ろりこんくえすと!

ノω・、) ウゥ・・・

3-14 因縁のイノシシ


 3-14 因縁のイノシシ

 ヘルメスボアが物凄い速さで突っ込んでくる。あの速度、確かにワイルドボアの進化個体と言ったところか。ヘルメスボアの通ったあとは地面が捲られて、まるで畑を耕した後みたいに土塊がほじくり返されている。

「おいおい.......進化したからってお前強くなりすぎだろ」
「ブモモモモモモモモモモ!」

 箭疾歩せんしっぽを使って木の幹の上に避難していた僕は呆れと驚きの混じった声を漏らしていた。

 ヘルメスボアの突進は恐ろしく、そして早かった。あんな突進、まともに受ければトマトのように潰れて爆散する結果が待っていることだろう。

 ヘルメスボアは僕を轢けていなかったことを認識すると、再び僕に照準を合わせて四肢を蹴り出した。

「ちょっとトゲ飛ばしたのは僕じゃないのに殺意が凄まじすぎませんかねぇ!?」

 僕はヘルメスボアを迎え撃つ。

 風遁術が使えない今、ヘルメスボアに近付いて攻撃をするしかない。しかし近付くのはいいものの、風狂黒金を手元から離したせいで体術スキルでしか攻撃手段が限られてしまう。

 まずは投げてしまった風狂黒金を取りに行かなければいけない。生憎、風狂黒金はヴェノムセンティピードのすぐ側の木の根に刺さっている。

「旋風脚!」

 死角からの蹴り。箭疾歩を使い、一瞬でヘルメスボアの横に移動した僕は旋風脚を放っていた。

 体をずらされたヘルメスボアは横へと向きが変わる。大木を数本纏めて薙ぎ倒し、倒れてきた大木の下敷きになって生き埋めとなった。

 今の内だ。ヴェノムセンティピードはアシュレイと戦っている。僕の注意が逸れている今の内にさっさっと回収してしまおう。

 僕は木の根に刺さっていた風狂黒金に手を伸ばした。ヴェノムセンティピードは予想通りアシュレイに気を取られて僕に構っている余裕はなかった。その為、すんなりと風狂黒金の柄を掴めた。

 よし、次はヘルメスボアをどうにかしないと。あんの糞イノシシは生き埋めにはしてぐらいでは死にはしない。それは僕がよく分かってる。

 風狂黒金を取り戻し、早速その場から離れようとした僕だったが、何故か動けなかった。

 いや、正確には風狂黒金は木の根から抜けているんだ。ちゃんと、完全に、刃は木の根から抜けて全刀身を露わにしている。

 そうだ、木の根が僕に・・・・・・引っ掛かっているんだ。正確には木の根が僕の手首を掴んでいるんだ。

「こいつ、動いている!?」

 言うなれば意志を持った根っこ。うねうねと動いて僕の腕から上へと絡み付いてくる。

 咄嗟に風狂黒金を手放し、もう片方の腕を使って根っこを根元から切り裂いた。流石に大元から切り離せば息絶えるらしい。

 根っこから距離を取った僕はそこでやっと気付いた。風狂黒金が刺さった根っこはただの根っこじゃない。魔物の身体の一部だったんだ。

「オオオオオオオオオオオオオオ!!!」

 木の魔物は怒り狂う。樹皮がベリベリと剥がれていき、中から根っこと同じように動く大量の蔦が飛び出してきた。

「嘘だろ!? そんなのありかよ!?」
「あれは脅威度B、エントよ。擬態が非常に得意な魔物で肉食性。鑑定のスキル持ちでなければまず気付かない厄介な魔物だわ」

 一言で言えば意志を持った蔦と根の塊。明らかに植物型の魔物だ。エントはくねくねと細長い蔦を幾本も伸ばして襲い掛かかる魔物なのだろう。目や耳、鼻といった器官がなく、口だけが蔦の中の真ん中にあり、ヴェノムセンティピードと負けず劣らず非常にグロテスクだ。

 正直、見た目だけに関してはムカデの方がまだ可愛げがある。

 僕は大きく後ろに飛び跳ねてエントと間合いを取ったが、エントは既に蔦を伸ばして僕の足に絡みついていた。

「ちょ、うわわわわわわッ!?」

 身動きが取れない空中で足を引っ張られる。そのまま地面に磔にされ、ズルズルと力任せに引き摺られていく。

 早い。そして力強い。エントの蔦の動きは植物とは到底思えない速度で伸ばされている。数本ぐらいなら避けれる自信はあるが、エントの蔦は軽く数百本は越えている。これではいくら俊敏に特化していた僕でも避けきれない。

 僕が向かっていく場所はエントの口内。肉食性は本当のようで、ドロドロとした唾液を垂らしながら僕が入り込むのを今か今かと待っている。

「なんで植物が肉食性なんだよ! 素直に水でも吸って日光浴してやがれ!」

 風狂黒金を一閃。エントの口内に一筋の線が走って割れる。樹液がドッと洪水のように流れ出し、突然の痛みに悶えて苦しんだ。

「小僧! 掴まれ!」

 エキューデが地面から骨を伸ばして僕に向かわせる。まるで救命用の縄みたいな使い方だ。力が弱まったエントの蔦を僕は引きちぎって、伸ばされた骨に掴まってエントの胃袋に収まることを回避した。

「むぅ.......。森の中だからラピッドショットかバラージウォールしか使えん。炎さえ使えれば丸焼きなのに。どうしたものか」

 一方その頃、ヴェノムセンティピードと交戦しているアシュレイが地形の不利にぼやいていた。

「こんな時、変態が風遁術さえ使えれば直ぐに倒せるのに」
「どうゆうことだ?」
「お姉ちゃんが例え火事を起こしても、燃えてる所から少し離れた火を放って二つの火災をぶつけるのよ。そうして火事の拡大を防いでかつ、消火できるんだけど.......」
「バックファイヤーか!」
「そんな名前だったの? 話戻して、この森は木々があまりにも密封されすぎていて風が殆ど流れていないわ。裏を返せば変態が風遁術を使えさえすれば自由に風の向きを起こして消火が簡単にできる。けど、今の変態は使えない。そうなった以上、ヴェノムセンティピードとヘルメスボアはともかく、お姉ちゃんの火を使わないとエントを倒すのは困難よ。ほんと、困ったわね」

 確かにその通りだ。エントの蔦はもとより、さっき風狂黒金で与えて口内に与えた傷は修復されつつある。この様子では、僕が覚醒を使ってレゾナンスエッジでも叩き込まない限り倒すのは難しい。

 しかし覚醒は使えない。ウラノスなんてまた呼び出しでもしたら、皆殺し以前にこの大陸が消滅してもおかしくない。

 この状況は酷く参ったな。ったく、脅威度が高い魔物はどいつもこいつも再生能力があるのかよ。

「っと! もう這い出てきたか!」

 横からの猛突進をヒラリと躱す。木々に生き埋めとなったヘルメスボアは既に脱出していたようだ。

 猪突猛進。進化しても一直線にしか走れないヘルメスボアを避けるのは難しくはなかったが、エントの蔦を同時に捌きながら戦うのは骨が折れる。

 三つ巴、もとい混戦状態のこの戦況。どうすればいいか.......。

「ウェルト! あれ!」

 後ろからミナトが何かに気付いたのかある方向に指をさす。場所はエントの体のかなり上の方。そこには、何か細長い丸まった物が蔦に絡まっていた。

 暗視を発動。視力をよくして目を凝らして見てみれば、それは僕の目的そのものだった。

「次から次へと.......! どんだけ運が悪いんだよ、僕達はさぁ!?」

 エントの触手に捕まっていた物。

 それは紛うことなきエルフの子どもだった。



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