ろりこんくえすと!

ノω・、) ウゥ・・・

2-17 トラブルメーカー



 2-17 トラブルメーカー


 俺はティエルドの村に向かって歩いている。赤髪によれば歩いて半日。結構かかるが、幸いバスケ部で毎日足腰を鍛えていた俺ならそう苦にはならないはずだ。

 それにしても俺の前方に広がるこの湖はとても大きい。

 まだ歩いて一時間も経っていないが、地平線の先が未だに見えてこない。

 この湖は元の世界にあった琵琶湖と同等かそれ以上の大きさかもしれない。

 ふと歩いていると、前方に草むらに佇む白い鳥の集団を見かけた。この湖の付近では結構見かける鳥だ。鴨と白鳥を足して二で割ったようなこの鳥は、数羽に群れてのんびりと寛いでいる。

 俺は少しばかりこの鳥に興味が湧いて、鳥の群れに近づいていった。数分程の寄り道ならば、ティエルドの村に着く時間はそう影響は無いはずだ。

 俺は足音を立てずにゆっくりと鳥の群れに接近する。しかし、鳥は足音を立てずに近づいのに気付き、首を上げて鳴き声を上げた。

「キョエエエエエwwwwカァアアッカwwwwwwピェエエエエエエwwwww」

 なんて酷い鳴き声なのだろうか。まるで嘲笑されているかのようで、ずっと聞いていると沸沸と殺意が沸いてくる鳴き声だ。

 俺は目の前の糞鳥に向けて鑑定を発動。どうやら生意気にもこの糞鳥は俺よりLvが高いらしく、詳しいステータスの表示は阻害された。Lvは5。名前は水上水鶏と言うらしい。

 一羽の糞鳥の鳴き声で、俺の存在に気付いた他の糞鳥達は、自分よりも下の存在である俺に向け、群れ単位での嘲笑の大合唱を始めた。

「ウキョキョキョキョwwwwwカッカッカッwwwwwピァエエエwwwwww」
「キョエエエエwwwwwピェェェwwwwwwアカッカッカッwwwww」
「アッアッアッwwwwwwカッカッカッwwwwwwオッオッオッwwwwww」

 うぜぇぇ.......。これは関わらない方が良かったな。

 俺は嘲笑を奏でる糞鳥を無視して通りすがろうとした時、群れの中の一羽が羽を広げて俺の前に立ち塞がった。

「ぅえ?」

 続いて他の糞鳥も翼を広げて俺の前に立ち塞がった。一羽から二羽へ。二羽から三羽へ。三羽から四羽へ.......。次々と糞鳥が翼を広げ、俺を包囲した。

 .......なんだか嫌な予感がする。

「キョエエエエエwwwwカァアアッカwwwwwwピェエエエエエエwwwww!!!」

 糞鳥が鳴き声をあげた途端、糞鳥の群れは俺の背を飛び越え跳躍し、一斉に襲いかかってきた。

 まじかよ。凶暴過ぎんだろこいつら。

「え、ちょっ、まっ、やめっ、うわわわぁぁぁぁあぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁ!!!」



 ◆◇◆



「オッオッオッwww」

 本当に酷い目にあった。
 あの後糞鳥達は、嘲笑の鳴き声を奏でながら俺をついばもうと襲い掛かってきた。

 俺は咄嗟にサンマを糞鳥の群れに何個かぶん投げたが、如何せん数が多すぎて、サンマを食べれなかった奴らに全身についばまれた後を刻みながらボロボロになって逃げてきた。

「キョエエエwwwww」

 なんだか最近ついてなさ過ぎる気がする。もう何かのイベントに自分から頭を突っ込んでいくのはやめよう。平穏だ。平穏が一番なんだ。

「キョwキョwキョエエエwww」
 
 糞鳥から逃げてきた、くたくたの俺は、今は湖の上に掛けられた橋を渡っている。

 橋は丸太を土台にし、木の板を貼り付けて作られるていて、渡る度にギッシギッシと軋む音が聞こえてくる。異世界クオリティなので手摺がないから結構怖い。

「ピョエエエエwww」
「うっせえな!」

 俺はすぐ後ろから付いてくる糞鳥に怒鳴った。どうやらこいつはサンマの味がとても気に入ったらしく、サンマを召喚できる俺に付いて回っている。

 俺が歩く度に足をつついては鳴き声を上げ、しつこくサンマを要求してくるのだ。

 サンマが気に入るのは納得できるが、残念ながら鳥畜生にくれてやるサンマはない。つーかMPがそろそろやばいからあげられない。

 よくなろうのMPが枯渇した時の設定では、MPが切れると頭痛やら疲労やら怠みが出てきてしばらく動けなくなる、といったものがある。

 この世界もMPが切れると何かしらのペナルティがあるかもしれないので、迂闊に魔法を使い過ぎてはいけないと俺は考えている。

 道端で倒れて野垂れ死ぬなんて俺は遠慮したい。

「クェェェエwww」
「本当にしつこいな.......」

 こいつはいつまで付いてくるのだろうか。まあいい、いざとなった時の囮兼非常食として考えておこう。

 俺は呆れながら糞鳥と一緒に橋を渡っていたその時、前方に小さな人影が見えた。
 俺以外にもこの橋を渡っている人がいたのかと思いつつ、俺は人影の方に寄って行った。

「おうおうおう! どうどうどう!」

 人影は子どもだった。変な掛け声をしながら橋の真ん中に仁王立ちをしていたのは青髪の女の子だ。元の世界で言えば、小学四年生ぐらいだろうか。足元にぶち縞模様の猫を連れ、両手を広げて通せんぼしている。

「悪いが通してくれないか?」

 また変なのに関わってしまった。

「キョエエエwww」

 こいつの例があるからな。無視するに限るな。

「遅いっ! あたしの勇者の癖に、遅いっ!!! 待ちくたびれたわよ! どこで道草食っていたの!」
「にゃーん」

 青髪の女の子がハムスターみたいに頬を膨らませて可愛く怒る。女の子が手足をパタパタさせると猫がにゃーんと一言鳴いた。

 この子は勇者ごっこをしてくれる人を探していたのかな? 分かる。分かるよ。俺も子どもの頃は仮面ライダーごっことかプリキュアごっことかやっていたんだ。いつも悪役だったけど。

「ごめんな、俺には子どもと勇者ごっこして遊んでやれる時間はないんだ。違う人に構ってくれよ」

「むきぃー! 反省の色も一欠片もないなんて、なんて失礼なの! 教育がなってない!」

 子どもはジタバタと手足をばたつかせて、頬を膨らませて怒ってしまった。正直構ってられない。

 俺は糞鳥を連れて子どもから立ち去ろうとしたが、腰を引っ張られて呼び止められた。

「こらー! 待ちなさいミナト!」
「いや待たねぇよ。.......おいまて、今なんて言った?」

 俺はまだ一言も名乗っていない。それなのに何故、この子どもは俺の名前を知っているんだ?

「何で初対面のお前が俺の名前を知っている? 鑑定のスキルでも使ったのか?」
「何言ってんのよ! ミナトは私の勇者でしょ! 名前ぐらい知ってても不思議じゃないじゃん! ていうか、ミナトイメチェンした? 髪色が黒だったのにー」
「にゃーん」

 ぶち縞模様の猫が俺の足に擦り寄る。その時、俺の記憶の一片が頭によぎった。

 この猫は元の世界で俺のサンマを盗んだ猫にとてもよく似ている。

 いや、目を疑う程にほとんど同じ模様だ。同一人物、もとい同一猫.......?

 そんなことはありえない。何故ならサンマを盗んだ猫は元の世界に居た猫だ。猫が世界を越えてこの世界にやってこれる訳ない。

 だが.......。

 問題はこの少女だ。意味深な発言があまりにも多すぎる。俺の名前を鑑定も使ってないのに知っていて、俺を勇者と断定した。しかも俺の髪色と目の色が変わった事も知っていた。

 ありえない。明らかに辻褄が合っていない。俺の名前を知っているのは、ステータスをまじかで見せたオークキングと愉快な仲間達三人と俺と同じく召喚された勇者三人の計六人。髪色と目の色が変わったことを知っているのは赤髪とファリスさんだけ。

 ただ、問題は上記の俺の事柄はこの世界の話に限った事だ。

 つまり、

 こいつは元の世界の俺を知っていた・・・・・・・・・・・

「お前、一体何者だ?」
「あたしの名前はノア」

 子どもはそう名乗り、俺に指を突き立てた。

「ミナトをこの世界に召喚した漁業の神様よ!」




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