異世界を8世界ほど救ってくれって頼まれました。~本音で進む英雄譚~(仮)
1-12 部分的レベルアップとイベント消化
あれから一年……修行の末、俺達はついに領主の館を攻略したのだった!
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なんて事にはならず、地味ーなMP上げを行っていた。
あれから一週間。
色々試したところ、綾香と俺は魔力の性質が違うようで、俺は大きく刃を出すことに特化しているが、綾香は細く鋭い刃だと安定して戦えることが分かった。
とりあえず一時間出しっぱなしで刃を維持できるようになるまでMPは増えた! しかしレベルは5のままだ!
フィリアに至ってはニートと変わらない。
「そろそろ領主の居る町へ移動しないとね」
綾香がパンを食べながら「スライムはもう飽きた」という顔で俺に言う。
「そうだなー。そろそろ行かないと他の世界も気になる。後、地球な」
「そふですねー、最近神様たひふぁらコンタクトが無いので心配でふよー」
とりあえず飲みこんでから喋れ。
「じゃあ今日はギルドへ行って、町までどうやって行くか聞いてみよう。その辺の人に聞くとボったくられそうだしな……」
この一週間、ギルドと隊舎に居る人間以外は基本信用してはならないことを嫌というほど思い知った。
飯屋へ行くと絡まれ、歩いていると難癖をつけられ金をせびられる。そんな町なのだ。
ローラに調べてもらったところ、人口に比べて仕事が少ないのだそうだ。日雇いみたいな仕事しかなくなってしまい、お金がないから強盗まがいのことをするということである。軽くてカツアゲ、重くて人身売買と幅が広い。
<領主が変わる以前は、交流も盛んで、グリーンスライムが居た草原は穀物地帯だったみたいですよ>
他の町は行ってないが、例の領主が治める町はどこも似たようなもんだとローラは言う。
やはり早い所領主を倒すのが良さそうだ。
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「こんちゃーす」
「いらっしゃい」
お、今日はコルベットさんじゃないのか。またルーミさんとやらが押し付けたに違いない。
ちなみに何度か換金で来ているがルーミさんに会った事は無い。幻の存在だ。
「今日は何の用?」
ふーと煙草を吸いながら、聞いてくる。もう慣れたもので、ぶっきらぼうだが煙を上に向かって吹くときは喜びを表している。
「いや、そろそろ町を移ろうと思ってな。それで……」
と切り出したところでギルドマスターの顔が青くなる。背景に「喜↓」と某ゲームのようなステータスダウンが見えた気がした。
「あ、あのね。また遊びに来ますから! だから領主の町の名前と行き方を教えてください」
綾香が焦って、言葉を繋げると何とか盛り返したようだった。
「仕方ないな。冒険者は流れ者だ。いつかこの時が来ると思っていたし、ああ寂しくなんかないからな? 勘違いするな?」
煙草を持つ手が震えているが、ここはあえて何も言うまい。
「領主の居る町は”セボン”ここから乗合馬車で一週間だな。途中村に立ち寄ったり、町で馬車の交換をしたりするから、食べ物と宿は何とかなるはず。……ホントに行くのか?」
トイレの洗浄剤みたいな名前の町だなと思っていた矢先にフィリアが大声で叫びだす。
「そうですね! わたし達は領主をせいばもごもご……!?」
フィリアが危ない事を口走ろうとしたので、俺が慌てて塞ぐ。ギルドに居た冒険者が何事かと振り向いていた。
「(馬鹿!? ここで何口走ってんだ!? 冒険者が味方とは限らねぇんだぞ! おつむの変わりにでかくなったそのおっぱいを一晩中揉みしだいてやろうか!)」
「(……!? 是非……!)」
!?
何て奴だ……まさか女の子にセクハラが武器にならない事があるとは思わなかった。
とりあえず処刑は綾香に任せて話を続ける。
「何か用意しといた方がいいものとかってあるか?」
「特にないな。でも野盗とか出る可能性もあるから、顔を隠せるフードとかはあるといいかもしれない。特に女二人は狙われやすい」
なるほど、流石はギルドマスター。野盗とか全然頭に無かったわ。
後は食料と水、できれば野宿した時などに使う毛布のような物があるといいそうだ。
カバンにはいっぱい入るからとりあえずメモメモっと……。
「あ、ああ!? そっちに腕は曲がりませんよ!?」
「陽を誘惑した罪の数をかぞえるのね!」
「じゃあ、明日には出発するよ! また余裕が出来たら遊びに来る」
「……またな」
煙草に火を点けながらギルドマスターが手を振って見送ってくれた。
金髪残念美人ともこれでお別れか……あれ? そういや名前聞いてなかったな。
リキッドさんとニアさんにも挨拶しとかないとな。
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「あれ? ギルドマスター随分落ち込んでますね?」
コルベットが買い物から戻り、事務室へ入るとボーっとしているギルドマスターが煙草をくわえていた。
陽たちと入れ違いでルーミが戻ってきたので事務所へ戻っていたのだ。
「いや、あいつらがさ、明日この町を出るっていうから」
「ああ、そうなんですね。結構気に入ってましたもんね彼等のこと」
「中々面白いヤツラだったんだけどな。ポンコツは無いだろ? フフ……」
カラーン……。
乾いた音を立ててペンを落とす
「ギ、ギルドマスターが笑った!? だ、誰か! 明日は嵐が来るわ! 緊急クエストよ! ギルドの窓を全部塞いで頂戴!」
コルベットが慌ててギルドに残っていた冒険者に告げると、全員がキレイな陣形を取り「了解!」と返事をしてテキパキとこなす。
「あの子達、大丈夫かしら? ギルドマスターのデビルズスマイルが影響してなきゃいいけど……」
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「ぶえっくしょい!?」
「あら、風邪? 今日は一緒に寝る?」
「それで次の日お前が寝込むんだろ? 面倒だからやめてくれ」
「うう、腕が……次はリキッドさん達ですか?」
フィリアが腕をさすりながら横を歩く。パ〇スペシャルを受けてその程度のダメージとは……やるな。
「そうだな、あの人達にも武器屋の騒動でお世話になったし、領主について何か情報を持っていないか聞こうかなと思って。噂話くらい聞いてるだろ?」
「噂話と言えば……今日はローラが大人しいわね? ……何してるのかしら?」
<……何もしていませんよ? 戦闘以外だとあまり役に立ちませんからね私>
びゅいんと液晶からローラが姿を現す。少し間があったのが気になるが……。
「あ、起きてたのね。結構便利じゃない? 一人寂しい時とか」
<できればそういう使い方はなさらないで欲しいですわね……>
「うーん、お互いのコントローラーを行き来できるんだから、綾香と俺がはぐれてもどこに居るのかローラを通じて場所を特定出来るから、迷子にならないってことだろ? それは便利じゃないか?」
<流石はハルさん。抱いてください>
「お前も大概だよな? お、着いたぞ」
「こんちゃーっす、リキッドさんかニアさん居ます、か」
俺達はその光景を前に思考がストップする。
説明しよう。
ドアを開けると赤い顔で興奮したニアさんがはあはあと息を切らせていた。
その視線の先には、ごみ箱に頭を突っ込んだリキッドさん(であろう人物)が居た。
リキッドさんはピクリとも動かず、よく見ればニアさんは涙目だ。
「お巡りさんこの人です!」
「え!? き、君達は確か……あ、いや、違うんだ! これは私じゃなくて、いや私なのか……?」
「犯人は皆そう言うんです! 確保ー!」
何故かフィリアがノリノリでニアさんに襲いかかり……。
返り討ちにあった。
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