書道室で聞いてしまったことを僕は嘘だと信じていたいがどうやらそうでもないらしい。

ノベルバユーザー235268

1.疲れるのは部活前から。

昨日、僕こと紅月零斗は書道室で後輩の言葉を聞いてしまった。しかも好きな人だ。しかも部活の後輩。声を聞くだけで1発でわかる少し高めの声。けど、怒ると2オクターブ下がるその声。間違いない、あれは笹原神奈だ。

(盗み聞き自身は全然いいんだけど、それが笹原の好きな人とは…)

笹原は少し変わってる。どこか暗めな性格をしているし、部活入ってきた当初は完全に病んでる人だった。間違いなく。最近はそれも治まってきてはいるが、僕へのイタズラは終わる気がしない。まぁ、普通に楽しいやつだしゲームも気が合うのか話をする。そのせいか接点は多い。が、好きになる要素をあいつはどこに見出したのだろうか?後輩達や同級生からいじられる通りに僕は年齢=彼女いない歴という寂しいやつなのだ。そんなやつを好きなるとは、あいつも変わり者だ。

兎にも角にも今日も部活だ。ここ麻乃商業高校は名前の通り商業高校だ。僕たちの部活は簿記部。名前の通り簿記をやる部活。検定をとったり、大会に出たり。この高校の簿記部は代々強い。県立商業高校に引けを取らない。が故に、プレッシャーも半端がない。1位を取るのが当たり前、どこかそんな雰囲気が教員の中にも流れつつあり困惑の日々だ。ちなみに今年の大会はぎりぎり3位で全国に行く。

部室につき、荷物を置く。この部活というかこの学校あるあるなんだけど、ロッカー閉まってから終わるのは当然。ってかおかしいと思わないか?5時30分にロッカーが閉まるが大半の部活の終わりは6時。じゃあ閉めるなと言う話だ。だから部活前に靴を取りに行かなきゃいけない。部室は5階、靴は1階。ふざけてんのか、めんどくさい。何でわざわざ下まで…それなら帰りに行った方が効率がいい。頭でそんな思考を働かせながらロッカーに向かう。まぁ、ロッカーに置き勉出来るのはありがたいけど。ロッカーは3学年共用。要するによく後輩に会う。と、噂をすれば目の前から笹原、そして同じく簿記部の小谷。仲はいいのだが、時々どうでもいい言い合いをしている。
「あ、先輩!こんにちは!」
小谷は元気がいい。この元気はどこから来るんだろうか?元運動部なだけあり体力はすごい。
「こんにちは〜」
僕の挨拶は基本緩め、かっちりするのは部活のみ。それが僕の中のルール。
「わ、ほんとだ先輩だ。こんちはー」
挨拶緩め、敬語も緩め。それが笹原。それでもへらっと笑う。
どうやら2人も今来たらしい。手の中には置き勉する為の教科書がある。国語の教科書などは無駄に分厚いから置いていく人が大半だ。
ロッカーにつき物を置いて、靴を片付け外靴を出し、部室にさぁ戻ろうという時だった。
「先輩一緒に行きましょ?部室。」
笹原だ。

……なぜ?なぁ何故だ?どうして僕なんだ?

全部聞けたらどれだけ僕は楽になるのやら。どうやったら僕みたいな奴に好意を持つことになるのかゆっくり語ってほしいものだ、最も僕の心は持たなさそうだが……。

そう、笹原は僕を見かけるとすぐによってくる。最初こそ逃げていたものの今でこそ周知の事実なのだ。笹原が構ってちゃんであることくらい。それが故に僕が逃げることもなくなっていたのだが…

「あぁ!ちょっと!なんで逃げるんですか!?ココ最近ないから油断してたッ!」

悪いが今日は逃げる。最善だろう?だいたい小谷はどうした!?一緒に来ていただろう?なんであいつ置いてくるんだよ!?

「んぁ、紅月〜ぃ!なぁに走ってるのかなぁ!!」
「月崎!悪ぃけどそんな場合じゃねんだよ!どけぇい!!!!」

月崎悠也。3年の同じクラスのやつ。そして簿記部副部長。間延びした話し方をするがものすごくしっかりしているやつなのだ。部活中とか授業中限定だが…。

「え〜…ってあれ?笹原ちゃん?なんで逃げてんの、最近はよく一緒にいるじゃん。」
「事情があるんだよ!とりあえずまた部活で!」
「ハイハイ、頑張れ〜っと。笹原ちゃーん?なぁに走ってるのかなぁ?」
「うっそ、なんで!?」

後ろで2人がギャーギャー言ってるがとりあえず放置して5階まで駆け上がる。流石に運動してるからそんなに苦じゃないけれど、人を避けるのはめんどくさいのだ、この学校階段もトイレも少ないから人が一極集中するために駆け上がっているのがバレたらもちろん怒られる。

「ふぅ〜。失礼します。っとこんにちは。」

部室に入る時は失礼します、出る時は失礼しました。この部活の昔からのルールらしく僕が1年の頃からある。ちなみに後ろの取ってつけたような挨拶は既にいる一、二年からの挨拶の返答だ。

「紅月先輩!ここの問題ワケわからないんですよ!教えてくれませんか!?」

この騒がしすぎるやつは1年の須恵島。とにかくうるさい、騒がしい。それでもって何故か僕のところによくくる。やめていただきたい、僕はギリギリまでゲームしたいんだが。

「しゃーねーな、どこ?なんの問題?」
「ここです、有価証券!心愛、有価証券嫌いなんですよ!」
「いや、クソ簡単じゃん…?君は何言ってるの…?」
「先輩みたいにチートじゃないんで!?」
「別に俺はチートじゃねぇし!ってかあんまり声出すとそろそろささは「失礼します〜っていた〜、紅月先輩なんで逃げたってかチビ助、外に声丸聞こえ、黙れ。」

唐突の笹原の登場と弾丸のような言葉の数々。まぁ、そろそろだとは思ってたし言おうと思っていたし毎回のことだが、お前の思考回路と口を褒めてやりたい。もうひとつ言うと、笹原は部活にいる時はかなりのしっかり者だ、そして毒舌。須恵島と仲がいいような気がするのだが、何故か名前で呼ばずチビ助と呼びどこか下に見ているようにも取れる。まぁ、人間相性もあるし仕方がないかな…?

「だいたい喚くなって、ホントうるせーし?次喚いたら本気で殴るから。」
「ええぇぇぇぇ!それはやだぁぁぁ!」
「はいオーバーリアクション乙。殴る。」
「いややめろ!?」

なんで僕が毎回止める羽目になるのだ…。お前らってか笹原はもっと女の子らしくしなさいって言いたいけど…まぁ、この毒舌感もこの部には必要だから(主に笹原が生き残るため)仕方ないのかもしれない。

「だいたいお前何で喚いてるわけ?」
「そんなん決まってるじゃん!有価証券!!」
「んぁ、あのクソ簡単なのか。」
「はぁ!?お前もチートか!」
「なるほどね、先輩にそれ言って先輩までうるさかったのかよ。廊下まで聞こえるようなでかい声よく出ますね?体小さいのに。」

いや、お前も小さいだろ!?153の笹原と150あるかないかの須恵島。意外と身長差がある。というか須恵島、お前150ないだろ(多分)。

「うるっさいなぁ!とにかく席行きなよ、心愛は紅月先輩に有価証券のやり方聞いてるの!」
「あっそ。ってかおめーのがうるせぇわってか分かんないのは3年より2年に聞いた方が…」
「まぁ、いいよ。俺教えるし。」
「ほらぁ〜、先輩がこういってるし?」
「だから調子乗るんだよね、チビ助。先輩もちゃんと考えて行動してくださいよ?」
「分かってるけど、ほら今2年ほぼいねぇーし?ね?」

笹原が言ってることは的を射てる。3年より2年に聞いてほしいのは山々だが、今は2年生がまだ数人。しかもなにか話をしてるし仕方がないだろう。って!?

「芽奈先輩、この問題聞きたいんですけど…」

お前は2年生のところに突っ込む勇気ありすぎだろ!?なんでだよ!?それでもって僕らとの会話の途中じゃん!?お前ほんとすごいわ!

「ん?あぁいいよ!いやぁ、瞬とどうでもいい話してたんだけど、好きな色何?」
「んー、黒…かなぁ?」
「えーまじか、ささちゃんは白だと思ったのにィィィ」
「…賭けか。んで減価償却の話昨日あったんですけど計算方法がちょっと曖昧で…。っとあったあった、間接法はいいんですけど直接法が…。」
「うんうん、ここの計算はまずタイムテーブル書くところから始めようか?」
「お願いします。」

脱線した話元に戻したし、ってかどうでもいい会話すぎるし人で賭けは禁止にしたい。ってか笹原の嫌そうな顔を見てやれ?僕の負担を考えろよ。笹原は人の話をうまく誘導できる、そういうところはかなり頭がいいんだろう。

「って先輩聞いてます?ねぇ!」
「っと悪い。須恵島が珍しく熱弁してたからついつい意識が…」
「いやふざけてる場合じゃなくてですね!?」
「まだやってるの?チビ助。」
「だって先輩が…!!」
「へいへい、話聞いてない先輩じゃなくて我に聞き?」
「あんねあんね!」
「んー?」

ちらっとこっちを見る笹原。…バレてたのかめんどくさいって思ってたの。ありがたい、今度はちゃんと話聞いてやろう、笹原だけ。

「だから、ここの計算はこうじゃなくてこの金額をかけて…」
「なんでそうなるの!」
「黙って聞けやぁ……」

うん、これもいつものパターン。喚く須恵島、疲れてるのか怒っているのかな笹原。なんなんだこいつらは、ってか疲れることを嫌う笹原がなんで面倒ごとに自ら突っ込んでるわけ?ん?ん?
心の自問自答が尽きない。まぁ、僕のせいだけど。

「はぁー!?もー、わけわかんない!紅月先輩!」
「……あっそ僕では不満なのね?そっかそっか、じゃあもう教えない。先輩あとは頼みました。」

……あ、笹原本気で怒ってる。僕と目を合わせずに、ちょっと遠くを見るような感じで携帯を触り出す。あいつもゲーマー精神旺盛だし…うん、ゲームだな。横持ちだし、すでに目が輝いてますよ…?笹原さん、僕にはゲームさせてくれないの!?だって僕に放棄するってことは…

「紅月先輩!早く〜、ゲームしてないで教えてくださいよ!神奈教えてくれないんですもん。」
「黙れ、理解力ないチビ助。僕教えたし、それに嫌がったのお前じゃん?何言ってるの?」
「……ハイハイ。どれ?」

このままだと笹原壊れる…。こいつはどこまで頑張るのかな。いい加減須恵島に、教えるの最初から放棄しなよ…。学習したらいいのに。

「紅月先輩、今余計なこと思ってませんか?」
「まさか、なんも考えてない。強いていえばゲームの素材取りしたかったことくらい。」
「そうですか、聞いた僕が馬鹿でした。」

笹原は普段部活はじめはこうなんだ。終わると全然変わるが。今日はどうなることやら。

あぁ、部活前から疲れる。

「書道室で聞いてしまったことを僕は嘘だと信じていたいがどうやらそうでもないらしい。」を読んでいる人はこの作品も読んでいます

「恋愛」の人気作品

コメント

コメントを書く