異世界を8世界ほど救ってくれって頼まれました。~本音で進む英雄譚~(仮)

八神 凪

1-4 コントローラー

25回。






何の数字かって? 宿屋へ辿り着くまでに綾香とフィリアがナンパされた回数だ。


あの後、路地から脱出した俺達は、面倒事になる前に宿屋を目指していた。
直線距離にして300mくらいだったが、どこから湧いてくるのかと思うくらい声をかけられ、お断り(物理)をするのが大変だったというわけである。8割くらい綾香が追い払っていた。
フィリアに「勇者様がしちゃいけない顔してますよ」と言われたが気にしないことにする。




「やっと一息つけるわね! ちゃんと鍵かけた?」
綾香がベッドへ腰掛け、食堂からもらってきた水を飲み干す。


「ああ、これで ”一応” 安全なはずだ」


「魔法がありますからね、この世界。油断しないでいきましょう」
速攻で誘拐されかけた人の言う事ではないけどな!!


「とりあえずコントローラーを確認してみよう。綾香も受け取ったろ?」


カバンから良く知っているコントローラーを取り出す。色はシンプルなブラック。
左手に十字キー、右手に1~4のボタンと、上部にLRボタンの1と2が搭載されている。
真ん中程にスタートとセレクトボタンがあり、その上に小さい液晶画面も搭載されていたりするごく普通のコントローラーだ。


「私はピンクね。さっき買ったやつ?」


「だな、それしかなかったからそれにしたんだよ。青とか白は新品しかなかったからな・・」
中古でも高い昨今のコントローラー。改造されたと知った時の俺の気持ちは想像に難しくないと思う。


まあ今更言っても始まらない。綾香が使うならピンクでちょうど良かったと思おう、それじゃさっそくスタートボタンを押してみるか。


「スタート、と」
ピコンと、機械音が鳴った瞬間に画面の液晶が点滅する。
綾香も押したようで、画面が明るくなっているのが分かる。


「電池とかどうなってるんだろうな・・・本体から充電するタイプだったはずだけど」


「あ、多分ハーレルさんが改造して、魔力で動くようになっているハズですよ!」


便利だなあ魔法。そういや魔法書も預かってたっけ。
しばらく待っていると、液晶画面に赤い髪の女神が映し出されてきた。


『あ! きたきた! 良かったー起動したのね? 禿が役に立たないから、私が慌てて通信が取れるようにこっちの環境を整えたわ! テレビ電話みたいなものだと思ってちょうだい』


「わ! ル、ルア様!? メントル様はどこへ行ったんですか?」
なるほど、この赤い髪の神・・名付けて、赤い神はルアというのか。
そしてフィリアがこの世界の管理しているはずのメントル様の姿が見えないことに違和感を覚えていた。


『ちょっと地球侵攻を食い止めるのに交代で行っちゃったわ。だから、チュートリアルはわたしがやるわね』


「チュートリアルって言うな・・・まあいいか。 それで、このコントローラーは一体何ができるんだ?」


『よくぞ聞いてくれました! それはね───────────────」


女神ルアの話によるとこうだ。


【自ステータス確認】
スキルやレベルを見ることが出来るらしい。


【サーチ機能】
半径50m以内の味方と敵が判別できる。
ダンジョンの入り口が分かる。


【マップ機能】
歩いたところがマッピングされる。
ダンジョンは個別で登録される。オートマッピング。


まあここまでならよくあるRPGの機能だが、ここからおかしくなってきた。


【アイテム回収機能】
アイテム回収機能をONにすると、液晶にターゲットが現れ、対象に合わせてR2ボタンでカバンに回収できる。生き物は不可。


【魔法ショートカット機能】
4つまで登録可能。R1と十字キーの方向で放つことが可能。


【ターゲット機能】
敵を液晶上でタッチしロックできる。(魔法ショートカットと組み合わせてMPが尽きるまで連射可能)
味方を液晶上でタッチしロックできる。(回復魔法などを一括でかけることが可能)


【カーソル機能】
液晶に映ったカーソルを動かし、対象をクリックすると色々起こる。


【???】
レベル50以上で解放


【???】
レベル70以上で解放


※アップデートにより追加機能搭載します。


「カーソル機能の説明雑すぎない!? んでアップデートすんのコレ!?」


「まあ、使ってからのお楽しみと思うしかないわね・・」
綾香が脱力して何とか受け入れていた。


「ステータス確認と魔法のショートカットは便利ですねー。場合によっては雑魚をゴミのように蹴散らせますね!」


『そうそう、インターフェースが使いにくかったら言ってね、アップデートで修正できるかもしれないから。後、メニューの中にある”神と話す”をクリックしてくれたら私たちと会話することができるわ。質問があったら呼んでね。本当はこの機能無かったんだけど、ずっとあなた達を見ている訳にもいかないから、何かあった時に困らないように急ピッチで作ったわ!』


意外と心配してくれているのか、相談できるようにしてくれたらしい。というか数時間で作るとはあなたが神か。神だったな。
ソ〇ルブレ〇ダーの神はセーブしかしてくれなかったのにえらい違いだ。


「ありがとうございます、ルア様!」


『いいのよ、無理言って世界を救ってもらうのはこっちなんだし。とりあえず疲れたから一旦休むわね・・また何かあったら呼んで・・私が来るとは限らないけど・・ふああ』


スッと液晶からルア様の姿が消えメニューだけが残った。


「正直こんなに使えるアイテムに化けるとは・・・」


「マッピング機能は良いわね、迷ったら元の道に戻るのが簡単だし、町がどこにあるか分かれば移動とレベル上げも楽になるし」


「アイテム回収機能が気になりますけど、どうやるんでしょうね?」


「嫌な予感しかしないからとりあえず後に回そうぜ? いや、まずはステータスを確認するか? 魔法を覚えるのもいいが・・・」
俺はぶつぶつとこの先の予定を考えていると綾香に提案を出される。


「その前に・・お腹すかない? 私、晩御飯前にこっちに来たからお腹すいちゃった」
綾香がてへっと舌を出しながら頬を赤らめて照れる。
いつもこうならいいのにな、と思いながら俺の考えを述べる。


「その前にやっぱ装備だな。さっきのナンパラッシュを見る限り、何かトラブルに巻き込まれそうだからな。一応身なりは戦士を装っていた方がいいかもしれない」


「確かにそうかも・・うん、じゃあ少し我慢する(私のために考えてくれてるのね♪)」


はたして、俺達は武器防具屋を目指す。
どのルートを通ってもイベント(という名のアクシデント)が起きそうなのは気のせいだろうか?

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