ろりこんくえすと!

ノω・、) ウゥ・・・

2-44 灼熱の記憶の欠片 3




 2-44 灼熱の記憶の欠片 3


 太陽が登った真昼間。私とエドガーは他の騎士団訓練プログラムの子ども達と、新しく騎士団訓練プログラムに入る子ども達と一緒に広いグラウンドの中で突っ立っていた。

 騎士団訓練プログラムでは第一期生と第二期生。この二種類の子ども達に別れている。第一期生とは私やエドガーのようなかなり幼い頃から騎士団訓練プログラムに入っている子ども達で、第二期生は第一期生よりやや遅れて入ってくる子ども達だ。

 騎士団訓練プログラムは四年制と二年制に別れている。私が入ってから二年経った今日、追加の二年制の子ども達が入団してきた、と言う訳だ。

「アシュレイさーん! ここですよ! ここー!」

 小さい人混みの中からドレムがぴょんぴょんと飛び跳ねて私に手を振っている。私とエドガーはお互いに苦笑しながら手を振り返した。

 ドレムは騎士団訓練プログラムに入ることになった。後から聞いた話だと、生まれながら身体が弱いドレムは外では満足に遊べなく、父親にお願いして入れさせて貰ったのことだ。本音を言えば私とエドガーと一緒に過ごしたかったのは言うまでもないだろう。

「ひいふうみい.......ほええー、新しく入団してくる奴ら結構いるな。ま、最初から入っていた俺には到底敵わないと思うけどな!」
「そんなこと抜かしていると直ぐに追い越されるぞ。まあ、別に競争している訳でもないが」

 第一期生と第二期生。そう区別されているが騎士団の入団試験にしても実力にしてもそう大差はない。

 何故ならば、第一期生の子ども達がやっていた訓練の多くは基礎体力作りが主だからだ。

 基礎体力は騎士にとっては大事な要素だが、それは騎士団訓練プログラムに入っていなくても各自で行える要素だ。己自身で日々を訓練に費やしていた人間ならば、第二期生とて第一期生とはそう変わらない。逆に自己流でやっていた人によっては第一期生よりも身体がしっかりと作られている人もいるぐらいだ。
 
「よーし! みんな揃っているか!」

 私とエドガーが雑談に興じていると、教師の一人が大声を張り上げた。

「これから合同演習の後模擬戦を行う! 各自好きな人同士で三人組を作って整列しろ! 以上だ!」

 その一言で周りの子ども達は辺りを見渡し、それぞれバラバラに散らばっていく。

 当然私とエドガーはドレムの元に駆け寄り三人組を速攻で作った。周りを見れば第一期生の子ども達は仲の良い人と三人組を和気藹々わきあいあいと作っているが、見知らぬ人同士の第二期生の子ども達は困惑とした表情で上手く作れずにいる。

 無理もない。まあ、どうせ自然に出来て.......うん?

「よく聞け愚民共!」

 第二期生の人混みの中からパワーワードを引っ提げて出てきたのは、豪華な装飾を飾り付けた衣服を着た、いかにもお坊ちゃまといった風貌をした男の子だった。

 周りを見下した視線で舐めるように見渡すと、最前列の背が高い男の子とこれまた横にいた体躯が良い男の子に指をさして命令した。

「そこのお前とお前! このヴィクトル様と組んでやる権利を与えよう! さあ、こっちに来るんだ!」

 ヴィクトルと名乗った男は有無うむを言わさず背の高い男の子と体躯が良い男の子の腕を引っ張って整列した。何が何だか分からないままの二人の男の子は更に困惑とした表情を浮かべてきょとんとしていた。

「アシュレイなんだあいつ。なんか悪いもんでも食っちまったのか?」
「そうかもな。腐った水上水鶏すいじょうくいなの肉でも食ってきたのかもしれん」

 不思議そうな顔で頭上に?マークを浮かべるエドガーに相槌を打って私は顔を顰めた。

 まさか騎士団訓練プログラムにあのような勘違い貴族が入団してくるとは思ってもみなかった。 

 産まれた時から蝶よ花よと大事に育てられ、大いに甘やかされて成長してしまったことにより、自己中心的、あるいら唯我独尊と言った性格になった貴族の子どもは何人か私は見てきた。

 その中でもヴィクトルは相当な部類に入る人間だった。もっと言えば一番酷いかもしれない。

「とても強引なやり口ですね.......。しかも愚民て」

 いつも温厚でのほほんとしているドレムも、この時ばかりは普段は見せない表情を浮かべ、嫌悪感を露わにしていた。

 数分後、第二期生の子ども達も無事に三人組を組めたようで、全員が教師の前で整列していた。

 教師は並んだ子ども達の全員を確認すると合同演習の内容を発表する。

「合同演習は登山だ!」
「うへぇ」「またかよ」「だりぃ」「それしかレパートリーがないのか」「きついから嫌だ」「純粋に嫌い」「山なんてなくなればいいのに」「おうち帰りたい」

 そして周りからブーイングが起こった。皆口々に不満を漏らし、私の横にいたエドガーも「うへぇ」と嫌そうな顔で呟いていた。

「アシュレイさん、登山ってきついんですか?」
「ああ、ドレムは初めてだったな。登山と言っても登るのはすぐ側の裏山だからコース自体はきつくない。山頂に着くまでは三時間も掛からないからしな。きついのはあそこに山積みに積まれている荷物だ」

 私はドレムが見て分かるようにグラウンドの隅に置かれている荷物に向けて指をさした。あの中は水や携帯食料が主に詰め込まれている。

 山頂には訓練所とログハウスが建てられている。その中のログハウスは王都在中の騎士も使うことがあるので、常に食料をストックしておかなければないらない。

 この登山は王都の騎士にもメリットがあるし、騎士団訓練プログラムの子ども達にも基礎体力を付けるいい訓練になる。正しくウィン・ウィンの関係だ。

 .......問題は子ども達はそう思っていないことだが。

「第一期生はいつも通り20kgの荷物、第二期生は今日だけは甘く見て15kgの荷物を背負って貰う!」

 子ども達は皆嫌々ながら立ち上がり、重たい荷物をそれぞれ背負っていく。私達も列に並んだ後荷物を引っ掴んで背負った。

 うぅ、重い。普段から体力は付けているとはいえ、きついものはきついものだ。

「そして少し休んだ後、山頂の訓練所で模擬戦を行う! 第二期生は第一期生に付いていけば山頂まで辿り着く! 不安な奴らは先生と一緒に登山してもいいぞ! それでは各自解散!」

 子ども達はのろのろとグラウンドから裏山に向けて出発した。不平不満を呪詛のように唱えながら。

「よし、私達も行くぞ。エドガー、ドレム。.......ドレム?」

 エドガーは「おう!」と返事をしたが、ドレムの声が聞こえない。周りを見渡してもドレムの姿は見えなかった。

 おかしいな、さっきまではすぐ側に居た筈なのに。一体ドレムは何処に行ってしまったんだ? 

「へばるの早すぎんだろ」

 エドガーは下を向いて呟いた。私も下を向くと、ドレムは荷物に押し潰されて地面に突っ伏していた。



 ◆◇◆



「ひぃ.......ひぃ.......辛い、辛いです。登山ってこんなに辛かったんですね.......。山を舐めていました」

 ぜぇぜぇと激しく息を切らしながらドレムは重い荷物を背負って山を登っていた。顔を真っ赤にして全身を汗で濡らし、見ているこちらが辛くなってくる。

「身体強化魔法を使うなんてズルしてるのにいいご身分だな、おい。それ俺にも掛けられないのかよ?」

 エドガーがドレムの荷物を後ろから手で押しながら尋ねる。ドレムは筋力を一時的に上昇させる身体強化魔法を使って歩いていた。

 荷物に押し潰されていた人間が荷物を持って歩けるようになる。魔法とは素晴らしい。著しい進歩だ。それでもこの有り様なのだが。

 現状、ドレムの荷物を押して歩いているエドガーが一番苦しい立ち位置に居る。確かにこの構図では愚痴のひとつも出てしまうは致し方ないだろう。

「まだ身体強化魔法は自身にしか掛けられません。練習すればいつか他人にも掛けられるかもしれませんが.......」
「早く使えるようになってくれよ? そうすればアシュレイに勝てるからさ」
「それでいいのかお前。そろそろ見えてきたな。頑張れドレム、あと少し歩けば開けた場所が出るぞ。そこで休憩にしよう」
「ふぇぇ.......」

 今にも泣きだしそうなドレムの手を引っ張り、私達は数分程歩いて開けた場所に出てきた。 

 そこは樹木に覆われた景色が一変し、若葉が積もった少し小高い丘といった感じの場所だ。

「はぁ.......はぁ.......やっと、やっと休憩できますね。ぜぇぜぇ.......」

 ドレムはホッと一息着いたのか、荷物を投げ出してそのまま地べたに横になってしまった。汗を拭うと荷物を漁り出し生徒達分の飲水をごくごくと飲み干した。

「なあなあ、どうやら先客がいるみたいだぞ」

 私も荷物を下ろしてドレムと休憩しようとしたが、エドガーの言葉である物に目が着いた。

 人力車だ。分かりやすく言うとお祭りの御神輿おみこしみたいな形をしている。その周りには黒の執事服を着た数人の男と、豪華な装飾を飾り付けた衣服を着た男の子だった。

「ヴィクトル様、荷物はこれで全部でしょうか?」
「そうだ。山頂付近にでも隠しておけ」

 黒服の一人がヴィクトルから荷物を受け取って背負うと、山を走り始めた。

「ヴィクトル様、僭越ながら人力し.......コホン、荷台を御用意させて頂きました。どうぞこちらへ」
「うむ」

 ヴィクトルが頷いて人力車に乗る時、私達と目があってしまった。ヴィクトルはちっ、と舌打ちをして、私達の方へやってくると大声で怒鳴り散らした。

「おいお前ら! この事は内緒にしておけよ! 絶対に先生にチクッたりすんじゃねえぞ! いいか、分かったな!?」

 ひとしきりそう叫ぶとヴィクトルは人力車に乗り込み、黒服の男達がえっほえっほと掛け声を掛けながらヴィクトルを乗せた人力車を担ぎ、走り去ってしまった。

「行ってしまいましたね」

 ドレムが呆れた様子でヴィクトルを見送った。

「なあなあ、これはドレムの身体強化魔法よりもズルいと思うぞ。どうするんだアシュレイ?」
「なに、答えは決まっている」

 どうせ最初に組んだ時の二人組は愛想を尽かしてヴィクトルを置いていったのだろう。ならば、真実を知る私達が裁かなければならない。

 山頂に着いた後、私は速攻で教師にチクッた。



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