ろりこんくえすと!

ノω・、) ウゥ・・・

2-67 七大罪スキル【傲慢】


 2-67 七大罪スキル【傲慢】


「【傲慢ごうまん】を何故お前が持っている」

 キメラは漆黒の羽を旋風と共に撒き散らす。それに当たったスケルトン達は目に見えて明らかに動きが鈍くなる。のろのろと動くスケルトン達の攻撃はまるで通っていない。むしろキメラをつついた手に持った剣や槍が折れる始末だった。

 レベルダウン。
 【傲慢】から作り出された翼から落ちる羽に当たると、強制的にLvが1になってしまう。

 キメラは勝ち誇った顔で軽く腕を振った。そよ風が起こり、煽られたスケルトン達の身体が紙吹雪のように崩壊していく。

 キングもナイトもソルジャーも関係ない。Lvが1に戻ったスケルトン達は皆等しく雑魚だ。今のキメラにとっては道端の雑草同然だった。

 数多のスケルトンが塵芥ちりあくたのように扱われ、遂にスケルトン達の親玉であるスケルトンエンペラーが動き出した。

 一瞬でキメラの元へと肉薄し、スケルトンエンペラーが空間に剣を奔らせた。残光を流して解き放たれた剣閃はキメラの身体を確かに捉えた。

 筈だった。

 バキバキとスケルトンエンペラーが握る剣がへし折れる。古く劣化していた剣なのだが、さっきまではキメラの身体を豆腐のように切り裂いていた。

 スケルトンエンペラーはまだ黒い羽に触れていない。つまりレベルダウンの効果を受けていない。
 それでも突然スケルトンエンペラーの攻撃は通らなくなってしまった。

「ここでLv不足か.......」

 エキューデは思い当たる節があった。

 七大罪スキル【傲慢】。大罪系のスキルの中でも群を抜いて強いこのスキルはレベルダウンだけが取り柄ではない。

 Lvが下がることだけでも大変な脅威だ。だが、このスキルが厄介な理由はもう一つある。

 それが、ダメージの無効化。

 自分のLvが敵よりも1でも高かった時、攻撃を完全に無効化する。

 自分のLvよりLvが低い事と言う条件こそあるが、ともかくその条件を満たせばどんな攻撃だろうが無意味となる。

「本当に厄介なスキルだ」

 ダメージの無効化と強烈なシナジーを生み出すのがレベルダウンとの組み合わせだ。強制的にLvを1に戻される事で攻撃が通らなくなり、実質無敵になってしまう。

 更に付け加えるならばレベルダウンの解除方法が無いのが【傲慢】の強力さに拍車を掛けている。

 あらゆるスキルでも技能でも解除方法が本当にないのだ。全ての状態異常を治癒する最上位魔法の『エクスキュア』でも、自身に掛かっている不利な効果を打ち消す聖騎士の職業で覚えられる『聖看破』でも解除は不可能だった。

 当然レベルダウンをあらかじめ防ぐようなスキルも技能もない。黒い羽を避けることだけしか対策方法が存在しない。

 自分より劣っている者を見下し、嘲笑い、優越に浸る。例え自分よりも優れていようが驕ることは止めない。この上なく【傲慢】に相応しい能力だろう。

 勝利の雄叫びをあげて、キメラは今までのお返しとばかりにメギドブレイズでスケルトンエンペラーを焼却した。

 ごうごうと音を立てて骨の帝王は燃える。黒い煤を空へ送りながら屍海の中へと沈んでいった。

「まずいな、このまま好きなようにさせていたら奴のLvが上がってしまう」

 エキューデはキメラの様子を見て焦っていた。

 レベルダウンの解除方法が無いように、対象のLvを下げる方法はない。いや、あるにはあるがそれが確認されているのが七大罪スキル【傲慢】だけだ。【傲慢】が【傲慢】に対して効果的とは、何とも皮肉が効いた話なのだろうか。

 さっきの呼び掛けでスケルトン達はいそいそと屍海の中に撤退していくが、キメラは執拗に追い立てて手を休めない。
 一体殺す度にキメラの経験値は加算されていく。魔物を倒してLvが上がるのはどんな生物であっても一緒だ。キメラが更に殺戮へと手を進めればLvは上がっていくばかりで、しかもスケルトンエンペラーを倒したキメラは莫大な経験値を手に入れてLvは少なからず上昇した。これ以上Lvをあげられると手の付けようがなくなってしまう。

「それは不味いですな.......スケルトンエンペラーがやられたとなると後はドラゴンゾンビしか」
「.......そうか!」

 何気ないエルダーリッチの呟きに何か閃いたのか、エキューデはエルダーリッチの首根っこを掴んで急ぎ足でドラゴンゾンビの元へと足を進めた。

「え? 主、何をしているのですか?」
「すまん、ドーピングだ。なに、たったの数百年だ。数百年ぐらい経てばまた蘇るから安心しろ」

 エキューデが今から自分にやろうと事を察したエルダーリッチは、ただでさえ不健康そうな青い顔を更に青ざめた。

「え、ちょっと? う、嘘ですよね? ただの悪い冗談ですよね? まって、まってください! これ本当に洒落にならないですって! 飢餓鬼灯の餌やりサボってたの謝りますから! ごめんなさいしますから! 嫌だ! 私はまだ死にたくない! やめて! やめて! やめっ」
 
 エルダーリッチはドラゴンゾンビのすぐ側に投げられる。そしてプチっ、と哀れなエルダーリッチは踏み潰された。


 個体名 ドラゴンゾンビ
 Lv176→181
 HP6975/6975→7106
 MP3459/3459→3541
 筋力6356→6412
 魔力4869→4974
 耐久3423→3471
 精神4396→4409
 俊敏3753→3798
 

「エルダーリッチの霊圧が消えた.......」

 屍海の感覚で分かる。エルダーリッチが命と引き換えにドラゴンゾンビに希望を託したことを。

「行くぞ、仇討ちだ。あいつの犠牲は決して無駄にしてはならん」
「ギャオオオオオオオオンッ!!!」

 ドラゴンゾンビはエキューデを口で咥えて背に乗せるとキメラの元へと勢いよく飛び立った。

 【傲慢】を制御するのに精一杯な筈なのだが、Lvが上がったからか【虚飾】の腕はかなりスピードで再生が始まっている。

 低空で飛翔するドラゴンゾンビとエキューデを見定めて、キメラは【傲慢】の翼から羽を飛ばす。一枚一枚が矢を射るように飛来し、見ている側からすればさながらイナゴの大軍のようだった。

「迎撃しろ」

 口から炎を燃やしブレスを放つ。ファイアーブレス。ドラゴンの使う初歩的な技能の一つで威力も然る事ながら最も扱いに優れる。

 地上に向けて放たれたファイアーブレスは羽を残らず焼き払い、キメラを業火で炙った。

 その攻撃に乗じて、エキューデはドラゴンゾンビの背から飛び降りて疾駆する。地を駆けながら、飢餓鬼灯にありったけの魔力を込めて振り払った。

 飢餓鬼灯の肉の蕾が咲く。内に秘めたギザギザの複数の刀身がキメラを穿いた。

 動きを止めた。それをチャンスだと理解したドラゴンゾンビは再びファイアーブレスを放とうと炎が口に宿った。

 その時、突如ドラゴンゾンビの首がもげた。【過食】の能力だ。喉元を食い破られ、使おうとしていたファイアーブレスが暴発し、首の上半分が爆炎に包まれる。

「奴め、見かけによらず頭がいい」

 首を負傷しブレスが使えなくなっても、それでもドラゴンゾンビは脅威度Sだ。前脚を振り上げると鋭く硬い竜の爪を勢いよく振り下ろす。

 発動した技能は毒激爪。ドラゴンゾンビから飛ばされた、猛毒が染み込んだ爪撃がキメラに炸裂した。

 胸元をかき切られ毒が血管に入り込む。キメラは痛みに悶えて後退した。まだドラゴンゾンビの方がLvが上なので毒は無効化が出来ない。

 それを知っているのか、キメラはドラゴンゾンビから明後日の方向へメギドブレイズを放ち、遥か遠方にいたスケルトン達を焼却する。

「【傲慢】の能力を理解しているのか!?」

 エキューデはただの鬱憤晴らしでスケルトン達を攻撃しているだけだと思っていたが、それは間違いだった。キメラの行動は理に叶いすぎている。自身の能力を理解して動いているのは明らかだった。

 【傲慢】の翼で飢餓鬼灯を叩いて圧潰し、突き刺さっていた幾つもの刀身を抜いて拘束から逃れる。

 飢餓鬼灯は生きている。それは飢餓鬼灯にもLvの概念があるという意味も持ち合わせている。つまり、レベルダウンが起こった飢餓鬼灯は使い物にならなくなってしまった。

「ガアアアアァァァッ!」

 震えた大激怒の声をあげて、キメラはエキューデへと飛び掛かろうとしたのだが、


 足が止まった・・・・・・

 キメラが攻撃を加えるつもりだったのは誰から見ても分かるのだが、何故かキメラはその場で動きを止めた。

「なんだ? 強力すぎる七大罪の制御が出来なくなったのか?」
「ガあぁ、がぎぎぎきGIィiii.......」

 キメラが苦しそうに胸を抑えて蹲る。その場で藻掻くと、口から灼熱の涎を垂らしながら狂った叫び声を喉から出した。

「ぎっぎ.......ぐあ、が、ガガ.......? Gaァ、Geァァァァァァァァァッッッ!!!」

 挙動が怪しくなり、身体が内部からボコボコと隆起した。

「馬鹿な.......!? あれはまさか.......!?」

 ベリベリと背中が割れて、見るもおぞましい物体が飛び出してきた。

 赤黒い魔力がキメラの周りを渦巻く。だらんと腕をぶら下げて、焦点の合わない虚ろな目を浮かべるキメラの姿は、何か酷似していた。

「ゲッ、ゲッ.......ゲァァァ.......」

 キメラの背中から飛び出してきたモノ。

 それは、赤黒い蛸のような触手だった。




チートスキルの解説。
解説 七大罪スキル【傲慢】
効果は翼を生やす。翼には以下の三つの効果が付与される。
・ダメージの無効化
翼が生えている本スキル所持者に対し、自身のLvよりLvの低い者の攻撃は『どんなものであろうと完全に無効化する』
・レベルダウン
翼からは羽を撒ち散らせる。この羽に当たると『問答無用で強制的にLvが1になる』解除方法は翼を生やした本スキル所持者を絶命させるか七大罪スキルの【傲慢】を封じるか奪うだけのみ。時間経過や技能、スキルによる解除は『絶対に不可能』例え一度死んで魔法や技能による蘇生を試みても、『Lvは1のまま』である。
・オートリバイブ
翼の破壊は出来る。ただし魔法による攻撃は無効化し、『壊すことが出来るのは物理攻撃のみ』更に物理攻撃に対しても非常に硬度でどんな攻撃でもビクともしない。その上、少しでもダメージを受けると『羽を撒き散らし、時間経過で再生される』


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