ろりこんくえすと!

ノω・、) ウゥ・・・

3-19 次の目的地



 3-19 次の目的地


 僕達は休憩を取った後、村を離れ次の行き先を歩きながら相談していた。

 地図作成マッピングで作った地図を見る分には、どうやら僕達がいる現在地はこの大陸の南東辺りらしい。

 このまま先に進めば海に出るそうな。やはり大陸と呼ぶよりは島と呼んだ方がしっくりとくる。

「お兄さん、お城に行きたい」

 地図を片手に僕達は話し合う。その中で、アシュレイの横を歩いていたエルフの子どもはそう言った。どうやらもう自分で歩けるまでに体調は回復していたらしい。リフィアの看病様様だ。

「お城? エルフの王族が住んでいる所か?」
「うん」

 城、か。村を回って生存者を見つけるのも考えていたが、この子が城の場所を知っていたとすればそちらの方がいいかもしれない。

 裏を返せば余程のことがない限り他のエルフがいるだろう。つまり、何かしらの事情も聞けるかもしれない。それに王族がどうやら魔力回路の治し方を知っているみたいだし、僕の目的と一致しているのもあった。

「よし、次はそこを目指そうか。王城となれば警備も厳重そうだし安全に君を送り届けれそうだ」
「ふむ、小僧の言葉には一理ある」

 エキューデがはや一番に頷く。周りを見渡せば他のみんなも賛成なようだ。
 
「ねぇ、お兄さん」
「どうしたんだ?」
「お兄さんは、ぱてぃしえ? の修行でここに来たんでしょ。どうしてここまでしてくれるの?」

 確かそんなこと言ってたな、僕。自分で付いた嘘だけど一日経ったらすぐさま忘れてしまっていた。

「成り行きじゃないかな。でも、ひとつだけ言えることは、僕は目の前で困ってる人を見殺しに出来るほど僕は心が大きくないって事かな」

 たったそれだけだ。僕の理由は。

 見捨てたら見捨てたで目覚めが悪い。最初は魔力回路に付いて聞き出そうとしていたが、今の現状では聞けに聞けない。

「それに、元からエルフの王様にお菓子をご馳走するつもりだったしね」

 僕はニッコリと笑ってそう答えた。

「優しいね、お兄さんは」

 僕の言葉を聞いたエルフの子どもは、何処か憑き物が取れたような顔付きになり、自分の事を喋り始めた。

「そう言えば私の名前、まだ言ってなかったね。私はディニエル。もうなくなっちゃったけど、フオルン村の出身」
「ディニエル。いい名前だ」
「ありがとう、名前を言ってないのは聞かれていないのもあったけど、まだ完全に信用していなかったから。でも、お兄さん達ならちゃんと言える。エルフは他種族に本当に信頼できる相手にしか名前を教えないんだ。王族だけは別なんだけどね」

 この子にとって、僕達は信用に値する人物と判断してくれたみたいだ。照れくさいけど、嬉しい限りだ。

「私が言い聞かされていた話だと普人族は信用してはならないって、言われていたんだ」

 いきなり地雷を投下された。ドキりと僕の心臓が跳ねて、背中と頬から冷や汗を流す。

「何食わぬ顔で平気で嘘をつくし、表面では口当たりのいいことを言ってるけど、心の奥では何を考えているか分からない。そんな人達だって聞いていたの」

 心が痛い。その純真無垢で何の疑いもなく僕の嘘を信じている顔が心に突き刺さる。

「でも全然違った。だって千年前の話だもん。間違った歴史を伝えられてきたんだね」

 いやぁ、千年前と今でもあまり変わらないんじゃないかなぁ。普人族は信用してはならないって、その歴史結構当たってるよ。

 というかチョロい、チョロすぎでしょ。僕は嘘を付いている張本人だけど、流石に突っ込んであげるべきか真面目に悩んだ。

 そんな風にホイホイ人を信じてはいけない。ディニエルよ、こんなんじゃ簡単に騙されちゃうよ。

「もうすぐ次の村に着くはず。その村をかなり越えた先がお城だよ」



 ◆◇◆



 僕達は次の村へと着いていた。もしかしたら生存者がいるんじゃないかと、一縷いちるの希望を抱いて来てみたが、残念ながらこの村も壊滅状態。

 しかし、前の村とは違って死体は転がっていたりはしない。日用品が投げ出されていたり、数日前までは人が生活していた村の様子を見る限り、事前に逃げることができた村なのではないのだろうか。
 
 その事をディニエルに伝えると、にぱっとした明るい笑顔で頷いて元気に笑ってくれた。

 念の為に気配感知を発動して村を探索する。取り残された人がいるかもしれないからだ。そして、一通り調べ尽くして村の隅に流れる川の近くに来た時だった。

「待て」

 足を踏み出そうとしたみんなを両手で制す。

「魔物なのか?」
「いや、人間だ。一人だけだけど、気配感知の反応からしてかなり強い人間だ。注意してくれ」

 気配感知に反応ありだ。暗視を発動。視力がちょっと良くなる。

 僕が見つめるその先。そこには川を眺めるように立っている一人の人間の姿があった。

 エルフ? じゃないな.......。耳が尖ってないし、肌が薄緑色じゃなくて樹木のようにしわしわで焦げ茶色だ。

 どうやら背中を向けて立っている人間は男性の老人のようだ。かなり歳をとっているようだが、その佇まいは普通の雰囲気ではなかった。

 近付いて様子を見てるべきか? 僕はゆっくりと風狂黒金ふうきょうくろがねを身体から取り出して手に掛ける。

「待って。大丈夫だよお兄さん」

 リフィアのように、僕の裾を引っ張ってディニエルが引き止めた。

「真の武とは、相手の全貌を吸収する引力の練磨。例え立っているだけでも、相見えるだけで理解ができる」

 しわがれた声で男は振り返る。

 顔にかなりの重さの老いがしがみついているが、未だに闘志が衰えていない精悍な顔立ちだった。

「.......。爺やはもしや、と思いましたがどうやら違ったみたいですな」
「剣聖さん!」

 ディニエルが僕達から離れ、一目散に走って男に抱き着いた。

 男はさっきまでの険しい表情は何処へやら。まるで孫と出会った時の親のように、ディニエルの頭を撫でると優しく微笑んだ。

「剣聖? この人が君の言っていた」
「うん! すごく強いひとだよ!」

 僕は昨日の夜の会話を思い出した。

 ―――そう。剣聖を呼びに。剣聖イアソン。植人族の凄腕の剣の達人で、剣聖はエルフの国で一番強いひとなんだ。

 なるほど、納得だ。彼こそがディニエルが助けを求めた人間だったんだ。

「黒い魔物は?」
「ふぉっふぉっふぉっ! 見くびられては困りますな。数体ほどまだ残っていましたが、自慢の剣技を使えば、あんな雑魚共は軽く倒せますぞ」

 独特の豪快な笑い方をしながらディニエルを可愛がる剣聖はさながら好々爺こうこうやだ。

「普人族とは珍しいですな。ここは絶海に浮かぶ島みたいな大陸。よく入ってこられましたな」
「ま、まあね.......」

 僕は少し気まずい顔をしながら頬をかく。その後、剣聖に僕達の事情を話し始めた。僕がパティシエだと嘘をついていることこと以外は全て事実を。

「お主達はこの子を守っていてくれたのですな。姫に代わってこの爺やが感謝しますぞ。それに、エルフ達の事は大丈夫ですぞ。残った人達は一時的に王城へと避難しておりますな。君の知り合いもいるかもしれませんぞ」

 話を聞く限り、剣聖のお陰でこの村は最小限の被害で留まっていたらしい。黒い魔物は全て剣聖が倒し、この村も、違う村からも、残った人々は王城へと向かいかなりの人数が避難しているみたいだ。

「良かったな」
「うん!」

 ディニエルの顔に光が戻った。一件落着、とまでは言えないが城を目指して正解だった。

「お主達も良かったら王城へいらっしゃれ。こんな事態でも、何かおもてなしが出来ると思いますな」

 僕達はその申し出に快く二つ返事で了承する。

 ここから城までは数時間らしい。今日は朝から歩きっぱなしだったので、今から休める場所に行けると考えると浮き足立った。

「どうしたエマ? ムスッとした顔で」
「なーんか気に入らないのよね、あいつ」

 歩いてる途中、やけに機嫌が悪いエマがいた。

「やれやれ、エマは人見知りなんじゃないのか? 人を疑うのも大事だけど、それと同じくらい人を信用するのも大事なんじゃないのか? 剣聖はどう見ても悪い人じゃないだろ」

 僕は腕を組みながら口を曲げてエマと歩く。

 ふと、僕は眼を切り替えた。意味もない。何の理由もない。ただ、なんとなく魔力を視ることが出来る眼に切り替えた。

 僕の前を歩く剣聖は、周りの景色に溶け込んでしまう程、その身に秘める魔力が弱々しかった。



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