異世界転移〜イージーモードには棘がある〜
五話
今日がやってきた。
前・後期生合同野外演習、通称合外演習の日である。
先日、ギルド、”銀翼の鷹”から装備を貰い受け、銃の携帯も認められた。
ただし、命の危険がない場合は極力使うなとのお触れもついてきたが…。
俺の無双伝説の始まりはまだ先らしい。
「では、これより合外演習を始める。各員パーティーメンバーと行動すること」
「「「はっ!」」」
威勢の良い返事は前期生にとっては初めての野外演習、後期生にとっては有力貴族・商人とのコネ作りへの期待感を表しているようである。
かくいう俺は後期生からお呼ばれすることもなく、レイラ、ケビン、それとケビンが連れてきた小商家のビルという弓使い(投げナイフもある)の4人でパーティーを組むことになった。
各パーティー6人程度と考えると、いかにも余り者の集まりという感じだ。
ちなみに、俺は小太刀(最も扱いやすかった)、レイラはタガーナイフ、ケビンは長剣と盾という武装である。
防備は皆似たり寄ったりの革鎧を身に着けている。
「じゃあ、予定通り北に向かおうか」
ケビンが盾を背負い、亀のような姿で話し出す。
たぶん、笑ってはいけないのだろう。
「やっぱり、南の草原のほうが狩りしやすくないか」
森に入って30分。
空気は美味しいのだろうが、鬱蒼と茂る葉に光を遮られ、薄暗いなか魔物を警戒しながら進むのはかなりきつい。
右手に見える木の後ろに魔物が潜んでいるかも知れないのだ。
「でも、南に行くほど魔物が強くなるんだよね」
レイラも薄暗い中で静かなのは辛いのか、会話をつないでくれる。
「街の南と北ぐらいでは変わらないよ」
ケビンが額の汗を拭いながら言う。
「今回は採取がメインですよね。魔物と戦わないですよね」
商家の次男、ビルが首をせわしなく振りながら尋ねる。
そんなに魔物が怖いのか。
俺も怖いけど。
見たことないし…。
「それに、南の草原だと偶にレベル4の魔物が出るらしいですよ」
「レベル4って、あれだよな、冒険者2~3人で狩るくらいのやつだよな」
「そうだよ」
ビルは割と博識である。
今回の野外演習を採取で乗り切ろうとする僕らには頼もしい存在である。
悲しいことに俺たちは戦闘力が皆無である。
森林の方が身を隠せるし、採取もできる、と理にかなっているのだ。
今回は無難に終わることを祈るのみである。
「ここらで休憩取るか?」
ケビンがペースが落ちてきた一同(主に俺)を眺め腰を下ろす。
皆、思い思いに荷物を置き、水を作り出している。
「ハヤト、水飲む?」
レイラは生成したウォーターボールを俺のとこまで持ってきてくれる。
「毎回、悪いな」
「そんなこと無いよ、魔法使えないんでしょ」
「ウッ、」
「いや、責めてるわけじゃなくて、ただ、不思議だなって」
この世界の住民は皆、魔法を使える。
技量も大した差はなく、生活の一部と化しているほどだ。
「ほんと、なんでだろう?」
俺も魔法使いたい。
魔法使いにはなりたくないけど。
「まぁ、そういう人もいるよね」
レイラの励ましが胸に刺さる。
「これからも助けてあげるからさっ」
二マッ、と笑うレイラの優しさに全力でそっぽを向いた。
結論からお伝えしよう。
この野外演習は普通に終わった。
普通に俺がお荷物状態で終わった。
魔物はレベル1(普通の成人男性が狩れる水準)のやつを2体倒したのみである。
俺は特に何もやってない。
収入は他のパーティーの半分ほどであったようだ。
「レイラ、なんか悪いな」
「どうして?」
「いや、お前他のパーティーから誘われていただろう」
「あっ、そんなこと。このメンバーで行動するほうが楽しいから。こっちの方がいい」
俺の気遣いに、キョトンとした反応を返すレイラ。
まぁ、一番の足手まといが何言ってるんだって話だけどな。
「次もあるし。安全第一だよ」
「そうだな。休憩ももっと入れた方が良かったかな」
ケビンが俺を見ながら肩をすくめて言う。
確かに、一番バテてたのは俺だけど、皆も疲れてたじゃん。
「そういうケビンが一番バテてたんじゃない?」
レイラがここぞとばかりにからかい始める。
ビルはもう部屋に戻っている。
ガヤガヤとうるさくなっていく二人を一瞥し、こいつらまだ俺より年下なんだよなぁ、とモヤモヤとした感情が湧く。
なんでだろう、涙が出てきたぞ。
後日、セレナさんとの稽古のついでに野外演習の結果を報告した。
カルバさん筆頭に微妙な反応が多数を占める中、セレナさんだけが安全第一だと言って、褒めてくれた。
どうやら、探索による収入の多寡より死亡した場合の方が損失が大きいとのこと。
どうやら慰められたわけではないらしい。
これから前期生は自分たちだけで探索を行うことになる。
計二回、どちらも日帰りで行う。
これも結論を言おう、特に何もなかった。
俺の物語は後期生、一部に座学や野外キャンプ演習が行われる一段階上に舞台は移っていく。
前・後期生合同野外演習、通称合外演習の日である。
先日、ギルド、”銀翼の鷹”から装備を貰い受け、銃の携帯も認められた。
ただし、命の危険がない場合は極力使うなとのお触れもついてきたが…。
俺の無双伝説の始まりはまだ先らしい。
「では、これより合外演習を始める。各員パーティーメンバーと行動すること」
「「「はっ!」」」
威勢の良い返事は前期生にとっては初めての野外演習、後期生にとっては有力貴族・商人とのコネ作りへの期待感を表しているようである。
かくいう俺は後期生からお呼ばれすることもなく、レイラ、ケビン、それとケビンが連れてきた小商家のビルという弓使い(投げナイフもある)の4人でパーティーを組むことになった。
各パーティー6人程度と考えると、いかにも余り者の集まりという感じだ。
ちなみに、俺は小太刀(最も扱いやすかった)、レイラはタガーナイフ、ケビンは長剣と盾という武装である。
防備は皆似たり寄ったりの革鎧を身に着けている。
「じゃあ、予定通り北に向かおうか」
ケビンが盾を背負い、亀のような姿で話し出す。
たぶん、笑ってはいけないのだろう。
「やっぱり、南の草原のほうが狩りしやすくないか」
森に入って30分。
空気は美味しいのだろうが、鬱蒼と茂る葉に光を遮られ、薄暗いなか魔物を警戒しながら進むのはかなりきつい。
右手に見える木の後ろに魔物が潜んでいるかも知れないのだ。
「でも、南に行くほど魔物が強くなるんだよね」
レイラも薄暗い中で静かなのは辛いのか、会話をつないでくれる。
「街の南と北ぐらいでは変わらないよ」
ケビンが額の汗を拭いながら言う。
「今回は採取がメインですよね。魔物と戦わないですよね」
商家の次男、ビルが首をせわしなく振りながら尋ねる。
そんなに魔物が怖いのか。
俺も怖いけど。
見たことないし…。
「それに、南の草原だと偶にレベル4の魔物が出るらしいですよ」
「レベル4って、あれだよな、冒険者2~3人で狩るくらいのやつだよな」
「そうだよ」
ビルは割と博識である。
今回の野外演習を採取で乗り切ろうとする僕らには頼もしい存在である。
悲しいことに俺たちは戦闘力が皆無である。
森林の方が身を隠せるし、採取もできる、と理にかなっているのだ。
今回は無難に終わることを祈るのみである。
「ここらで休憩取るか?」
ケビンがペースが落ちてきた一同(主に俺)を眺め腰を下ろす。
皆、思い思いに荷物を置き、水を作り出している。
「ハヤト、水飲む?」
レイラは生成したウォーターボールを俺のとこまで持ってきてくれる。
「毎回、悪いな」
「そんなこと無いよ、魔法使えないんでしょ」
「ウッ、」
「いや、責めてるわけじゃなくて、ただ、不思議だなって」
この世界の住民は皆、魔法を使える。
技量も大した差はなく、生活の一部と化しているほどだ。
「ほんと、なんでだろう?」
俺も魔法使いたい。
魔法使いにはなりたくないけど。
「まぁ、そういう人もいるよね」
レイラの励ましが胸に刺さる。
「これからも助けてあげるからさっ」
二マッ、と笑うレイラの優しさに全力でそっぽを向いた。
結論からお伝えしよう。
この野外演習は普通に終わった。
普通に俺がお荷物状態で終わった。
魔物はレベル1(普通の成人男性が狩れる水準)のやつを2体倒したのみである。
俺は特に何もやってない。
収入は他のパーティーの半分ほどであったようだ。
「レイラ、なんか悪いな」
「どうして?」
「いや、お前他のパーティーから誘われていただろう」
「あっ、そんなこと。このメンバーで行動するほうが楽しいから。こっちの方がいい」
俺の気遣いに、キョトンとした反応を返すレイラ。
まぁ、一番の足手まといが何言ってるんだって話だけどな。
「次もあるし。安全第一だよ」
「そうだな。休憩ももっと入れた方が良かったかな」
ケビンが俺を見ながら肩をすくめて言う。
確かに、一番バテてたのは俺だけど、皆も疲れてたじゃん。
「そういうケビンが一番バテてたんじゃない?」
レイラがここぞとばかりにからかい始める。
ビルはもう部屋に戻っている。
ガヤガヤとうるさくなっていく二人を一瞥し、こいつらまだ俺より年下なんだよなぁ、とモヤモヤとした感情が湧く。
なんでだろう、涙が出てきたぞ。
後日、セレナさんとの稽古のついでに野外演習の結果を報告した。
カルバさん筆頭に微妙な反応が多数を占める中、セレナさんだけが安全第一だと言って、褒めてくれた。
どうやら、探索による収入の多寡より死亡した場合の方が損失が大きいとのこと。
どうやら慰められたわけではないらしい。
これから前期生は自分たちだけで探索を行うことになる。
計二回、どちらも日帰りで行う。
これも結論を言おう、特に何もなかった。
俺の物語は後期生、一部に座学や野外キャンプ演習が行われる一段階上に舞台は移っていく。
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