能無し刻印使いの最強魔術〜とある魔術師は来世の世界を哀れみ生きる〜
EP.88 魔王は暴れる
もういいねが1500に........
ありがとうございます本当に。
リアとフィオーネ、果てには彼女の姉のサレーネでさえも勝てなかった相手に、ジークは挑む。
「『壊神滅陽砲』」
10門開いた魔法陣から漆黒の砲がエルモラへ向かって一斉掃射される。
「だから無駄だぜぇ!」
大きく手を開いた直後、10門の『壊神滅陽砲』全てがエルモラに直撃した。盛大な爆発を含ませ、地面にさらに亀裂を与えながら辺り一体を火の海へと変える。そして煙が晴れた後に、先程まで全く以て無傷であったエルモラの神体に、僅かに火傷が付いていた。
「おいおい、どういうこったよ」
「言っただろう?お前の法則に従ってやる義理などない。だがまぁ...........それでも吸収されるというのなら」
姿勢を低くして、ノータイムで超位身体強化魔法を発動させたジークは、勢いそのままに地面を蹴る。刹那、その姿が残像を残して消えた。
「殴るだけだ」
「ッ!!」
背後からの殺気に当てられ、反射的に腕で防御しながらエルモラは振り向いたがそこには案の定、無慈悲に拳を振りかざしながら迫るジークがおり、そのままふり抜かれた拳の衝撃で腕は吸収の限度を通り越し、鈍い音を響かせながら神体ごと瓦礫の山に突っ込んだ。
ぶつかった衝撃音と、瓦礫がさらに崩れる音が同時に響く。が、数秒後に瓦礫を跳ね除けながらエルモラは立ち上がった。その正面には、ゆっくりとこちらへと向かってくるジークが映る。
「ふむ、俺としては腕を折ったつもりだったがな」
「そんなにやわじゃねーよ。..........まぁ、礼を言わねぇとなぁ。おかげでかなり溜まったからよ!!」
両腕を掲げたエルモラの前に先ほどと同じく巨大球が出現する。その大きさは先程、フィオーネに放った物と比べ物にならないほどの大きく、ヘタな建物よりも巨大である。
「行け!」
エルモラはそれをジークへ向かって投げつけるように放つ。指示を受けた巨大球が地面を抉りながら回避可能範囲を通り越しジークへと迫る。だが、なんの意にも介さずジークが右手を地面と水平に掲げると、その手の内に廻剣イノセントが収まった。
「壱ノ太刀『廻乱流崩』」
一閃、その一撃だけで巨大球は光の粒子となり霧散する。
「なっ........!」
「この程度か?まさか神髄だけで霧散する程度の力で殴った覚えはないのだが?」
「っ.......『多面性』!!」
瞬間、エルモラの周りに魔法陣が浮かび、鏡写しに10人のエルモラが出現する。総勢11人のエルモラが先程と同じく巨大球を作り、合成されていく。その大きさは、リアの『崩星』に勝るとも劣らない。
「これならどうだ!」
先ほど同様に地面を抉りながら直進する巨大球に、しかしジークは笑ってみせる。そして肩を竦めた。
「全く話にならぬな。やはりその程度か」
「なんだとっ!?」
魔法陣が浮かび上がる。しかしその色は闇色ではなく、赤黒色。禍々しさが遠目からでも滲み出るその魔法陣、エルモラにはそれに見覚えがあった。
「ま、まさか...........その魔法陣はっ!!」
「..........禁呪、『万物鎖す闇』。喜べ、これを使うのは貴様が二人目だ」
ニィっと釣り上げた口は心底楽しそうに笑っていた。ジークの高揚に呼応するかのように魔法陣は禍々しさを増していく。
「飲み込め」
端的に、そう呟く。その僅か後に巨大球と魔法陣がぶつかり合うが、当然どちらが勝つかなど目に見えている。その魔法陣へと巨大球は一直線に吸い込まれて行った。
「これで終わりだと思うな」
その指がさらに魔法陣を練る。闇色の魔法陣が出現し、赤黒色の禁呪と重なり合う。そうしてその魔法陣は黒一色の常闇へと昇華された。
「『憐怨終黒闇葬砲』」
音もなく、黒が全てを飲み込む。数秒後、地を揺らすほどの轟咆を響かせ全てを無へと返す巨砲が射出された。悲鳴をあげることすら許さず、エルモラを飲み込んだそれは接触範囲全てを更地と化せた。
「っ..........かはっ!」
「ほう?あれを受けてまだ生きるか」
身体中から出血を伴いながらも、まだ息のあるエルモラへ意外そうにジークが笑った。ゆるりとそのまま接近すると、胸ぐらを掴みあげる。
「ぐ............が.......」
「滑稽だな。どうだ?下に見ていた者に淘汰される気分は」
笑いながら問うその目は、酷く冷め、冷徹で、まるで蔑むかのような視線で。圧倒的な力の前に、神であるエルモラさえも退ける。これが魔王、クルシュを除いて世界最強と謳われた魔族。
「嬉しすぎて言葉も出ないか?...........ならば、終わりだ」
「ごはぁっ!?」
無造作に投げたエルモラの腹部に、強打が打ち込まれる。余りの衝撃に、満身創痍であった神体が意識を覚醒し痛みを訴える。そのまま45度空高く登って行くと、ピタリと神体が止まった。
「流石ですね、魔王。我々の権能が通じないとは」
「死に体のそいつを持って、どういうつもりだ?分魂神」
ジークが問うたその先に、エルモラを抱えながら浮遊する分魂神メギルストスがいた。相変わらずエルモラの体躯をどうやって支えているのかは謎である。
「本当に死んでしまいそうなので、回収にと」
「逃がすとでも?」
「逃げれますよ。あなたはアストではありません」
ジークがメギルストスへ向かって『壊神滅陽砲』を放つも、それは軽々と避けられた。
「では、これで。またどこかでお会いしましょう」
片手が塞がった状態で丁寧に一礼した後、くるりと回転するといつの間にかエルモラごとメギルストスは消えた。
「........深追いはするべきではないな」
「ルイっ!」
メギルストスがいた所を見つめるジークにフィオーネが駆け寄ってきた。
「フィオーネか、どうした?」
「えっ、いや、あの...........だ、大丈夫でしたか.........?」
恐る恐るそう聞くフィオーネに、ジークはフッと笑い彼女の頭に手を置いた。
「にゃ..........なにを!」
「心配してくれるのは有難いがな、俺よりも心配する者がいるだろう?」
そう言うと今も治療中のサレーネとリアの近くへ転移した。サレーネ痛々しい傷は今なお少ししか塞がっておらず、傷を塞いだリアも座り込んだその顔色は悪い。
「あ、ルイさん..........」
「ミナ、2人はどうだ?」
「リアさんは自分の魔法と私の魔法でなんとか傷を防ぎましたが、貧血を起こしています。お姉さんの方は内蔵関係は優先して塞ぎましたが、外傷がふさがっていません」
「大丈夫よ、これくらい..............っ!」
「私も、行かなくてはっ!」
立ち上がったリアは、足を伸ばした瞬間に前へと倒れ込む。それをなんとかフィオーネに支えてもらい怪我を増やすことは無かった。一方のサレーネは立ち上がろうとしているが激痛が走り無理な様子だった。
「リア、無茶をしてはいけませんわ」
「お前もだ、姉の方」
そういうとジークはまだ立ち上がろうとするサレーネを抱き上げた。
「ひゃっ..........な、あの!」
「黙っていろ、傷が悪化するかもしれないだろう」
抱き上げられている自分の姉を見て、フィオーネが少し零した。
「うぅ..........ずるいですわ..........」
「あんた、今それ言うの.......?」
リアに肩を貸しながら本音が漏れるフィオーネに彼女は軽く呆れた言葉を送った。
「ルイさん、一旦聖ニョルズ学園に行きましょう。確か災害時の緊急避難場所だったはずです」
「ああ、そうだな。飛ぶぞ、捕まれ」
ミナがリアと手を繋ぎ、フィオーネがジークの服を掴んだ。そこに召喚された魔法陣で彼らは学園へと転移した。
戦闘シーンとかを上手くかける人が羨ましい今日この頃。
ありがとうございます本当に。
リアとフィオーネ、果てには彼女の姉のサレーネでさえも勝てなかった相手に、ジークは挑む。
「『壊神滅陽砲』」
10門開いた魔法陣から漆黒の砲がエルモラへ向かって一斉掃射される。
「だから無駄だぜぇ!」
大きく手を開いた直後、10門の『壊神滅陽砲』全てがエルモラに直撃した。盛大な爆発を含ませ、地面にさらに亀裂を与えながら辺り一体を火の海へと変える。そして煙が晴れた後に、先程まで全く以て無傷であったエルモラの神体に、僅かに火傷が付いていた。
「おいおい、どういうこったよ」
「言っただろう?お前の法則に従ってやる義理などない。だがまぁ...........それでも吸収されるというのなら」
姿勢を低くして、ノータイムで超位身体強化魔法を発動させたジークは、勢いそのままに地面を蹴る。刹那、その姿が残像を残して消えた。
「殴るだけだ」
「ッ!!」
背後からの殺気に当てられ、反射的に腕で防御しながらエルモラは振り向いたがそこには案の定、無慈悲に拳を振りかざしながら迫るジークがおり、そのままふり抜かれた拳の衝撃で腕は吸収の限度を通り越し、鈍い音を響かせながら神体ごと瓦礫の山に突っ込んだ。
ぶつかった衝撃音と、瓦礫がさらに崩れる音が同時に響く。が、数秒後に瓦礫を跳ね除けながらエルモラは立ち上がった。その正面には、ゆっくりとこちらへと向かってくるジークが映る。
「ふむ、俺としては腕を折ったつもりだったがな」
「そんなにやわじゃねーよ。..........まぁ、礼を言わねぇとなぁ。おかげでかなり溜まったからよ!!」
両腕を掲げたエルモラの前に先ほどと同じく巨大球が出現する。その大きさは先程、フィオーネに放った物と比べ物にならないほどの大きく、ヘタな建物よりも巨大である。
「行け!」
エルモラはそれをジークへ向かって投げつけるように放つ。指示を受けた巨大球が地面を抉りながら回避可能範囲を通り越しジークへと迫る。だが、なんの意にも介さずジークが右手を地面と水平に掲げると、その手の内に廻剣イノセントが収まった。
「壱ノ太刀『廻乱流崩』」
一閃、その一撃だけで巨大球は光の粒子となり霧散する。
「なっ........!」
「この程度か?まさか神髄だけで霧散する程度の力で殴った覚えはないのだが?」
「っ.......『多面性』!!」
瞬間、エルモラの周りに魔法陣が浮かび、鏡写しに10人のエルモラが出現する。総勢11人のエルモラが先程と同じく巨大球を作り、合成されていく。その大きさは、リアの『崩星』に勝るとも劣らない。
「これならどうだ!」
先ほど同様に地面を抉りながら直進する巨大球に、しかしジークは笑ってみせる。そして肩を竦めた。
「全く話にならぬな。やはりその程度か」
「なんだとっ!?」
魔法陣が浮かび上がる。しかしその色は闇色ではなく、赤黒色。禍々しさが遠目からでも滲み出るその魔法陣、エルモラにはそれに見覚えがあった。
「ま、まさか...........その魔法陣はっ!!」
「..........禁呪、『万物鎖す闇』。喜べ、これを使うのは貴様が二人目だ」
ニィっと釣り上げた口は心底楽しそうに笑っていた。ジークの高揚に呼応するかのように魔法陣は禍々しさを増していく。
「飲み込め」
端的に、そう呟く。その僅か後に巨大球と魔法陣がぶつかり合うが、当然どちらが勝つかなど目に見えている。その魔法陣へと巨大球は一直線に吸い込まれて行った。
「これで終わりだと思うな」
その指がさらに魔法陣を練る。闇色の魔法陣が出現し、赤黒色の禁呪と重なり合う。そうしてその魔法陣は黒一色の常闇へと昇華された。
「『憐怨終黒闇葬砲』」
音もなく、黒が全てを飲み込む。数秒後、地を揺らすほどの轟咆を響かせ全てを無へと返す巨砲が射出された。悲鳴をあげることすら許さず、エルモラを飲み込んだそれは接触範囲全てを更地と化せた。
「っ..........かはっ!」
「ほう?あれを受けてまだ生きるか」
身体中から出血を伴いながらも、まだ息のあるエルモラへ意外そうにジークが笑った。ゆるりとそのまま接近すると、胸ぐらを掴みあげる。
「ぐ............が.......」
「滑稽だな。どうだ?下に見ていた者に淘汰される気分は」
笑いながら問うその目は、酷く冷め、冷徹で、まるで蔑むかのような視線で。圧倒的な力の前に、神であるエルモラさえも退ける。これが魔王、クルシュを除いて世界最強と謳われた魔族。
「嬉しすぎて言葉も出ないか?...........ならば、終わりだ」
「ごはぁっ!?」
無造作に投げたエルモラの腹部に、強打が打ち込まれる。余りの衝撃に、満身創痍であった神体が意識を覚醒し痛みを訴える。そのまま45度空高く登って行くと、ピタリと神体が止まった。
「流石ですね、魔王。我々の権能が通じないとは」
「死に体のそいつを持って、どういうつもりだ?分魂神」
ジークが問うたその先に、エルモラを抱えながら浮遊する分魂神メギルストスがいた。相変わらずエルモラの体躯をどうやって支えているのかは謎である。
「本当に死んでしまいそうなので、回収にと」
「逃がすとでも?」
「逃げれますよ。あなたはアストではありません」
ジークがメギルストスへ向かって『壊神滅陽砲』を放つも、それは軽々と避けられた。
「では、これで。またどこかでお会いしましょう」
片手が塞がった状態で丁寧に一礼した後、くるりと回転するといつの間にかエルモラごとメギルストスは消えた。
「........深追いはするべきではないな」
「ルイっ!」
メギルストスがいた所を見つめるジークにフィオーネが駆け寄ってきた。
「フィオーネか、どうした?」
「えっ、いや、あの...........だ、大丈夫でしたか.........?」
恐る恐るそう聞くフィオーネに、ジークはフッと笑い彼女の頭に手を置いた。
「にゃ..........なにを!」
「心配してくれるのは有難いがな、俺よりも心配する者がいるだろう?」
そう言うと今も治療中のサレーネとリアの近くへ転移した。サレーネ痛々しい傷は今なお少ししか塞がっておらず、傷を塞いだリアも座り込んだその顔色は悪い。
「あ、ルイさん..........」
「ミナ、2人はどうだ?」
「リアさんは自分の魔法と私の魔法でなんとか傷を防ぎましたが、貧血を起こしています。お姉さんの方は内蔵関係は優先して塞ぎましたが、外傷がふさがっていません」
「大丈夫よ、これくらい..............っ!」
「私も、行かなくてはっ!」
立ち上がったリアは、足を伸ばした瞬間に前へと倒れ込む。それをなんとかフィオーネに支えてもらい怪我を増やすことは無かった。一方のサレーネは立ち上がろうとしているが激痛が走り無理な様子だった。
「リア、無茶をしてはいけませんわ」
「お前もだ、姉の方」
そういうとジークはまだ立ち上がろうとするサレーネを抱き上げた。
「ひゃっ..........な、あの!」
「黙っていろ、傷が悪化するかもしれないだろう」
抱き上げられている自分の姉を見て、フィオーネが少し零した。
「うぅ..........ずるいですわ..........」
「あんた、今それ言うの.......?」
リアに肩を貸しながら本音が漏れるフィオーネに彼女は軽く呆れた言葉を送った。
「ルイさん、一旦聖ニョルズ学園に行きましょう。確か災害時の緊急避難場所だったはずです」
「ああ、そうだな。飛ぶぞ、捕まれ」
ミナがリアと手を繋ぎ、フィオーネがジークの服を掴んだ。そこに召喚された魔法陣で彼らは学園へと転移した。
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