ろりこんくえすと!

ノω・、) ウゥ・・・

3-22 ストーカー

 

 3-22 ストーカー


 僕は急ぎ足で厨房から抜け出し、外へ出る為に通路を歩き出す。横目で見ると、後ろからオウカがズンズン大股歩きで追いかけてくる。

 ええい、めんどくさい奴め。堂々とストーカーする人間ほどめんどくさい人種はいない。

 歩く速度をあげる。動きはただの早足なのだが、俊敏のステータスに全振りした僕の速さは全力疾走に値する。

 まるで風が通り抜けていくように、忙しなく働いているエルフ達の間を颯爽と抜けていく。

 これならオウカも追いつけまい。と思っていたが、負けずと縮地術を使って僕を追いかけてくる。

 おいおい、技能を使ってまで追いかけてくるのかよ。どんだけ負けず嫌いなんだ。

 縮地術はクラウディオとの戦いで身をもって体感している。箭疾歩せんしっぽより稼げる距離は下だが、それを踏まえても使い勝手は上だ。

 全く、なんでこんな技能をピンポイントで使ってくるんだよ。

 内心で舌打ちをする僕だが、早歩きしていたお陰で既に出口までもうすぐだ。僕は外へと繋がる扉を開くと、すかさず箭疾歩を発動。目にも止まらぬ速さで飛び出していく。

 早歩きですら僕の異常なまでの俊敏の高さ故におかしなことになっていたんだ。その僕が、箭疾歩を使えばどうなるかは少し考えてみれば分かるだろう。

「よし、撒いたな」

 そよ風が吹く草原の上で僕は寝っ転がる。ここは王城から歩いて三十分ほど離れた場所。ここならいくら縮地術を持ったオウカでも追いつけまい。

「残念だったな。拙者を撒くのは無理なようだ」

 僕の目の前に汗だくになったオウカの顔が映った。

 うわ、汗を垂らしてくんな。汚いからやめてくれ。

 僕は立ち上がってオウカから距離をとると、少し離れた場所で再び寝っ転がる。手を払い除けるように払うと、オウカにあっちに行けとジェスチャーで伝えて僕は不貞寝を始めた。

「僕は忙しいんだ。早くどっか行ってくれよ」
「ただ寝そべってるだけだろ」
「休むのに忙しいんだよ」
「何故だ。何故、姫様はこんな駄目人間を気に入ってしまったんだ」

 失礼な奴め。昼からまた忙しいのが分かってるのに、休まないでどうするんだ。休息は大事だろ。

「お前をここまで追いかけてきたのは他でもない。拙者と手合わせさせる為だ」
「なんでだよ」
「拙者は武人。相手と対峙し、戦うことで相手を理解出来るというもの。お前と戦えば浅ましく愚かなな考えが筒抜けになるのだからな」

 不敵な笑みでオウカは剣を抜く。後から聞いた話だが、オウカの使う剣は刀と呼ばれる反り返った珍しい代物だ。

「よーし、戦うぞー。ぐわー。強すぎるー。オウカの威圧だけで膝がガクガクになってもう立てないー。僕の負けだー」
「なんだその棒読みは! 演技力ゼロか!」

 初手降参した僕の胸倉をオウカは掴んで引き寄せて怒鳴り散らす。

「おいおい、そりゃないぜオウカさんよ。それにさ、剣聖が言ってたんだよ。『真の武とは、相手の全貌を吸収する引力の練磨。例え立っているだけでも、相見えるだけで理解ができる』って。だから僕と戦わなくても理解ぐらいできるだろ」
「なっ、ぐぅ.......っ!?」

 握る力が緩まったオウカの手を突き放すと、今度こそ僕は不貞寝を開始した。ぷるぷると小刻みに震えるオウカの様子は怒り心頭と言ったところか。

「だ、だかな! お前がパティシエなんぞ舐めた職業ではないことは分かっている!その身のこなしといい、使っている技能といい、只者ではないことは間違いない!」
「確かにそうだ」
「そうだろう、そうだろう。.......えっ?」
「僕はパティシエの職業についてないよ。ご名答。職業はパティシエとは無縁の戦闘職だ。でもさ、戦闘職だからってパティシエを名乗ったらダメなルールとかないじゃん?」
「うっ.......!?」

 虚をつかれたように、オウカは目を見開いて言葉に詰まる。

「仕方なかったんだよ。旅に危険は付き物なんだからさ。これまで沢山危険な目にあってきたし。身を守るためにはそれ相応の戦う力を身に付けないといけなかったわけ」

 言い返す言葉がないのか、オウカは口を噛み締めて完全に押し黙った。

「ほら、用は済んだろ。どっかに行ってくれ」
「だが断る。普人族は信用ならんからな。お前は拙者が監視していなければいけない」
「そんなこと言ったら僕の仲間達は全員疑わしいだろ。特にエキューデって奴は怪しいぞ。あいつの持ち物を一度漁ってみろ。毒物と得体の知れない物がわんさか出てくること間違いなしだ」
「仲間を簡単に売る下衆め.......」

 どうやら意地でもオウカはここから動かないらしい。本当に面倒な奴だ。

「あ! お兄ちゃんお兄ちゃん!」

 そんな時、草原の向こう側から可愛らしい声が聞こえてきた。目を凝らせばリフィアが瓶を片手に走ってくる。

「お、リフィアか。よしよし、可愛い奴め」

 胸に飛び込んできたリフィアを抱きしめて頭をナデナデする。

「あのね、この大陸で採れる大樹の葉からエルフ秘伝の飲み薬を作ってみたの! 飲んで欲しいの!」

 リフィアから水色の透明度が高い薬品を受け取った。前に栄養剤もくれたし、これもリフィアなりの僕の気遣いだろう。ありがたく頂くとする。

「へー。お味はっと.......。うげ、苦い」

 飲むと鼻から爽やかな爽快感が突き抜けていく。味は苦い。そして後味に舌先がピリッと痺れる。

 良薬口に苦しと言うが、やはり苦いものはあまり得意じゃない。

 しかし、折角リフィアが作ってくれたんだ。僕はごくごくと飲み干していく。

「この飲み薬は凄いんだよ? なんでも精力増強の効果があるらしいの」
「ブフォッ!」

 僕は口からエルフ秘伝の飲み薬とやらを吹き出した。

 言い換えれば精力剤じゃないか。昼間からなんてもん飲ませてくれてんだ。もう半分ぐらい飲んでしまった。

「前から気になっていたんだが、リフィアとお前は一体どんな関係なんだ? お兄ちゃんと呼ばれたいたり随分慕われているが.......」
「彼女」
「ロリコン.......」

 もうその言葉は聞き慣れた。金剛石並の硬さとなった僕のハートは何も響かない。

「リフィア、ダメ元で聞くけど性欲を鎮める薬ってある?」
「作ってないの」
「ちくしょう! 体動かしてくる!」

 僕は残った精力剤をリフィアに押し付けると勢いよく起き上がった。

 性欲を抑えるには運動したり肉類等を避け、豆や野菜等の穀物を摂るといいらしい。変な知識ばっかり仕入れてくるミナトから聞いた話だ。

「いいんだよ? お兄ちゃんの目の前に性欲の捌け口があるんだから」

 誰だ、こんな早熟餓鬼ませがきになるように教育したのは。やはりリフィアの両親か。



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