ろりこんくえすと!

ノω・、) ウゥ・・・

3-33 残された記録、ユリウスのヒント


 3-33 残された記録、ユリウスのヒント


「うぉ、まじか! 夢の中と同じ場所だ。夢に出ていた時よりも更に寂れてボロボロになってるけど絶対にここだ!」

 僕はしばらく道無き道を進み、森の中にひっそりと佇むボロ小屋を発見した。

 急いで近寄って錆び付いた扉に触ってみる。かなり年月が経っているようで、ドアノブがフジツボの住処みたいに錆でボコボコだ。

「よいしょっと! あ、あかねぇ.......。怪我で力が入らないのか」

 思いっ切り力を入れてみたが錆付いた扉はビクともしない。怪我のせいもあるが、僕の筋力のステータスが低いだけなのかもしれない。

「困ったな。正攻法は諦めるか」

 僕は眉をへの字に曲げて、扉から少し離れた小屋の側面の前に歩いていった。

 この小屋は木材で作られている。ならば長年の月日が経った影響で劣化していたり、腐食が進んでいる可能性が高い。

「旋風脚!」

 しなりのある、柔らかいものが壊れる感触が僕の足に伝わった。小屋の一部は僕の旋風脚で壊され不器用な穴が空いた。

 あまり褒められた行為ではないけど、これで入れるぞ。

「よっと。中はどうなってるんだろ」

 そっと中に入ってみる。小屋の中はかなり散らかっていて、ガラクタやゴミがあちこちに散乱していた。

 蜘蛛の巣が天井の隅っこに作られていたり、足元にゴキブリやムカデがいたり、見た目通りに長いこと放置されていたままだったらしい。

 手当り次第に小屋の中を僕は漁る。欠けたコップ、何かの布切れ、くしゃくしゃに丸められた紙、油の切れたランプ、傷んだ何かの紐。

「だめだ、ガラクタしか見つからない。何かある気がするんだけどな」

 ボヤきながらも僕は手を止めない。しばらく床の上を漁っていると、傷んだ木材の破片に何かが埋まっていることに気が付いた。

「なんだろう?」

 慎重に拾ってみる。僕が手に取った黄ばんだ紙の束はずっしりと重かった。

 一枚捲ってみると、短いながらも文字と日付が書いてある。空気に長いこと触れて文字が掠れているが、なんとか読める状態だ。どうやら何かの記録みたいらしい。

「やっぱり。この錬金術師である証の五芒星の紋様。夢は本当だったんだ」

 紙の隅にはあの紋様が手書きで描かれていた。

 それが証拠。この記録を記した人間は正真正銘、ユリウス=ナサニエル。

 ゴクリと生唾を飲み込む。震える手付きで、僕は上から一枚ずつ読んでいった。



 ◆◇◆



 ○月✕日。あの方から力を授かってからもう三年。自由な時間は沢山あるのだが、有意義に使っていても暇だ。この場所での実験は飽きてきたし、別の場所に行こうと考えている。

 ○月✕日。街を歩いていたらエルフの事柄が耳に入った。なんでも捜索隊が脅威度B相当の魔物に遭遇して壊滅したらしい。未踏の地の開拓計画は失敗に終わり、しばらくは延期する話だった。エルフの大陸か、面白そうだ。 

 ○月✕日。私は準備に取り掛かった。実験道具や機材を詰め込み、ありあまる金を使って船を買った。独り身の上に友人もいない身軽な私は用意するのも早かった。

 ○月✕日。エルフの暮らしている大陸に到着した。ここでしか見られない動植物を観察するのが楽しみだ。現地民のエルフと交流してみるのもまた一興。暫くは飽きはこなそうだ。

 ○月✕日。早速エルフと交流した。聞いていた通り、まだ普人族にはあまり友好的ではないようだ。幾つかの貴重な治療薬と引き換えに、私はこのボロ小屋を自由に使っていいと言い渡された。実験施設にしてはまあまあだが、出来れば掃除ぐらいして欲しいものだ。



 ◆◇◆



 ボロ小屋ってことは、正にここになるのか。夢の通りにユリウスはここへ来ていたんだ。

 どうやら次の紙から真相に迫って行く気がする。おそるおそると、汗ばんだ指先で僕は紙を捲る。



 ◆◇◆



 ○月✕日。私の小屋、もとい実験施設に黒肌のエルフが顔を覗かせた。最初は警戒心が強かったものの、まだ子ども故にすぐに打ち解けられた。

 ○月✕日。黒肌のエルフはダークエルフという種族らしい。彼の様子から見るに、他のエルフから虐めを受けているらしい。虐めと言うより差別と言った方がしっくりくるな。周りからも煙たがれて相手にされないようだ。

 ○月✕日。黒肌のエルフとはよく話すようになった。熱心に話を聞く上に利口だ。私と同じ普人族よりも好感が持てる。それにしても暇潰しついでに魔法を教えてみれば驚いた。なんと彼はものの数分もしない内に習得してしまった。私から見ればかなり素質が高く産まれてきたらしい。話すのもよし、教えるのもよし、私はいい暇潰し相手に恵まれたようだ。

 ○月✕日。黒肌のエルフの適正属性は闇。それ以外はそこそこ、と言ったところか。とにかく闇魔法がずば抜けて威力、精度共に非常に高いレベルで纏まっている。逆にその反動か光魔法はまるで扱えなかった。まあ仕方ない。誰にもそれぞれ得意不得意があるのだから。こいつの教育方針はとにかく長所を伸ばしていくことにしよう。

 ○月✕日。幸運にもタイラントグリズリーの子どもを捕獲した。母親が産んだ直後に力尽きて死に、子ども一匹だけが残されていたからだ。ここはいい場所だ。強力な魔物がひしめいているから実験が捗る。タイラントグリズリーの他にもヒポグリフも生息しているらしい。ぜひ捕まえておきたいものだ。野山を使って放し飼いをしてみよう。



 ◆◇◆



「ここだ。ここが、僕が夢で見た日の日記なんだ」

 夢のシーンは熊型の子どもの魔物とユリウスと男の子が話していた場面だった。この日こそが、僕が覗いた日なんだろう。

 それにしても以外だった。ユリウスの以外な一面が垣間見えた気がする。

「..............」

 僕はユリウスを殺した。 リフィアの魂を奪ったユリウスを倒すべき相手だと決め付けて、この手で葬った。

 でも、何かのきっかけで出会いが違えば、僕はユリウスとは全く違う関係を持っていたのかもしれない。

 そのことが少し怖くて、なんとも奇妙に感じた。

 感慨にしばしの間浸った僕は、紙を捲り続きを読もうとした。

「げ、こっから腐食が進んで紙がダメになってる。参ったな」

 湿気のせいだろうか。紙が腐った上にふやけてどう頑張っても文字は読めなかった。

「仕方ない、読める状態のところまで捲っていこう」



 ◆◇◆



 ○月✕日。いつもの暇潰しで黒肌のエルフに座学を教えていた。今日はエルフ共が住む大陸の近くにある、黒の境界についてだ。

 数百年前、禍夜かやと呼ばれる魔王による影響のせいで出来てしまった場所だ。古い記述によると禍夜は類を見ない固有属性を持っていたらしく、その固有属性を使って黒の境界を作り出したらしい。

 禍夜の固有属性については私にも分かっていない。いや、誰しもが理解の範疇を越えて分からないのが正しい。ただ明らかなのは、禍夜の固有属性は極めて危険な属性を持っていたことだけだ。

 あの場所は謎のウイルスが蔓延している。禍夜が意図して発生させたものだろう。このウイルスがひとたび体内に入ったならば、瞬く間に魔力を搾り取られて死んでしまう恐ろしいものだ。

 黒肌のエルフも詳しいことは知らないらしい。誰も行こうとはしないと話していた。

 いつか行ってみたいが、物理的に入れないのがもどかしい。少々危険だが、ウイルスの元さえあれば研究は出来そうだが.......。



 ◆◇◆



「なっ.......!?」

 以外な所で繋がった。黒い魔物の正体。それは禍夜が作り出したモノなのか?

 呪われた不毛の地。草木一本も生えていなとされる黒の境界。その根本にあった理由は黒い魔物となってしまう感染源が溢れているせいなのか?

 確かに辻褄は合う。感染源のせいで生物は残らず死んでしまうのなら、動物は生き残れない。植物も動物の糞や死体から養分を取らなければ生きていけないからちゃんと理由が付けられる。

「だとしたら.......」

 もし、感染源が黒の境界から持ち込まれたものだと仮定したら?

 だけどひとつだけ問題がある。ユリウスの記述通り、黒の境界に行くのは自殺行為も甚だしいからだ。行けば最後、感染源によって全身の魔力が搾り取られて死ぬ結末だけが待っている。

 僕みたいに魔力回路が壊れ、魔力がほとんどない人間ですら血管が破けて血祭りになる有様なんだ。誰も入れやしないだろう。

「お手上げだ。こんなの、魔力が一切ない人間しか生きて戻ってこられないじゃな.......!?」

 ハッ、と呟きながら僕は気付いてしまった。

 いる。魔力が一切ない人物を、僕は一人だけ知っている。

「もしそうだとしたら.......!?」

 僕の背筋に嫌な汗が流れた。

 エマの警告は本当だった。急がないと、取り返しのつかないことになる。



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