ろりこんくえすと!

ノω・、) ウゥ・・・

2-47 灼熱の記憶の欠片 6



 2-47 灼熱の記憶の欠片 6


「いやー、難しかったですねアシュレイさん」

 筆記試験を終えた私達は、次に行われる実技試験に向けて休憩を取っていた。私の筆記試験の出来は可もなく不可もなくと言ったところだろう。

 ドレムは難しかったと述べていたが、普段の様子を見る限り、筆記試験は余裕で通ることが出来る筈だ。

「う゛う゛う゛あああぁぁぁ!!!」

 にこにこと笑うドレムの隣で、エドガーは世界の終末が訪れたかのような、絶望に染まった表情で頭を抱えていた。

「エドガーさん、エドガーさんはやるだけやったんです。後は実技試験頑張って神様にお祈りしましょうよ」
「もう駄目だお終いだぁ.......」

 ドレムが優しくエドガーの頭をぽんぽんと叩いてを慰めるが、エドガーは一層悲痛な嗚咽を漏らして変な声でおいおいと泣き始めた。

「これはもう駄目みたいですね」
「よっぽど悲惨だったんだろうな」

 エドガーはかなり落ち込んでいるが、放っておけばいずれ元気になるだろう。後の実技試験ならばエドガーは得意分野に入るから挽回出来る可能性も残っている。それは、本人も気付いてる筈だ。

「さてと、エドガーさんは少し放っておいて。アシュレイさん、ちゃんと持ってきましたよ」
「ありがとうドレム。助かるよ」

 話を変えて、ドレムから渡されたのは丸みを帯びた黒い鉄塊。そう、重砲だ。

 重砲は私達が第二期生が騎士団訓練プログラムに入ってきた半年後に完成した。しかしながら、完成するまでかなりの時間が掛かってしまった。

 私の家から発掘された重砲は約百年前のとても古い物だと判明したので、各部品を現代の最先端の物に変えなければならなかったのだ。

 それなりの時間とお金が掛かったが、この重砲はそれに見合う性能を有している。

 ダマスカス鋼。それは希少金属レアメタルの一つであり、魔力伝導率が非常に悪いが、物理耐久、魔法耐久それぞれに非常に優れた金属だ。そして、この重砲の殆どがそのダマスカス鋼で造られている。

 重砲とは砲身が強ければ強いほど強力な砲弾が撃ち出せる物。一般的に普及している重砲は、安価な鉄材で砲身が作られている為、撃ち出す砲弾の威力は抑えめになっている。

 しかし、この重砲はその必要が無い。ダマスカス鋼で造られた砲身は、高威力の砲弾に耐えうる耐久度を持っている。

 加えて、砲身のみならず銃身全体に使用されている。即ち、砲弾を撃った時の反動も軽減され、非常に壊れにくくなっているのだ。

「次は実技試験ですもんね。今の内に渡しておかないと。あの、アシュレイさんは本当にこの重砲を実技試験で使うんですか? 下手したら試験官が死にますよ?」

 ドレムはどうやら実技試験で私が重砲を使用することに抵抗があったようだ。別に重砲を使用するのにほ問題はない。

 ちゃんと実技試験の内容の一つには『各々の得意な武器を使って挑むこと』と書かれてある。剣のみならず槍も斧も、更に言えば魔法を使っても良い。それは重砲も例に漏れないだろう。

 問題は重砲の威力だ。完成した直後、私とドレムは適当な岩山に向かって重砲の威力を試してみた。

 結果から言えば、私の背を優に越える巨大な岩が跡形も無く消し飛んだ。あとに残った物は灰砂と黒く焼け焦げた地面だけ。この重砲は凄まじい性能を有していると言える。

 確かにこんな物騒な得物は人に向けたりしたら駄目だろう。しかし……

「何、試験官はエルクセム騎士団の連中だぞ? 日頃王都の平和を守る為に日々鍛えている人間が私如きの重砲で死ぬものか。むしろ殺る気で行かないと一次選考は突破出来ないと思うぞ」

 エルクセム騎士団は化け物揃いだ。今回試験官を担当するのは、全員Cランク冒険者相当の実力を持つエルクセム騎士団の精鋭達だ。

 一部の噂だと、その中に騎士団長、副騎士団長クラスの騎士も紛れていると聞く。手加減や出し惜しみをしていてる余裕はこちらにはない。使えるものを全て使って、全力で挑むべきだと私は考えている。

「一応中に詰めてある砲弾の威力は抑えめにしてありますけども。くれぐれも試験会場を木っ端微塵に、なんてことはしないでくださいね? アシュレイさんならやりかねないです」
「私を一体何だと思っているんだ。破壊神か」

 私とドレムが和やかに話に興じている時、ごーん、ごーん、と重く響くあの鐘の音が響いた。休憩時間は終わりを告げた。実技試験開始の合図が鳴ったのだ。

 

 ◆◇◆



 実技試験が開始した。受験者達は各々に振られた受験番号に従って、各試験官の務める試験会場へと足を進める。私達は他の受験者達の列に並び、番号を呼ばれる時をじっと待っていた。 

「39番! 40番! 41番!」
「よっしゃぁ! 俺はこの時を待っていたぁ!」

 試験官が番号を呼ぶ声が聞こえた。早速番号を呼ばれたエドガーが、さっきまでの様子はどこやら、元気な笑顔で雄叫びをあげた。

「行ってくるぜアシュレイ、ドレム! この実技試験で筆記試験の分を挽回してやるんだぜッ!」

 希望に満ちた眼差しを私に向けて、エドガーは意気揚々に走り去って行った。

「知ってましたけど立ち直りが早いですね」
「ああ、そうだな」
「42番! 43番! 44番!」

 次の番号が呼ばれた。 その番号の中に私達の番号があった。私とドレムは、指示された試験会場へと歩みを進める。

 私達が今から実技試験を受ける試験会場は、灰色の石畳を基本としたちょっとした闘技場みたいな所であった。石畳以外は何も無い殺風景な試験会場の真ん中には試験官が佇んでおり、私とドレムは緊張感が張り巡らせた雰囲気に呑まれていた。

「42番、前へ!」

 呼ばれたのは私達の番号ではない。試験官の指示に従い、私達の後ろから見知った人間が現れた。

 ヴィクトルだ。ヴィクトルは私の前の番号に振られていたようで、試験会場の真ん中に出向くと試験官に挨拶をし、剣を構えた。

「アシュレイさんヴィクトルですよ」
「そうだな」

 そして、試験官の一声と甲高い笛の合図で私達の目の前でヴィクトルと試験管が剣を打ち付け合った。激しく剣戟を鳴らし、見ていると非常に高度な攻防が繰り広げられているのが分かる。

 ……なんだか様子がおかしい。ヴィクトルと試験官の戦いを見ていると胸に突っかかるような違和感が感じられた。

「アシュレイさん、凄いですね。ヴィクトルが試験官と互角に渡り合ってますね。まさかヴィクトルがあれ程までに成長していたなんて驚きです」

 確かにヴィクトルは試験官の隙を見付けては剣を振るい、隙を見付けては剣を振るい、堅実な戦い方をしている。試験官の攻撃を上手く剣で弾き、互角に……。

 互角に、渡り合っている?
 
「ドレム、ヴィクトルが戦っている試験官の動きがおかしい」
「ふぇ? どこがですか?」
 「よく見てみろ。明らかに試験官が手を抜いている。試験官がヴィクトルに隙を与えた動きをして、わざとヴィクトルの戦闘技術が高いように見せ付けているんだ」

 試験官は袈裟懸けに剣を振るった。ヴィクトルが剣を握っている腕を狙って。ヴィクトルは当然振り下ろされた剣を弾く。試験官はわざと身体をのぞけらせた。剣を弾き返された反動に見せて。

 そして、ヴィクトルは作られた隙に踏み込んで横凪に剣を払う。

 互角に渡り合っている? 

 いいや、違う。ヴィクトルに試験官と対等に戦える卓越した技術は微塵も無い。

 第一期生と第二期生は合わせて数十人程度だ。私は騎士団訓練プログラムを卒業するまでの間、他の人の動きはほぼ覚えている。

 ヴィクトルは卒業するまで尚お粗末な技術しか持っていないは知っている。

「これまで! 42番もういいぞ!」

 もう充分と判断したのか、試験官は笛を鳴らしてヴィクトルの実技試験を終わらせた。ヴィクトルは試験官にお辞儀をし、背を向けて立ち去っていた。

 ヴィクトルが出口に向かう時、私とすれ違った。その顔には、何とも言え難い暗い笑みが貼り付いていた。

「43番! 前へ!」

 次に呼ばれたのは私の番号だ。

「アシュレイさん頑張ってください!」
「行ってくる」

 一抹の不安を胸に抱え、私は試験会場に足を踏み入れた。試験官は既に笛を口に加えていて、すぐに実技試験が開始されそうだ。

 私は重砲を腰に納め、剣を鞘から抜き放って構える。試験官も剣を構えた。

 しばらくの静寂の後笛が鳴った。

 実技試験――――開始。

 先に動いたのは試験官だった。足を踏み出すと一気に加速し、目にも止まらぬ速さで剣を素早く縦一文字に振り下ろした。

 私は剣の刀身を使い防ぐ。重くのしかかった一撃が腕越しに伝わり、ビリビリと痺れた。

 不安は確信に変わる。

 なるほど、これは面倒だ。 

 ヴィクトルとの実技試験では試験官は手を抜いていた。ヴィクトルの時とは一変して、どうやら私には全力で叩き潰しにきたらしい。

 その証拠に、試験官は戦闘開始直後に体術スキルの『瞬歩』を発動していた。試験官が技能を使ってはいけないというルールはないのかもしれないが、ヴィクトルと私の実技試験の内容を比べてみれば、公正性が皆無なのは明らかだった。

「確信出来て助かったよ。これなら遠慮なくぶっ放せる」

 私は剣を手放して試験官を蹴り飛ばすと重砲を腰から引き抜いた。砲弾は既にドレムの手により装填されてある。弾倉を回して引き金を引いた。

 刹那、撃鉄から撃ち出された砲弾が試験官の頬を掠め、石片と硝煙を巻き上げて石畳を木っ端微塵に粉砕した。

「相変わらずえげつない威力ですね。それ」

 ドレムが呆れた声で物を言った。

 惜しい。あと少しズレていれば砲弾が直撃してたのに。

 試験官は顔を顰め、首元の辺りを漁り笛を鳴らそうとした。終了の合図の鳴らすつもりなのだろう。

「欲しいのはこれか?」

 笛は私の手にぶら下がっていた・・・・・・・・・・・・・・

 御丁寧に試験官は笛を首に付けたまま実技試験を開始してくれた。プランプランと無防備に揺れ動く笛を掠め取るなど造作もないことだ。

「42番! しっか.......!」
「問題ない。実技試験の内容には『試験官の持ち物を奪ってはいけない』というルールは書いていなかった。実技試験は実戦を考慮して行われている試験なのだろう? 剣を奪われるなんざ戦場では当たり前。笛を奪われたぐらいで私の試験を終わらせてしまうのか?」

 私の言葉に遮られた試験官は不快な感情を露わにして剣を突き付けた。

「そうだろう。ヴィクトルとの取引はちゃんと遂行しないといけないよな?」

 この一言で、ドレムと試験官はお互いに驚愕の声を零した。

 なに、ちょっと考えれば分かる事だ。ヴィクトルは第二期生が入団した初日に私に模擬戦で負けたことに恨みを持っていたからな。

 試験官、お前のミスは私とヴィクトルを同じ試験会場で行わせたこと。そして、私よりも先にヴィクトルと戦ったことだ。 いや、いくらヴィクトルが位の高い貴族でもエルクセム騎士団の中で取引出来たのは一人だけだったので私とヴィクトルは一緒の試験会場にしなければならなかったのかもしれない。

 恐らく、ヴィクトルからの取引は二つ。
 実技試験で自分を有利に動かすことと、私を叩き潰して落とさせることだろうか。

 「さて、実技試験再開だ」

 私は重砲の引き金に指を掛ける。次々と砲弾が発射され、石畳の試験会場を撃ち抜いていく。

 一発、二発、三発、四発、五発。

            
 一通り撃ち終わると私は空になった弾倉・・・・・・・を投げ捨て、新しい弾倉を重砲にセットする。

 弾倉を回して引き金を引く。

  一発、二発、三発、四発、五発。

 試験官は器用に飛び回り砲弾を避けるが、重砲の爆撃により石畳の足場が壊れているので動きがぎこちなかった。そして、私は空になった弾倉を替えようと重砲に手を当てた。

 その時、試験官の動きが変わった。私が弾倉を替える瞬間を狙って瞬歩を発動して加速した。

 両手が塞がって無防備な私に向かって試験官は一切の躊躇いもなく剣を振り下ろした。それは殺意の纏った一撃だった。

 ああ、予想通りだ。その方が遠慮が要らない。

「残念だったな。弾倉に装填されている砲弾は全部で六発だ」

 重砲が熱を帯びる。試験官の瞳に銃身から溢れる白光が映った。

「実技試験は実戦を考慮して行われる。そうだろう?」

 重砲は撃鉄を打った。残された最後の砲弾を銃身から 零距離で試験官へと射出した。

 爆風が舞う。試験官は炎に包まれ、凄まじい勢いで壁まで吹き飛んで激突した。試験官は黒焦げになり、なんとか立ち上がろうとしたものの、事切れて倒れていった。

「ドレム、試験官を倒したぞ。これなら合格間違いなしだ」
「えぇ……」

  木っ端微塵に砕け散った試験会場で、ドレムの呆れた声がやけに響いた。

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コメント

  • ノω・、) ウゥ・・・

    クリスマスですね。読者の皆様はクリスマスはどうお過ごしですか?
    作者はサンタさんに「小学生のかわいい彼女を欲しい」とお願いしたのですが、どうやら悪い子だったようでプレゼントは無かったです。今年も無事にクリぼっちとなりました。悲しい。

    さて、気の利いた他作者様ならここでヒロインをサンタコスにして読者に媚を売るクリスマス回のお話を書くのが普通ですが、生憎作者にはそんな話を考える脳みそも書く時間もありませんでした。リフィアちゃんがサンタコスしてムフフなエピソードなんて無いです。どうかお許しください。ちなみにお正月回のお話も無いです。リフィアちゃんが着物を着てムフフなエピソードも無いです。お許しください。

    長くなりましたが最後に一言。

    メリークリスマス!

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