ろりこんくえすと!

ノω・、) ウゥ・・・

3-44 世界魚は動かず覇を唱える


 3-44 世界魚は動かず覇を唱える


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 種族名 バハムート (幼体 生後68年)
 Lv 241

 .......。

 おい嘘だろ? もしかしてこれがバハムートなのか? 誰か嘘だと言ってくれ。

 ―やりましたねマスター。バハムートを一発で召喚できました。真・予測式決戦演算により、これで勝率が七割を越えます―

 まじかよ。こいつが正真正銘、空に浮かんでいるこのサンマがバハムートらしい。

 とりあえず色々と突っ込ませてくれ。

 生後68年で幼体ってなんぞや。え、こいつが成体じゃないの? 生物としておかしいだろ。つーか成体はどんだけ大きいんだよ。

 幼体ですら東京スカイツリー三本分ぐらいあるぞこれ。じゃあ成体はどんだけ大きいんだ。

 ―現在存在するバハムートの成体は一体のみですが、その個体のLvは600を越え、大きさは大陸二つ分ぐらいです。召喚すると物理的には勝利しますが、マスターはこの大陸諸共海の藻屑となります―

 なるほど。頭おかしい。

「フオオオオオオオオオオオオオオオオオオオオオオオオオオオオオオオオオオ」

 そして鳴き声が酷い。

 バハムートのダム並に大きい口がコポコポと泡を立て始めた。

 勘で分かる。波動砲だ。こいつ、水の圧縮を起こして水流のブレスを剣聖にぶつけるつもりだ。

 ―真・予測式決戦演算を発動。被害範囲が約半径80kmまでが更地となると予測。防御壁を展開するのとを強く推奨します―

「ちょっ!?」

 なんてもん呼び出しやがったんだ。召喚したのは俺だけどさ、流石にこいつはアウトだろうが! おいどうすんだよこれ!

 ―獲得できるスキルを検索。スキル『他力本願』を獲得しました。更に職業『召喚士』の職業レベルを強制的にレベルアップさせます。スキル『使役魔法』を獲得しました―

 ―他力本願―
 自身が相手に与えるダメージが大幅に下がるが、自身が使役してる奴隷、召喚に成功した者、パーティメンバーなどの協力者によるダメージを大幅に上昇させる。

 ―使役魔法―
 術者は召喚に成功した者が所持する魔法を無条件で扱うことができる。

 ―真・予測式決戦演算が発動。災害範囲が半径80kmから約半径140kmまで拡大しました―

 まてまてまて。防御壁を作らなきゃいけないのに変なスキルを獲得してバハムートの攻撃の威力を上げてどうするんだよ。

 ―不可抗力です、マスター。それより今から記憶領域に詠唱を書き込むので、呼び出した須佐之男スサノオに命令して結界を張ってください―

 なるほどな。それが狙いって訳か。俺は早速書き込まれた詠唱を頭の中で読んでみる。

 相変わらず痛すぎる厨二病の詠唱。俺の黒歴史に新たな項が刻まれるが致し方ない。

「万物流転。雨は大地に流れ自然を循環し、生命を繁栄させる。雨を司りし神よ、神秘の雫を垂らし顕現せよ!」
 
 俺は魔法名を大声で叫んだ。

「結界魔法! 雨之神あまがみ豪雨域ごうういき!」

 詠唱を終えたと同時に須佐之男から眩い光が放たれた。七支刀を地面にぶっ刺して水の魔力を大地に送ると、周囲を円を描くように水柱が立ち昇った。

 空へと上がった水柱は鳥籠のように俺達を囲み、激しい雨が降ってくる。

 これが結界魔法。凄いっちゃ凄いが、こんなもので半径140kmを消し飛ばすバハムートの攻撃を耐えれるとは思えない。

 ―安心してくださいマスター。真・予測式決戦演算の結果、どうにかなるみたいです―

 ほんとかよ。

「高位精霊に結界魔法。そして空に浮いている巨大な魚。ミナト殿、覚醒のスキルを獲得して随分と変わりましたな」

 刀で氷の塊を払い除け、剣聖が俺に向かって歩いてくる。

 八岐大蛇ヤマタノオロチ大氷河アイスエイジですら足止めにしかならなかったが.......今度のはどうかな、剣聖さんよぉ!

「おうよ。やれ、バハムート! あの老人を木っ端微塵にぶっ飛ばせ!」 
「笑止。図体だけがでかい魚如きに何が出来るとかいうので」

 その剣聖の言葉は、次の瞬間に覆された。

 バハムートの口から巨大な水弾が飛ばされる。それは地面に直撃すると大地が砕け、天まで登る水柱が立ち上がり、爆心地から一転、大瀑布へと変貌する。

「うわおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおお!?」

 水爆実験を軽く凌駕する爆発が目の前で起こる。洪水、津波、鉄砲水。水による災害は幾つか見てきたが、バハムートが放ったこの一撃は何もかもが規格外の一撃だった。

「なんだこれ!? バハムートの野郎、一体なんの技能を発動したんだよ! もしかして最上級の水魔法か!?」

 ―いいえ、様子見のウォーターバレットです―

「は?」

 ―バハムートが使った魔法は初級魔法のウォーターバレットですよ、マスター―

 あれがウォーターバレット? 規格外とかそんな次元じゃねえ。こりゃ勝率七割を越えるのが納得するわ。

 こうしてバハムートによるウォーターバレットの衝撃で俺は吹き飛ばされ、水たまりの中に何度も体を打ち付けた。

 これだけで済んでいるのは須佐之男が事前に俺を守っていてくれたお陰だった。

 俺と須佐之男を中心に雨之神の豪雨域とは別に水の防壁を作っていてくれたらしい。そのお陰で俺は吹き飛ばされただけで終わっていた。

 だが剣聖は違う。

 規模があまりにも広すぎるのでバハムートが放った一撃は確実に直撃した。これなら宣言通り木っ端微塵にぶっ飛んだ筈だ。

 へっへっへっ。ざまぁみろってんだ。

 ―敵性反応を確認。未だに健在のようです―

 刹那。大瀑布が真っ二つに割れ、モーゼの海開きが起こった。

 中から現れたのは知っての通り剣聖。大方アシュレイさんを倒した時に使った森羅万象って呼んでいた技能を使ったに違いなかった。

「さっきの攻撃を防いだのかよ!? インチキもいい加減しやがれ!」
「それはこっちの台詞ですぞ。召喚したのが脅威度S、その中でも生態系の頂点に位置している魔物とは。ミナト殿、お主は中々に侮れない」

 なんだよこのジジイ。あの攻撃を食らってもまだピンピンしてるみてえじゃねえか。どうやったら倒せんだよ。頭が痛いぜ。

「今すぐに殺してあげましょう。術士であるミナト殿さえ死ねば、精霊二匹も空に浮かんでいるデカブツも消え去りますからな」

 おいアナさんや。これって本当?

 ―はい。本当です―

 まじかよおい。召喚した奴らに俺の力は全部持っていかれるんだけど! いやまあ、元から無かったんだけども!

 剣聖の姿がまたもや掻き消える。気を利かせたアナさんが思考加速を使い、須佐之男が剣聖と斬り合っている光景を視界に映してくれた。

 須佐之男は高位精霊らしいがそれでも剣聖には到底適わない。須佐之男の斬撃は全て防がれ、隙を付かれてまたもやバラバラに切り裂かれる。

 防御に徹しろ、か。本当に正論すぎてぐうの音も出ないな!

鏡華氷像きょうかひょうぞう!」
「小賢しい真似を.......!」

 俺と瓜二つの造形で作られた氷の像が輪切りにされた。

 危ねぇ、思考加速が無かったらパイナップルみたいに斬られていた。やりやがったなこんちくしょう!

「ブライニクル!」

 お返しとばかりに使役魔法を発動。八岐大蛇から氷の棘柱が放たれるが、それも豆腐を切り裂く感覚でぶつ切りにされ、剣聖には何のダメージも与えられない。

 だめだこりゃ。やっぱりバハムートの攻撃を剣聖にぶち当てるしかねぇ。

「っと。どうすっかな」

 俺は剣聖から離れてぎこちなく立ち止まる。片腕を失った影響でバランスが悪い。何故か知らんが傷口は塞がってきているが、それでも早く決着付けねえと貧血で倒れちまう。

 空を見上げてバハムートの口元を見る。ぽこぽこと水が集まっていき、さっきのウォーターバレットよりも更に強力な魔法を使おうとしているようだった。

 ―ヴィザールの義眼を発動。次は中級水魔法のウォーターボールのようです。チャージ完了時間は約26秒。真・予測式決戦演算を発動。災害範囲は半径270km―

 残り26秒で今度は前より二倍の威力の水弾が飛んでくるってことか。どうにかしてぶち当ててやりてぇが.......まずは生き残ることを第一に考えないとだな。

 俺の足元が波打ち、下から須佐之男が姿を現した。

 精霊はどうやら精神体だけの存在らしい。須佐之男のように何度も体を斬られようが、傷付けられたのは現身である水だけであり、無限に復活するみたいだ。流石は俺の水魔法と氷魔法を引き換えに手に入れた精霊達だ。

「狙っておるのですな」
「.......なに?」

 牙を向けた八岐大蛇の首をチョンパし、剣聖はニヤリと口元を曲げて話しかける。

「お主の顔には焦りが見える。どうやらその精霊二匹では爺やの相手にはならないと考えていたのでしょうな。そして、」

 剣聖が人差し指を上に突き立てる。

「空に浮かんでいるデカブツでの攻撃でしか爺やを倒せない、と」

 バレていたのか? いいや、落ち着け。剣聖はわざと俺を焦られようとしている。誰の目から見ても俺の精霊達じゃ剣聖に勝てないのは明白なんだ。それをあたかも見破ったように指摘しているだけ。残り数秒でバハムートの攻撃が来る。むしろ剣聖と喋るのは時間稼ぎになるから俺の方が有利。

「いいでしょう。何度も蘇る精霊共は厄介ですな。ですが、裏を返せば、ミナト殿はデカブツを倒されてしまうと何の手も打てなくなる」
「なっ!?」

 剣聖が刀を地面に打ち付け岩盤を砕いて上に飛ばす。上に飛ばした岩を足場にして、何段も跳躍を重ねていき、バハムートへと一気に距離を詰める。

 ―マスター。敵性反応はマスターの殺害を諦め、バハムートへと向かいました―

「こいつ正気かよ!? まじでバハムートを倒そうとしているのか!?」

 俺は揺らぐ体をなんとか操りながら走り、いつ間にか落ちていた双眼鏡を手に取った。

 ―ウォーターボール発動まで残り2秒―

 レンズ越しに上を見上げる。

 刀を納めた剣聖が垂直に飛び上がり、バハムートの口のど真ん中に突っ込んでいく。

 バハムートの口に集まった水弾を見るにもう準備は完了している。本気だ。剣聖は真っ向からぶった斬るつもりなんだ。

 刀身が少しだけ鞘から顔を現した。そして剣聖は一番上に飛ばした岩を最後の足場にし、大きく跳躍する。

 剣聖がバハムートの頭の上を取った。バハムートも剣聖を標的に、ウォーターボールを撃とうと構える。

 剣聖はバハムート世界魚を下に、静かに呟いた。

「剣術極意。――森羅万象」






 テスト前なので次回の更新はお休みです。次の更新は7/5の金曜日の予定となります。気長にお待ちください。

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