ろりこんくえすと!

ノω・、) ウゥ・・・

2-4 王都への道のり

 

     2-4    王都への道のり
 
 
「ふんふふん♪    ふんふふふーん♪」
 
 心地良い鼻歌を奏でながら、リフィアの小さい手が僕の頭をわしゃわしゃと撫でていく。

 いつもならとても気持ちよく、幸せな気分になっていたのだろう。
 
 だが、今の僕は素直にリフィアに甘える事ができなかった。

 僕は馬車に揺られながらエマから貰った手紙を頭上に掲げ、リフィアの膝枕の上でずっと考え事をしていた。
 
『変態が次に『覚醒』のスキルを使った時、変態は死ぬことなるわ』
 
 考えるば考える程、エマのあの言葉が僕の頭に残り続け一向に離れない。
 
 くそっ、なんなんだよ。
 
 僕はエマから貰った手紙を床に置いて、リフィアの膝枕に顔を埋めて身体を丸くした。
 
 馬車に乗っている間、エマから告げられた『覚醒』の代償というものが、ずっと胸の奥底につっかえている。
 
 次に僕が『覚醒』のスキルを使うと、死ぬことになる。
 
 つまり、僕の死。
 
 『覚醒』のスキルはそんな危険な代物だったのか?
 
 いや、確かに『覚醒』のスキルはイレギュラーというか、謎が多すぎる。 

 僕が『覚醒』のスキルを獲得した時、アナウンスで『世界の理を歪めて本来獲得できないスキルを獲得しました』と聞こえた気がする。

 もっと言えば、特異点がなんちゃらとかもアナウンスは言っていた。

 世界の理を歪めるとか特異点とか頭の悪い僕に理解できないが、明らかにとんでもない事をしているのだろう。
 
 つまり、『覚醒』のスキルはそれほど強力なスキルなのだろう。

 『七大罪』のスキルを所有していた貪食の食人鬼でさえも『覚醒』を発動した僕に倒されたんだ。

 『七大罪』のスキルを上回る『覚醒』の異常な強さが伺える。
 
「…………」
 
 少し考えれば、『覚醒』のスキルがどれほどおかしいか理解できる。
 
 まずは完全回復。
 ちぎれた手足も治った、と言うより生えてきた。それに腹に風穴が開かれたのに傷一つなく塞がった。  
 
 そして自分自身のLvと他スキルのLvの大幅な上昇。
 殺風激やレゾナンスエッジ、心形刃紋、そして虚偽の理等、凄まじい強さを誇る技能を使えるようになっていた。
 特に虚偽の理は自分で使っておきながらも思わず引く程の強さだ。
 
 そもそも身体の欠損部位を生やすとかどんなに優れた回復魔法や回復薬でも難しいだろう。

 世の中には身体の欠損を治せるという『エリクサー』と呼ばれる大変貴重な薬がある。その『エリクサー』でも完全に失った部位を元に戻すのに数ヶ月はかかると言われている。 

 それに比べて『覚醒』は一瞬で欠損部位の治癒をした。明らかにおかしい。『覚醒』の治癒能力が『エリクサー』と比べて次元が違う。
 
 それに、『覚醒』以外の他スキルLv上昇も反則もいいとこだ。

 所持しているスキルが多ければ多い程、『覚醒』を発動した時の強さに磨きがかかる。
 下手したら他の『失大罪』や『七大罪』スキルよりもよっぽど強力なスキルなのかもしれない。
 
 『覚醒』のスキルを使うと死ぬことになる。
 
 この事実には衝撃を受けたが、ある意味納得もあった。何のリスクも無しに劇的に強くなれるスキルなんて、この世に存在する訳がない。
 
「ふんふふふーん♪    ふんふふふーん♪    ふふふふんふふーん♪」
 
 考えに耽る中、僕を膝枕させてリフィアが鼻歌を歌いながら、僕達三人は馬車を借りて王都までの道を進んでいた。
 
 馬車の外からは草原が広々と広がる美しい光景が映し出されている。
 僕は馬車の中から家紋が入った手紙を見ながら、眼前に広がる緑色の景色を見つめていた。
 
 手紙を見る度に思い出す。
 
 あの後、エマは僕に対しても何も喋らなかった。『覚醒』のスキルを使うと何故死ぬのか。そもそも『覚醒』のスキルとはなんなのか。そうエマに聞いても何も答えが返ってこなかった。
 
 いや、正確には今僕が手に握っている手紙だけが返ってきた。
 エマは僕に手紙を放り投げて『ジョサイアお兄ちゃんに渡しなさい。あと、お姉ちゃんには秘密にしておいて』としか言わなかった。
 
 というか、ジョサイアお兄ちゃんって誰だよ。

 まあ、このタイミングで渡したって事はジョサイアお兄ちゃんという人物はエルクセム王都にいると予測できるけど。
 
 まあそれはいい。別に手紙を渡すぐらいなら僕は引き受ける。 

 問題は、何故、アシュレイに手紙を渡すのを頼まのかったのか。

 シスコンのエマの性格なら変態変態と常に蔑む僕よりも、エマの大好きなアシュレイに頼む筈なのに。
 
 ったく、考えても考えても何も答えが出てこない。

 『覚醒』のスキルについてもそうだが、エマの態度とこの手紙の中身も気になる。

 正直、この手紙を開けてみたい気持ちに何度も駆られた。

 駆られる度に我慢したが気になって気になって仕方がない。

「あー!」
 
 もうダメだ、僕は考えることをやめた。
 
 いつもエマに頭が悪い悪い言われていたけれど、もしかしたらその通りなのかもしれない。
 
 僕はリフィアの膝枕の上で大声をあげて、勢いに任せてポケットに手紙を突っ込んだ。
 
「ヒヒン!    ヒヒン!」
 
 僕の声を聞いた馬が呼応すかのように鼻を鳴らして鳴いた。
 
 この馬はただの馬じゃない。

 馬車はまだかろうじてネメッサの街に残っていたが、肝心の馬は逃げ出してしまっていた。

 ついでに逃げ出してしまった馬は捕まっていない。そのため、僕達が乗っている馬車を引いている馬はエルクセム騎士団が連れてきた馬だった。
 
 脅威度E。ランドホース。
 広々とした荒野に生息が確認されている馬型の魔物。

 ランドという名の通り、地属性に適正があるようで多くの個体が地属性魔王を使える魔物だ。

 なんでも『アースクエイク』や『ロックバレット』の地属性魔法を使えるらしい。
 
 と、話が逸れた。ランドホースは魔物だ。僕達は馬型の魔物に馬車を引かせている。
 
「順調だな。このまま何事もなく進めればもうすぐエルクセム王都だぞ」
 
 僕の前でランドホースに乗っているアシュレイが嬉しそうに呟いた。
  
 そう、ランドホースを操っているのはアシュレイだ。

 なんでもアシュレイは騎士団訓練プログラムとなるもに参加をしていたようで、騎乗ぐらいは朝飯前だと豪語していた。

 実際にその通りで、アシュレイはランドホースの扱いが上手く、意のままに操っている。
 
 僕も試しにランドホースに乗ってみたが一瞬で振り落とされた。

 あと、振り落とされたと同時に後ろ足で蹴られそうになった。

 というか蹴られた。まあ避けたけど。
 ランドホースは大層僕の事が気に入らないらしく、僕の声を聞くか顔見る度に鼻をブルンブルンと鳴らし威嚇してくる。
 
 解せぬ。
 
「ふふふふんふんふーん♪」
 
 とまあ、別にランドホースに嫌われるぐらいでは僕はへこたれない。

 何故ならリフィアが荒んだ僕の心を癒してくれるからだ。

 『覚醒』の事やポケットに突っ込んだ手紙もリフィアに甘えればそのうちどうでもよくなるだろう。
 
「ふふん♪    ふんふふふーん♪」
 
 リフィアが鼻歌を歌いながら僕の頭をナデナデしてくる。 気持ちいい。 

 なんか流れる用にここ二日間リフィアに膝枕されている。常々思うのだが、本来は立場が逆ではなないのだろうか。

 僕がリフィアをナデナデするのが普通だと考えるのだが。
 
「どうしたのお兄ちゃん?     もうちょっと強くナデナデして欲しいの?」
「うん、もうちょっと強くナデナデして欲し.......って違う!」
 
 僕はリフィアの膝枕からカバっと起き上がって叫び声をあげた。
 
 最近の僕はなんか変だ。
 なんというか、とても欲望に忠実になっている。

 気付いたらリフィアに甘やかされてばかりだし、エマに対しても『膝枕してくれるのか?』とかツンツンしているエマを見て微笑ましい気持ちになって心の中でニヤニヤしている。
 
「いきなり大声をあげてどうしたロリコン?    世の勝ち組ロリコンであるウェルトさんは、毎日毎日かわいいリフィアちゃんに甘やかされるだろ?    一体何が気に入らないんだ?」
「言い方に悪意があるよ!    いや、気に入らない事なんてないけどさ!」
 
 僕は辛辣な言葉を吐いてきたアシュレイに拳を握りながら言い返した。
 
「とにかく、最近の僕は何だかおかしいんだ。気が付いたらリフィアに膝枕されてるわ餌付けされてるわ耳かきされてるわで、挙句には一緒の寝袋で寝ている始末。自分自身のコントロールがまるで効かないんだよ」
「ロリコンだからだろ」
「うぐっ」
 
 アシュレイに一蹴された。

「お兄ちゃんはリフィアにナデナデされるのが嫌だったの?」
 
 その会話を聞いていたリフィアが僕の足に抱きつ、つぶらな瞳でじっと見つめる。
 
「いや、そんな訳じゃないけど.......」
「じゃあお兄ちゃんは続きがあるの。はい、膝枕」
 
 僕はリフィアに両手で頭を掴まれてされるがままにリフィアに膝枕された。
 
 ああ、幸せだ。リフィアの膝はぷにぷにしていて気持ちいい。
 
 さて、続きを堪の.......
 
「って、これだよ!」
 
 僕は再び起き上がって大声をあげた。

 これがロリコンのスキルの影響なのだろう。なんと恐ろしい。
 
「うるさいぞロリコン。とにかく、そろそろ見えてきたぞ」
 
 アシュレイがランドホースの背に乗りながら遥か遠方に指をさした。
 
「あの豊かな森と大きな湖に囲まれた場所が私の生まれ故郷、エルクセム王都だ」
 
 自然のど真ん中に位置する巨大な街。
 
 エルクセム王都の外観が、僕達の目に映った。



 ◆◇◆



 一方その頃。
 

「よーしよしよし。偉いよポン太、よくやったよくやった。約束通り、これがご褒美のツナ缶だよ」
「にゃーん」
 
 エルクセム王都の近場の湖の畔で、青髪の幼女がぶち縞模様の猫をあやしていた。
 
 青髪の幼女はポン太と名前が付けられた猫にツナ缶を与え、頭をわしゃわしゃと撫でていく。 
 
「ふふふ.......あとはあたしの目の付けた人間がやって来るのを待つのみ!    さあ、これからはあたしの時代よ!」  
「にゃーん」
 
 青髪の幼女は天に指をさして高らかに笑う。
 
 ポン太はそんな残念な青髪の幼女の膝に寄り添い、顔を呑気に洗っていた。
 
 ポン太はとても満足そうだった。そんな満足気なポン太のすぐ傍らには、サンマの骨が落ちていたから。




 
 世界観解説     エルクセム王都

 総人口約十三万人の巨大国家。
 豊かな森林と美しい湖に囲まれた街であり、この大陸有数の大きな権力を持つ都である。

 エルクセム王都を仕切っているのはエルクセム王家と呼ばれる王族。
 現在は二十八代目のエルクセム=ベクマールが王として国を治めている。
 
 
 
 

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