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異世界を8世界ほど救ってくれって頼まれました。~本音で進む英雄譚~(仮)

八神 凪

1-6 欲望と暴虐の町

「この音声・・転移した時に聞こえたわよね・・?」
綾香も覚えていたようで、コントローラーに向かって確認をするとすぐに返事が返ってきた。


<左様でございます綾香様。先ほどアップデートされ、こちらに来ることが出来ました>


「今はそれどころじゃない・・・・外はもう出られそうにないな・・・あのお姉さんはどこいった?」
窓から外を見るといかにもゴロツキと呼べる男たちが剣やナイフ、ロープなどを持って待っていた。
これは一体・・・? フィリアが横であわあわしているのを見ながら思案していると、奥から先ほどカウンターに居たお姉さんが、こちらも物騒なおっさんを二人連れて戻ってきた。


「こりゃ一体何の冗談だ? 俺達は装備を買いに来ただけなんだが・・・」


「フフフ、たまーに居るのよねあなた達みたいに若い子。自分を勇者と信じて疑わず、冒険者になって名を挙げようとするお馬鹿さんが♪ 私達はそんな無謀なことをさせないように、ここでその人に合ったお仕事を紹介しているのよん」


チッ、これは初犯じゃないな・・手慣れている。


「へへ、今日は当たりじゃねぇか。女の子二人は高く売れるぜ。男はアンタが食うのかい? それとも強制労働所に?」


「どういうことよ! 私達を売るって!」
「そ、そうですよ! こんなことをしてタダで済みませんよ!」
綾香とフィリアが抗議の声をあげるが、それは逆効果だ。お姉さん・・・眼鏡の女がおかしいとばかりに笑う。


「あはははは♪ タダじゃすまないわよー♪ お金がいっぱい入ってくるんだもの♪ さ、お仕事はすぐに終わらせないとね♪」
眼鏡の女が顎で指示を出すとおっさんが襲いかかってくる! 人間の敵は人間って本当なんだな!?
幸いこっちは三人だ、外に居るヤツラが押し入ってくる前に何とか・・・!!


「いただきまーす♪」
おっさんAが綾香に襲いかかり・・・返り討ちにあっていた。
右手にレイピア、左手にコントローラーを持ったまま的確におっさんの急所を突いていた。
体を動かすゲーム好きだもんなあ。それでも強い気がするが・・。


「陽! 後ろ!」
今度はこっちか、持っていた大剣を振り、刃ではない部分で殴り飛ばす。
結構派手にふっとんでいくおっさんB。あ、気絶した。


特に武器に振り回されるってことも無さそうだ、異世界補正ってやつか? これなら戦える!!


「フィリア! おっさんBを縛っておいてくれ!」


「え? え? ど、どっちですかあ!?」
しまった、俺の脳内振り分けが分かるわけない。


「陽が倒して気絶した方よ! 陽はその女をお願い!」
おっさんAと睨みあい、たまに切り結ぶ攻防をしながらフィリアに指示を出していた。
ちょっと見れば縛れそうなのはおっさんBだけなので、分かるけど良く即答できたな綾香よ!


「こいつら強い!? ”ピューイ”」
眼鏡の女が口笛を吹いたと同時に、映画とかアニメでよくある”首筋トン”をやって気絶させたが、入り口が騒がしくなる。しまった、突入の合図か!


「縛り終わりましたあ・・ひゃあああ!?」
のんきな声を出すフィリアだが、入り口近くなのでこのままでは狙われると思い、フィリアを抱きかかえ、カウンターへ放り投げる。抱きかかえた時におっぱいを揉んでしまった。ラッキースケベ万歳。


「こっちは終わったわ! こいつも縛っておいてね!」
綾香も戦闘を終え、入り口に集中する。ゲームでもこういうシチュエーションは何度かあった。やることは一つ。
綾香と顔を合わせて頷き、右と左へ散開。


「ヒャッハー!! 仕事仕事ぉ!!」
モヒカンが入り口を蹴破って入って来た瞬間、綾香がレイピアで足を引っ掻け、躓いたところを俺の大剣が後頭部へヒットする。小学生の時、綾香をいじめていた集団を同じ方法で倒したことがあったのだが、覚えていたようだ。


次々に入ってくるゴロツキだが、一人目がぶっ倒れているのでそれに躓くか、避けて俺達に殴られるかの2択を迫られ慌てふためくゴロツキども。


「このガキども強ぇじゃねぇか!? おい、逃げるぞ!!」
ピンクのモヒカンにトゲ肩パットという世紀末な格好をした恐らくリーダーであろう男がイの一番に逃げていく。
それを追い掛けて我先にとどんどんこの場から離れていき、辺りが静かになった。


「・・・何とかなったか・・?」


「みたいね・・・」


<敵残存勢力ゼロ。お疲れ様でした。我々の勝利です>
抑揚の無い、機械的な女性の声で労ってくれる綾香のコントローラー。


「というかコレどうりゃいいんだ?」


「店主っぽいあの女を警察みたいなところへ引き渡せばいいんじゃない? ちょっと調べてみるわね」
コントローラーをカチカチと操作していると綾香が「あっ」と小さく声をあげたのが聞こえた。


「どうした?」


「何か青いアイコンが近づいてくる・・・これってどういう意味?」


<説明します。青いアイコンは味方、もしくはそれに近い状態の人間になります。恐らく騒ぎを聞きつけて来た警備兵達でしょう>


コントローラーの説明とほぼ同時くらいに、ガチャガチャと金属を響かせながら数名の男たちが店の中へ入ってくる。
いかにもって感じだと言えば伝わるだろうか? 鎧兜の騎士みたいな感じだ。
そして先頭にいた金髪のイケメンが店へ入るなり叫びだす。


「やいやいやい、全員そこから動くなよ! 今日が年貢の納め時だ! 詰所で洗いざらい吐いてもらうぜ、ちくしょうめ!」
金髪イケメンは時代劇の岡っ引きみたいなセリフを叫んでいた。
見た目とのギャップがすごい・・・!


「ってぇ、何だ? ゴロツキどもは全員ぶったおれてるじゃねぇか? 奥に居るのは店主か・・? おいおめえ達がやったのかい?」
目を細めて俺と綾香、そしてフィリアを見て品定めするように声をかけてくる。まあ問題にはならないだろうけど、とりあえず俺が返答する。


「ええ、俺がやりました。いきなり襲いかかられたんで、やむを得ず・・・・」


「へえ! やるじゃあねぇか。最近の若いものしちゃ骨があるねえ! 実はこの店は人身売買の組織とつながりがあるってぇ噂があってな。武器を買いに来た初心者を脅して攫うってぇ話だったが、おめえさん達のおかげで芋づる式にひっとらえることができそうだぜ! この町も領主が変わって物騒になっちまってなぁ、詐欺や人さらいみたいな犯罪が横行してるんだわ。おい、おめえら、何ぼさっとしてやがるんだ、さっさと連れて行かねぇか!」


金髪イケメンが指示を出すと、部下たちがゴロツキを次々と連れて行った。


領主が変わって犯罪が増えたって・・? ならフィリアの言っていた「領主様がとてもいい」ってのはもう過去の話ってことか?


色々考えることはあるが、そうしている内に眼鏡の女が目を覚ましたようだ。


「な!? こ、これは・・・・あいつらがやられたってのかい!?」
縛られてジタバタしながら、目の前の光景に驚く。俺は女に近づき、耳元で呟く。


「(そうだ、俺達が倒した。運が良かったな、もし綾香とフィリアに何かあったらタダじゃおかないところだったぜ? こっちは勇者だってことは言ったよな?)」
勇者っぽいセリフではないが、できるだけ冷たく、冷徹に呟くと、女は震え出しがっくりと項垂れてしまった。


「何て言ったんでしょうか? 卑猥なことですかね?」
「どうせおっぱい揉ませろとかじゃない?」
カッコいいシーンが台無しじゃねぇか!?


「お前等俺を何だと思ってんの!?」


「色欲の権化」
「えーっと・・おっぱい魔人?」
仲間だと思っていた二人は容赦が無かった。どうやらこの異世界で俺の味方は居ないらしい。


「どうせ俺は淫獣で鈍獣ですよーだ・・・っと?」
俺が拗ねていると、イケメンが女を抱えて俺達に声をかけてくる。


「事情聴取ってぇヤツが必要なんだわ、悪ぃが一緒に来てくれねぇか。まあくれねぇかとお願いした感じだが、実は強制だからな? はっはっは!!」


いつになったら飯にありつけるのだろう。
俺の頭はそれを考えるのが精いっぱいだった。

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