ろりこんくえすと!
後日譚 3
後日譚3
※微エロ注意です。
すぴー、すぴーと可愛らしい寝息が聞こえる。むにゃむにゃと寝言が流れてきて、微かな鼻息が僕の肌にあたってくすぐったかった。
寝ぼけまなこを擦りながら目を開けば、僕の腕を抱き枕にしてリフィアがくっ付いていた。
リフィアはとても気持ち良さそうに寝ている。すぐ側には様々な医療用具が転々と置かれていて、僕の頭の上には少し水気が飛んだ濡れたタオルが乗っかっていた。
僕を看病してくれていたのだろうか。前もそうだったから違いない。恐らく、今の気持ち良さそうに寝ているリフィアは、看病に疲れてそのまま寝てしまったのかもしれない。
なんともリフィアらしくて微笑ましい。そんな看病に疲れて寝ているリフィアの寝顔を見て、僕は心が温まったのと同時に、少しだけドキっとした。
「ん.......。あれ? 起きたの、お兄ちゃん?」
敏感なのか、僕の動きに気が付いたリフィアはパチリと目を見開いた。小さい腕をいっぱいに伸ばしてぺたぺたと僕の顔に触れると、まだぼんやりとしている僕を見てぷっくりとほっぺたを膨らました。
「お兄ちゃんのねぼすけ」
「あでっ」
コツンと指で額を叩かれ、完全に目を覚ました僕。
叩かれた額を抑えながら上半身だけ立たせて起き上がってみれば、部屋の内装からしてエマの家だと分かった。
いつの間に。どうやって僕は王都からネメッサの街まで運び出されたのだろうか。
だめだ、記憶が途切れている。最後にこの目で見たものは、僕の体を乗っ取ったウラノスがユリウスを倒した光景だけだ。
鮮明に意識が戻った僕に、リフィアがぽんぽんと身体を叩いて尋ねてきた。
「体の具合は大丈夫、お兄ちゃん? お兄ちゃんは今度は一週間も寝っぱなしだったんだよ?」
またそんなに僕は寝込んでいたのか.......。確かに、リフィアの言った通り僕はねぼすけだ。
「少し調子が悪いけど、まあ大丈夫かな」
寝すぎのせいなのか身体が怠かった。でも、それ以外なら普段通りの体調だった。
「そっか、それならもう大丈夫そうなの。なんせリフィアが付きっきりで看病したからなの」
やっぱりリフィアが僕の看病してくれていた。その事実を確認出来ると、照れ臭さと嬉しさが混じって変な顔になってしまう。
「お兄ちゃん」
唇をつねられ、僕は優しくリフィアに引っ張られた。リフィアの方を振り向いてみれば、食い入るようにじっと僕のことを見つめている。
なんだろう、いつにも増して積極的な気がする。
リフィアはもぞもぞと僕の膝の上に乗っかると、躊躇いがちにぽつぽつと話し始めた。
「あのね、お兄ちゃん」
「ん.......?」
「お兄ちゃんの看病をする前まで、リフィアは長い夢を見ていたの」
僕も長い夢を見ていた気分だ。ウラノスに身体を乗っ取られ、思うがままに操られていた夢。でもこれは夢じゃない。れっきとした現実だった。
ウラノスがユリウスを倒した。だからこうして僕はリフィアと一緒にいられるのだろう。
複雑な気分で感傷に浸っている僕に、リフィアは少し顔を俯かせながら、話を続けた。
「リフィアが氷を操る化け物に捕まって、お兄ちゃんがその化け物と戦っている夢」
その話を聞いて、僕はバツが悪いような、気まづい感情が胸に広がった。
ユリウスだ。やっぱりリフィアは覚えていたんだ。
「お兄ちゃんは何度倒れても立ち上がって、ずっとリフィアの名前を呼んでた気がしたの。.......おかしいよね、こんな夢」
僕は思わず口から出かけた言葉を抑えて、わざと咳払いするかのように口を噤んだ。
ユリウスはリフィアの魂を奪った。特異点とか、訳の分からない事を言い出して。
これはただの妄想だけど、リフィアは魂だけになった状態でも僕とユリウスが戦っている場面を見ていたんじゃないのだろうか。
いいや、きっとそうなのだろう。
僕は迷った。リフィアに真実を教えてあげるべきなのだろうか。まだ十歳にも満たない子どもには酷な話ではないのだろうかと。
「そっ、か.......。きっと夢だよ。多分」
考え抜いた末、僕はやっぱり言わないことに決めた。理由はただ簡単で、リフィアには辛い思いをして欲しくなかった。
僕が言葉を言い終えた後、少しの間だけ、僕とリフィアはお互い無言になって静かになり、静寂が訪れた。
なんとも言えない雰囲気だ。僕はちょっとだけ気まずくなって、話題を変えるように話しかけた。
「そ、そうだ。ずっと寝っぱなしで喉が乾いてるんだ。外で飲み物買ってくるよ」
「飲み物ぐらいリフィアが買ってきてあげるよ?」
「大丈夫だって。もう普通に歩けるんだし。それに、リフィアにばっか頼ってちゃ悪いだろ?」
外に出ようと僕が起き上がる。服装は大丈夫そうだ。このまま外に出ていける格好だ。
僕はすぐ側に置かれていた自分の薄い財布を手に取って出かけようとしたが、急に立ちくらみを覚えてベットの上でずっこけた。
「お、お兄ちゃん!?」
頭から布団にダイブした僕。不幸中の幸いか、転んだのがベットの上で本当に良かった。
どうやら自分で思っていたのと違って、今の僕は相当調子が悪いらしい。
「いてて.......。大丈夫、目眩がしただけだから」
「も、もう! 無理しちゃダメなの! 全く、お兄ちゃんはリフィアに全力で頼って欲しいの。こんなダメダメなお兄ちゃんは、今日からしばらくはリフィアに甘えるの」
「ま、またか.......」
リフィアは可愛く頬を膨らませてご立腹の様子。僕をベットに寝かし付けると、いそいそと哺乳瓶を取り出してきた。
またそれか。貪食の食人鬼の後の看病みたいになるのか。
「リフィアじゃ、嫌?」
「嫌じゃないけど.......」
リフィアの看病は嬉しい。哺乳瓶だけは勘弁して欲しいけど。
「ならよろしいの」
リフィアはえっへんと胸を張って、任せろと言わんばかりの勝ち誇った顔をした。
「リフィアが今日からお兄ちゃんのお医者さんにやってあげるの。むむ、でもお医者さんじゃしっくりとこないの。看護師さん? でもこれも、何か違うの.......」
「呼び名なんて別にいいだろ」
「うーん、うーん.......そうなの! ママって良いと思うの」
ママって.......。どこの世界に九歳のお母さんがいるんだよ。まず子ども産めないだろ。
呆れた顔で首を下げた僕に、リフィアは腕を広げて笑いかけた。
「いいよお兄ちゃん。リフィアがお兄ちゃんのママになってあげる」
両手を思いっ切り開いて僕を迎えるリフィア。顔に満面の笑顔を咲かせて、リフィアは言った。
「おいで、お兄ちゃん」
あ、不味い。ちょ、それは反則だっ.......
-スキル『ロリコン』が発動しました-
僕はプライドや罪悪感を溝の水底に投げ捨てて、リフィアの懐の中に飛び込んだ。
「~~~っ! く、くすぐったいの.......。リフィアは逃げないからそんなにがっつかなくていいんだよ? ふふっ。本当に赤ちゃんみたいだね、お兄ちゃん」
リフィアの身体はこんなにも小さいのに、抱き締めていると心が温まってくるような安心感に包まれる。
僕は堪えきれずにスリスリとリフィアのお腹に自分の頭を擦り付けた。心臓の鼓動がトクトクと聞こえ、聞いていると悩みとか不安とか、全部溶けて無くなっていくような気分になる。
白く清潔なエプロンからは薬草に混じって様々な香草の香りがする。嫌な匂いではない。むしろ嗅いでいると気持ちがリラックスしていく不思議な匂いだ。
「よしよし。いい子いい子。リフィアのナデナデ気持ちいい?」
僕はリフィアに頭を撫でられていた。普通は立場が逆なのだけど、今の僕は赤ちゃんみたいに羞恥心を全て投げ捨てたからか素直に気持ち良かった。
.......僕はずっと認めていなかった。
いや、認めたくなかったと言った方が正しいのかもしれない。
僕はリフィアの事が好きだ。
この感情は、嘘じゃない。性格とか仕草とか、リフィアの全部引っ括めて僕は好きになっていたんだ。
ロリコンとか、小さい女の子に手を出したらいけないとか、ずっと意識していた。
周りの意見や常識に縛られて本当の気持ちを出せなかった。自分の観念に囚われていつも躊躇っていた。
でもそんなものは、もうやめにしようと思う。
自分の本心を偽って、目を背けているのはかっこ悪いと僕は思ったから。
「リフィア」
「どうしたの、お兄ちゃん?」
「..............好きだ。リフィアの事が。好きだ」
顔を上げてみると、リフィアは顔を真っ赤にしてあたふたとしていた。そんな慌てた様子のリフィアも、僕には可愛く見えて胸が苦しくなるほど愛おしかった。
「もう.......」
赤い顔のリフィアは僕の頭に覆い被さるように抱き着いて、弾むような嬉しそうな声で言った。
「リフィアだって、気付いていたんだよ? 遅いよ、お兄ちゃん」
凄くドキドキする。今の僕はリフィアと同じように顔を真っ赤にしてドキマギしているに違いなかった。
お互いの心臓の鼓動がいつもより早い速度で脈打っていて、興奮しているのが分かる。
僕は堪え切れなくなって、僕の上で覆い被さっていたリフィアを持ち上げるように離すと、すかさず後ろに押し倒した。
「お、お兄ちゃん?」
心做しか、リフィアの顔がピンク色に染まって、心臓の音がトクトクと更に早くなった気がした。
リフィアは少し恥ずかしそうに僕と目を逸らしたが、喉をごくりと小さく鳴らすとそっと近付き、僕の耳元で優しく囁いた。
「いいよ。リフィアがお兄ちゃんのママになってあげる。大丈夫、ママが全部受け止めてあげるから」
少し間を置いて、リフィアは誘うように微笑みかけながら言った。
「ママの身体、好きに使っていいよ」
その一言で、なんとか後一歩のところでとどまっていた僕の理性が吹っ飛んだ。
貪るようにリフィアに抱き着くと、白いエプロンを上から脱がし、あどけない未成熟の身体を露わにさせる。
柔らかそうなふっくらとした小さな胸が恥ずかしそうに顔を出し、僕を誘惑するかのように惹き付ける。乳白色の肌は火照って桜色になり、僕の欲情を更に掻き立てる。
赤ん坊が母親の母乳を求めるかのように、僕は本能に従ってリフィアの乳首に口を押し当てた。
「んっ.......」
艶めかしい声を出して、リフィアはビクッとその小さな身体を震わせる。
「ふふっ、一生懸命吸っちゃって。ほんと、赤ちゃんみたいだね、お兄ちゃん。そんなに吸ってもまだミルクは出ないんだよ?」
子どもをあやすように、リフィアは僕の頭を優しく撫でてくれる。
僕はもっとリフィアの身体を堪能しようと.......
不意にガチャりと部屋のドアが開いた。入ってきたのは黒いローブを羽織った女性。彼女は部屋に二、三歩踏み入れるとそこで立ち止まり、目を丸くして固まった。
「リフィアちゃん。ウェルトさんの体調はもう大丈夫なんです.......えっ?」
「どうしたドレム? 急に立ち止まっ.......」
続きて入ってきたアシュレイも口をぽかんと開けて立ち止まる。
遅れて二人の奥で騒がしい声がしたと思うと、藤色の髪の毛の少年が顔を出した。
「なんだよ二人とも、そこで棒立ちしてたら俺らが入れな..............」
少年と一緒にひょっこりと下から出てきた青髪の幼女。この二人もアシュレイとドレムと同じようにしばらく目を丸くすると、急ぎ足で後ろを振り向いて立ち去ろうとした。
「ねぇ、ミナト。これって」
「俺らは何も見なかった。いいな?」
「おーい小ぞっ。うぷっ。いきなり目隠して何をする!」
「だめだエキューデ.......! ここから先はビデオ屋の18禁のコーナーよりアウトな立ち入り禁止区域だ! 俺達が踏み込んでいい領域じゃない!」
「何よアンタ達。そこでぞろぞろ固まっていたら部屋に入れないじゃないの。退きなさい」
最後の最後に、一番聞きたくない声が僕の耳に入ってきた。
部屋に入ってきたエマと、僕の目があった。
この日。僕の人生は終わりを告げた。
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