ろりこんくえすと!

ノω・、) ウゥ・・・

2-11 早すぎた脱走



 2-11    早すぎた脱走


 その白い腕には見覚えがあった。数週間前には最早見慣れたものであり、人体の体の一部である、人間の身体を支える大事な組織体。

 それは、骨。

 サイコキラーと一緒に、数百、数千とジグソーパズルのように組み合わされた骨が、牢の石畳をメキメキと割りながら飛び出してきた。

「ふははははは! 小僧、よくも我を土の中に埋めてくれな! そんな生意気な小僧は我の下僕の力をもってして、ぺちゃんこに叩き潰してくれるわ!」

 サイコキラーが骨の背の上に乗りながら、腕の持ち主が土の下から、虚ろな何もない眼窟を除かせて、骨の集合体の魔物が姿を現した。

 「こいつはッ!」

 この魔物の姿は誰でも分かる。田舎者の頭が悪いと称されている僕でも簡単に分かる。

 脅威度D。巨大骸骨ジャアイントスケルトン

 ヒュージスライムキングと同じ脅威度のこの魔物は、スケルトンという脅威度Fの魔物の進化個体であり、アンデットと呼ばれる種族に分類される。

「愚かな小僧よ! 小僧が我の魔力を封印していた鎖を剥ぎ取ったから下僕を召喚できだのだ! さあゆけっ! 巨大骸骨よ! 目の前の小僧を叩きつぶぐぎゃあ!?」

 しかし、サイコキラーは最後まで台詞を言えなかった。

 土の中から這い出している巨大骸骨があまりにも大きすぎて牢に収まりきれず、サイコキラーは骨と天井にサンドイッチされた。

「あぎゃぁぁぁッ! 痛い! 痛い痛い痛い!!! ちょ、まっ、流石に不死身の我でも痛覚はあるのだ! やめっ、やめいっ! 止まれ我の下僕!」

 巨大骸骨は召喚主であるサイコキラーの命令をガン無視し、その余りある身体を天井にビキビキと亀裂を走らせながら押し付けた。
 サイコキラーと共に。

「あびぎゃあぁぁ!!! 助けろ! 我を助けろ小僧! 待って、我を置いてかないで! 我をひとりぼっちにしないで! 分かった、分かったから。我も少し調子に乗っていたのを謝るから! ごめんなさい! 助けてくださいお願いします!」
「えぇ.......」

 僕は呆れながら事の光景を眺めていた。サイコキラーは絶叫をあげながら天井にめり込んで、遂に巨大骸骨が天井を突き壊した。
 骨が石を押し割り、霰のようにパラパラと石片が僕の頭上に落ちてきた。

 冷暗の牢の上から外の光が差し込み、僕達を照らし出した。

 ジリリリリリリリリリリリリンンン!!!
 ジリリリリリリリリリリリリンンン!!!

 巨大骸骨がその身を外へと排出したその時、ジリジリとベル音が鳴り響き、牢の外の廊下上にある魔道具から甲高い声が鳴り響いた。

「えっ?」「なんだ?」

『緊急事態発生! 緊急事態発生! 何者かにより牢が壊された模様、直ちに騎士団員達は至急、作業を止めてE604号室へ急行せよ。繰り返す。 緊急事態発生! 緊急事態発生! 何者かにより牢が壊された模様、直ちに騎士団員達は至急、作業を止めてE604号室へ急行せよ! 』

 僕はサイコキラーと顔を見合わせながら言った。

「よし、逃げるか」
「ちょっとまてぇぇぇ!!!」

 僕は牢の扉を蹴飛ばして開き、脱兎の如く逃げたした。

 悪いな、僕はまだ人生を楽しんでいないんだ。すまないが僕の犠牲になってくれ。

 僕はサイコキラーに下手くそなウインクを投げると、石畳の上を駆け抜けた。

「待てと言われて待つ馬鹿が、この世界に存在すると思っているのか? 残念だったな、僕はお前を生け贄して逃げさせて貰うよ。お前は騎士団員達と楽しく遊んでこい」
「小僧オオオオッ! 貴様アアアアアアアッ! 我は許さぬぞオオオオオッ!」

 サイコキラーに背を向けて走り出している僕に向けて、足下から白い腕が突如生え、それが僕の右足を掴んで僕を地面に顔面から叩き付けた。

 鼻血を垂れ流しながら後ろを振り返ると、僕の右足を掴んでいたのは巨大骸骨の腕だった。

 しまった、この腕は巨大骸骨の片腕だ。そう言えば巨大骸骨はまだ一本しか土の外に出していなかった。巨大骸骨は人間を遥かに越えた大きさを持つが、曲がりなりにも人間の骨格をベースにしている魔物。腕は一本じゃない。二本ある。

 僕はすかさず巨大骸骨の腕にランセットの刃を突き立てるが、複雑に組み合った骨の一部しか破壊できない。その上、この巨大骸骨には自己修復機能が備わっているようで、ランセットで壊した箇所から次々と骨が這い回り、何事もなかったかのように元の形に戻っていく。

「このぉっ! 離せー! 離せー!」

 僕は悪態を付きながら、懲りもせずにランセットをゲシゲシと骨の中に差し込んでいく。この状況では絶命剣を使えれば良かったが、生憎絶命剣は快刀乱麻へと技能進化を果たしていた。

 快刀乱麻は自身が高速で移動しながら敵を切り裂く技能だが、この高速で移動するのがミソで足が使えないと発動できない。そして片足を拘束されている僕は快刀乱麻を発動できない。

 他の短剣術は霞駆けと閃光斬だが、霞駆けは快刀乱麻と似たような技能なので足が無いと使えない。閃光斬も全身の筋肉を使って放つ技能なので使えない。 

 ブレードブロック? お前は論外だ。

 他には暗殺術の居合抜きがあるが、居合抜きは特殊な歩行技術を使って敵を一刀の下に叩き伏せる技能だから使えない。

 なんだ僕の技能達は。欠陥品ばかりじゃねーか。

「これが使えそうだ! 技術衝打メソッドインパルス!」

 僕はランセットをポケットに仕舞うと、骨の塊に向けて技術衝打を撃ち込んだ。

 技術衝打は体術の極意である身体のツボを突いて中なら破壊する技能。しかし、覚醒後の僕が使う技術衝打は、例え鋼鉄の板であろうが撃ち抜いて破壊することができる。

 その例に漏れず、 技術衝打はやすやすと骨の塊を破裂音を立ててビスケットを砕くように破壊して、無惨な白い欠片と化した。

「ああっ!? 小僧狡いぞ!」
「狡いもなにもあるか! 不意討ちしてきたお前の方が狡いわ!」

 そんなこんなで醜い争いをしている僕達の後ろから足音が聞こえ、騎士団員達が駆け付けて来た。 

「いたぞ! あいつらだ!」
「エルクセム騎士団の牢屋を壊した不届き者め! どうしてくれようか!」
「おい、アンデッドがいるぞ! こいつ、魔物使いだったのか!」

 先に駆けつけたのは厳つい顔した騎士団員中年男性の三人。騎士団員三人は腰からそれぞれ鉛色の煌めきを放つ剣を鞘から抜くと、怒声をあげて僕達の元へ歩いてきた。

「た、助けてくれー!」

 僕は手を万歳させると、この中でリーダー格みたいな騎士団員に駆け寄って口をぺらぺらと回した。

「あそこにいる天井に挟まれている奴がいきなり巨大骸骨を召喚したんだよ! それで、今なら女性の臓器を狙って王都に飛び出していくところなんだ! あんたらエルクセム騎士団なんだろ! だったらサイコキラーの暴走を止めてくれ!」
「小僧ゥッ! 小僧も小僧で我を土の下に埋めたり金銭を巻き上げたり我の顔面を蹴飛ばしたりしただろうが!」
「黙れぇッ!」

 僕は思わず怒鳴ってしまった。

「で、結局どちらが牢をアンデッドに破壊させたんだ?」

「「こいつです!」」

 僕はサイコキラーに指をさし、サイコキラーも天井に挟まれながら僕に指をさした。

「ではどちらも捕まえることにしよう」
「「ええっ!?」」
「二人共犯罪者だろ! 牢の中にお戻り願おうか!」

 解せぬ。

 言うが早く、リーダー格の両翼にいた二人が剣の切っ先を向けながら僕に襲い掛かってきた!

「チュザーレイ!」
「エイムストローク!」

 片方の剣は白浪のように揺れ動き僕を捉え、もう片方の剣は風の渦を起こしながら僕を捉える。

 まずい。この二人、かなりのやり手だ。そりゃあエルクセム王都を守る騎士団だよな。多くの騎士団員はEランク冒険者、下手したらアシュレイと同じDランク冒険者かもしれない。

 だが、

「空激波!」

 貪食の食人鬼を倒した僕の敵ではない。

 僕は風遁術のひとつである空激波を三人に向けてうち放った。

 僕の手の平から進化前である地嵐を優に超える風圧が発生し、三人を壁に勢いよく叩き付けた。

 叩き付けたと共に、爆音を轟かせて三人は壁にクレーターを作って静かになった。

 つ、強い。結構軽めに空激波は放ったのにこの威力。今ので地嵐の数倍は簡単に越えている。もしも、本気で空激波を放てば数十倍にも届くのではないのだろうか。

「やるな小僧! さあ、今の内に我を助けるんだ!」
「嫌だよ!」
「やるな小僧! さあ、今の内に我を助けるんだ!」
「さっきの僕の発言を無かった事にしないでくれる!?」
「やるな小僧! さあ、今の内に我を助けるんだ!」
「無限ループかよ! タチが悪いな!」

 ・サイコキラーを仲間にしますか?
 ・はい ・いいえ

 僕は迷うことなくいいえを選択した。

「付き合ってられねぇ!」
「逃げるなー! 小僧、我を置いていくな」

 サイコキラーの言葉が途切れた瞬間、サイコキラーは天井を貫通して完全に見えなくなり、

 僕の真下から巨大骸骨の骨の量を越える四本足の骨塊が現れ僕を宙に投げ飛ばした。

 

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