ろりこんくえすと!

ノω・、) ウゥ・・・

3-1 体調不良


 3-1 体調不良


「うええぇ.......これが二日酔いの感覚なのかな。頭が痛いし身体が怠い。朝から気分が優れないや」

 太陽が眩しい朝。カーテンから射す陽光でベットから起き上がった僕は、もうすぐ朽ちてしまいそうなオンボロの階段をフラフラと降りて席に着く。

「あ、おはようございますお客さん! 朝ごはん出来ていますよ!」
「アリア。おはよう」

 そう、ここはエマの豪邸なんかじゃない。アリアの宿だった。

 何故エキューデやミナトがエマの家に宿泊している中で、僕だけがアリアの宿に寝泊まりしているかというと、エマに追い出されたからだ。これだけに尽きる。

 リフィアに厭らしい事をしている現場を見られた僕は「けがわらしい盛った性獣を私の家に泊めるなんて出来ないわよ!」と追い出されてしまった。アシュレイに泣きついてみたものの、エマには頭が上がらないようで、ミナトは苦笑いを浮かべ、エキューデなんかは僕の事を鼻で笑っていた。

 とどのつまり、誰も僕を助けてくれなかった訳だ。

「お客さんも難儀なものですねぇ」
「全く、本当だよ」

 なんで宿泊費まで払ってアリアの宿を使わなければいけないのだろうか。

 僕の財布はもう既にスッカラカンで今はアシュレイから借金している。女に寄生するヒモみたいな感じで気が引けてしまう。

 まあアリアの作る食事は美味しいからまだいいのだが、それ以外はてんでダメだけど。

「行く予定だった王都に脅威度Aクラスの魔物が現れて王都が壊滅状態なんでしたっけ? これではお土産も期待できませんよ、全く。プンプン」

 そっちかい。いや、普通はエマから追い出しを食らったよりも王都が崩壊した方が重要か。

「そうだね。貪食の食人鬼と言い、最近の世の中は物騒だよ」

 僕は朝食のサラダをつつきながら言った。

 とは言え王都を壊滅状態にした原因の約八割が僕だ。正確に言えば僕の身体を乗っ取ったウラノスなのだが。

 ウラノスが絶界執刀ぜっかいしっとうと呼んでいたあの技能。それで王都の八割が更地になった。一応、話ではゼノと呼ばれる第四騎士団の副団長が住民に避難を呼び掛けたお陰で、犠牲者の数は抑えたと聞いたが。

 それにしてもウラノスが神だなんて僕は信じちゃいなかったな。だけど、あれを見た後では信じるしかないだろう。

 頭が痛くなる。なんの為にウラノスが僕の身体を乗っ取ろうとしていたのか。だけどウラノスのお陰でユリウスも倒せてリフィアも助けられたのは事実。そこには不本意だけど感謝しないといけない。

「あ、そうだ! エマさんから伝言ですよ。なんでも朝ごはん食べ終わったら家に来いって」
「追い出した次は家に来いってか。やれやれ、急がしいちびっ子だな」

 エマが僕を追い出した事には少なからず僕が悪い部分もあるけれども。それにしても自分でもリフィアにした事は少しというか、かなりドン引きだ。

 .......九歳の女の子のおっぱいを舐めるだなんて頭と性癖が相当おかしい人間だと思う。それが僕なんだから始末に負えないんだけど。

「あー、でも今日はなんか調子が優れないんだよ。二度寝してから行くって伝えといてくれる?」
「もし来るのが遅かったらお客さんがリフィアちゃんにやった事をネメッサの街中に広げ」
「よーし、天気もいいし絶好のお出かけ日和だ! 早く朝ごはん食べてエマの家に行くか!」



 ◆◇◆



 エマの家。

「遅いわよ変態」
「来て早々、開口からその言葉が出てくるのは半ば予想していたよ」

 相変わらずエマの家は広い。僕はちょこんとエマの前に座ると何の用かと尋ねてみた。

「そうね、王都で何があったのかはお姉ちゃんから聞いたわ。それと一緒に連れてきたエキューデが詳しく教えてくれた」

 僕はエマの言葉を聞いて不思議に思う。

 珍しいな、エマが男の名をちゃんと呼ぶなんて。エキューデの事が気に入ったのだろうか。それともあまり怒らさてはいけない人間だと思ったのだろうか。.......多分後者だな。下手すればアンデッド召喚したり内蔵くれとか平気で言ってきそうだ。

 僕は試しに今気になった事をエマに聞いてみた。

「ちなみにミナトの事はどう思う?」
「童貞」

 ひっでぇ名前。

「無駄話はいいわ。早く王都で起きた事を教えなさい」
「はいはい、分かったよ」

 僕はエマに根掘り葉掘りの質問攻めに合いながらも話し終えた。

 王都で騎士団長達を何人か倒したこと。悪魔に変貌したユリウスのこと。そして覚醒の代償とウラノスのこと。全て聞き終えたエマは神妙な顔をした後次の質問を僕にぶつけてきた。

「悲惨すぎる上に波乱万丈な人生ね。あんた誰かに呪われてるんじゃないの? それか前世で何か悪いこと沢山したでしょ?」
「るっせ、全部ウラノスだろ。黒幕は全てウラノスだ」

 ウラノスに全ての責任を擦り付ける僕。後々怖いから後で誰もいない部屋で謝っておこう。いや、僕の身体を乗っ取ろうとしている時点で怖いも何もないか。

「まあいいわ。それと最後に変態が話している途中に気になったんだけど」
「なんだよ?」
「身体の調子が悪いってどんな感じなのかしら?」

 そのことか。僕としては戦い疲れなんじゃないかな、と思っている。二日か三日、身体をだらけて休めば治ると楽観的に見ていた。

「筋肉痛と全身が怠いくて二日酔いみたいなんだよ。そして身体がずっとグルグルと掻き回されて気持ち悪い感じ」
「ちょっと待ちなさい。最後なんて言ったの?」
「え? 身体が掻き回されているって」

 エマは真剣な面向きで僕に近付くと、いきなり服を脱がし始めた。

「ちょ、いきなり何すんだよ! 痴女か! お前は痴女か! まだリフィアと同い年ぐらいの子どもなのに性の喜びを知りやがって!」
「もううっさいわね! ちゃんと脈を測れないじゃない! じっとしていなさい!」

 僕はエマに首やら胸やら背中を指でなぞられる。小さい指が僕の肌を這って何とも言えない感覚が伝わってくる。

「ビクンビクンって気持ち悪いわよ! もう少し大人しく出来ないのかしら!」
「くすぐったいんだよ!」
「はぁ.......本当に救いようがないわね」

 ひとしきり僕の身体を撫で終わったエマは、僕の前に座ると口を開いた。

「変態は風遁術が使えるのよね?」 
「そうだけど」
「じゃあ弱い威力で使ってみなさいな」

 僕は頭の上に?マークを浮かべる。エマが一体何の意味があって僕に指示を出したのは分からない。しかし、エマの事だからきっとちゃんとした意味があるのだろう。

 僕はエマの目の前に掌を差し出した。

歪断風いびつたちかぜ

 ..............。

 あれ? 何も起こらない。そよ風が起こる程度に調整したからだろうか。弱すぎて不発になったか、発動したのはいいが感じられないぐらいに微弱だったのだろうか。

「.......何をしているの変態?」
「悪い悪い。歪断風」

 もう一度力を込めて発動してみる。今度はそこそこ魔力を込めた筈だ。

 しかし何も起こらない。僕は不思議そうに自分の手をじっと見つめた。

「ねぇ、何をやっているの? 早く使ってみなさいよ」

 エマがムスッとした顔で僕を急かす。

「ええい、歪断風!」

 僕は立ち上がって割と本気で壁に向かって発動してみた。それでも何も起こらない。

 ここで僕は自分の身に起きている自体の深刻さにやっと気付いた。

「え、おい? 嘘だろ? なんでだよ? なんで風遁術が使えなくなってるんだよ!?」

 本来ならばエマの壁の一角は僕の歪断風でズタボロになっている筈だ。それなのに僕は歪断風を使えなくてそれが出来ない。

 一体僕の身に何が起きているんだ。思い当たるのは覚醒の代償とかユリウスとの戦いで無理をしたとかウラノスに一時的とは言え身体を乗っ取られことぐらいだ。

 結構思い当たるの理由あるわ! こんちくしょうめ!

「違うわ、変態。変態は風遁術が使えなくなったんじゃない」

 焦る僕にエマが指をさして言った。

「変態の魔力回路が壊れたよの」




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