ろりこんくえすと!

ノω・、) ウゥ・・・

3-11 海賊船


 3-11 海賊船


 ドコドコと騒がしい音を立てながら、巨大な一隻の船が僕達の元に近づいてきた。

 エマから双眼鏡を取り上げて暗視発動。ちょっと視力が良くなる。

 目を凝らして覗き込んでみると赤い帽子に赤い服装、そして赤い曲剣。とにかく赤色が好きな集団みたいだ。船の帆には赤い髑髏マークが描かれている。何かのエンブレムか、目印なのだろうか。

「なんだぁ、あの船?」
「海賊船よ」 

 ミナトの呟きにエマは答えた。

 海賊。ノルドの村の冒険者ギルドで話には聞いていたが、まさか僕達が出会ってしまうなんて。

 なんというか、罰が当たった気がする。

 海賊達は僕達が乗っている船に接近した。耳を澄ませてみれば、お世辞にも上品とは言えない笑い声と蔑みが混じった言葉が聞こえてきた。

「へっへっへっへっへっ! あの船、かなりの狙い目だぜぇ! 男が三人! しかも全員ひょろがりのへなちょこだあ!」
「あの女は中々の上物だぜ! 残りはガキ三人か。ヒャッハー! どうぞ俺らに襲って下さいと言ってるようなもんよ!」

 船頭から海賊達が嬉しそうに騒いでいる。その数は約十数人。海賊は山賊と同じで、そこそこの規模の人数で活動を行う賊らしい。

「あいつらの間抜け面気に食わないわね。ちょっと行ってきなさいよ変態。私達に喧嘩を売ったことを後悔させてやるのよ」 

 僕はエマに背中を押されていた。

 え、なにそれ? 今から僕があいつらをやっつけないといけないなの?

 海賊に対して正当防衛するのはまあ分かるんだが、その理由があまりにも酷すぎやしないか?

「行くって何? あの海賊船に? むりむり、どうやって海を渡って乗り込むんだよ?」
「いいから!」

 背中を蹴飛ばされ船から海へと放り出される、そのまま僕は海の中へと落っこちた。

「おわわわわっ!? 沈む、沈むって! 僕泳げないんだよ!」
「右足が沈む前に左足を出しなさい! そして左足が沈む前に右足を出すのよ! そうすれば水の上でも歩けるわ!」
「何その根性論!? んなもん気合いでなんとか出来るわけがな.......!?」

 バシャバシャと海の上で騒ぐ僕。だが、エマの言葉通りに動くと、なんと海の上を歩くことが出来てしまった。

「出来ちゃったよ.......」

 なんだこれ。流石の僕でも驚きだ。俊敏のステータスがここまで高いと、こんな人間離れした技も出来るようになってしまうのかな.......。

「ん? 人が海の上を歩いているぞ?」
「水魔法を使ったんじゃないか?」
「何かのスキルだろ、それしかありえん」

 いいえ、自力です。

「まじかー.......。異世界すげぇわ」
「お兄ちゃん凄い! あとでリフィアにもやり方教えて欲しいの!」
「やり方云々の前にそもそも不可能でしょ、これ」
「変態、来るわよ!」

 エマの言葉に僕はハッとする。

 そうだ、のんびりしている場合ではない。僕達は今海賊に襲われているんだ。 

 ノルドの村で聞いた話だと、巷で噂の海賊はかなりのやり手らしい。魔物との戦闘と同じく気を抜いていられない。

 振り向いて海賊船を見てみれば、アシュレイの使う重砲の三倍以上はある巨大な砲台が船の横側から出てきた。

「第一門、解放! 砲弾、発射ァッー!」

 パァンッ! と爆竹がけたましく鳴ったような音が聞こえ、黒い玉がひとつ、僕達の船に向かって撃ち出された。

 嫌な予感がした僕は軽くジャンプして、船に当たりそうだった黒い玉を空中で掴んだ。

「なにこれ?」
「ちょ、それは爆発する玉だ! 早く捨てろ!」
「ええっ!?」

 ミナトの忠告に驚き僕は慌てふためく。とりあえず海の彼方へと黒い玉をぶん投げると、数秒後には水柱を上げて爆発した。

 あ、あぶねぇ。なんてもんいきなり撃ってんだよあいつら!

「あの野郎、砲弾を素手で受け止めやがったぞ.......!」
「な、何もんだ、ありゃぁ.......?」
「ま、まぐれだろ! 気を取り直してもう一発行くぜぇー!」

 ガゴン、と砲台に黒い玉が込められる音がした。

 あいつら、また撃ってくる気かよ。こうしちゃいられない。反撃開始だ!

「エキューデ! 何か武器くれ!」

 僕はエキューデに向かって手を差し出した。

 とにかく、風遁術が使えない今、僕は飛び道具に頼るしかなかった。僕の武器は風狂黒金ふうきょうくろがね一本なので投げられない。

「受け取れ小僧!」

 僕がエキューデから受け取ったのは銀色に輝く美しい得物。これならまたプリンを作れるぞ。

 渡されたのは泡立て器だった。

 違う、そうじゃない。僕は紅花匕首べっかあいくちとかそんなものが欲しかったんだ。

「行くぞー! 第二発目!」

 砲台がガコガコと動き出す。

 くそったれ。こうしちゃいれらない。とにかくやるしかない!

「ええい! 人様に向かって危ないもん向けてんじゃ、ねぇ!」

 僕は泡立て器を勢いよくぶん投げた。一直線に砲台の中へと泡立て器は突き刺さり、轟音を立てて爆発した。

「うぎゃああああああああぁぁぁ!!!」
「ぴぎゃああああああああぁぁぁ!!!」

 甲板の一角が爆発して船は大きく傾く。海賊達は各々が混乱と恐怖で泣き叫びながら、混沌とした戦況に陥っていく。

「今よ変態! 船に乗り込んでボコボコにしてきなさい!」
「そんな無茶苦茶な」
「だってそれしか方法がないじゃない」

 確かにそうだった。仰る通りです。

 僕は海の上を走り出すと、壁を登るかのように船の側面を駆け上がり中へと乗り込んだ。

 海賊船の中は阿鼻叫喚の大騒ぎ。爆発で起こった火があちこちで燃え上がり、火達磨となった一部の海賊達が転げ回っている。
 
「く、くそっ! よくも船をやりやがったなこの糞餓鬼がぁッ! これでもくらいやがれ!」

 乗り込んできた僕に気付いたのか、海賊の一人が懐から小さな筒を取り出した。筒を僕に向けるとパン、と何かが弾ける音が聞こえた。

「ワーハッハッハッハッハッ! 遥か遠い異国から手に入れた小型式の火縄銃よ! 人間相手ならイチコロなんだぜ!」

 ジュッと仄かに熱い。

 僕の指と指の間には小さな弾が挟まっていた。少し熱を帯びているそれは、力を加えてやるとぐにゃりと潰れた。この柔らかさ、もしかして鉛で出来ているのかな。

「.......なんだこれ?」
「なっ.......!? この餓鬼、砲弾と同じように銃弾も素手で受け止めやがった!?」

 口をあんぐりと開け、海賊は驚いた顔で僕を見つめている。うん、エマの言う通り間抜け面だ。

 何を驚いているんだか。こんなちっこい弾丸で僕を殺せるわけないだろ。僕を殺したいならアシュレイが使ってる重砲ぐらいはもってこないと。

「撃てー! 撃ち殺せー!」

 弾を詰めながら海賊は大声で叫ぶ。その声に反応した海賊達が次々と懐から筒を取り出して僕に向けた。バンバンと四方八方から薬莢が弾ける音が鳴り響き、僕に向かって小さい弾丸が飛んでくる。

 僕は指の間に挟んだ銃弾を投げ捨てると、両手を開いて構えを取った。

 技能も風狂黒金も使うまでもない。今の僕からしてみれば飛んでくる弾は目視でも捉えられるし、なによりも素手で受け止めることもぐらい容易いことだった。

 しばらくした後、銃声は鳴り止む。無傷の僕は両手を開いた。白い煙と一緒に鉛玉がジャラジャラと甲板に転がった。

「それって単発式か。ってことは、連続では撃てないってことだよな?」
「ば、化け物だー!」

 失礼な。

 甲板を蹴って一瞬で背後へと回り込む。手刀で首を打って海賊二人を気絶。おっと、力を込めすぎた。メキメキと首の骨が折れる音が聞こえてきた。
 
「この.......ッ!」

 まだ残っている海賊に筒を向けられる。

 それはもう僕には効かないんだって。

「窃盗」

 盗賊の基本技能、窃盗を発動。撃とうとしていた筒は僕の手に渡り、奪われたと理解させる暇も与えないまま躊躇い無く引き金を引いた。

 バン! と鋭い発砲音。海賊の胸に小さな赤い穴が空き、よろめきながら後退して海の中へと落ちていった。

 なるほど、これは便利だ。でも今の僕なら普通にダガーとか投げた方が命中率も威力も高そうなんだよな。

「死ねぇ! クソガキッ!」

 後ろから曲刀サーベルが振り下ろされる。

 振り返って迎撃するまでもなかった。少し肘を上げて顔を強打。怯んだ隙を見逃さずに窃盗でサーベルを奪って首を斬り捨てた。

「こいつッ!? 餓鬼の癖に恐ろしく強え!」
「ちくしょう! 仲間が既に四人殺られたッ!」
「囲め囲めー! 囲んで叩けー!」

 僕を中心に、囲むように残りの海賊がわらわらと集まってくる。全員が全員、得物を取り出し殺気を帯びた眼で僕を睨み付ける。

「ひいふうみい.......。あとは全部で九人か」

 残るは九人。どいつもこいつも汚らしい男達だった。

「おい餓鬼、てめぇは何者だ?」

 その中から、一際風格が他とは違う海賊の親玉であろう大男が僕に話し掛けてきた。

 僕は少し迷った末、こう答えた。

「今は犯罪に手を染めた旅の途中の冒険者、かな」
「舐めやがって! 殺れ!」

 だってそれしか思い付かなかったんだもん。本当のことだもん。

 筒から弾丸が飛び出し、剣を携えた海賊が襲い掛かる。僕は手始めに空となった筒を投げて弾を防ぐ。残りの弾丸は奪ったサーベルで叩き落とし、勢いに任せてぶん投げる。

 回転が加えられた刃物は一人の海賊の首を胴体から切り離した。両手が自由となった僕は近場にいた海賊の胸元を掴み肉の盾にする。

 同士討ち。本当は僕を狙った剣と銃弾が仲間の海賊に突き刺さり絶命させた。

 海賊達に十分近づいた所で僕は箭疾歩せんしっぽを発動。用済みとなった亡骸を手放して単純な腕力で海賊を海へと吹き飛ばす。殴ると同時に窃盗を使って筒を奪い他の海賊に向けて発砲。こめかみを撃ち抜かれた海賊は血を流して後ろに倒れ込む。

 筒を使い、後ろからサーベルで斬りかかろうとした海賊の剣撃を防御。窃盗でサーベルを奪い腹を貫く。そのまま倒れ込むようにもう一人の海賊を巻き添えにして串刺して押し飛ばす。

 これで六人。残りは三人。

「嘘だ.......。こんなの嘘だ.......ッ!」
「ふ、ふざけんな! お前人間なのかよ!?」

 殺気を帯びた眼は何処へやら。数秒で三分の一にまで数を減らされた海賊達は怯えた目で僕をみつめていた。

「Aランク.......!」
「お、親分?」
「なんてこった! この餓鬼、Aランクの冒険者だっ! 初めから勝てるはずが無かったんだっ!」

 Dランクです。

「ち、ちくしょう! こうなったらもうこれしかねぇ! かくなる上は.......!」
「あっ、てめっ!」

 海賊の親玉は取り乱す。気でも狂ったのか、懐から爆発する黒い玉を取り出した。最初に放ってきた威力が高いあれだ。

「そうだ! もしこれが爆発でもしたらひとたまりもないだろうなぁ! この船もろともお前を沈めてやるぜ! ヒャーハッハッハッハッ!」
「ちぃっ.......!」
「おっと、お前盗賊職だろ。窃盗なんて使う真似すんなよ? 俺は砲弾を『二個』持ってるんだ。どっちか取られた時、即ドカンしてやるからな」

 完全に動きが読まれていた。気付けば親玉の足と甲板の間にはもうひとつの砲弾が挟まれている。

 迂闊だった。窃盗の技能に頼っていたことも。僕が一人一人の動きに注意を払っていなかったことも。

 取り巻きの一人がマッチで葉巻に火を付けた。少しでも近付けたら点火してドカン。もとより衝撃を加えればドカンだ。

 蟷螂とうろうの斧、と言いたいところだけど結構まずい。身体の丈夫さには自信のある僕だけど流石に爆発には巻き込まれたくない。

 この状況、どうすればいい?

「ウェルトー! 準備が出来たぞー!」

 膠着こうちゃく状態の最中さなか、不意にアシュレイの声が聞こえてきた。

 赤色に輝く重砲。げっ、嘘だろ!? これはヒートチャリオットを放つ合図だ!

「お姉ちゃん、しぶとい変態なら生き残るから安心して撃って頂戴」

 僕が口を開く前に、エマがOKの合図を出してしまった。

「ちょ、まっ」

 ちゅどーん!

 この日。何処かの海ではそれはそれは汚くも綺麗な火柱が立ち昇った。




 爆発オチなんてサイテー。

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