ろりこんくえすと!

ノω・、) ウゥ・・・

1-22 情報



    1-22    情報


「ウェルト、一体どこへ向かっているのだ? もう冒険者ギルドは過ぎてしまったぞ」
 
 僕とアシュレイは人混みを掻き分け、大通りを横切りながらネメッサの街を疾走していた。

    僕の横からはアシュレイが走りながら僕に話しかけている。
 
「冒険者ギルドに行っても食人鬼の上位種についての情報は得られそうもないし、湖の麓村の惨状を冒険者達に知られたら混乱させるだけだ。だからまずはエマの所に行くぞ。学者であるエマなら知っている可能性が高い」
 
 そうだ。

 何かと様々な情報に詳しいエマなら食人鬼の上位種について何か知っているはずだ。

 それに、僕達は敵を知らなすぎる。まずは情報を入手するべきだろう。
 
「着いたぞウェルト」
「おっし。エマ!    エマはいるか!?」
 
 僕は家の扉を盗賊術の技能、解錠を発動させて勝手に開け、家の中に足を踏み入れた。
 
「なによ朝早くから喧しいわね.......」
 
 二階からぺたぺたと足音立てながらパジャマ姿の幼女、もといエマが僕達の前に姿を現した。

 そんなエマは僕達を見た途端、口をぱくぱくさせて目を見開き、取り乱し始めた。
 
「そ、そんな.......お姉ちゃんと変態が朝帰りなんて。変態.......この変態ぃ!    よくもお姉ちゃんの処女を奪ってくれたわね!    この私が直々にぶっ殺してやるわ!」
 
    お前はオカンか。
 
「ウェルトと朝帰りとか今はそんなことはどうでもいい!    それに私の初めてはまだ誰にも渡しておらん!」
「反抗期!?    私の大好きなお姉ちゃんが反抗期に入っちゃったわ!」
「は、話が通じてねぇ.......」 
 
 アシュレイはそんなエマの様子に見切りをつけたのか、僕の袋を奪い取り焼け焦げた食人鬼の頭を勝手に取り出してエマに見せつけた。
 
「エマ、落ち着いて聞いてくれ、この街の近くで食人鬼が見つかったんだ。そして、食人鬼を統率して街に向かってくる食人鬼の上位種がこの街の地下水路に潜伏しているかと思われる。エマは学者なのだから何か心当たりがあるだろう?    食人鬼の上位種の情報を教えてくれ!」
「ああああああああぁぁぁ!!!    お姉ちゃんが!    私のポンコツで間の抜けた大好きなお姉ちゃんが私から離れていくうぅぅぅ!!!」
「あー、もう!    本当に話が進まないなこいつは!」
 
 僕は瞬歩を発動させ、エマの後ろに一瞬で回り込んで地面に押さえつけた。
 
「ひゃぁッ!?    この男、私にも襲いかかってきたわ!    やっぱりお姉ちゃんと私を一緒に犯して姉妹丼にしようとしていたようね!    変態!    変態!    変態!」
「うるせぇこのシスコン!    今はそれどころじゃないんだ!    早く食人鬼の上位種について教えてくれ!」
「いやぁ!!!    お姉ちゃん助けてぇ!     変態に犯されるぅぅぅ!」
 
 そんなエマを見てアシュレイは、
 
「いいからさっさと吐け!    大人しく観念しろ!」
「いやぁぁぁぁぁ!!!    お姉ちゃんが変態に寝返ったぁぁぁ!!!」 
 
 僕と同じように地面に押さえつけた。
 

 
    ◆◇◆



 数十分後。
 
 
「お騒がせいたしました」
 
 僕に縄で簀巻きにされたエマが、アシュレイに説教されたことでモゾモゾと芋虫の様な体勢で謝った。
 
「エマ、今は非常事態だ。ウェルトと朝帰りしたとかよりよっぽど大事なことがある」
「はいお姉ちゃん」
「よし、落ち着いたな。エマ、食人鬼の上位種に心当たりはないか?」
 
 僕は落ち着いた様子のエマに尋ねた。
 
「ふん、あんたなんかに教える義理はないわ」
 
 こいつ.......!
 
「エマ、お姉ちゃんからのお願いだ」
「お姉ちゃんのお願いなら仕方ないわね」
 
 やっぱり手の平返しが凄い。

 お前の手の平は返すためだけにあるのかよ。
 
「食人鬼の上位種ね.......。百六十年前ぐらいだったかしら。そいつがどっかの都市をいくつか壊滅させて、災害級に認定された。その時に名前を貪食の食人鬼と名付けられたわ」
「貪食の食人鬼、か。そいつの特徴を教えてくれれないか?」
「いやよ」
「私からも頼む、エマ」
「お姉ちゃんの頼みならしょうがないわね」
 
 こいつめんどくせぇ。
 
「貪食の食人鬼の特徴は他の赤い肌の普通の食人鬼と比べて、黒い肌に二回り程大きい体躯をしているわね。あと、食人鬼手下にして統率する能力を持っているわ。それに食欲が非常に旺盛で、人の肉を求めてどこまでも彷徨う。加えて、普通の食人鬼の数倍の強さ.......つまり脅威度Aクラスの強さを持っているわ。遭遇したらBランク以上の冒険者パーティじゃないと全滅は必須よ。まさに人類の天敵のようなやつね」
「まじかよ.......」
 
 脅威度A。

 予想はできていたが、改めて話を聞かされるとその現実から逃げたくなる。
 
「それとね、お姉ちゃん達の話が本当なら早く逃げた方がいいわ。貪食の食人鬼を倒したのは多くのBランクとAランクの冒険者達なの。それも街の人々を囮にして大量の犠牲を出しながらやっと、ね」
 
 脅威度Aの名は伊達じゃない。こんなの国が動く案件じゃないか。
 
「エマ、この街の冒険者と衛兵達で貪食の食人鬼達を撃退するか、エルクセム王都からの援軍の時間稼ぎはできるか?」
「無理だわお姉ちゃん」
 
 ピシャリとエマは宣言する。
 
「そもそも食人鬼を三体ぐらいこの街に放れば壊滅するわ。貪食の食人鬼なんてもってのほかよ。それに、気付いていないかもしれないけど変態とお姉ちゃんのコンビがこの街の最大戦力よ。変態とお姉ちゃん以外の、この街の冒険者と衛兵達全員が力を合わせても普通の食人鬼ですら一体すら倒せないでしょうね」
「そんな.......」
「むしろ変態とお姉ちゃんだけで、Cランクの冒険者達が束になってやっと勝てる食人鬼を倒した事の方が驚きだわ」
「本格的にまずいぞ。その食人鬼数体と上位種の貪食の食人鬼がこの街に向かってきてる」
「ウェルト、私達はどうする?」
「どうすれば.......」  
 
 そんな顔を見合わせて考え込む僕達にエマは告げる。
 
「逃げよう、お姉ちゃん」
 
 エマが悩む僕とアシュレイを見つめながら言った。
 
「この街の人々を見捨てるのは良心が痛むかもしれないけど、命あっての物種だわ。それに、この変態は私から見ても゛戦力的゛には頼りなるわ。さっき私を押さえつけたあの動きは本物だったから分かる。私達だけなら他の街まで逃げれるはずよ」
 
 エマの言うことはもっともだ。

 この街の人々を見捨てて、食人鬼の囮、もとい餌にすれば逃げ切れる事ができるかもしれない。
 
 だけど、
 
 僕の頭に浮かんだのはこの街を見捨てて逃げる決意ではなく、この街に住む人々達の顔だった。
 
 ローションでヌルヌルになった薬草店を営むリフィア。

 僕に軽蔑の眼差しを向けて避けている受付嬢。

 情がやけに厚そうな農家を営むワイアット。

 そして、なんだなんだ言って一緒にいる楽しい宿屋のアリア。
 
 悩む必要なんてないのに。

 僕は――
 
「逃げよう、変態とお姉ちゃん」
「僕は、いやだ」
 
 何を言ってるんだコイツは、みたいな顔で睨んできたエマを僕は睨み返して宣言する。
 
「僕はこの街が好きだ。僕がこの街に来てから数日しか経っていなけど」
「ウェルト、お前.......」
 
「悪いなエマ、冒険者ギルドに避難しててくれ。アシュレイ、僕と一緒に来てくれるか?」
「なっ、何馬鹿な事を言ってるのよこの変態!    あんた達じゃ貪食の食人鬼にはかないっこないわ!    自殺行為に等しいわよ!」
 
 アシュレイは叫ぶエマの頭をぽんぽん叩き、僕の手を取った。
 
「すまない、エマ。私とウェルトが帰ってくるまでいい子にしてるんだ」
「ちょ、ちょっとお姉ちゃん!?」
 
 僕は簀巻きにしたエマを担いだ。
 
「こいつを冒険者ギルドに置いてくる。さあ、行こう」
「やだ!    変態!    早く離しなさい!」
「エマ、静かにしててくれ」
「はいお姉ちゃん」
「お前単純すぎんだろ」
 
 静かになったエマに向かって溜息を吐きながら僕は言った。
 
「急ごう、手遅れになる前に」
 
 長い夜が、始まりを告げた。




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