ろりこんくえすと!

ノω・、) ウゥ・・・

3-6 道のり


 3-6 道のり


 僕達は馬車でネメッサの街から数十時間、この先にあるノルドの村を目指していた。

 ノルドの村は俗に言う港町で、この大陸では漁船や航海船が行き交う数少ない海に面した村だった。

 エルフの大陸に足を踏み出す為には海を越えて行かなければならない。兎にも角にも、ノルドの村に辿り着かなれければ話にもならないだろう。

「もうすぐノルドの村だな。なんというか、馬車でこの道を走っていると、まだネメッサの街と王都を行き来して数日も経ってないのに恋しくなってきたな」

 アシュレイの言葉通り、緑豊かに生える草原の光景に混じって塩臭い匂いが僕の鼻を掠めた。

 これが潮風と言うものだろうか。これまで嗅いだことのない新鮮な香りだ。

 僕は結構好きだ。

「そうだ、ミナト。気を失った僕をミナトが運んできてくれたんだよね?」
「ん、ああ。そうだけど」
「僕の風狂黒金ふうきょうくろがねを知らない? 黒い短刀みたいなやつなんだけど。そこら辺に落ちてなかった?」

 王都と言われた思い出したことがある。それが僕の使っていた風狂黒金だ。

 ユリウスとの戦いの後、風狂黒金がどこにいったのかが分からない。僕としてはそこら辺に落ちていたと思っていたが.......。

「もしかしてこれか?」

 ミナトが取り出したのは四角い箱。

 なんだこれ。

「エキューデの近くに落ちてたんだよ。こん中にその風狂黒金が入ってるのかな。開けようとしたけど開けれなかったし。ウェルト、鍵かパスワード打てば開くのか?」
「全然違うわい。つーか変なもん拾っただけだろ、それ」
「いやぁ.......。でも困ったなあ。黒い短刀なんて、そんなもの無かったし。もしかしたら近場にあったかもしれないけど余裕が無くて探してなかったし.......。その、悪ぃ」

 ミナトは謝りながらいそいそと四角い箱を仕舞った。

 これはもう、紛失してしまったか。自分の手の平を貫いてまで作った風狂黒金が失くなるのは、僕としては残念と言う他ない。

「別に責めないしミナトには感謝してるよ。でも困ったなぁ、あれが唯一僕に残された武器だったのに。なあエキューデ、また紅花匕首くれよ」

 僕は前座席に座っているエキューデの肩をバンバンと叩く。

 現状、無一文の僕にはパンのひとつも買えやしない。ミスリル銀で作られたランセットはもう元の持ち主であるリフィアに返してしまった。ちなみに、あのランセットのお値段は1000G。とてもじゃないが壊したとしたら僕では弁償しきれない。

 だけど大丈夫だ、僕にはエキューデがいる。エキューデの作る紅花匕首は斬れ味と耐久性共にそこらの武器とは段違いに優れている。

 どうやら紅花匕首はエキューデの自身の血で作った武器らしいし、また生み出してくれるだろう。

「そんな必要ないだろ」

 しかしながら、後ろを振り向いて僕を見たエキューデは冷たい態度素っ気なく言い放った。

「どうしてだよ?」
「どうしてって小僧、その手に持ってるのは物はなんだ?」

 言われてみてから気付く。僕の手にはあの黒い短刀が握られていたからだ。

「へ? .......え? ええええええ!?」

 な、なんじゃこりゃあ!?

 いつの間にか僕は風狂黒金を握りしめていた。

 まるで理解が出来ない。そっきまで風狂黒金なんか何処にも無かったんだぞ。

「あれかウェルト、眼鏡を頭の上に掛けてる奴が、眼鏡ドコドコって探している奴か? はははははははははっ!」

 ミナトが僕に指をさしながら腹を抱えて笑う。どうやら余程面白かったらしく、苦しそうに腹筋を抱えている。

「違うって! さっきまで風狂黒金はなかったんだって! お、おかしいなぁ.......。一体どうなっているんだよ、これ?」

 僕は突然現れた風狂黒金を不思議そうに見つめて言った。

 冗談抜きで身に覚えがない。この風狂黒金は何処から現れたんだ?

「ねぇ、変態。その風狂黒金って呼んでる黒い武器に『戻れ』って念じてみなさい」
「戻れ? うわあああっ!?」

 エマに言われた事をオウム返し気味に答えた途端、風狂黒金が黒い鞭のような形に変えて、僕の腕の中に入り込んで行った。

「ウェルトの腕の中に潜り込んだ!?」
「お兄ちゃん凄い! こんな手品初めて見たの!」

 蛇みたいで気持ち悪っ!? みんなは喜んだり驚いたりしてるが、当の僕からしたら背筋に寒気が走るほど薄気味悪い。てか怖い。なんだよこれ!

「で、出てこい! 風狂黒金!」

 僕の叫びに呼応して風狂黒金は腕の中から出てきた。いや、這い出してきたと表現した方が正しいのだろう。

「身体の中に出し入れ可能って。怖すぎんだろ」

 風狂黒金は僕の意志に従って取り出しが出来るようになっていた。身体の中から。

 考えようによっては便利だ。奇襲にも使えるし失くす心配が無くなった。それでも気味が悪すぎるけど。

『なるほど。忌むべき穢れた血カプ・ファウルネスブラッドね』
「か、かぷふぁんうね.......」
「頭が悪い変態が覚えるのは無理だからもういいわ。とにかく、変態の身体には特別な血が流れて適合してるって事だわ」
「我と同じの、な」

 前座席からニヤニヤと僕を笑うエキューデを見て、大元の元凶を理解した。

「お前かエキューデ! お前が僕の身体を改造したのか!」
「人聞きの悪いことを言うでない! 小僧が勝手に我の血を取り入れただけだろう! まあ、別に大丈夫であろう。その短刀を自由に出し入れ出来るのに加えて、少しアンデッド達と仲良くなれるおまけが付いてくるぞ。あと吸血鬼共に襲われなくなる」
「な、なんだよそれ.......」

 い、要らねぇ。アンデッド共仲良くなりたくないし、吸血鬼に襲わなくなるって、そもそも僕と吸血鬼が出会うことなんてあるのかよ。

「みなさん、そろそろ見えてきましたよ」

 馬を操るドレムの声で、騒いでいた僕達は一斉に場所の外へと目を向ける。

 キラキラと注ぐ光に磨き立てられたように光る海。その海を背景に、白いレンガを基準に作られた街が僕達に顔を出した。

 馬は街の入口付近に建てられた門の前に止まり、僕達は場所から降りた。

 ここがノルドの村。常に和やかな時間が流れているような、磯香る平穏な村。

「ここでお別れ、ですね」

 場所を降りた僕達を節目に、ドレムは儚げな顔を浮かべて笑った。

 そっか、ドレムは王都に戻るんだよな。僕達とはここでお別れ、か。

「ドレムはこれからどうするのだ?

 アシュレイの問い掛けに、ドレムは腕を組んで考えながら答えた。

「そうですね.......。とりあえずロリコンの団長を締め上げてから、王都を復興しながら考えていきます。まだ騎士を続けるか、他の仕事に就くか、ゆっくり考えようと思います」
「仕事もいいが早く相手を見つけないと行き遅れるぞ、ドレム」
「う、うるさいですね! 結婚だけが女性の全てじゃないんですよ!」

 ドレムは少なからず自分の婚期に焦りだしているらしい。僕としてはアシュレイも人の事を言えないとは思うんだけど。

「ま、まあ、考え物ですけど.......」

 いじいじと指を絡ませたり弄りながらドレムは顔を伏せる。

「最後にウェルトさん」
「? なんだよ?」
「いえ.......やっぱりなんでもないです」
「一体なんなんだよ!?」

「女心は気難しいものね.......」
「俺の意見だけど、ドレムさんも悪くないと思うんだけどなー」

 馬を引いて去っていくドレムの後ろ姿は、何処かに寂しそうに僕の目に映った。



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