ろりこんくえすと!

ノω・、) ウゥ・・・

3-34 深まる疑惑。確かな危機感



 3-34 深まる疑惑。確かな危機感


「ナル! 剣聖はいるか!?」

 ボロ小屋から飛び出した僕はへとへとになりながらも、痛む体に鞭を打って王城まで来ていた。そこで入口前の庭掃除をしていたナルに僕は慌てた口調で話しかける。

「え、ウェルトさんは何か剣聖に用があったんですか? それならすれ違いでしたね。剣聖はまだ避難しきれていないエルフを見つけて保護するために、さっき一人で出ていきましたよ」
「くそっ! 遅かった!」
「ウェ、ウェルトさん!?」

 僕は悪態をついてこの場から走り出した。

 まずいぞ、最悪の展開が見えてきた。剣聖が出かけたこと。この行動で、僕の頭の中に思い浮かんだ結末はじわじわと現実味を帯びてきた。

 まだ避難しきれてないエルフの保護? そんなの嘘っぱちに決まっている。

 これは可能性の話だ。

 もしも、剣聖が黒い魔物の感染源をばらまいている張本人だとしたらーー。

 このタイミングで王城から抜け出す、しかも単独で出ていくのは、ほぼ剣聖が犯人だと確定したようなものだ。

 目的はエルフの救出なんかじゃない。本当の目的は黒の境界に赴いて感染源の採取だ。

 エマは僕の身体から特効薬を作り出せると言った。つまり一週間、いやそれよりも少ない日数で僕と同じ抗体を持ったエルフが出てくる。

 出てきてしまう・・・・・・・

 感染源をばらまいている人間ならこう考えていただろう。王城に集まっている奴らを一網打尽にしてしまえばいいと。

 でもその計画は他でもない僕とエマのせいで失敗する。僕の抗体から特効薬が作られ配られてしまうからだ。

 では、その事実を知った感染源をばらまいていた人間はどう動くのだろうか?

 想像は難しくもない。絶好の機会を逃さない為にも、今すぐに感染源をばらまいてエルフ達を死滅させる。苦渋の選択かもしれないが、犯人にはそれしか方法がない。

 エマは分かっていたんだ。なぜ、犯人がいる場所で計画を破綻させるような発言をしたのかを。目論見通り、犯人を炙り出すことを考えていたに違いない。

 そして、その意図を他でもない僕に託しやがった。僕が犯人に気付く人間だと知った上で。

地図作成マッピングッ!」

 地図作成を発動。僕達は黒の境界の近辺からこの王城までやってきた。更にはこの大陸は半ば島のようなもので面積はあまり広くはない。

 黒の境界までの最短ルートが割り出せるはずだ。正直、剣聖がどんなルートで黒の境界に行くまでは分からないが、待ち伏せなら確実に合流する。

「とにかくアシュレイかエキューデを見つけないと」

 待ち伏せするのは確定事項。でも次の問題がある。

 剣聖と戦闘することになった場合、僕だけの戦力では明らかに不足していることに。

 まず勝てない。例え僕が万全の体調だったとしても、『覚醒』のスキル使えない僕は剣聖に勝てるかさえも怪しい。 だから出来れば二人、少なくとも片方の戦力が欲しい。

「でも.......」

 もしも、剣聖が何かしらの方法で既に感染源の採取をし終えていた場合、王城には剣聖の行動を止められる人間がいなくなってしまう。

 はっきり言えば、この大陸では剣聖とオウカ以外で強い人間はいない。剣聖とオウカがその気になれば皆殺しだって簡単に出来てしまう。

 エキューデとオウカ。どちかはここに残しておかなちゃいけない。

 こんなことを考えたくもないが、オウカが剣聖と同じ共犯者の可能性もある。オウカがそんなことをする人間には到底思えないが、それと同じように信用も出来ない。

「ここから近いのはエキューデに割り当てられた部屋だ」

 とにかく時間がない。だけど焦っちゃだめだ。これから僕が行う選択は大勢の命がかかっているのだから。

 僕は短い間逡巡した後、エキューデの部屋まで駆け抜けて扉を空けた。

「エキューデ! エキューデはいるか!」

 ガチャン!

 勢いよく扉を開くと何かが倒れて崩れる音がして、机の上に木で作られた細長い長方形のブロックが散らばっていた。

「ああっ!? ジェンガが崩れた!?」
「ふはははははっ! どうやら我の勝ちのようだな! ミナト! 貴様の罰ゲームはこれから一週間、語尾に~だぴょんを付けることだ!」
「ちくしょうだぴょん! エキューデ如きに負けたんだぴょん! 悔しいんだぴょん!」
「んなことやってる場合じゃねぇんだよ!」

 僕は勝ち誇った顔して高笑いをしているエキューデの裾を掴むと引っ張った。

「ミナト! 剣聖を見かけたら注意しろ! あとアシュレイを見つけて伝えておいてくれ! 行くぞエキューデ!」
「ちょ、えっ? 剣聖に注意しろってなんだよ.......だぴょん」
「何をする小僧! は・な・せー!」



 ◆◇◆



 森の中を僕は疾走する。だけでいつもより調子が出ない。当たり前だ、怪我の影響で上手く走れないからだ。

「小僧、事情を説明しろ! 何をそんなに焦っているんだ!」
「感染源をばらまいているのが剣聖かもしれないんだ!」
「なんだとっ!?」

 隣で走っているエキューデが飛び上がるほど驚いた。

「感染源が黒の境界のものだとも分かったんだ。元々、感染源は千年前に禍夜が作ったみたいなものらしい。剣聖は黒の境界から感染源を持ち込んで蔓延させていたんだ」
「根拠はあるのか?」
「ある。剣聖は魔力が殆どないんだ。つまり、この大陸の中で唯一黒い魔物にならない人間で、唯一黒の境界に足を踏み入れて感染源を採取できる人間だったんだ」

 なんで僕はもっと早く気付けなかったのだろうか。剣聖に会う前にエマは黒い魔物は魔力を吸い取って生まれてくると見破っていた。それを聞いて尚、僕は魔力を持たない剣聖のことを疑いもしなかった。

 いや、こんなのは言い訳でしかない。ユリウスの記録を見てやっと気付けたのだから。

「僕の血液から抗体が作られようとしている今、剣聖は黒の境界に行って感染源を採取しようとしている可能性が高い。せっかく王城という箱庭に集めて一網打尽にしようとしていたのに、その計画が失敗に終わってしまう事態になった。だから、」
「黒の境界で待ち伏せ、というわけだな」
「うん、エキューデに頼んで正解だった」
「事情は分かった。召喚、下級死霊!」

 エキューデが口笛を吹くと、地面がボコボコと浮き上がり鳥の骨で作られたアンデッドが無数に現れる。そいつらはガチャガチャと骨の擦れる音を立てながら、蜘蛛の子を散らすように別れて飛んでいった。

「我の意思で剣聖を探すように命じた。情報が得られるかもしれない」
「憎たらしいぐらい、頼りになる!」
「そうでもない。本当は大型のアンデッドを召喚したいのだが、前に力を使いすぎたせいで碌に強化も出来ん。召喚しても脅威度クラスが精々なのが痛いところだ」
 
 それでも充分だ。エキューデはよくやってくれた。

「急ごう、手遅れになる前に」

 止めてやる。絶対に。

 剣聖の企みを止められるのは、僕達だけなんだから。



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