能無し刻印使いの最強魔術〜とある魔術師は来世の世界を哀れみ生きる〜
EP.95 説得と謝罪
リアが飛び出したその翌日、リアは部屋のベッドで膝を抱えそこに頭を埋めていた。蘇るのは昨日の記憶、アリスを助ける価値がないとそういったクルシュを叩いた記憶。彼女の中をなんとも言い得ぬ感情が支配していた。
「はぁ........」
アリスへの心配と昨日の事で頭がどうにかなりそうだった。今の自分にはため息をついてただ無事を祈ることしか出来ない。それがたまらなく悔しくて、何度も自分の無力さを痛感した。こんな時クルシュならどうするのだろう、そんな思いが自然と頭に浮かんで、昨日の事で相殺される。何度目かわからない溜息をついているとコンコンとドアがノックされ中にレオが入ってきた。
「あ、先生.........」
「やっぱりというか何というか、相当落ち込んでいるな」
優しい笑みでレオがリアの横に座った。その笑みには無理しているわけでも何でもなく、自然の笑みだった。
「アリスの事か?」
「.........そう、だけど」
「クルシュの事もだな?」
「............うん」
レオの質問に答えながらリアはさらに深く膝を抱いた。そんなリアにレオが騙り始める。
「.........確かにクルシュは時々大人の私達でも驚くほど冷静な時がある。冷静で、残酷な時がな。でも彼は優しい」
「.......なんでよ?」
「2年前、私の住んでいる村の女の子達がオークに誘拐にされた時があってな。その中には、アリスも含まれていた。........だがアリスを含めた村の女の子達を救ったのはクルシュだったんだ。あいつ、いつも通り運動をしてくるとか言ってオークの集落を潰しててな。本人はバレてないつもりだったんだろうが私にはバレバレだったよ........フフフ」
昔のことを懐かしんでいるレオに対してリアはなんとも言えない表情をする。それに気づいたレオは優しい笑みでリアに微笑む。
「おっと、すまない。つい思い出すと今でも微笑ましくてな」
「でも..........」
「それに、今まで君たち2人をクルシュがぞんざいに扱ったことがあったか?」
「........それは」
「君達が王国と帝国の戦争に割って入った時も危険にならないようにその指輪のような魔道具を貰ったんだろう?」
「そう、だけど」
「君達を気にしているからこそだと私は思うけどな?」
彼女の言う通りだ。リアの記憶にもクルシュは優しかった覚えしかない。そして自分を救った事件の時も。彼の強さに、彼の優しさに惹かれた。だから好きになったのだ。.......だがしかし。
「........でも、じゃあなんで昨日あんなことを言ったの?」
「あー、あれは..........まぁ端的に言うとクルシュの言葉足らずだ」
「えっ?」
「アリスは生きている、それは私を安心させてくれている。私とて弟と共に育ったアリスが攫われて気が気じゃなかったんだが、この確信の情報はクルシュからだ」
「っ!?...........だってクルシュは!」
「君がクルシュを叩く前にクルシュは言っただろう?「死んでいるのなら助ける価値はない」と。でもその後にアリスは生きていると、ちゃんと言うつもりだったんだ」
「じゃあ...........私は」
「いいや、あんな所で区切るクルシュも悪い。昔から言葉足らずなところがあってな、許してやってくれ」
その瞬間、リアの中のもやもやが晴れたような気がした。クルシュがそういうのなら、アリスは確実に生きている。そう思える。
「はぁ〜何よ。そうならそうと早く言いなさいよ.........」
「すまない、でも実はクルシュに頼まれてな。「恐らく元気が無くなっているだろうから慰めるついでに真実を伝えてやってくれ」と」
「〜〜〜っ!」
彼女の心臓がトクンと高鳴った。頬を叩いて、大嫌いなんて言ったのにそれでもまだ心配してくれるなんて思いもしない。やっぱり自分は彼が好きなんだと、改めて心に思った。
「な、優しいだろう?クルシュは」
「..........うん」
その後レオは退室したが、リアは別の意味でまた膝を抱えることになるのだが今は語らないでおこう。
その翌日、リアはクルシュの部屋の前に立っていた。各自部屋待機だが、監督がレオなので事情を話すと難なく了解を得た。レオ自身もリアの行為には気づいていたので特に止める気はなかった。
リアはぎこちないノックを二回鳴らす。いつも話してるはずなのにいつものように声が出て来ず、固まってしまったリアと扉を開いたクルシュの視線があった。
「.........どうした?リア。確か部屋に各自待機という話だったはずだが」
「え、ええっとその............な、中入るわよ!」
「それは構わないが..........」
とりあえずリアはクルシュの部屋の中に入った。それでも気にせずにクルシュは読んでいたのだろう魔導書に再び目を落とし始めた。さすが、やはりクルシュなんだなと思うのと同時に緊張していたのが馬鹿みたいに思えて、頭がスッキリとした。
「クルシュ」
「ん?どうした?」
「...........一昨日はごめんなさい、話も聞かずに頬を叩いたりして」
「...............」
クルシュの反応がないことに一瞬自分が変なことを言ったのだろうかと疑心暗鬼になったがそんなことはどう考えてもなかったので何故かと緊張した面持ちで返答を待つ。すると栞を挟みパタンと魔導書を閉じたクルシュがリアに向き直った。
「ふむ、あれはなかなか痛かったぞ」
「そこは「気にするな」とか言うところじゃないのっ!?」
「突然の事で結界も回らなかったからな。素で殴られたのは久しぶりだぞ。..........まぁ特に気にしてはいない」
「そ、そう............」
その言葉にリアは内心ほっとする。そんな彼女にクルシュは続ける。
「まぁ、確かに俺の落ち目もある。すまない」
「きゅ、急に何よしおらしくなって..........」
「俺も悪いと思った時はちゃんと謝るんだが、俺の事なんだと思ってるんだ?」
その答えに詰まるリアを「とりあえずそれはいい」と纏める。
「アリスの位置特定は出来ないが重力魔法の指輪に付与してある『思念伝達』を応用してしっかりと生命反応は確認してある。安心してくれ」
「あれ?そう言えば『思念伝達』って魔法じゃないの?」
「魔法だが使えるのは俺とエリルとルイだけだ。お前達は俺の作ったま道具に付与されてる魔法で喋れていた」
「そ、そうなの..........」
なんとなく、やはりクルシュを嫌いになることはやっぱり出来ないと改めてリアはそう思った。
リアと仲直り。..........さて、どうやって帝国に攻めさせようか。
「はぁ........」
アリスへの心配と昨日の事で頭がどうにかなりそうだった。今の自分にはため息をついてただ無事を祈ることしか出来ない。それがたまらなく悔しくて、何度も自分の無力さを痛感した。こんな時クルシュならどうするのだろう、そんな思いが自然と頭に浮かんで、昨日の事で相殺される。何度目かわからない溜息をついているとコンコンとドアがノックされ中にレオが入ってきた。
「あ、先生.........」
「やっぱりというか何というか、相当落ち込んでいるな」
優しい笑みでレオがリアの横に座った。その笑みには無理しているわけでも何でもなく、自然の笑みだった。
「アリスの事か?」
「.........そう、だけど」
「クルシュの事もだな?」
「............うん」
レオの質問に答えながらリアはさらに深く膝を抱いた。そんなリアにレオが騙り始める。
「.........確かにクルシュは時々大人の私達でも驚くほど冷静な時がある。冷静で、残酷な時がな。でも彼は優しい」
「.......なんでよ?」
「2年前、私の住んでいる村の女の子達がオークに誘拐にされた時があってな。その中には、アリスも含まれていた。........だがアリスを含めた村の女の子達を救ったのはクルシュだったんだ。あいつ、いつも通り運動をしてくるとか言ってオークの集落を潰しててな。本人はバレてないつもりだったんだろうが私にはバレバレだったよ........フフフ」
昔のことを懐かしんでいるレオに対してリアはなんとも言えない表情をする。それに気づいたレオは優しい笑みでリアに微笑む。
「おっと、すまない。つい思い出すと今でも微笑ましくてな」
「でも..........」
「それに、今まで君たち2人をクルシュがぞんざいに扱ったことがあったか?」
「........それは」
「君達が王国と帝国の戦争に割って入った時も危険にならないようにその指輪のような魔道具を貰ったんだろう?」
「そう、だけど」
「君達を気にしているからこそだと私は思うけどな?」
彼女の言う通りだ。リアの記憶にもクルシュは優しかった覚えしかない。そして自分を救った事件の時も。彼の強さに、彼の優しさに惹かれた。だから好きになったのだ。.......だがしかし。
「........でも、じゃあなんで昨日あんなことを言ったの?」
「あー、あれは..........まぁ端的に言うとクルシュの言葉足らずだ」
「えっ?」
「アリスは生きている、それは私を安心させてくれている。私とて弟と共に育ったアリスが攫われて気が気じゃなかったんだが、この確信の情報はクルシュからだ」
「っ!?...........だってクルシュは!」
「君がクルシュを叩く前にクルシュは言っただろう?「死んでいるのなら助ける価値はない」と。でもその後にアリスは生きていると、ちゃんと言うつもりだったんだ」
「じゃあ...........私は」
「いいや、あんな所で区切るクルシュも悪い。昔から言葉足らずなところがあってな、許してやってくれ」
その瞬間、リアの中のもやもやが晴れたような気がした。クルシュがそういうのなら、アリスは確実に生きている。そう思える。
「はぁ〜何よ。そうならそうと早く言いなさいよ.........」
「すまない、でも実はクルシュに頼まれてな。「恐らく元気が無くなっているだろうから慰めるついでに真実を伝えてやってくれ」と」
「〜〜〜っ!」
彼女の心臓がトクンと高鳴った。頬を叩いて、大嫌いなんて言ったのにそれでもまだ心配してくれるなんて思いもしない。やっぱり自分は彼が好きなんだと、改めて心に思った。
「な、優しいだろう?クルシュは」
「..........うん」
その後レオは退室したが、リアは別の意味でまた膝を抱えることになるのだが今は語らないでおこう。
その翌日、リアはクルシュの部屋の前に立っていた。各自部屋待機だが、監督がレオなので事情を話すと難なく了解を得た。レオ自身もリアの行為には気づいていたので特に止める気はなかった。
リアはぎこちないノックを二回鳴らす。いつも話してるはずなのにいつものように声が出て来ず、固まってしまったリアと扉を開いたクルシュの視線があった。
「.........どうした?リア。確か部屋に各自待機という話だったはずだが」
「え、ええっとその............な、中入るわよ!」
「それは構わないが..........」
とりあえずリアはクルシュの部屋の中に入った。それでも気にせずにクルシュは読んでいたのだろう魔導書に再び目を落とし始めた。さすが、やはりクルシュなんだなと思うのと同時に緊張していたのが馬鹿みたいに思えて、頭がスッキリとした。
「クルシュ」
「ん?どうした?」
「...........一昨日はごめんなさい、話も聞かずに頬を叩いたりして」
「...............」
クルシュの反応がないことに一瞬自分が変なことを言ったのだろうかと疑心暗鬼になったがそんなことはどう考えてもなかったので何故かと緊張した面持ちで返答を待つ。すると栞を挟みパタンと魔導書を閉じたクルシュがリアに向き直った。
「ふむ、あれはなかなか痛かったぞ」
「そこは「気にするな」とか言うところじゃないのっ!?」
「突然の事で結界も回らなかったからな。素で殴られたのは久しぶりだぞ。..........まぁ特に気にしてはいない」
「そ、そう............」
その言葉にリアは内心ほっとする。そんな彼女にクルシュは続ける。
「まぁ、確かに俺の落ち目もある。すまない」
「きゅ、急に何よしおらしくなって..........」
「俺も悪いと思った時はちゃんと謝るんだが、俺の事なんだと思ってるんだ?」
その答えに詰まるリアを「とりあえずそれはいい」と纏める。
「アリスの位置特定は出来ないが重力魔法の指輪に付与してある『思念伝達』を応用してしっかりと生命反応は確認してある。安心してくれ」
「あれ?そう言えば『思念伝達』って魔法じゃないの?」
「魔法だが使えるのは俺とエリルとルイだけだ。お前達は俺の作ったま道具に付与されてる魔法で喋れていた」
「そ、そうなの..........」
なんとなく、やはりクルシュを嫌いになることはやっぱり出来ないと改めてリアはそう思った。
リアと仲直り。..........さて、どうやって帝国に攻めさせようか。
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