ろりこんくえすと!

ノω・、) ウゥ・・・

2-10 暗躍する者



    2-10     暗躍する者


「団長~ウェルト君を牢に入れてきましたよ~」

    私が一仕事を終えてコーヒーのカップを片付けている中、ウェルト君を牢にぶち込んできたファリスが帰ってきた。

    ファリスはいつも通りのヘラヘラとした顔に笑顔を咲かせると、私の部屋の椅子に腰をかけた。

「ご苦労。それにしても、ウェルト君の扱いには困ったものだよ」

    私は洗ったカップを拭きながら、ファリスの横の椅子に腰を掛けた。

「団長も酷いですね~。だって、ウェルト君の不正疑惑であるギルドカードの件は、」

    ファリスがニヤニヤとした顔で私に近付いて笑いかける。

                            
 「ぜーんぶ、デタラメ・・・・、なんですからね」
「なんだ、知っていたのか」

    そう、私がウェルト君に言ったランクアップの条件は全て嘘だ。そんな条件、ありもしない。

    今回は彼が無知で助かった。都合よく牢の中に閉じ込める口実を作るのは、いつもながら少々苦労する。

 「本当に団長は汚いですね~。汚い、汚すぎますよー。壁に染み付いて全く取れない汚れのように心がまっくろくろすけで汚いです~」
「そうだな、私は汚い人間だよ」

    私はカップを元の位置に元の場所に置きながら、ファリスにそう答えた。

「そうですね、団長は汚い、とてもきたない人間です。いつも無愛想で何を考えているか分からないし、何食わぬ顔で非人道的な事をやりますからね」

    少し言い過ぎな気がするが……

「でも、」

    ファリスは息を少し止め、さっきの黒い笑顔から一転し、花が咲くような笑顔で私に笑いかけた。

「団長はそれ以上に優しい人間です
「.......?    何を言っている?」
「だって、団長はウェルト君を助ける為に・・・・・にわざと牢にぶち込んだんですからね~」
「..............」

    私はファリスの言葉を聞いて、声を喉に詰まらせた。

「不思議そうな顔をしてますね、団長。ま、答えを言ってしまうと、私はいつも団長の書類を王宮に運んでいるのですよ~。で、その中に、『貪食の食人鬼』に関しての書類がありましたし~。チラッと、ほんとにチラッと見えちゃいましたし~」
「そうか、ファリスはあれを読んだのか」
 「読んでないですよ~チラッと見えただけです~」 
「それを読んだと思うのだが.......」
「えへへ~」

 私はファリスの悪びれない様子を見て、ため息を吐きながら額に手を当てた。

    ファリスが読んだ報告書。それは、貪食の食人鬼についてのものだった。

    貪食の食人鬼が複数の食人鬼を連れてネメッサの街を襲撃したという報告を私が聞いた時は、既にその事柄が終わった後だった。

    報告によれば、地下水路から貪食の食人鬼が襲撃した数時間後、突如ネメッサの街に黒い竜巻が発生し、上空には黒い壁に現れて槍が降り注ぎ、星が炸裂したとしか表現できない閃光が煌めいたという。

    なんでも天変地異が起き、気が付いたら貪食の食人鬼は居なくなってしまっていたという。

    エルクセム王はこの報告を聞いた後、貪食の食人鬼を討伐した人間をここに連れてくるように第一騎士団から第五騎士団まで、全ての騎士団にそう命じた。討伐者を連れてくる名目は、ネメッサの街を守ってくれたことによる感謝パーティとかだろう。

    だが、それは表向きだ。裏向きは、

「でもでも、団長がウェルト君を牢に閉じ込めた理由。それはウェルト君を都合のいいあやつり人形にさせない為、ですよね~?」
 
 そうだ、ウェルト君を傀儡にする事が目的だろう。

    エルクセム王の本当の目的、それは人間の傀儡化だ。この腐った世の中には、『隷属の首輪』と呼ばれる魔道具、いや呪具が存在する。

    『隷属の首輪』は、『隷属の首輪』を嵌められた人間に、その首輪を嵌めた人間に対して絶対服従を仕向ける呪具だ。

    エルクセム王はその首輪を利用して、他国との戦争の為にAランク冒険者に匹敵する戦力を有す人材が欲しいのだろう。

    Aランク冒険者の力量は、軍隊一つと同等。

 それ故に王は望む。自分の命令を素直に聞いてくれる便利な駒を。絶対に裏切らない優秀な配下を。

 王は貪食の食人鬼を討伐した人間を連れてくるように命じた。

 彼を、己の手駒にするために。

「そうだ。ウェルト君はできれば敵に回したくない、それに妹が随分と慕ってくれいたようだしな」

 私はウェルト君が貪食の食人鬼を倒したと思いたくはないが、残念ながら彼のステータスが貪食の食人鬼を倒せるに値すると証明している。

 まず、彼には『黒竜巻』となる技能を所持していた。この技能がネメッサの街に突如現れた黒い竜巻と見て間違いない。

    その上、彼の所持スキルは八つもあった。短剣術、体術、風遁術、盗賊術、暗殺術、 ロリコン、未踏の先駆者、そして正体不明の■■?のスキル。

 この■■?のスキルには実は心当たりがある。

 一番下の妹から聞いたことがある。これは予想だが、■■?のスキルは『覚醒』と呼ばれる強力なスキルかもしれない。

 もしも、ウェルト君の■■? のスキルが『覚醒』だとしたら、私ではウェルト君に絶対に勝てない。

 『覚醒』のスキルを持つ人間は、お伽噺である光の勇者と同等、あるいはそれ以上の強さを誇るからだ。

 ウェルト君が『覚醒』のスキルを所有していた場合、ウェルト君は単騎で王都を壊滅させることができるだろう。

     何故なら『覚醒』のスキルは所持しているスキルが多ければ多いほど強くなるスキルだからだ。

 『覚醒』のスキルの効果のひとつに、『自身が所持しているスキルLvを限界を越えて上昇させる』というものがある。もしかすると、ネメッサの街に起こった黒い竜巻は、『黒竜巻』の技能が『覚醒』によって技能進化が起こり、上位技能となったものだとも考えられる。

 現在、ウェルト君が所持しているスキル数は『覚醒』を含めて八つ。

 その中の内、『覚醒』の効果でスキルLvが上昇するのは短剣術、 体術、風遁術、盗賊術、暗殺術の五つとみていい。

 どのスキルも風遁術以外は一般的に知られている珍しくもないスキルだが、どれも汎用性に優れている上に、極めれば強力な技能が発現するスキルだ。
 
 ウェルト君が『覚醒』のスキルを所持していた場合、かなり厄介な存在となるだろう。絶対に、ウェルト君をエルクセム王に渡してはならない。

「全く、こんな聞き分けのない部下、それも物分りが無駄にいい部下を持つと苦労する」
 「いえいえ、国家の転覆を狙う騎士団長を上司に持つ私の方が苦労してますよ~」

    私は見事に返されたファリスのカウンターに苦笑した。

    この部下は、聞き分けもなく、物分りもよく、そして非常に有能な部下だった。ファリスには、私の企みが何もかもお見通しだったのだろう。

「.......確かにそうだな」
「おっ、噂をすればなんとやら。団長、エルクセム王からの緊急集会の合図ですよ~」

 私とファリスが喋っているなか、鎧の上から着けていた腕輪が赤い光で点滅し、ブーブーと低い音が鳴った。

 これは王宮で何か問題が起こった時や、魔物や他国がこの国に攻められた時に反応するものだが、基本的にはエルクセム王が私用で鳴らしているものだ。
 
「はぁ、またくだらない要件だろう」
「そうですね団長。ですが、もしかしたら勇者召喚に成功したかもしれませんよ~」

 勇者召喚。それは、最近エルクセム王が企んでいるもので、なんでも異世界から強力なスキルを有した人間をこの世界に召喚する術式だ。

 勇者召喚はお伽噺の『光の勇者』を召喚する術式だと聞くが、豚ごときが成功させるとは思えない。

 己の私欲の為に光の勇者すら理由しようとする強欲には呆れてしまう。

「勇者召喚、か。どうせ失敗すると私は思っているが、召喚されるのはあまり望ましくない」
「団長はエルクセム王を殺すつもりですもんね」
「最悪の場合はな」

 私とファリスは少し息を挟んだ後、互いに背を向けた。

「団長、準備は」
「もう整った」
「決行日は」
「三日後だ」
「流石ですね、団長。それでは三日後までには妹さんとウェルト君を王都から追い出しておかないといけませんね~」
「そうだな」
「そうだなって、団長はやっぱり優しい人間です」
「私は優しさとは遠くかけ離れた人間だよ」

    私は軽く笑いながら椅子から立ち上がった。

    私はもう、酷く汚れてしまった。大切な物を自ら突き放し、心に付いた傷は一生治らないのだろう。

    だが、こんな汚い人間でもまだ最後にやれることぐらいは、あると信じている。

「妹を追い出したこの国への復讐にしか、囚われていない哀れな人間なのだから」

    この国は腐っている。私の両親を含め、罪なき人々を数多く殺したこの国は腐りきってもうどうしよもない。だから、私が変えなくてはいけない。

 私の手で王を殺し、国を変えなくてはいけない。

 この決意は、決して揺らぎない。

「ファリス、お前はどうするんだ?」

 私は手を強く握りしめながらファリスに問いかけた。

「私は団長に着いていくだけですよ。ま、三日後からは団長の事を『団長』から『国賊』と呼ばせてもらいますけど~」
「.......。好きにしろ」

 この部下は、私にはもったない優秀でいい部下だ。

    私は扉に手を掛けて開き、外の景色を眺めながら言った。

 「革命前夜アンシャンレジームは、もうすぐだ」



    

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