ろりこんくえすと!

ノω・、) ウゥ・・・

2-8 聴取という名の尋問

 


     2-8    聴取という名の尋問
 
 
「さてとウェルト君。貪食の食人鬼を倒したのは本当なのか?」 
 
  ジョサイアと僕はエルクセム騎士団本部で取り調べ室.......という名目でジョサイアの自室で取り調べを受けていた。

 ジョサイアの部屋は綺麗だ。と、言うよりかは何も無いと言った方が正しい。部屋にあるのは机と椅子に、机の上に積まれた数枚の書類と羽ペンだけ。いくらなんでも寂しすぎる。

「何も無い部屋だけど、ゆっくりとしていってね」

 部屋には僕とジョサイアだけではなく、エルクセム第五騎士団副団長を名乗るファリス=メルセデスが一緒に聴取に立ち会っている。

 ファリスは金髪碧眼で、常に緩み切った表情をしているほんわかした女性だ。顔からは想像につかないが、ファリスは本人曰く神速の騎士と呼ばれている凄腕の騎士らしい。
 
「ほい、団長とウェルト君、今王都で人気のコーヒーだよ~」
 
 ジョサイアが僕の事をじーっと睨む中、ファリスがこーひーとなる黒色の液体が入ったカップを持ってきてくれた。
 
 これ飲めるのかな?    不味そう。

 一口飲んでみたらただ苦いだけの飲み物だった。不味い。
 
「うへぇ」
 
 僕はこーひーをカップの口からカップの中に戻した。
 
 苦い。苦すぎる。
 都会で流行りの物は田舎者の僕にはよう分からん。
 
 しっかし、苦い物を口に含むと無性に甘い物が食べたくなるな。

 そう言えば、リフィアとアシュレイは僕を置いてアイスクリームを食べに行ったんだよな。

 ジョサイアと僕が話している間、アシュレイはリフィアと一緒にアイスクリームを食べに行った。リフィアも僕と一緒に騎士団本部に行こうとしていたが、まだ子どもであるリフィアはアイスクリームの誘惑には勝てなかったようだ。

 アシュレイはジョサイアと関わりたくない、というか顔も見たくないようで終始ムスッとした顔でスタスタと早歩きでリフィアの手を引いて去ってしまった。
 
「うむ、美味い」
  
 顔を顰める僕とは反対に、ジョサイアはこーひーを飲んで満足気な顔をして頷く。
 
 味覚狂ってそう。
 
「さて、もう一度聞こう。貪食の食人鬼を倒したのは本当か?」
 
 ジョサイアは一息ついて、こーひーの入ったカップを机に置いて再び僕に問いかけてきた。
 
「そうだけど」
「嘘をつくな」
 
 ジョサイアは凄みを含んだ顔で僕を睨みつけてきた。
 
「なんでもウェルト君は冒険者になって日が浅いと聞くじゃないか。そんな人間が、脅威度Aの貪食の食人鬼を倒せる訳がないだろう」
「うっ」
 
 ジョサイアの言ってる事はもっともだろう。

 僕は冒険者になってからまだ半月も経過してない。しかも、貪食の食人鬼を倒した時の僕は冒険者登録から一週間すら経っていない。冒険者登録したての新人が、脅威度Aの魔物を倒したなんて信じることが出来ないのは当たり前だ。
 
 とはいえ、僕は貪食を食人鬼を倒したのは事実だし、倒したもんは倒したんだからどうしようもない。どうすれば信じてくれるのだろうか。

  「でも実際に倒したんだし.......」
「そうだな.......。すまないが、ウェルト君の冒険者ギルドカードを見せてもらう。貪食の食人鬼を倒す程の人物であれば、それ相応のステータスも持っているのだろうからな」
「そうか、その手があったか」
 
 ジョサイアの言葉は一理あると思う。

 僕はポケットをガサガサと漁り、ジョサイアに僕の冒険者ギルドカードをポイと手渡した。
 
「.......抵抗すると思ったら案外素直に渡すんだな。普通の冒険者は自身のステータスやスキル仲間にしか教えず他人には隠すものだ」
 
 ジョサイアは不思議そうな顔をして僕のギルドカードを受け取った。
 
 自分から見せてくれと頼んできたなのに我儘なやつだ。
 
「どれどれ.......っておい、」
 
 ジョサイアは僕のギルドカードの表側を見ただけで声を荒らげた。
 まだステータスすら見ていないのにどうしたんだ?
 
「何故ウェルト君はDランクなんだ?    そもそも、冒険者ランクのランクアップの条件の一つにFランクからEランクに上げるためには冒険者ギルドの規定で一ヶ月間以上の日数の経過というものがあるだろう」
「えぇ.......」
 
 まさかの不正疑惑が浮上した。

    あのクズ何やってんだよ。報酬金ケチりたいが為にそこまでするのか。明らかにリスクとリターンに合ってないだろ。
 
「しかもEランクからDランクに上がるためには最低でもクエストをに二十回こなさないといけない。それなのに、ウェルト君はまだ二回しかクエストを成功させていないではないか」
 
 ギ、ギルマスぅぅぅ!!!   何やってんだよぉぉぉ!!!

    僕は心中で叫びをあげた。
 
 思えば冒険者ギルドからのクエストはヒュージスライムの駆除と解毒草の納品しかまともにやっていない。

 最初のクエストはローションを量産して失敗したし、残りは冒険者ギルドから正式に受けたものではなく、ワイアットと剣士君から受けたもの。

 つまり冒険者ギルドを通さずに依頼人から直接受けたものだ。
 
「そ、それはほら、ネメッサの街のギルマスが貪食の食人鬼を倒したからってランクアップをしてくれたからだよ。ギルマス権限だよギルマス権限」
「ほう.......では聞こう。ランクアップをする為には冒険者ギルドが指定したクエストを受けて遂行する事が必要だ。通称、試験というものだ。ウェルト君はランクアップをする為に何のクエストをこなしてきたんだ?」
  
 ギルマスぅぅぅ!!!    あんの大馬鹿野郎!!!
 
「う、受けてない.......」
 
 まずい、ギルドカードを見せた事は悪手だった。こんなことになるなら冒険者ギルドガイドブックをちゃんと読んでおけば良かった。まだ半分しか読んでいない過去の僕を殴りに行きたい。
 
「なに?」
 
 ジョサイアが僕を見る目が更に厳しくなる。
 
「だってだって、ギルマスが試験も受験料も無しでランクアップしてくれたし」
「な、なんだと!?    それでは最早、冒険者ギルドの信用が地に落ちたと言っても過言ではない不正事ではないか!?」
 
 ギルマスぅぅぅ!!!
 
「はぁ.......。ウェルト君はギルドカード偽装罪の重要参考人だな。後で何かしらの処置が下ると思っておけ」

    くそが、ネメッサの街に帰ったら思いっきりぶん殴ってやる。
    
    そう憤る僕を尻目に、ジョサイアは溜息を吐いて次にギルドカードの裏面、つまりステータスの欄を見た。
 
 -ステータスを表示します-
 
 名前    ウェルト
 種族     普人族
 職業     盗賊
 サブクラス    暗殺者
 Lv27
 HP243/243
 MP165/167
 筋力64
 魔力91
 耐久98
 精神134
 俊敏376 
 
 所持スキル
 
 盗賊術Lv9
 『解錠』『窃盗』『暗視』『罠感知』
 『罠解除』『気配感知』『地図作成』
 『穴掘り』
 暗殺術Lv4
 『暗器』『集中』『居合抜き』
 『気配遮断』
 体術 Lv5
 『瞬歩』→『箭疾歩せんしっぽ』 
 『背負い投げ』
 『回し蹴り』→『旋風脚せんぷうきゃく
 『裂孔気弾れっこうきだん』『技法衝打メソッドインパルス
 短剣術Lv4
 『閃刃』→『閃光斬せんこうざん
 『絶命剣』→『快刀乱麻かいとうらんま
 『ブレードブロック』『霞駆けかすみがけ
 風遁術Lv3
 『歪風』→『歪断風いびつたちかぜ
 『地嵐』→『空激破くうげきは
 『黒竜巻くろたつまき
 
 ロリコンLv-
 未踏の先駆者Lv-
 ■■?Lv-
 
 所持称号
 ■■■?
 
 
 これが僕の今のステータスだ。
 おお、ずいぶんとレベルが上がっているな。食人鬼を数十体倒したし、その親玉である貪食の食人鬼も倒したからだろう。
 それにスキルもいくつか増えたり進化してスキルレベルが上がっている。
 
「まてまてまて!?    なんなんだこのステータスは!?」
 
 ジョサイアは僕のステータスを凝視して、椅子から立ち上がり驚嘆の声をあげた。

「急にどうしたんだよ?」
「お前のステータスは一体どうなっているんだ!?    とりあえずサブクラスとはなんだ!?」
「詳しいことは分からない。でも副業みたいなもんじゃね」
 
 僕は田舎者だから知らない。
 むしろこっちが教えて欲しいくらいだ。
 
「それに俊敏376の数値!    こんなの初めて見たぞ!」
「凄いだろ」 
「凄いってレベルじゃない!    この数値は異常すぎる!    数値だけ見ればAランク冒険者を軽く上回る!」
「へー」
「あとロリコンのスキル.......」
「それは僕の黒歴史だ。余計な模索はしないでくれ」
「そしてこれだ」 
 
 ジョサイアは僕のステータスに表示されているスキルの■■?と称号の■■■?に指をさして言った。
 
「これはなんだ?    ステータスが認識できないスキルなんて怪しすぎる」
 
   多分、所持スキルの欄は『覚醒』で、所持称号の欄は『覚醒者』だ。しかし、その事をジョサイアに言っていいのだろうか?

 エマに『覚醒のスキルは他言無用にしなさい』と釘を刺されていた。例えそれがエマの兄であるジョサイアだとしても、教えて良いのだろうか?
 
「知らない」
 
 とりあえずすっとぼけておこう。
    さっきの不正疑惑の件もあるし、もしかしたら『覚醒』のスキルはまた面倒な事を起こしそうだ。

   「もういい.......。では次にウェルト君が貪食の食人鬼をどうやって倒したのか教えて欲しい」

    不味い、貪食の食人鬼を倒した時は、虚偽の理を使って上空に拘束し、逆巻く辻太刀風で木っ端微塵にした。

    『覚醒』のスキルのことを説明しなければ納得して貰えない案件じゃないか。

「それはあれだ。普通に戦って倒したんだ」
「ほう、それでは普通に戦ってネメッサの街が半壊するというのか。それは凄いことだな」

    また墓穴掘っちゃったよ。どうすればいいんだよ。

「えーと.......」
「もういい。ウェルト君の話には信憑性が全く無さすぎる。ウェルト君が貪食の食人鬼を倒したのは嘘のようだな」
「で、でも、それならどうしてネメッサの街が半壊程度済んでんだよ!    僕が貪食を食人鬼を倒したからだし、貪食の食人鬼の死体だって残っているだろ!」

    多分バラバラだけども。
 
「何をいっているんだ?    貪食の食人鬼の死体なんてものは第一騎士団と我々第五騎士団が全力で捜索したが街に無かった」 
「はぁ?」
 
 ジョサイアは何を言っているんだ?
 
「街の人からは確かに貪食の食人鬼の目撃情報があがっている。それに、通常の食人鬼の死体も発見されて我々が回収した」
「じゃあ」
「だが、何故か貪食の食人鬼の死体だけは発見されなかった」 
 
 貪食の食人鬼の死体が、消えた?
 
「貪食の食人鬼が街に襲ってきたのは確かだ。これは信じるしかあるまい。だが、貪食の食人鬼を倒した確かな゛証拠゛がないんだ」
「そんな.......。なんだよそれ!」
「ウェルト君、君は貪食の食人鬼の死体はどこにやった?」
「知るか。貪食の食人鬼を倒した後はぶっ倒れて気付いたらベッドで寝かされていたんだよ」
 
 そうだ。僕は貪食の食人鬼を倒すので精一杯だったんだ。その後のことはリフィアに甘やかされていたことしか記憶にない。

 しくった、アイスクリームをアシュレイの二倍奢るからとか言ってリフィアを連れてくれば良かった。リフィアは、僕が貪食を食人鬼を倒したところをまじかに見た唯一の人物で、たった一人の証人だ。
 
「もういい。ファリス、ウェルト君を拘束しろ」
 
 ジョサイアがそう言ったのと同時に、こーひーを入れたまま何も喋らなかったファリスが、背後から僕の後ろに周り手錠をかけた。
 
「ごめんねウェルト君、団長の命令には逆らえないのよ~」
「ちょ、」
「ウェルト君、すまないがウェルト君は一旦我々がその身を預からせて貰う。ファリス、牢にぶちこめ」
 
 ええっ!?
 
「そんな、こんなのあんまりだ!    僕は悪いことなんてしてない!」
「ギルドカードを不正していただろ」
「ギルマスうぅぅ!!!」

    僕の叫びは虚しく、こうして僕は牢にぶち込まれた。

    
 
 

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