ろりこんくえすと!

ノω・、) ウゥ・・・

1-24 邂逅

    
    1-24    邂逅


    タッタッタッと足音が鳴る。
 
 僕達は街を抜けて地下水路の中に入っていた。

 暗視と気配感知を発動させながら、石畳の上に足音を響かせて地下水路の中に潜伏している食人鬼達を探す。

 流れる汚水を飛び越えながら、前にアシュレイから貰った地下水路の地図を袋から取り出し、地図作成を発動。

 僕の目の前に透明な板が出現し、地下水路の全面図が映し出された。
 
「アシュレイ、食人鬼達はどの辺にいると思う?」
 
 僕は走りながらアシュレイに聞いた。
 
「私に聞かれてもな。だけど、怪しいのはこことここだな」
 
 アシュレイが指をさした場所は、浄水炉と湖に繋がっている近くの空洞。

 確かに怪しい。いくら食人鬼でも、狭い通路じゃなく少し開けた場所で待機したいはずだろう。
 
「まずは浄水炉に行ってみよう。あと、貪食の食人鬼を発見したらすぐ逃げる。群れてる食人鬼を発見してもすぐ逃げる。単体で倒していくようにしよう」
「賛成だ」
 
 狭い通路を僕達は駆けていく。

 壁を一目見ると、そこには音無の洞窟と同じように三本線の爪痕が刻まれてある。浄水炉の方角に近づくつれ、壁に刻まれた爪跡が増えていく。
 
「どうやらビンゴだ。この爪痕の数だと、浄水炉に何体か潜伏しているな」
「ウェルト、こっちには血痕があるぞ。もう何人か犠牲者が出ている可能性が高いから少し急ぐぞ」
「ああ、分かった。それに気配感知に反応ありだ」
 
 僕達は地下水路を駆け抜け、爪痕と血痕を辿っていき、
 
「ゲェ、ゲェッ、ゲェゲ!」
「ゲェゲェゲェ!」
「ゲェゲェッゲェゲェ!」

 一心不乱に人の肉を咀嚼する三体の食人鬼を見つけた。
 
「.......見つけた!」
 
 暗視を強く発動して様子を見ると、食人鬼達が食べているのは清掃員の死体だ。

 あまりにも損傷が激しすぎて見分けが難しかったが、まだかろうじて残っていた制服のおかげで確認できた。
 
「また名も無き清掃員が犠牲になったのか.......地下水路の清掃員の仕事ってヒュージスライムの件に続き、行方不明者が続出しまくって人気無さそうだな。ちなみに私はやりたくない」
「地下水路は臭いし汚いしな。で、そんな呆けたことを言ってる余裕はあるのか?」
 
 うん、ないな。
 
「うし、敵は三体だ。フォーメーションBだ。Bで行くぞ」
「ウェルト、フォーメーションBとはなんなんだ?」
「あれだよ、あれ。アシュレイが重砲撃った後僕がトドメをさすやつ」
「いい加減すぎる.......それにフォーメーションAはどうした」
「少しは空気を読んで欲しかったよ」

 僕達は再び食人鬼達の方へと目を向ける。
 
「.......あれ?    あの一番手前の食人鬼、なんか僕達の事に気付いていないか?」
 
 僕達が作戦会議をしていると、一体の食人鬼が僕達がいる物陰をじーっと見つめていた。
 
「ウェルトが騒ぐからだろ。静かにしていろ」
「あ、もう一体もなんか手を止めてこっちを見てるんだけど」  
 
 続いて奥の方にいる二体目の食人鬼も手を止めた。

 首をキョロキョロと動かしながら何かを探している仕草を見せる。
 
「満腹になって手を止めてるだけじゃないのか?」
「あー.......最後の一体もこっちを見てるぞ。鼻をぴくぴくとひくつかせているな」
 
 三体の食人鬼は、僕達のいる方向へと、全員首を向けていた。

 清掃員の死体をくちゃくちゃと咀嚼しながら目を輝かせている。
 
「ウェルト、どうやら気づかれたっぽいな」
「そうみたいだ。しっかし、あいつらめっちゃ目をギラつかせているな。できれば見逃してくれたりしないかなぁ。ほんとは一体ずつ倒すつもりだったんだけど」
「ほら、食人鬼は知能が高いんだろ。もしかしたら私と違って空気を読んでくれるかもしれないぞ」
 
 僕達はゆっくりと物陰から出て、食人鬼達に向かって頭を下げた。
 
「あのー、見逃してくれたりしますかね?」

 僕の誠心誠意のこもったお願いは、
 
「ゲェゲェ!」
「ゲァ!    ゲェ!」
「ゲアッ!    ゲアッ!」
「何言ってるか分からない。アシュレイ、通訳を頼む」
「多分、『オレサマ、オマエ、マルカジリ』って言ってるんじゃないのか?」

 三匹の食人鬼達は頷いた。
 
「「「ゲェゲェ!」」」
「おっと、その通訳はどうやら正解みたいだ」

 普通に聞いてくれませんでしたとさ。
 
 食人鬼達は清掃員の死体を投げ捨てて、僕達に向かって襲いかかってきた! 
 
 ――戦闘開始!
 
「いくぞ!    新技能のお披露目だ!    地嵐ッ!」
 
 僕は一番手前の食人鬼に向けて新しく獲得した風遁術の技能、地嵐を発動。 
 
 斜め真上から激しく渦巻く暴風が現れ、地下水路の壁や床を削りながら手前の食人鬼に衝突する。
 
 破裂音と血飛沫を散らしながら僕の前方に突風が生じた。
 
「この風遁術はかなり使えるな!」
「まだ後ろがいるぞ!    フルオートカノン!」
 
 アシュレイの重砲から白光する砲撃が撃ちだされた。
 
 それは後ろにいた片方の食人鬼にぶつかると爆裂し、後方へと弾き飛ばす。
 
「まずは一体目!」
 
 僕はまだ後ろへ飛ばされていない一体の食人鬼に向かってダガーを構えた。
 
「瞬歩!」
 
 僕は重力に逆らって上に跳ぶ。
 
 Lvがあがったおかげかは分からないが、この世界の物理法則を無視した動きをしながら天井を駆け抜ける。
 
 そして天井から降りて床に着地しながら袈裟斬り。
 
 かと思うと、食人鬼の体を踏み台にしながらクルクルと連撃を加えていく。
 
 かと思うと、伸ばされた腕を横に跳んで躱し、閃刃で背中を切り裂く。
 
 かと思うと、再び天井を駆け抜け、真上から絶命剣を繰り出す。
 
 かと思うと、頭を蹴り飛ばして更に横に跳び、反動を付けた勢いでうなじを一閃し、石畳の下から刺突を太腿に繰り出し、壁を蹴って腕を十字に斬りにし、腹を蹴り上げ胸を横一文字に切り裂きーーー
 
 それはまるで、個室で投げた後、勢いよく跳ね返るゴムボールのような動き。
 
 僕は縦横無尽に狭い通路を跳ねながら、食人鬼にダメージを与えていく。
 
 攻撃が止まらない。 
 
 ダガーで食人鬼を斬る度に、赤い飛沫が飛んで地下水路の壁を、床を、天井を染め上げていく。
 
 食人鬼は僕の姿を捉えられず、伸ばした腕が空振りした。
 
「アシュレイ!    僕に合わせろ!」
 
 僕はこの隙を見逃さない。

    ダガーを垂直に向け、食人鬼へと突き刺した。
 
「お安い御用だ!    ラピッドショット!」
「絶命剣!」  
 
 挟み撃ち。
 
 がら空きになった食人鬼の胴体に、僕のダガーとアシュレイの弾丸が交差する。
 
 弾丸は食人鬼の堅牢な肋骨を突き破り、僕のダガーがその砕かれた場所から心臓に突き刺さった。
 
「ゲァァァァ!?」
 
 食人鬼は口からバケツの水をぶちまけたように血反吐を盛大に吐いて膝を崩した。
 
 体をビクンビクンとひとしきり痙攣させて、冷たい石畳の上に倒れ伏した。
 
 残り、二体。
 
「一気にケリをつけるぞ!    歪風!」
 
 渾身の力を込めてダガーに風を纏わせて振り抜いた。
 
 風の刃はアシュレイの砲撃を受けた食人鬼に直撃。
 
 頭部が破裂し、後ろへのぞける。
 
「ゲェッッ.......!!!」
 
 血をぼたぼたと滴らせながら、食人鬼は僕を睨む。
 
 その醜悪の顔は憤怒の表情で染まっていた。
 
 大口を開けて、剣山で刺されるような殺気が放出される。
 
「次はお前だ!    瞬歩!」
 
 僕は向けられた殺気を気合いで跳ね返し、床を蹴って跳ねる。
 
 壁と天井を上下左右に跳ねて食人鬼の前に躍り出た。
 
「閃刃!」
「アンカーショット!」
 
 ダガーが奔る。鉄杭が飛ぶ。
 
 鉄杭は僕に伸ばされた腕に打ち込まれて床に刺さり、ダガーはなぞるように赤い一筋の線を書く。
 
 そのまま僕は横に跳び、壁を蹴り、上に跳んで――。
 
「絶命剣!」

 空中で縦回転を死ながら、その勢いを乗せた一撃を脳天にお見舞いした。
 
 ダガーが差し込まれた事で頭蓋骨が砕けて陥没し、脳内に異物が入っていく。
 
 火山の噴火の如く、食人鬼の頭から血が溢れ出し、絶叫を響かせた。
 
 残りは遂に、一匹。
 
 息のあった阿吽の呼吸で、僕とアシュレイは同時に頷いてそれぞれ技能を発動する。
 
「フレイムカノンッ!」
「地嵐ッ!」
 
 爆炎と暴風が、ひとつとなる。
 
 対城兵器並の威力となった火砕流が、最後の食人鬼へと放たれた。
 
 全身が炭化し、風の斬撃で炭化した部分からボロボロと食人鬼の身体は崩れていく。
 
 一戸建ての家を跡形もなく吹き飛ばすような台風クラスの風圧によって、食人鬼は壁に勢いよく叩きつけられた。
 
 あまりの質量と衝撃により、頑丈である筈の地下水路の壁に亀裂が走る。
 
「瞬歩ッ!」
 
 床を蹴る。
 
 火砕流が吹き荒れた跡を僕は駆ける。
 
 瞬きとする時と同じ刻。その一瞬で僕は食人鬼の目の前へと迫っていた。
 
「絶命剣!」
 
 ズンッ、 と鈍い音が響く。
 
 僕は腕を振りかぶって、ダガーを目にも止まらぬ速さで食人鬼の胸に挿入する。
 
 炭化した胸を貫き、肋骨を砕いて心臓を破壊した。焼かれて乾いた肉が粉になって飛び、黒い粉塵が周囲に散った。
 
 -食人鬼を三体討伐しました-
 -Lvが4あがりました-
 
「食人鬼三体、討伐完了だな」

 僕とアシュレイは同時に倒れ込んだ。技能の使いすぎでMPを消費し過ぎた。

「おい、ウェルト。それはいいんだが、なんか凄い音がするぞ」
 

 地響きが鳴り、地下水路全体が揺れている。
 
 どうやら僕達は暴れすぎたようだ。本来狩る側の食人鬼が餌である僕達に狩られたのだ。

     あいつ貪食の食人鬼が様子を見に来るのは当然の事だった。
 
「これは.......地面が揺れている!?    いや、地下水路全体が壊されているのか!?」
 
 浄水炉の向こう側で轟音が聞こえる。ズドン、ズドンとアシュレイの重砲から放たれる爆撃同じような音が響いてくる。
 
「まさか.......!」
「そのまさかだな!    気配感知にビンビン反応が起こっている!    なんだこいつ!    明らかにやばい!」

 そして、僕達は呼び寄せてしまった。
 
 爆裂音を響かせて壁を砕き、石の破片を撒き散らしながらそいつは現れた。
  
 浄水炉に姿を現したのは食人鬼よりも一際大きく、漆黒の肌の悪魔。

「ゲェェ.......」
 
 貪食の食人鬼を。 

 僕達はジリジリと後退していく。
 
「やばい、こいつはまじでやばい」
 
 本能が最大レベルで警報を鳴らす。
 
 汗が僕の全身から吹き出し始めた。
 
 こいつはさっき倒していた食人鬼とは明らかに格が違う。これが脅威度Aクラスの魔物。
 
 貪食の食人鬼。

 貪食の食人鬼はそんな慄く僕達を見つめ、
 
「ゲェ.......」
 
 ―――嬉しそうに、嗤った。



 

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