヤトは?」
「短い丈のズボンが好みのようですよ」
「なっ」
自分の足元を見、いつも肌に張り付く引き締まった長ズボンしか着用してないことを思い出す。
彼女の今日の行き先は服飾店に決まったようだ。
この日からギルドに美脚の女神が誕生することになる。
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