ろりこんくえすと!

ノω・、) ウゥ・・・

2-27 救出作戦



 2-27 救出作戦


「まじかよ.......あれが本当のBLEACH実写版か。異世界まで来て、まさか狒狒王蛇尾丸ひひおうざひまる大紅蓮氷輪丸だいぐれんひょうりんまるを見るとは思わなかったよ」

 壮絶な戦闘を見終えた俺は、双眼鏡を目から離して一人呟いた。

 これまで色んななろう産のラノベを読んできたが、この異世界の戦闘能力のレベルが桁違いだ。どうやら俺が召喚された異世界は、戦闘能力が著しくインフレし過ぎているらしい。

 俺は思った。

 どうやってスローライフを送ろうかな、と。

「何呑気なこと言ってんのよミナト! エキューデとなんか一緒に戦っていた男の子が捕まっちゃったわよ! 早く助けに行かなくちゃ!」

 どうしようもない厳しい現実を目の当たりして、諦めがちになった俺とは反対に、隣にいたノアが頭を抱えたと思いきや、いきなり全速力で走り出した。

「待て待て待て」
「むぎゅっ」

 俺はノアの頭をガシッと鷲掴みにして食い止めた。

「今の戦い見ていたか? 俺とお前が行ったところで一秒も持たずに冷凍保存されちまって終わりだろ。二人仲良くガリガリ君にされるだけだ。あいつらを助けたいなら何かこう.......頭のいいスマートでスタイリッシュな作戦とかを考えないと」

 ちなみに頭のいいことを英語とスマートという。つまり、こんな台詞を話す俺の頭は悪かった。

 とはいえ、俺が使えるスキルで一番まともなのが氷魔法だけだ。といっても、俺が使える氷魔法はヒャド並の威力だし、氷タイプに氷技は効果は今ひとつだ。

 俺のゴミみたいなステータスじゃ、あの銀髪の男には逆立ちしても勝てっこないだろう。

「む、むむむむむ。そ、そうね。それで、頭のいい作戦ってなんなの?」
「俺は頭が良くないから思い付かんな」
「駄目じゃん!」

 ノアが声高に叫んだ。

「あああああぁぁぁ! もうどうすんのよ! まさか『覚醒者』のエキューデを負かすなんて! あの銀髪の男、とんだ化け物よ!」
「いいか、ノア。世の中諦めるってことも肝心なんだ。エキューデのことは一旦諦ようぜ。つーか、あの戦い見て思ったわ。俺には戦いに向いていない。どうやっても、あそこまで強くなれるビジョンが考えられんわ。だからな、俺達は地道に畑でも耕してゆっくりスローライフでも送ろうぜ」
「うわああああん! ミナトの馬鹿ぁぁぁぁぁ!」

 ノアが涙ぐんで俺の膝をぽかぽかと叩く。しかし、小学低学年生レベルの攻撃力では俺の堅牢な防御力は突破できない。むしろマッサージみたいで気持ちよかった。

「冗談だよ。むしろ今回はどうにかして助けに行かないとな」
「ふぇ?」

 俺はやれやれと肩を竦めながら、ノアに話しかける。

「いいか、ノア。気になっていたんだが、あの黒髪の男ってさ、もしかしたら俺と同じ異世界人なんじゃないのか?」
「あの男の子?」
「そうだ。それも俺と違ってチート持ちの。この世界では黒髪黒目って珍しいんだってな? それに、オークキングが勇者召喚で召喚した異世界人達を戦争の道具に使うって。だから、最悪あの黒髪の男も戦争の道具にされるかもしれない。そう思うと、同じ日本人としてなんかこう、な」

 俺は腕を組んで悩む。正直このまま見捨てたい気持ちが心の中で八割を占めるが、もし、あの黒髪の男を仲間に出来たとしたら、ノアをさっさと押し付けてまったりなスローライフを送れるかもしれない。
 それにだ、異世界人よりも、同じ日本人だとしたら幾らか話が通じると俺は考えていた。

「げ、とうとう捕まったか」

 俺が緻密で完璧な計画を建てていた時、雪の中からエキューデと黒髪の男がフルアーマー達に発掘された。

「あいつらフルアーマー達に運ばれていくな。どこに連れて行かれるんだ?」
「そりゃあ、あれだけ暴れたし、牢屋にでもぶち込まれるんじゃない?」
「それだ!」
「うぇ?」

 俺はビシッとノアの指をさして、俺の頭の中に閃いた、頭のいいスマートでスタイリッシュな考えをノアに話す。

「牢屋にぶち込まれてから本番だ。あの銀髪の化け物はどうしようもないが、見張りぐらいなら俺でもなんとかなる!」 
「なるほど! 牢屋にぶち込まれた所をミナトが颯爽さっそうと助けに行くのね! 好感度も稼いでエキューデも助けて万々歳ね!」

 だとしたらやることはただ一つ。

「「尾行開始!」」

 俺達は互いに拳を振り上げて、壊滅状態の街に出向いっていった。



 ◆◇◆



 一方その頃。

 -エルクセム王城- -第二騎士団本部-

「ほ~らみんな。みんなの大大大好きな、お薬の時間ですよ」

 カーテンが閉められた薄暗い部屋で、一人の男がニタニタと笑っている。
 その男が見据える先には、這いつくばりながら、必死に何か求める三人の少年少女達がいた。

「ぁぁっ.......ぁぁ.......ぁぁぁ.......」
「おく.......すり、ちょう.......だい.......」
「………欲しい…………欲しいっ.......!」

 涎を垂らし、理性が感じられない呻き声を出しながら、三人は男が持つ白い粉が入った袋に手を伸ばす。しかし、男は廃人と化した三人に憐れむ視線を向け、袋に伸ばされた手をぴしゃりと叩き落とした。

 ここは、エルクセム王城内に位置する第二騎士団本部。その中でも一握りの人間しか入ることが許さない騎士団長の間。

 そこには薬漬けされた三人の人間と、

 薬漬けを行った・・・・・・・第二騎士団騎士団長がいた。

「あちゃー。ダメだこりゃ。心がもう壊れて廃人になっちゃったね。いかに勇者でも肉体的も精神的にも、一切成長してないからまだ無理があったかな。あーあ、素体が良くてもやっぱり心は弱いままじゃ無理か。もうこれはだめかもしれないな」

 男はぶつぶつと呟きながら三人の内の一人の少女の頭を掴み、狂気が滲んだ笑顔を浮かべ、まじまじと眼窩がんかを覗いた。
 
「うん、もうこれ廃棄物だわ。燃えないゴミいっちょあがりっ! いや、ダメだろ。燃えないゴミ作っちゃいけないでしょ。って、この様子じゃ、まーたユリウスに怒られるわ。この前も人間の女を十人ぐらい燃えないゴミにしたしなー」

 呟いた言葉と反して、男の表情には反省に色が一切見られない。それどころか、むしろ男は廃人と化した三人の少年少女達を見つめて嬉々していた。

 少女の目は虚ろで、何の知性の欠片もない。それは最早人間ではなく、ただの肉の塊なのだろう。

「それにしても、中々成功しないもんだよね。この、失大罪スキル『悔恨かいこん』に耐えられて、いいお人形さんになる人間は、さ」

 男は目が虚ろになり、自我を失った少女をポイッと投げ捨てる。少女は受け身も取れないまま、グシャッと硬い床に頭からぶつかり、血と脳漿のうしょうが混じった汚物を垂れ流した。

「うえっ、汚ねっ。まーた掃除するのかよ。ほんと面倒だなぁ。ま、掃除するのはシャルルだから別にいっか」

 男は頭を掻きながら、すぐ側にいた、廃人と化した少年の頭を足で踏み潰した。

 ぐしゃりと頭蓋骨と脳が潰れる音が部屋に響き、床の上に血の水溜まりが作られる。それでも、男は何の躊躇いもなく、そのまま足に力を入れ続ける。ぐちゅぐちゅと肉が押し潰されていき、遂には頭がスイカのように割れ、痙攣けいれんしていた少年は事切れた。

「ほんと、立派なお人形さんは君だけだよ。ね? シャルル?」
「..............」

 男の後ろには全身を透明な細い糸で縛られた全裸の女性が立っていた。彼女の名は第二騎士団副団長。滅槍の騎士。シャルル=フランベル。

 だが、彼女は生物学的には生きているが、人間としては既に死んでいるだろう。

 心を壊され、男に糸でただただ操られる姿はまさに人形のそれだった。

「さてとシャルル。こいつもお掃除よろしくっ、ね」

 男は残った一人の少女に、勢いよく踵を振り下ろす。ごきり、と鈍い音が鳴り、少女は頭を砕かれ、血の泡を吹いて血溜まりの中に沈んでいった。

 肩を竦めながら、男は血の海と化した部屋から全裸の女性を残して去っていく。

 男の名は、第二騎士団団長。掌心しょうしんの騎士。ムエル=トランシュ

 そして、又の名を、

 第八代目魔王軍幹部の一人。

 繰糸そうしのムニュカ、と。


「ろりこんくえすと!」を読んでいる人はこの作品も読んでいます

「ファンタジー」の人気作品

コメント

コメントを書く