ろりこんくえすと!

ノω・、) ウゥ・・・

3-63 闇ヲ照ラス天走ル疾風


 3-63 ヤミラス天走テンハシ疾風カゼ
 

 僕は風を纏って地を蹴った。

 捉えるのは暴走し破壊の限りを尽くすニゲル。巨大な闇の魔力は触れるだけで甚大な影響を与える。

 ニゲルの激昂は止まらない。このまま放置すれば黒の境界を闇で覆い、いずれはエルフの大陸までも消し去る勢いだった。

「石ころの分際で俺に屈辱を与えるなど舐めやがって! そこまで俺が憎いのか! 俺という存在を拒絶するのか! ならば俺も憎もう! エルフを! 自然石を! 世界を! 俺が滅ぼしてやる!」

 ニゲルの魔力が高まりを見せた。暗雲が立ち込め、暴走した魔力がバチバチと火花を散らして黒い電撃を走らせる。

 そして強すぎる魔力故に天蓋を貫き、空に巨大な魔法陣が描かれた。

「終わらせてやろう! 手始めにお前らゴミ共からだ!」

 魔法陣から槍の先端のような穂先が現れる。魔力の大きさだけで分かる。今からニゲルが発動する魔法は、黒の境界そのものを半壊させる程度の威力は持ち合わせていた。

「――させない」

 風が疼く。

「誰も殺させはしない。メルロッテも、エルフの大陸にいるみんなも! 僕がいる限りさせねえよ!」

 僕は人差し指に魔力を込めてニゲルに向ける。指先に風が渦巻き、一本の矢が生まれた。

 ウラノスがやっていた真似だ。魔力を最小限の大きさに集めれば密度が上がり、結果的に威力が跳ね上がる。

「風遁術奥義、」

 放て。

 力を込めて、穿て。

歪疾風いびつはやて!」

 それは全てを貫く突風の矢。目にも止まらぬ速さで放たれた歪疾風は闇を切り裂きニゲルに直撃した。

 貫通力に特化したこの技能は鋼鉄をも貫く。ニゲルの肩から胸が消し飛び、使おうとしていた魔法が中断された。

「こんのクソガキ共がああああああああああああああああああぁぁぁ!!!」

 怒りに支配されたニゲルが吠える。闇が蠢き、四方八方から闇魔法が襲うが当たらない。

 僕は闇の流れを抜けて肉薄する。

 前へ、前へ、前へ。

 風狂黒金を握り、ニゲルとは目と鼻の先だった。

 何も進化してるのは風遁術だけじゃない。戦いの中で別の技能も進化を果たしている。

「短剣術奥義、」

 黒塗りの刃が輝いた。

輝煌閃斬きこうせんざん!」

 ガッ!

 剣閃が散らばった。無差別に放たれた斬撃はニゲルをバラバラに切り裂き、瞬時に九つの部位に解体する。

「ぬああああああああぁぁぁ!?!?」

 以前の閃光斬を超える神速の斬撃の嵐。それが僕の新たな技能、輝煌閃斬だった。
 
「いくぞ」

 前にクラウディオとの戦いで生み出した複合技能、燐光疾傷。それは閃光斬と歪断風を合わせたものだった。

 閃光斬が輝煌閃斬に。歪絶風が歪疾風に。二つの技能が進化している今、燐光疾傷が昇華する。

「複合技能、風巻龍疾風しまきたつはやて!」

 放ったのは歪疾風と輝煌閃斬を合わせた複合技能。風狂黒金から風の斬撃が生まれ、龍を象った突風がニゲルを喰らい潰す。

「ふざけるなぁぁぁ!」

 それでもニゲルは不死身。散らばった肉片が吸い集められるかのように合体し、一瞬で再生を果たす。

「許さん.......! 許さんぞウェルトォォォ! 自然石を奪い、俺をここまでコケにしたお前だけは決して許さないいいいいいぃぃぃ!!!」

 ニゲルの頭上に特大の魔法陣が描かれ、強大な魔力が集まっていく。

 それに対して僕は静かに手を翳し、一言唱えた。

「殺風激!」

 黒い暴風が吹き荒れる。凄まじい風圧が発動していた闇魔法ごとニゲルを叩き潰す。

「なぜだ.......、なぜ、この俺が普人族にここまで痛み付けられているのだ.......!?」

 螺旋状に削られた大地からズタボロに引き裂かれたニゲルが立ち上がった。

「俺は選ばれなかった! だから研鑽を重ね力を蓄え強くなった! だがお前はなんだ! 数十年という短い時間しか生きていない普人族がどうして俺を越えられる!? 一体お前と俺の何が違うと言うのだ!」

 僕はニゲルを睨み付け、口を開いた。

「駄々こねてんじゃねえ! てめは逃げてただけなんだよ。何も変わっちゃいない。昔が弱かったって言うなら今も弱いままだ! ダークエルフだとか選ばれなかったとか言い訳付けて現実と向き合うとしなかったんだよ!」
「なっ.......!?」
「父親を殺した次は世界を滅ぼすとか言ってるけどな、そんなことはそこら辺の子どもでも口から出せねえよ。無関係の人間を巻き込んで、腹いせに当たり散らして、てめえはなんでもかんでも思い通り行くと考えてる赤ん坊以下だっ!」
「こ、このぉ.......! よくもよくもよくもおおおおぉぉぉぉぉぉぉ!!」

 ニゲルから闇の魔力が溢れる。両手から現れた暗黒の球体は、空を包むほど膨れ上がった。

「ウェルトさん!」

 メルロッテが僕の腰にしがみつく。

 でもな、もう大丈夫だ。僕が傍についている。

「しっかり見とけ、メルロッテ」

 僕はメルロッテを守るようにニゲルの前に立ち塞がった。見ていて欲しかった。彼女が自分を犠牲にしてまでニゲルから僕を助けた。だから、僕も応えなきゃいけないと思ったから。

「死ねッ糞餓鬼共! 何も無い暗黒の世界で一生悔いていろ! 闇魔法極意、虚無たるいしま!」

 ニゲルから全てを吸い込む暗黒の球体が放たれる。周囲の物を喰らいながら、僕とメルロッテへと落ちてくる。

 風狂黒金を上に放り投げた。

 聞いたことがある。技能の中には奥義と呼ばれる強力な技能の更に上の段階があると。

 それが極意。技能を極めた者にしか扱えないたった一つの到達点。

 風遁術の奥義は殺風激。そして、自然石により僕は殺風激のその上を行く最強の風遁術の技能を会得した。

 風狂黒金に風が靡く。次第に風は膨張を続け、それはひとつの小さな嵐となる。気付けば天気を変えてしまうほどの強風が起こり、空に浮かぶ雲が風狂黒金の元に吸い込まれていく。

「終わりだ、ニゲル。お前の野望も、企みも、全て僕が打ち砕く!」

 ニゲルを見定め、僕は膨大な風の魔力を解き放った。

「風遁術極意―――比叡颪ひえいおろし!」

 一陣の風の刃が現れた。翡翠色の剣閃は天へと飛んでいき、暗黒の球体と衝突する。

「ぐっ.......」
 
 風の刃と暗黒は拮抗し、風狂黒金の柄を握る僕が押され始める。

「ウェルトさん.......ウェルトさんなら、ウェルトさんなら負けないです! いいえ、絶対にあんな奴には負けません!」
「そう、だな.......! 僕はしつこいほど諦めが悪い人間なんだよな!」

 僕の後ろでメルロッテがはにかんだ。これから大国を担う小さなその手で僕の背中を押した。

「「いっけえええけええええええええええぇぇぇッッッ!!!」」

 風の刃が大きくなる。翡翠色の輝きが増し、暗黒を打ち破ろうと勢いを増した。

「馬鹿なッ!? ゴミカス如きに俺が負けるなどあっていいはずがないのだ!」

 凄まじい魔力の圧だ。暴風が辺りを薙ぎ払い、暗黒が辺りを消し飛ばしていく。気を少しでも緩めてしまうとたちまに吹き飛ばされてしまいそうだ。

 でも大丈夫だ。僕は今メルロッテに支えられている。ニゲルなんかに負ける訳がないんだから。

「失せろ」

 柄を握り締め、風狂黒金に全魔力を注ぐ。ガダガダと刃を鳴らし、嵐は踊り狂う。

「ニゲル、お前には王には似合わねえ」

 風が瞬いた。凄まじい風圧が暗黒の球体を貫き、ニゲルへと突き刺さる。膨大な風の魔力は肉片すらも残らず消し飛ばし、ニゲルは光の中へと消えていく。

「この俺が負けるなどっ.......がああああああああああああああああああああああああああああああああぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁッッッ!!!」

 闇が吹き飛び、黒の境界の奥地に光が射した。



「ろりこんくえすと!」を読んでいる人はこの作品も読んでいます

「ファンタジー」の人気作品

コメント

コメントを書く