ろりこんくえすと!
1-28 生命を賭けて
  
1-28 生命を賭けて
  『僕に任せておけ』なんて、カッコつけのはいいものの、今の状況はかなりまずい。
脅威度Bと化した食人鬼二体に挟まれながら、リフィアを守り切ることは果たして僕にできるのだろうか。
僕は食人鬼を交互に見ながら逡巡する。
いや、できるかできないかの問題じゃない。やるしかない、だ。
「リフィア、今は逃げるぞ!」
僕はリフィアを抱き抱えたまま瞬歩を発動する。地面を蹴り飛ばし、瓦礫を散らしながら逃走すした。
予想は簡単にできていたが、食人鬼達は僕とリフィアを逃がさまいと腕を高速で伸ばして追撃を行う。
僕はバックステップで次々と攻撃を躱していく。躱すたびに瓦礫が飛び、食人鬼の腕が地面に陥没する。
食人鬼達の攻撃は目で追えないほど早い。だが、リフィアを狙っていると分かってるなら、なんとか予測ぐらいできる。
「瞬歩ッ!」
レンガの残骸を勢いよく蹴り飛ばし、僕は跳躍する。
そんな僕に向かって、食人鬼達は更に腕を伸ばす。ゴムのように赤い腕が伸び、鋭利な突爪が風を切りながら飛んでくる。
こいつら、よっぽど食人鬼達はリフィアを口の中に入れたらしい。
そんな簡単に渡してやる訳にはいけないけけどな!
「歪風!」
                                                    
僕は空中で自由落下する中、脚に薄緑色の魔力を纏わせる。
脚を使って空気を蹴り抜き、歪風を発動。
これは常軌を逸した危険な荒業だ。歪風は本来武器を使って放つ技能。
それを違う物、しかも自身の肉体を使って発動する。
魔力制御やバランス感覚を失うと、一瞬で暴発し大惨事に至る。それでも、この応用技はそれに見合った効果がある。
「ゲッ?」
「ゲェ?」
身動きの取れない空中でぴょんぴょんと移動する僕を見て、二体の食人鬼は何が起こっているかが分からないようだった。
恐らく、何も知らない人から見れば、今の僕は空中に見えない足場を使って跳んでいるとしか認識できないだろう。
「ひゃっ、ひやぁっ!?」
リフィアが腕の中で驚きの声をあげ、僕の腹辺りをぎゅっと握りしめ、目を閉じている。
驚くのも無理がない。人間が空を飛ぶことなんて普通は不可能で、ただの夢物語だ。
しかし、僕は村で畑を耕していた頃の、たゆまぬ鍛練によって少しの間だが、その不可能を可能にしていた。
この応用技は、畑を荒らしにくる害鳥、もとい烏型の魔物、レイニークロウを倒すために僕が生み出した技だった。
畑を食い荒らした後、攻撃が届かない空の上へと逃げるレイニークロウに、なんとか攻撃を当たるために必死で練習した。
その甲斐があって、まるで空気を踏み台にするように空中を自由自在に移動ができる。 
「悪いがずらかるぞ!」
僕は伸ばされた食人鬼腕の上を綱渡りのように赤い腕を踏みしめて走り出す。
そのまま食人鬼の目の前まで躍り出て、頭を歪風を纏った脚で思いっきり蹴り飛ばした。
「ひゃぁぁ!?」
「もういっちょ!」
蹴った反動で再び宙に舞い、歪風と瞬歩を同時に発動。
空気を破裂させながら一気に急降下し、地面へと落下する。
「回し蹴りッ!」
地面に着地する直前、回し蹴りを発動した。僕の体が回転した事で捻れ、不規則な動きをしながら視界がぶれる。
「これでおさらばだ!」
瞬歩を発動。
砂塵を巻き上げながら、僕は食人鬼達から逃走に成功した。
「お、お兄ちゃん.......もう大丈夫なの?」
リフィアが僕の腕の中でゆっくりと目を開け、掠れた声で僕に尋ねてきた。
「もう、大丈夫だ」
僕は笑って答えた。
けど、この笑いの裏に潜む苦悶の表情を堪えるのに必死だった。
――ブツッ。
僕の足首から太腿が出血していた。  
走る度に血が流れ落ち、言葉にできない痛みが僕の脚を蝕んでいく。
さっき使った歪風の応用技は非常に高い器用で緻密な魔力制御を求められる。
そして極限状態の中、重度の緊張と死への恐怖に挟めらながら使うのは無理があったのだろうか。
歪風を使う力加減を強めてしまっていたことと、瞬歩を使いすぎて魔力が乱れたこと。
このふたつの要因により、僕の足が鎌鼬で切り刻まれ赤く染まっていた。
それでも僕は走る。
そろそろ魔力が尽きてしまいそうだ。なんとか、この状況を打開しなければ。
「お兄ちゃん、上!」
僕が走っている時、リフィアが指をさして上を見上げていた。
僕もすかさず上を見上げた時、遥か上の上空で轟音が響き、大爆発が巻き起こる。
「ぐわッ!」
僕は瞬歩を発動し、その場から飛び退いた。
空気を突き破りながら、僕のいた場所に黒い物体が勢いよく降ってきた。
危機一髪。もしも、リフィアの声が無かったら僕は死んでいた。
爆音を轟かせ道路を木っ端微塵に砕き、粉々になった石片を散らしながら地割れが生じる。
土煙が巻き起こり、視界が遮られていく。
そして、粉塵の中から現れたのは、黒塗りの肌の元凶。
貪食の食人鬼だ。
何故、ここに.......?
いや、そんな疑問なんてものはまず思い浮かばなかった。
貪食の食人鬼は口に人間の腕を加えていた。
くちゃくちゃと、固い干し肉を食べるように、貪食の食人鬼は人間の腕を咀嚼する。
そして、腕を呑み込んだ後、口から黒い筒のような物を吐き出した。
「..............は?」
焼け焦げすぎてその黒い筒はもう、元の面影が無かった。
だが、僕はその黒い筒をいつも間近で見てきたからだ。
僕の背後で、ぼとりと上から赤髪の女性が降ってくる。
地面に直撃し、何度も跳ねさせながら体を跳ねて道路にごろごろと転がる。アシュレイは、右腕が千切れ、どくどくと赤い血を流していた。
1-28 生命を賭けて
  『僕に任せておけ』なんて、カッコつけのはいいものの、今の状況はかなりまずい。
脅威度Bと化した食人鬼二体に挟まれながら、リフィアを守り切ることは果たして僕にできるのだろうか。
僕は食人鬼を交互に見ながら逡巡する。
いや、できるかできないかの問題じゃない。やるしかない、だ。
「リフィア、今は逃げるぞ!」
僕はリフィアを抱き抱えたまま瞬歩を発動する。地面を蹴り飛ばし、瓦礫を散らしながら逃走すした。
予想は簡単にできていたが、食人鬼達は僕とリフィアを逃がさまいと腕を高速で伸ばして追撃を行う。
僕はバックステップで次々と攻撃を躱していく。躱すたびに瓦礫が飛び、食人鬼の腕が地面に陥没する。
食人鬼達の攻撃は目で追えないほど早い。だが、リフィアを狙っていると分かってるなら、なんとか予測ぐらいできる。
「瞬歩ッ!」
レンガの残骸を勢いよく蹴り飛ばし、僕は跳躍する。
そんな僕に向かって、食人鬼達は更に腕を伸ばす。ゴムのように赤い腕が伸び、鋭利な突爪が風を切りながら飛んでくる。
こいつら、よっぽど食人鬼達はリフィアを口の中に入れたらしい。
そんな簡単に渡してやる訳にはいけないけけどな!
「歪風!」
                                                    
僕は空中で自由落下する中、脚に薄緑色の魔力を纏わせる。
脚を使って空気を蹴り抜き、歪風を発動。
これは常軌を逸した危険な荒業だ。歪風は本来武器を使って放つ技能。
それを違う物、しかも自身の肉体を使って発動する。
魔力制御やバランス感覚を失うと、一瞬で暴発し大惨事に至る。それでも、この応用技はそれに見合った効果がある。
「ゲッ?」
「ゲェ?」
身動きの取れない空中でぴょんぴょんと移動する僕を見て、二体の食人鬼は何が起こっているかが分からないようだった。
恐らく、何も知らない人から見れば、今の僕は空中に見えない足場を使って跳んでいるとしか認識できないだろう。
「ひゃっ、ひやぁっ!?」
リフィアが腕の中で驚きの声をあげ、僕の腹辺りをぎゅっと握りしめ、目を閉じている。
驚くのも無理がない。人間が空を飛ぶことなんて普通は不可能で、ただの夢物語だ。
しかし、僕は村で畑を耕していた頃の、たゆまぬ鍛練によって少しの間だが、その不可能を可能にしていた。
この応用技は、畑を荒らしにくる害鳥、もとい烏型の魔物、レイニークロウを倒すために僕が生み出した技だった。
畑を食い荒らした後、攻撃が届かない空の上へと逃げるレイニークロウに、なんとか攻撃を当たるために必死で練習した。
その甲斐があって、まるで空気を踏み台にするように空中を自由自在に移動ができる。 
「悪いがずらかるぞ!」
僕は伸ばされた食人鬼腕の上を綱渡りのように赤い腕を踏みしめて走り出す。
そのまま食人鬼の目の前まで躍り出て、頭を歪風を纏った脚で思いっきり蹴り飛ばした。
「ひゃぁぁ!?」
「もういっちょ!」
蹴った反動で再び宙に舞い、歪風と瞬歩を同時に発動。
空気を破裂させながら一気に急降下し、地面へと落下する。
「回し蹴りッ!」
地面に着地する直前、回し蹴りを発動した。僕の体が回転した事で捻れ、不規則な動きをしながら視界がぶれる。
「これでおさらばだ!」
瞬歩を発動。
砂塵を巻き上げながら、僕は食人鬼達から逃走に成功した。
「お、お兄ちゃん.......もう大丈夫なの?」
リフィアが僕の腕の中でゆっくりと目を開け、掠れた声で僕に尋ねてきた。
「もう、大丈夫だ」
僕は笑って答えた。
けど、この笑いの裏に潜む苦悶の表情を堪えるのに必死だった。
――ブツッ。
僕の足首から太腿が出血していた。  
走る度に血が流れ落ち、言葉にできない痛みが僕の脚を蝕んでいく。
さっき使った歪風の応用技は非常に高い器用で緻密な魔力制御を求められる。
そして極限状態の中、重度の緊張と死への恐怖に挟めらながら使うのは無理があったのだろうか。
歪風を使う力加減を強めてしまっていたことと、瞬歩を使いすぎて魔力が乱れたこと。
このふたつの要因により、僕の足が鎌鼬で切り刻まれ赤く染まっていた。
それでも僕は走る。
そろそろ魔力が尽きてしまいそうだ。なんとか、この状況を打開しなければ。
「お兄ちゃん、上!」
僕が走っている時、リフィアが指をさして上を見上げていた。
僕もすかさず上を見上げた時、遥か上の上空で轟音が響き、大爆発が巻き起こる。
「ぐわッ!」
僕は瞬歩を発動し、その場から飛び退いた。
空気を突き破りながら、僕のいた場所に黒い物体が勢いよく降ってきた。
危機一髪。もしも、リフィアの声が無かったら僕は死んでいた。
爆音を轟かせ道路を木っ端微塵に砕き、粉々になった石片を散らしながら地割れが生じる。
土煙が巻き起こり、視界が遮られていく。
そして、粉塵の中から現れたのは、黒塗りの肌の元凶。
貪食の食人鬼だ。
何故、ここに.......?
いや、そんな疑問なんてものはまず思い浮かばなかった。
貪食の食人鬼は口に人間の腕を加えていた。
くちゃくちゃと、固い干し肉を食べるように、貪食の食人鬼は人間の腕を咀嚼する。
そして、腕を呑み込んだ後、口から黒い筒のような物を吐き出した。
「..............は?」
焼け焦げすぎてその黒い筒はもう、元の面影が無かった。
だが、僕はその黒い筒をいつも間近で見てきたからだ。
僕の背後で、ぼとりと上から赤髪の女性が降ってくる。
地面に直撃し、何度も跳ねさせながら体を跳ねて道路にごろごろと転がる。アシュレイは、右腕が千切れ、どくどくと赤い血を流していた。
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