ろりこんくえすと!
第1章 エピローグ しばしの安息
   第1章エピローグ    しばしの安息
    僕が目を覚ますと、そこは見慣れない部屋でベッドの上に寝かされていた。 
ここは病室なのだろうか。
窓からは優しい光が差し込み、僕を温めてくれている。
白を基調にしたこの部屋は、なんだか薬品の匂いがした。
「ここは――」
「お兄ちゃん!」
僕の頭の後ろから、聞き覚えのある幼い声が聞こえた。
「お兄ちゃん!  良かったぁ……やっと目を覚ましたんだね。リフィアはお兄ちゃんがもう目を覚まさないかと心配だったんだよ」
僕の顔を覗き込んだのはリフィアだった。
僕は、彼女を護れたんだ。
良かった。本当に良かった。
「必ず帰ってくるって、言っただろ」
僕は笑いながらリフィアの頬を撫でて言った。
「むー。何が『少しだけ待っててくれ』なの。五日間も寝っぱなしだった癖に生意気なの」
リフィアも目から一筋の涙を零して、笑いながら僕の頭を撫でてくれた。
「ところでお兄ちゃん、もう体調は大丈夫なの?」
「まぁ.......全身が酷い筋肉痛なだけで特に問題ないよ」
「良かった。お兄ちゃんはとても強い男の子で良かったの」
 
僕は別に問題はない。けど、
「そうだリフィア!  アシュレイの具合はどうなんだ?」
アシュレイは貪食の食人鬼に両腕をちぎられた筈だ。
もしかしたらもう、冒険者としては生きていけない体になってしまっているかもしれない。そう考えると、喉から言いようのない不安が込み上げてくる。
「あのお姉ちゃんなら命に別状はないの。リフィアがしっかりと回収して、体中の傷を縫って、ちぎれた両腕もリフィアが作った薬で無理矢理くっつけたの」
そうか.......本当に良かった。
僕はあの剣士のように、大切な仲間を失わずに済んだんだ。そう実感すると、思わず息を吐き出してホッとした。
「そんな薬を作るなんて凄いな、リフィア」
「えへへ.......お兄ちゃんに褒められちゃったの。だけどあの薬を使用すると、想像を絶する痛みを一週間以上味わうことになるの。あまりの痛さから廃人になる恐れがあると冒険者ギルドから禁止されていたの」
怖っ! なんてもん作っているんだ!
「お姉ちゃんは痛みに泣き叫びながら、エマとかいう偉そうなちびっ子に看病されているの。お姉ちゃんなら多分大丈夫だから、お兄ちゃんはあまり気にせず、自分の体を心配するの」
「あぁ.......エマになんて言ったらいいんだ.......」
僕がそう呟くと、リフィアは僕の頭をポカポカと叩き始めた。
「だからお兄ちゃんは優しすぎるの!  他人より自分の体を心配するの!  あんなにボコボコにされたのに生きているのが不思議なの」
「心配してくれてありがとう。けど怪我人には労ってくれ」
「むむー!」
リフィアは叩く手を止めて、ぷくっと頬を膨らました。
僕は少しだけ、ほんの少しだけだけど、リフィアのその表情を可愛いと思ってしまった。
「じゃあリフィアがたっぷりとお兄ちゃんを労ってあげるの!  これからリフィアはまだ体調が整っていないお兄ちゃんの為に、元気になってちゃんと動いてくれるまで付きっきりで看病するの!」
そして何かいきなりめんどくさそうな事を言い出し始めた。
「いや、いいって。リフィアも薬草店の仕事があるだろ。ただでさえ貪食の食人鬼に店を壊されたんだ。早く立て直さなくちゃいけないだろ」
「ダメなの!」
何故か凄まじい剣幕で怒られた。
「怪我人は甘えるのが仕事なの!  お兄ちゃんはリフィアにいっぱい甘えないといけないの!」
「え、えぇ.......」
「それに薬草店ならもう立て直しの発注をギルドがしてくれたの。仕事はしばらくお休みだから、お兄ちゃんは気にせずにリフィアに甘えるがいいの!」
ふん、と可愛く鼻を鳴らしてリフィアは腰に手を当てた。
「あ、そうだ。お兄ちゃんは五日間何も飲まず食わずだったから喉がカラカラになって乾いてるでしょ?  優しいリフィアがお兄ちゃんの為に飲み物を持ってきたの」
「え? あ、うん。確かに喉は乾いているよ」
そう言うと、リフィアはがさごそと袋からあるものを取り出した。
リフィアが手に取っていたのは、あの赤ちゃん御用達の道具。
哺乳瓶だった。
しかもご丁寧にミルクを満タンまで入れられている。
「はいお兄ちゃん。上手に飲むの」
「そんなもん飲めるか!」
僕は思わず叫んだ。
何が悲しくて哺乳瓶でミルクを飲まなくちゃいけないんだ。
僕は赤ちゃんじゃないんだぞ。
「我儘言わないのお兄ちゃん!  好き嫌いしたら大きくなれませんなの!」
いや、好き嫌い以前の問題じゃないだろ。と、物申す前にリフィアは哺乳瓶を僕の口の中に突っ込んだ。
「んぐっ!?  んぐっ!?」
「よしよし、ちゃんと上手に飲めているの。お兄ちゃんはいい子なの」
赤ちゃんプレイなんて僕は一欠片も望んでいない。
僕は口からミルクを勢いよく吐き出した。
「げほげほっ.......!  酷い目にあった」
「ああっ!  お兄ちゃんがミルクを吹き出しちゃったの!  お兄ちゃんは悪い子なの」
    悪い子はお前だよ。
「お兄ちゃん、口からミルクが零れちゃったよ。リフィアが拭き取ってあげるの」
いや、ミルクが零れたのはお前のせいじゃん。
そんな僕が突っ込む暇もなく、リフィアはもぞもぞと動いて僕の頭の後ろからお腹の上に移動した。
「自分で拭くから別にいいって」
「遠慮しないのお兄ちゃん。リフィアが拭き取ってあげるの。ん、ちゅ」
「――――――――!?」
タオルの取ろうとした僕の手を押さえつけ、リフィアが僕の唇に付いているミルクを舐めとった。
そのままリフィアの舌が僕の顎を舐めまわし、綺麗にミルクを舐め取っていく。
「ん、ちゅ、ふぅ.......。お兄ちゃん、そんな赤い顔してどうしたの?」
「.......ッ!?  なんでもないっ!  なんでもないからっ!」
「リフィアはただミルク拭き取っただけなのに。お兄ちゃんは変なの」
こ、こいつ.......! 僕を散々弄びやがって!
「分かった!  リフィアは分かったの!」
僕が怒りに震えていると、突然リフィアがポンと手を叩き、知ったような口振りで言った。
「お兄ちゃんが変な顔をしていたのはお腹が空いていたからなの」
 
なんか勘違いをし始めた。
いや、五日間何も食べていないし、お腹が空いてるのはあっているんだけどさ。
「ミルクだけじゃ物足りなかったんだよねお兄ちゃん。賢くて可愛いいリフィアはリンゴも持ってきたの」
それを自分で言うのか?
怪訝な顔をしている僕を無視して、リフィアは再び袋からリンゴを取り出した。
エプロンのポケットをごそごそとまさぐり、ナイフを取り出すとリフィアはリンゴの皮を剥き始める。
「お兄ちゃんの為にリフィアがリンゴを剥いてあげるの。しゃりしゃりしゃり♪  しゃーりしゃーり♪  しゃーりしゃーり♪」
よく分からない歌を口ずさみながら、リフィアは丁寧にリンゴの皮を剥いてお皿に切り分けていく。
「フォークにリンゴを刺してっ、と。はいお兄ちゃん。あーんして。あーん」
なにこれ。
「恥ずかしすぎんだろ。自分で食べれるからフォークを渡してくれ」
「お兄ちゃんは全身筋肉痛なの!  全身筋肉痛なんだから勿論腕も筋肉痛なの!  強がらないでさっさとリフィアにあーんされるがいいの!」
「もうめんどくさいな!  分かったよ!」
僕は口を開けてリフィアの手からリンゴを食べようと――
「あ、ダメなの!」
リフィアはフォークに刺さったリンゴを僕から遠ざけた。
「.......なんだよ」
「リフィアは迂闊だったの。ここ五日間何も食べていないお兄ちゃんが、いきなり固形物のリンゴなんて食べたら胃がびっくりしちゃうの」
「いやまぁ.......それもそうか」
僕は溜息を吐きながら、残念そうにお腹を撫でた。
リフィアの言った通り、実は結構お腹が空いてるんだよなぁ.......。
「ぱくっ。はむ。むぐむぐむぐむぐ.......」
落ち込だ僕を尻目に、何故かリフィアがいきなり僕の目の前でリンゴを食べ始めた。
新手の拷問か。
「.......そのリンゴは僕のじゃなかったのか?」
「むぐむぐ.......お兄ちゃんのだよ?」
こいつは何を言っているんだ?
「お兄ちゃんのために、リフィアがリンゴを柔らかくなるように噛み砕いてあげるの。俗に言う口移し、ってやつなの」
おいまて。正気かこいつは。
「一旦落ち着こう、な。僕はそこまでしてリンゴを食べたいわけじゃないんだ」
「好き嫌いしちゃダメってリフィアが言った事を忘れちゃいけないの!  つべこべ言わずにリフィアのリンゴを食べるの!」
リフィアは有無を言わさずに僕の頭を掴んで、唇と唇を押しつけた。
無理矢理僕の舌を絡ませて、咀嚼したリンゴを口に流し込んでいく。 
その過程で僕の舌とリフィアの舌が強く絡み合い、蕩けそうになる。
互いの舌の感覚が快感によって徐々に薄れてていく。
リフィアの唾液は甘かった。
唾液が混じって柔らかくなったリンゴはとても優しい味がした。
僕はリフィアの驚きの行動のあまり、思わず鼻から吸い込んでしまった。
すると、リフィアの髪の毛からいい匂いが鼻いっぱいに広がって、頭がぼーっとし始める。
リフィアの唾液が混じってぼどよく柔らかくなったリンゴは、舌を強く喉の奥まで押し付けられた事で、ゆっくりと僕の腹の中に収まった。
「んっ.......ふぅ.......。どう、お兄ちゃん?  リンゴは美味しかった?」
リフィアは唾液を垂らしながら僕の口から唇を離し、尋ねてきた。
「.......ッ!?  こ、こんなこと、好きでもない男に気軽にしちゃいけないだろ!」
「何言ってるのお兄ちゃん?」
リフィアは不思議そうに首を傾げながら言った。
「リフィアはお兄ちゃんの事がとっても大好きだからやっているんだよ?」
僕の頭の中が真っ白になっていく。
あ――まずい。
-スキル『ロリコン』が再発現しました-
-スキル『ロリコン』が発動しました-
-ロリコン-
幼女を愛し、護るべき者に与えられるスキル。状態異常の洗脳、魅力、混乱に対して絶大な耐性ができる。
ただし、幼女からの誘惑には極端に弱くなり、勝てなくなってしまう。
「お兄ちゃん、どうしたの?」
僕はこの言葉に出来ない感情を抑える事が出来なかった。
熱い目でリフィアの顔をじっと見つめて、
「~~~~~ッ!」
思いっきり抱きしめた。
「わわっ!  お兄ちゃん!  そんなに強く抱きしめたら苦しいの!」
リフィアはそんなことを言いながらも、僕をぎゅっと抱きしめて頭をぽんぽんと叩く。
「お兄ちゃん。お兄ちゃんはやっと素直になってくれたの。これからリフィアがお兄ちゃんを思いっきし甘やかすの」
もう僕の頭は何も考えられなくなっていき、
「お兄ちゃん、リフィアの膝に頭を乗せるの。リフィアがなでなでしてあげるの」
「あ、ああぁ.......」
僕は尊厳とプライドを投げ捨てて、リフィアの膝の上に頭を乗せた。
そんな時、
コンコン――。
病室のドアを叩く音がした。
「ウェルトさん。体の具合はどうですかー?」
「お客さん、思わず私も来ちゃいました!  お客さんのお荷物を持ってきたので入っていいですよね!」
僕とリフィアの幸せな時間をぶち壊し、病院のドアから入ってきのは受付嬢とアリアだった。
「え.......ウェルトさん。リフィアちゃんに膝枕させて何をやっているんですか.......?」
「お客さん、こんな幼い子に枕営業をさせるなんて。まさかこれは.......」
「まあ待ってくれ。言い訳をさせてくれ」
..............。
言い訳なんて何も思いつかなかった。
リフィアに膝枕されて頭を撫でられる僕を見て、受付嬢とアリアは口を大きく開けて叫んだ。
「「ロリコンだぁぁぁッ!」」
二人はドアを乱暴に開けて来た道を戻って走り去っていた。
あと、アリア。僕の荷物を持っていくな。
「.......」
「お兄ちゃん、続き、やろ?」
「うん」 
もうロリコンでいいや。
僕は再びリフィアの膝に頭を預けた。
拝啓。
「お兄ちゃん、気持ちいい?」
僕に強制労働をさせていた父さん、
「リフィアの耳かきは上手だった?」
無理矢理ご飯を作らせていた母さん、
「こら~お兄ちゃん。リフィアのお膝をスリスリしちゃダメなの」
僕は無事に街に辿り着いて冒険者になりました。
「もう、お兄ちゃんったらすっごい甘えん坊さんなの」
  
街についてからはいきなり死にかけたりしましたが、
「リフィアが仕上げにお兄ちゃん。の耳に息を吹きかけてあげるの。ふーーーっ、ふーーーっ」
僕は元気です。
「えへへ.......いい子、いい子」
仲間も作れたし、僕はもう
「大好きだよ。お兄ちゃん」
立派なロリコンになりましたから。 
敬具   
第1章   終わり
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